2015年08月04日

10月総選挙の議席を想定する

安倍内閣の支持率が急落している。今後、さらに下がった場合、9月に安保法制を強行採決して成立させた後、解散・総選挙に打って出るのではないか、という観測が一部で上がっている。これは、かつての岸内閣が日米安保の成立後に総辞職したのに対して、安倍氏は辞職せずに衆院解散して「祖父超え」を目指すだろうという読みに基づいている。

ケン先生的には、先の総選挙が先々回から2年で行われ、今度1年も経ずに行われるところに引っかかりを覚えるし、自民党が負けると分かっている選挙を行うとも思えない。もっとも、安倍氏を辞任表明させてN田S子などに総裁を替えて選挙するというなら話は別だが、今回の話はそうではない。
とはいえ、「自民党が負けると分かっている」と必ずしも言えないところもある。これは小選挙区のマジックに起因するもので、野党が分裂する中で選挙をやる限り、少なくとも小選挙区では自民党が勝つという読みに基づいている。
そこで、想定してみよう。括弧内は前回獲得議席。

【小選挙区】
自民党:200〜215 (223)
KM党: 6〜8 (9)
民主党: 45〜60 (38)
維新党: 7〜9 (11)
NK党: 1〜2 (1)

【比例区】
自民党:45〜55 (66)
KM党:18〜22 (26)
民主党:40〜45 (35)
維新党:20〜25 (30)
NK党:25〜30 (20)


こうして見ると政権与党は最小でも269議席、最大で300議席が見込まれるだけに、「やるなら今だ」と総理が判断してもおかしくない。
「この数字は自民党に有利すぎだろう」という反論はあるだろう。だが、内閣支持率の低下に比して自民党の支持率は同じほどには下がっておらず、深刻なのはNK党を除く野党の支持率が殆ど上がっていない点である。それを考慮すれば、比例区で自民党の最低数と民主党の最大数を同じに設定したのは、「民主党に有利すぎ」と言われても仕方ない位なのだ。

結局のところ、小選挙区制で野党が分裂している限り、自民党が崩壊しない限りは自民党が勝ち続ける構図になっている。これを回避するためには、民主党からNK党に至る野党が統一戦線を組むしかないが、個人的には右翼権威主義に対抗するために左翼全体主義と連携することには反対する。民主党が党内保守派を追放し、中道路線を明確にすれば済む話だからだ。
posted by ケン at 12:40| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月03日

空気読めない総理補佐官

【礒崎首相補佐官きょう参考人招致 公明も「看過できぬ」】
礒崎陽輔首相補佐官が安全保障関連法案について「法的安定性は関係ない」と発言した問題で、公明党の荒木清寛参院政策審議会長は2日のNHKの番組で「看過できない」と批判した。礒崎氏は3日、安保関連法案を審議する参院特別委員会に参考人として招致される。
 荒木氏は「公明党も、法的安定性は最も重視したことだ。我々も看過できない発言だと思っている。明日の(礒崎氏の)発言にしっかり注目したい」と述べた。自民党の佐藤正久国防部会長も、礒崎氏の発言について「我々としても誤解を招く発言は看過できない。(礒崎氏に)委員会でしっかり説明して頂きたい。当然、釈明なり、陳謝すると思う」と語った。
 一方、野党は礒崎氏の辞任や更迭を強く求めた。3日の同委で礒崎氏に質問する民主党の福山哲郎幹事長代理は「辞任ないし、安倍(晋三)首相が更迭すべきだ」と指摘。社民党の福島瑞穂副党首も「発言は論外で、更迭しかない」と批判した。
(朝日新聞、8月3日)

「KMがんばってるじゃん」的な声が聞かれるが、いえいえ全然そういう話じゃないんですよ、と。
総理補佐官の参考人招致などは政権党が了承しなければ成立しないものであり、これを了承したということは、官邸の許可を受けて自民党国対が合意したことを意味する。つまり、官邸は補佐官のクビを差し出した格好であり、それは官邸がサジを投げて「もう貴方は守り切れません」と宣言したも同然なのだ。
一方、礒崎氏側にすれば、官邸の保護を失ったワケで、参考人招致を受けて委員会に出席したところで野党の集中砲火を浴びるだけで何も良いことが無いどころか、逆に余計なことを言って火に油を注いでしまう恐れがある。
故に、従来の自民党であれば、保護者に梯子を外された時点で観念し、「党に迷惑を掛けないため」に補佐官職を辞任するのが筋なのだが、氏は突っ張って出席する道を選んでしまっている。
KM党や自民党の一部幹部が批判の声を上げつつあるのは、「貴様は親分に見捨てられたんだから空気読めよ!」ということなのであり、別に政治的良心から礒崎氏を非難しているわけではないのである。
posted by ケン at 12:12| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月02日

軍人に結社権を付与するフランス

【フランス、軍人に制限付きで「結社の権利」付与へ】
 軍隊における結社の権利を全面的に禁止してきた仏政府は19日、欧州人権裁判所の人権違反裁定を受け、同国の軍人に結社の権利を与える方針を示した。しかしストライキの権利などは引き続き認めない方針。フランスの軍人は現在、職業的団体への加入が全面的に禁止されており、職業に関する懸念を表明したり、自らの利益を守ったりするための場を持たない。
欧州人権裁判所は今年10月、「軍人の結社の自由を制限するのは合法だが、労組の結成あるいは労組への加入の全面的な禁止は結社の自由の本質部分の侵害に当たる」と裁定した。仏大統領府の声明によると、フランソワ・オランド大統領はこの裁定に上訴しないことを決断し、国防相と内相に、仏軍人に制限付きで職業的団体に加入する権利を与える法案の作成を命じた。
(AFP、2014.12.21)

少し古い記事だが、いくつか重要な点があるので指摘しておきたい。
まず欧州では、軍人の労働者性が認められて労働基本権が認められる傾向にあるということ。例えばドイツでは軍人法第6条で労働団結権が認められているほか、官僚はもちろんのこと裁判官にまで団結権が認められている。これは、団結の自由が天賦の基本的人権に属するものであり、民主的社会において何よりも優先されるという考え方に基づいている。
他方、日本では警察、消防、海保、自衛隊などについては労働三権が認められていないが、その理由として命令系統や組織秩序の維持などが挙げられている。これは公共的暴力装置の組織管理は、市民個人の基本的人権に勝るという発想の表れであり、権威主義の遺物と言えよう。ちなみにドイツ連邦軍でも、海外派兵や戦闘任務中の組合活動は禁じられているようだ。
労働組合の結成と加入が認められているドイツ連邦軍の秩序やモラルが、自衛隊に劣るという話やデータに接したことは一度も無い。「労働組合を認めると組織が弱くなる」などという発想は、「学問すると戦闘力が下がる」という中世武士のそれと同レベルのものだ。逆に民主的社会に基本権を付与しない例外を作ることは、デモクラシー存続に対する危機を深めるものでしかない。日本の場合、皇室を始め基本的人権を認めない例外対象が多すぎることが、デモクラシーの成熟を阻害していると言えよう。

第二は、上級裁判所が機能している点。日本では、裁判所が違憲立法審査を行う建前になっているが、訴訟者の利益を阻害するなどの要件がそろわないとそもそも取り上げられず、しかも裁判所は違憲立法審査を本務としているわけではないため、可能な限り憲法判断を回避して訴訟者の利益を回復して終わらせようとする傾向が強い。その結果、憲法判断が下されるケースは非常に稀で、まして違憲判断が下されることはほぼ無いという、権威主義状態(三権分立の否定)に陥っている。
上の記事の例は、日本にも独立した違憲立法審査機関や人権裁判所を設置することが、自由と民主主義を担保し、権威主義を排除する有効な手段であることを示している。

第三は、行政側の司法判決に対する態度である。日本の場合、水俣だろうが肝炎だろうが、政府側に不利な判決が下ると必ず上訴する傾向があり、結果的には被害者を増やして行政が敗訴、政府側に課される賠償金が増えるということが頻発しており、双方にとって有害かつ政府不信を高める結果になっている。この背景には、霞ヶ関に国家無謬論・権威主義が蔓延して絶対に過ちを認めないことがあり、これを克服する必要がある。また、小泉氏がハンセン病訴訟において政府の上訴方針を覆して判決を受け入れたことは、政治主導による可能性を示唆している。逆に民主党政権で続々と上訴したことは、民主党政権の信頼を低下させる一因となった。司法に従属する必要は無いが、誰の視点に立って行政を執り行うのかが問われている。

これらの全ては、欧州においてデモクラシーが常に深化させ続けるべき価値観であると解釈されているのに対して、日本においては自国が世界最高の民主主義国であるという勘違いが横行していることの差異を示しているものと思われる。
posted by ケン at 02:03| Comment(0) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする