2016年09月28日

保守政権が賃上げを求める愚

【世耕経産相「しっかり賃上げを」=経団連会長らと会談】
 世耕弘成経済産業相は15日午前、東京都内で経団連の榊原定征会長と会談し、「しっかり賃上げを行わなければ経済の好循環は実現しない」と述べ、収益を上げた企業は十分な賃上げを行うよう求めた。経団連トップとの会談は8月の経産相就任後、初めて。世耕氏は併せて「中小企業の取引条件を改善して賃上げにつなげ、地域経済を活性化することが重要だ」と指摘。中小企業が賃上げできる環境を整えるため、大企業との取引で不利にならないよう条件改善に取り組むことも要請した。
(時事通信、9月15日)

このところ安倍政権はしきりに財界に賃上げを要請し、その成果を誇っているが、野党からは「実質賃金は低下している」との批判を浴びている。改造後の新閣僚も、改めて財界に賃上げを求めていることからも、少なくとも「賃上げ効果が市場に反映されていない」との認識はあるようだ。これに対し、財界側は「国内需要が無い」「為替が安定しない」等の理由から消極姿勢を示している。

これについては、財界からすれば迷惑以外の何物でもないだろう。安倍政権が言う「景気回復」なるものは、「株価が上昇した」だけの話であって、国内需要が伸びているわけでは無く、むしろ国内需要は今後さらに低迷、低下するという認識が一般的だからだ。
安倍政権下における株価上昇は、日銀によるゼロ金利と量的緩和によって企業や銀行が国債から株に乗り換え、さらに年金基金を株式につぎ込んだこと(株式運用の割合を25%から50%に)で実現したものであって、本来の景気(消費)を反映したものではない。

これに対し、国内需要は絶望的状況にある。非正規雇用の割合は4割で高止まりしている上、家計貯蓄率はマイナス、貯蓄ゼロ世帯は4割にも達している。いまや被雇用者のうち2200万人以上が年収300万円以下の生活を余儀なくされている。
大学生の半数は学生ローンを借りている。学生のアルバイトも、我々初老世代のような遊ぶための小遣い稼ぎでは無く、少ない仕送りを補い、教材等を購入するための労働となっている。
さらに団塊世代が丸ごと年金生活に入り、20年以上の余命が想定されることから消費は手控えられる傾向が強まっている。霞ヶ関のエリート官僚がイメージする「孫に気前よく金を出す祖父母」などはごく一部にしか存在しない絵空事と化しつつある。

国内需要が縮小再生産のスパイラルに陥っているのに、設備投資して人件費を増やすインセンティブなどどこにも無いのは当然だろう。需要が増える展望が無いのだから、経営側としては人件費を増やせるワケが無い。
ゼロ金利である今は、とにかく負債を減らすのが企業側として合理的な選択となる。需要が無いのだから、設備も人も増やせず、結果、内部留保ばかりが増えてゆく。この内部留保を、国債で持つか、現金で持つか、株で持つか、という程度の選択肢しか無い。

さらに日本の場合、労働法制や労働組合が機能せず、超長時間労働やサービス残業が容認されているため、企業側としては社員数や賃金を増やさずに「必要なだけ」労働を要求できるだけに、労働生産性を上げるインセンティブが全く働かない。
本来賃上げというのは、労働生産性の向上に対する対価として行われるべきものであるため、この点でも経営側は賃上げする理由が無い。
また、労働組合側も、総需要の低下を受け「現在の(正社員の)雇用を守ること」が最優先事項となり、資本への従属を強めており、労働時間削減や賃上げを求めなくなってしまい、結果的に労働生産性の向上を阻害してしまっている。労働者が資本家に協力するのは、生産性を高めることで労働価値を高め、その代償として賃上げを要求するためだが、そのサイクルが失われて久しい。

実のところ、バブル崩壊後の「失われた20年」というのは、バブル期に最大化された供給と、その崩壊によって極小化してしまった需要のギャップによって生じていると考えられる。
議会制民主主義が真っ当に機能していたのであれば、供給側に立つ自民党が政権を失い、需要側に立つ野党が政権を担うことで、このデフレギャップを埋める政策が採られるはずだった。
だが、日本の場合、ごくわずかの期間を除いて自民党が政権にあり続けたため、常に供給側を支える政策を採ってしまい、総賃金を急速に低下させると同時に、供給には歯止めを掛けられなかった。需要を刺激する政策が採られなかった結果、デフレが長期化したのである。
それでも、リーマンショックを受けて、ようやく選挙による政権交代が実現し、民主党政権が誕生する。
小沢=鳩山路線は、「子ども手当」「高校無償化」「労働規制強化」「公共事業削減」など、まさに需要を拡大させつつ、供給に歯止めを掛ける方向を示したものの、「バラマキ」と批判され、その他の要因が重なってわずか半年で潰え、自民党と何ら変わらない菅・野田路線に転換してしまった。

そして「どうせ同じなら自民党でいいじゃん」ということで安倍政権が誕生し、今日に至っている。その施策は、供給サイドを援助しつつ、貧困層を増大させ、株価を操作することで表面を取り繕う、というものだが、その破綻が見えてきたからこそ、財界に対して賃上げを「お願い」するという行為に出ていると推察される。
安倍政権がしきりに日中対立を煽っているのも、「小規模な戦争によって大需要を生み出す」という陰謀論的側面もあるのかもしれない。
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2016年09月27日

教育の公的支出最低レベル続く

【日本、33カ国中32位=教育への公的支出割合−OECD】
経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合の調査結果を公表した。日本は3.2%と7年ぶりに最下位を免れたものの、比較できる33カ国中ハンガリー(3.1%)に次ぐ32位にとどまり、OECD平均の4.5%も下回った。33カ国の中で最も高かったのはノルウェーの6.2%。次いでデンマークの6.1%、ベルギー、フィンランド、アイスランドが各5.6%で、欧州の国々が上位を占めた。大学など高等教育への支出を公費で負担している割合は、日本は35%で、韓国(32%)に次いで2番目に低く、大部分を私費で負担している実態が明らかになった。OECDは、日本では高等教育への需要が高いにもかかわらず、公的支出が少ないと指摘した。
(時事通信、9月15日)

日本の教育予算に占める公的支出の割合は、すでに長いこと先進諸国中で最下位を争う状態が続いている。OECD平均にまで上げようとした場合、約6.5兆円の予算支出が必要となるが、税収が50兆円という現状では現実的とは言えず、財務省はむしろさらに削減する方向で動いている。
その影響を大きく受けたのが高等教育で、採用される教員は非常勤ばかり、専任の教員は事務作業と授業が大幅に増え、学生にとっては学費や教材費が上がる一方となっている。日本の大学は、人件費を極限まで減らし、自国の学生には借金させ(大学生の半数がローン生活)、海外から出来の悪い(欧米に行けない)留学生を集めることで生命を長らえているものの、実質的には多くの大学が頓死寸前の状態にある。これは実のところ、質の悪い教育を受けた学生に、借金を背負わせて社会に出しているわけで、長期的には社会そのものの衰退を加速させることになるだろう。
本来であれば、子どもの数が少なくなったのだから、一人当たりの予算を増やし、教育の質を高めることができるはずだが、現実には「子どもが減っているのだから、予算も減らせるはず」という判断になってしまっている。予算削減をカバーするために、予算の「選択と集中」を行い、エリート教育を進めようというのが自民党や文科省の方針となっているが、エリート教育というのは国家レベルではほぼ成立しない、あるいは教育の全体水準を下げてしまうことは、歴史が証明している。

この点についても、民主党鳩山政権は予算を大幅に見直し、教育予算を増やす方向性を示していたが、わずか半年で潰え、菅・野田政権が成立し、財務省主導の下で放棄してしまい、今日に至っている。
「国民が選んだこと」「後悔先に立たず」とはいえ、残念な選択であった。
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2016年09月26日

どんどん似てきた日露−ロシア下院選2016

【2016ロシア下院選 プーチン大統領再選に弾み】
 ロシア下院選で政権与党「統一ロシア」が圧勝したことは、欧米の対露制裁などによる経済悪化にもかかわらず、有権者のかなりの部分が政権を支持している現状を示した。プーチン大統領は、2018年春に予定される大統領選に向け、自信を深めたとみられる。一方、今回の選挙では大都市部の投票率が大きく低下し、国民の政治や選挙に対する不信も鮮明になった。
 プーチン氏は19日、政府との会合で下院選の結果に触れ、「たいへん困難な状況で、人々は断固として安定を望み、統一ロシアに依拠する政府を信頼している」と述べた。18日夜には統一ロシアの選対本部で早々と勝利を宣言していた。苦戦の伝えられていた統一ロシアが圧勝した理由としては、まず、特に地方部で権力に隷従する国民心理が根強いことがある。今年は「プーチン時代」で初めて年金の支給額が実質減となり、多くの地方が財政難にあえぐ。しかし、「経済危機だからこそ、政権に救済を求める」(政治学者)という投票行動が起きた。
 11年の前回選では統一ロシアが大きく後退し、選挙不正疑惑に抗議する大規模デモも起きた。この後のプーチン氏は同党から距離を置いていたものの、選挙戦終盤になると同党との密接な関係を誇示してテコ入れした。政権が11年のデモを受けた懐柔策として復活させた小選挙区投票も、選挙区の設定が与党にきわめて有利なものとされた。投票率が48%と下院選史上で最低だったことも与党を利した。モスクワの投票率は前回の66%から35%へ急落。多くの主要地方都市で投票率が3〜4割にとどまったもようだ。政権与党と「親大統領野党」による管理選挙を嫌気し、「選挙では何も変わらない」と諦観する都市部住民の強い政治不信が根底にはある。
 今回の選挙で経済情勢や腐敗に対する国民の不満が解消されたわけではなく、反体制派指導者は「選挙制度が信頼されていない現状は危険だ」と指摘する。選挙不正に関する情報は多数出ているが、11年のような反発が起きる兆候はない。
(9月20日、産経新聞)

長期間にわたる一党優位体制、低投票率、小選挙区・比例代表並立制、整備された市民監視システムなどなど、日本とロシアはますます似てきている。
日本も貧困層が3千万人以上もいて、さらに悪化させる(再分配を弱めて富の集中を図る)施策が採られているにもかかわらず、何度選挙をやってもそれを進める自民党が大勝する構図になっており、この点もロシアとよく似ている。
主だった野党が政府に協力姿勢を示し、半ば与党化して批判力を失っている点も共通している。共産党がほぼ唯一の批判勢力となっている点も似ているが、ロシア共産党は対外・安保政策については政権と共同歩調をとっている。
トップが権威主義的で、大権を振るうところも共通しているが、だからこそ日露交渉が進んでいる(らしい)側面もある。

日本のマスゴミは、欧米のそれの垂れ流しなので、ロシアで選挙と言えば不正選挙と決めつけている。だが例えば、今回選挙制度が改正されて小選挙区制が導入されたロシアでは、各投票所に候補者紹介が大きく貼り出され、プロフィールや政策・主張などの他に、保有資産の一覧についても記載されている。その信頼性はともかく、投票所に名前しか無く、投票の場では何の情報も与えられない日本と違い、投票時に指標となるものを少しでも多く提示しようというロシアの意欲が伺われる。「ロシアにはロシアのデモクラシーがある」というプーチン氏の言にも一理あるのだ。

ロシア人の間には、欧米型の資本主義・民主主義を導入した結果、欧米資本に全土の生産インフラをわずか50億ドルで買い叩かれたことに対する怨念が強く、欧米では人気の高い「市民派・改革派」はこれを再現しようとしているのではないかという根強い不信がある。これが理解できないと、欧米マスゴミが流す陰謀論に傾いてしまうだろう。

また、選挙制度が改正されたとはいえ、小選挙区と最低ラインの高い比例代表制の並立制なので、小政党には圧倒的に不利になっている。これも日本と似ているが、「市民派」の内部対立が激しく、いつまでも一本化できない点も、政権批判層を投票から遠ざけてしまっている原因と推察される。
一党優位体制下で「結果が見えてしまう」小選挙区制が、ますます投票率を下げ、政権党を利するという構図も日露共通のものと言えよう。日本も来年早々に解散総選挙が行われ、自民党が三度大勝、一党優位体制をさらに強固なものにしそうだ。
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2016年09月24日

ラノベ祭り(2016.9)

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今月は楽しみにしているラノベが目白押しで、プチ引きこもりモード。
まずは「祝!狼と香辛料再始動」。「貨幣論でラノベ」という斬新すぎる試みを、しかも大成功させた支倉先生の新シリーズ、超期待してます。
でも現時点での一押しは、白鳥先生の「りゅうおうのおしごと」。「ガチ将棋でラノベ」という、これも「有りそうで無かった」斬新な試みだけど、ガチ将棋とガチロリの組み合わせが超熱く、今もっとも「続きが気になる」シリーズ。
蝸牛先生の「ゴブリンスレイヤー」は、どこかで改めて紹介するつもりだけど、「ゴブリン退治専門」のシビアなファンタジー観がたまらないデス。

『狼と香辛料XVIII Spring Log』 支倉凍砂 電撃文庫
『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』 支倉凍砂 電撃文庫
『はたらく魔王さま!0-II』 和ヶ原聡司 電撃文庫

『りゅうおうのおしごと!4』 白鳥士郎 GA文庫
『ゴブリンスレイヤー3』 蝸牛くも GA文庫
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2016年09月23日

8、9月の読書報告(2016)

『都知事―権力と都政』 佐々木信夫 中公新書(2011)
都知事が2人連続で辞任、そのどちらも都庁官僚の内部告発に始まっている。中規模国家レベルの予算を持ち、行政権が集中する大統領制であるため、下手をすると同じ国の首相よりも大きな権限を有する東京都知事。だが、その責務と役割についてはあまり知られておらず、解説書も多くない。本書は、東京都の成り立ちから今日に至るまでの行政史と、自治行政における都の役割と都知事の権限機能について概説している。都官僚出身なので、官僚寄りであることは否めないが、必要な情報をコンパクトにまとめており、入門書としては十分だろう。都知事一人に行政権が集中し属人的要素に大きく左右される一方、都議会が立法機関としては十分に機能せず、ただの翼賛機関に成り下がっているという指摘は重い。

『北海道警察 日本で一番悪い奴ら』 織川 隆 だいわ文庫(2016)

『警察と暴力団 癒着の構造』 稲葉 圭昭 双葉新書(2014)
先に紹介した映画『日本で一番悪い奴ら』の原作と、主人公のモデルになった稲葉元警部の書。他の行政機関や市民・議会からのチェック機能が効かない警察組織が、いとも簡単に腐敗し、組織の隅々まで腐敗が拡大しているかがよく分かる。チェックが働かないため、自己改革や浄化のインセンティブが無く、問題が起きてもトカゲの尻尾を切るだけに終わり、腐敗構造そのものは延々と続いている。この辺は旧軍とよく似ている。「○○撲滅週間」のために「ネタ」をとっておくとか、「取り締まりすぎると、その後のノルマ達成が難しくなる」とか、旧ソ連でもよく見られた官僚的習慣が超笑える、いや深刻な問題なんだけど。

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『資本主義の限界』 木下栄蔵 扶桑社(2016)
私が「自由民主主義の終焉」や「TPP情報が開示されないワケ」で記したことの、経済・市場的背景を見事に説明している。アダム・スミスとケインズが正反対の説明がなされる経済学が、「なぜそうなるのか」について、「正の経済と反の経済」という仮説で説明する。これが簡素ながらも、恐ろしく納得度の高いものになっている。需要が低迷する中で、マネーサプライを増やし続けることが何を意味するのか、本書ほど明快な解は見当たらない。ごく薄い本ではあるが、十分な価値がある一冊だろう。

『日露戦争研究の新視点』 日露戦争研究会編 成文社(2005)
先の「日露開戦の代償」を記すに際して参考にした一冊。第一線にある研究者たちの論文集ではあるが、表題の通り新視点に富んでおり、パズルのピースが埋まっていくかのように面白かった。

『シベリア出兵―革命と干渉 1917~1922』 原 暉之 筑摩書房(1989)
「日露戦争の次はシベリア出兵」と考えているが、日露に比べるとかなり資料が少ない。その中でも本書は決定版と呼べる一冊で、まずこれを読まないことには始まらないのだが、なかなかの大部で、十月まで掛かりそう。

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『ナチス第三帝国の崩壊―スターリングラードからベルリンへ』 ワシリー・チュイコフ(著) 小城正(訳) 読売新聞社(1973)
意外と知られていないスターリングラード戦役の英雄チュイコフ将軍の回顧録。とはいえ、1944年半ばからベルリン陥落までの1年ほどの期間限定。ジューコフに批判的で、ロコソフスキー好き、その背景にはスターリン派とフルシチョフ派の色分けがあり、色々と面白い。日本では、とかくドイツ側の視点に偏りがちで、従来の西側研究もそうであるだけに、ソ連側の資料を抑えておくことは重要。ただ、どうやら英語版からの重訳なようで、ネットに上がっている原書を見ると、色々「違くね?」と思われる箇所も多い。ジューコフ回顧録なども、ソ連崩壊後により原文に近い新版が出されており、新訳の刊行が望まれる。「われわれの理性は、言ってみれば血染めの歴史であるこの戦争から得た苦い教訓を深く脳裏に刻みつけておくことを要求している。」
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2016年09月21日

被災者から利息取る国

【<熊本地震>災害利息免除、国が難色 援護資金特例】
災害によって損壊した住宅の再建費などを融資する公的制度「災害援護資金」を巡り、熊本地震の被災者に利息免除の特例措置を求める熊本県の要請に政府が難色を示している。2011年の東日本大震災では特例措置を取ったが、内閣府は「大震災とまでは言えず、議論が必要」と否定的だ。識者は「どんな災害でも大震災と同様の条件を設けるべきだ」と法改正を促している。
災害援護資金は「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき運用されている。負傷したり住宅が全半壊したりした被災者に150万〜350万円を貸し付ける制度で、原資は国が3分の2、都道府県や政令市が3分の1を負担し、市町村が貸付窓口になる。返済期間は10年で、うち3年間の返済猶予期間(期間中は無利息)がある。利率は3%で連帯保証人が要る。
 東日本大震災では、▽利率は連帯保証人がいれば0%、いなければ1・5%▽返済猶予期間を3年間延長▽経済状況に応じた免除規定を設ける−−という特例措置がとられた。計2万9178件に約523億8544万円(今年7月末現在)が貸し付けられている。
 一方、1995年の阪神大震災では、兵庫県内で5万6422件に総額約1308億7263万円が貸し付けられた。特例は当時なく、昨年4月の通知で破産時などに限り返済が免除されたが、未返済額は6217件、88億8287万円(今年3月現在)に上り、21年が過ぎた今も利息が被災者に大きな負担となっている。
 熊本県は6月、「利息0%(連帯保証人が必要)」と「貸出枠の拡充」を内閣府に求めた。県健康福祉政策課は「3%の利率は一般金融機関に比べても高く、非常に利用しづらい。被災者からのニーズがあり、対応してほしい」と訴える。
 これに対し内閣府の被災者行政担当は取材に「熊本地震の被害規模は、特例を検討する大震災でないと考えている。法改正が必要で、3%が高いという認識はあるが、ただちに対応はできない」と回答した。
 被災者の生活再建に詳しい民間研究機関の「兵庫県震災復興研究センター」(神戸市)の出口俊一事務局長は「災害の全体規模は個々の被災者に関係ない。あらゆる災害で東日本並みの対応ができるよう、法改正すべきだ。これでは公平性は担保されない」と指摘している。
(9月12日、毎日新聞)

おいおい、マイナス金利やってるのに被災者からは3%も利息取るとか、どんだけブラック国家なんだよ、という話。金利の恩恵にあずかれる銀行や大企業だけがウハウハで、庶民は負債ばかり増えてゆく構図。放置すれば、国家そのものへの信頼が揺らぐだろう。
今どき住宅ローンも0.5%程度な上、税優遇があり、自動車ローンですら2〜3%というのに、自然災害の被災者に公共が貸し付けるものに金利3%というのは、全く妥当性というか、公共性に欠けるだろう。どこまでも「持てる者」が優遇されるとなれば、デモクラシーの基盤である階級融和構造を瓦解させる恐れがある。
だが、選挙で選ばれず、試験で選抜されるだけの官僚には、それが理解できないのだ。法改正が必要なら、政治家に法改正を促すのが、公共に奉仕する「公僕」の使命である。
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2016年09月20日

米本土テロ中にラビリンス第六戦

T後輩と20年ぶりくらいにゲームをすることになったが、彼の希望は「ラビリンス−テロ戦争」で、しかも米国側というものだった。それを耳にしたO先輩が「マゾか?」と言うほど、このゲームでアメリカを担当するのは苦しい。私は米国側を持つことが圧倒的に多いが、最近は慣れてきたとはいえ、胃をキリキリさせながらプレイしている感じだ。
しかも、プレイ中は全く気づかなかったが、オンタイムで米本土でテロが発生しており、タイムリーにもほどがあるプレイとなった。

11時に始めてインストールに一時間、そこから7時間超で3ゲームと、相変わらずのプレイアビリティだった。しかも、最後のワンプレイなどは18時から始めて1時間ちょっとで終わってしまった。再セットアップが簡単なのは大きいかもしれない。

シナリオは全て9・11。最初の2回はT後輩がアメリカ、ケン先生がジハーディストを持った。
初回は、まずアメリカがアフガニスタンに侵攻。だが、国際世論の支持は得られず、威信を低下させてしまう。セル(ジハーディスト要員)は、パキスタン、イラン、中央アジアへと散っていった。ジハーディストは、パキスタンで不安定化を図るも、米国は特殊部隊や無人機を投入しつつ、外交支援を強化して対抗した。パキスタンに原理主義政権が樹立すると、大量破壊兵器が流出するので、アメリカが必死になるのは当然だ。隣の湾岸諸国に米軍が駐留しているのも大きい。
そこでケン師は、パキスタンに見切りを付け、イラクに矛先を向ける。アフガニスタンでは、体制改善(民主化)が一向に進まず、セルが続々と登場、イランを経由してイラクに集まり、イスラム革命が起き、原理主義政権が誕生した。その勢いでシリアでもアサド政権が倒されてイスラム国が成立、サドンデス勝利にリーチが掛かった。
T大統領は、苦渋の決断でイラクに侵攻、解放するも、アフガニスタン、サウジアラビア、湾岸諸国を合わせて兵員15個中14個が海外展開するという「過剰展開」状態に陥ってしまう。国家威信(イメージ的には国際世論の支持)は若干回復したものの、外交マイナス修正がゼロになった程度なので、援助外交は一向に進まず、ジハーディスト側のサドンデス勝利をギリギリのところで止めるのが関の山だった。
ケン師もサドンデス勝利を逃し、次なる革命を準備するも時間切れとなり、ジハーディスト側の判定勝ちとなった。判定勝ちとはいえ、ジハーディスト側が一方的に攻め立てる展開で、T大統領には徹頭徹尾、勝ち筋が見えなかったと思われる。

2回目、T大統領は初手のアフガン侵攻をやらずに、援助外交で湾岸諸国、サウジアラビア、パキスタンの体制改善(思想戦、外交援助)に努めるが、ダイス目が悪く一向に進まない。イベントで威信が低下したのも影響した。逆にケン師は「ごっつぁんです」とばかりに、アフガニスタンから雲霞のごとくセルを出し、イラク、インドネシア、フィリピンなどに進出していった。さらにイラクで大蜂起を指示し、イスラム国が樹立してシリアも革命寸前に。さすがにT大統領はやむなくイラクに侵攻するが、サドル一派が蜂起、アルカイダ残党も激しく抵抗し、膠着状態に陥る。対するジハーディスト側は、シリアにイスラム国を樹立して、資金も潤沢、セルにも手札にも困らない状態が続くが、次の革命の輸出先に難儀する。前回の時間切れを踏まえ、ケン師は「世界混沌化」路線を選択、各地で不安定化を進めると同時に、アメリカの威信低下を画策、「米国の威信が1で、かつ18カ国中15カ国が貧困(不安定な体制)」を実現して、山札終了直前にサドンデス勝利を収めた。アルグレイブ監獄における米兵による拷問が暴露されて威信が1まで低下したのは、あまりにも象徴的だった。今回もアメリカ側は無力感を漂わせていた。

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第二プレイ終局時

この時点でちょうど夕6時になっていたが、20年ぶりにゲームする後輩に「勝ち逃げ」してしまうのも何だと思い、攻守所を入れ替えて再戦する。ところが、これがさらに酷い結果になってしまう。
ケン大統領は初手によるアフガン侵攻をせず、湾岸諸国などの体制改善に努め、第1ターン終了時には湾岸諸国を「良好」にしてしまう。2ターン目にはサウジアラビア、3ターン目にはパキスタンを「良好」にしてしまい、T師をして「これ、同じゲームなんですか?自分は体制良好な国なんて見たことも無いんですけど」と言わせる始末だった。これはダイス目もあるが、米国の威信が高止まりして外交修正が常にプラス状態であったことが大きい。
T師はイラクで革命を起こしてイスラム国を樹立するも、ケン大統領は即座に侵攻する。これが国際的支持を得て、アメリカの威信は最高レベルに達してしまう。第4ターンには、イベント効果もあって、イラクもすぐに「良好」になり、返す刀でアフガニスタンにも侵攻。5ターン目には、これもイベントの助けがあってあっという間に「良好」になり、アメリカのサドンデス勝利に終わった。
米国の威信が高く、さらに湾岸諸国かイラクが「良好」であると、相乗効果で外交戦が面白いように成功し、加速度的にアメリカの勝利が近づくわけだが、ここまで「はまる」の初めてだった。最初に対テロ戦争を始めたブッシュ大統領らは、これくらいのキモチで「すぐに終わる」と思っていたのかもしれないが、現実は2回目のゲームくらいな流れになっている。

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第三プレイ終局時

現在の世界を俯瞰すると、「良好」な体制を維持しているのは湾岸諸国くらいなもので、侵攻したアフガニスタンとイラクは「貧困」、あるいは一部が原理主義国化している。さらにシリア、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンなどが内戦状態にある。どう見ても、ジハーディスト側の判定勝ちな情勢だ。
だからこそ、対テロ戦争推進派のヒラリー氏と、戦争放棄・孤立外交路線のトランプ氏が大統領選を戦わせているのだろうが・・・・・・
posted by ケン at 13:05| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする