2015年11月30日

安定した自民党二軍ぶり?

【民主党、安保論議を再開 廃止法案と同時に対案提出方針】
 民主党は24日、国会内で党安全保障総合調査会などの合同会議を開いて安全保障関連法の対応に関する作業を再開し、来年の通常国会に安保関連法の廃止法案と独自の対案を同時に提出する方針を決めた。対案路線を掲げる保守派と、共産党などとの共闘も視野に廃案を唱えるリベラル派の双方に配慮した形だ。対応の検討は岡田克也代表が指示した。会議では、自衛隊法や武力攻撃事態法など10本をまとめて改正した「平和安全法制整備法」と、他国軍の後方支援を随時可能にする新法「国際平和支援法」の廃止法案を提出することで合意した。対案もまとめることに目立った異論はなかった。調査会幹事長代理の大串博志衆院議員は記者団に「領域警備法案などで政府との対比でも論点は詰まっている」と説明した。
 岡田氏は集団的自衛権の行使容認などの「違憲」部分を廃止する法案の提出に意欲を示している。ただ、前原誠司元外相は「一度成立した法律を廃止するのは簡単なことではない」と主張。一方、リベラル派には共産党との連携も視野に「完全廃止」を求める声もあり、路線対立が顕在化することも予想される。
(産経新聞、11月24日)

民主党は次期通常国会で、安保法制の廃止法案と同時に独自の代案を提出する方向で検討に入った。だが、安保法制に賛成する右派と、全面廃止を求める左派の溝は深く、いかにも「足して2で割った」ような形になってしまっている。
私が「対案」(素案概要)を読んでの感想を述べるなら、「仮に政権の座にあったとしたら、現状の国際環境下でこの程度の妥協は仕方ないかもしれないが、それでも自衛隊の海外任務拡大は危険極まりない」というものだった。つまり、「個別的自衛権の範囲に止める」「有志連合に参加は(基本)しない、弾薬等の提供はしない」というものだが、国連PKOの任務拡大に伴うものは受け入れ、戦闘行為を除外しているものの、人道的介入への参加を示唆している。

政権党として政府側と交渉した上での法案というならば理解できるが、果たして来夏に参院選、同じく冬に衆院選を控えて、支持率が低迷している野党が出すような案であるかと言えば、「あり得ない」としか思えない。
と言うのも、「自民党のは戦争法制だからダメだけど、民主党案は戦争しない安保法制です」みたいな主張で、安倍・自民批判層の理解を得られるだろうか、という話である。世論調査を見る限り、安保法制に賛成しているのは3割程度で概ね自民支持層と一致しており、それに対して6割前後が反対しているのだから、民主党の方針はほぼ支持されないものと考えて良い。
民主党は、小沢氏の指導の下で、2007年の参院選と09年の総選挙に際し、徹底したマーケティング調査を行って、「有権者が望む政策」を分析しマニフェストに反映させることで、選挙に大勝した。しかし、2010年の参院選以降、その手法を放棄して「自分たちが主張したいこと」を勝手に「現実的」と解釈して主張し始めてからは、全く勝てなくなっている。今日では、右派からは「非現実的」と非難され、左派からは「自民党と同じ」と白眼視され、国民のどの層からも支持されなくなってしまっているにもかかわらず、本人たちだけが気づいていないという滑稽な状態にある。

ドイツSPDのシュミット氏は、左派政権ながら連邦軍の合理化を進め、冷戦下でパーシング2の配備を決めるなど、保守層からも「現実的」と称賛されたが、社民党内では「右翼」と陰口を叩かれ続けた。そのシュミット氏は、来日時に村山元総理と対談した際、村山が「これからは(日本の)社民党も政権にあった時の成果を前面に打ち出してゆくべきだ」と述べたのに対し、「野党が政権党を批判しないで何の野党か」と反論している。つまり、「政党たるもの、政権時と野党時で主張が異なるのは当然である」というのもシュミット流の「現実主義」だったのだ。

小沢流のリアリズムを捨て、シュミット流のリアル・ポリティクスも有しない民主党に未来は無い。
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2015年11月29日

雇用ミスマッチの典型:外務省・中東分析官の場合

外務省が中東・対テロ分析官を募集しているが、その内容が酷すぎる。雇用のミスマッチの典型だろう。

【非常勤職員の募集(専門分析員(アル・カーイダ,ISIL,中東,アフリカ,東南アジア等のテロ情勢))】
1.応募資格
(1)アル・カーイダ,ISIL,中東,アフリカ,東南アジア等のテロ情勢についての専門的知識・経験をお持ちの方
(2)国内外の大学研究機関へのアクセスがあり,外国語による調査業務が可能(英語の読解力は必須。加えて,その他の言語力(特にアラビア語,仏語,インドネシア語等)もあればなお望ましい。)で,大学院レベル以上(在学中も含む)の方
(中略)
5.待遇
(1)基本給
 職歴や研究実績を含む経歴等を勘案の上,日額単価を決定し,出勤日数に応じて支給。
(2)交通費
 規定により支給。
(3)健康保険・厚生年金保険加入しない。(加入基準に満たないため。)
(後略)

条件と待遇の差があり過ぎ。英語とアラビア語がペラペラで、大学院卒以上で、テロ関連の専門知識や同対策の経験を有する者が、非常勤で保険も無く、給料も日割りで正規公務員よりも低いとか、あり得ないだろう。1年以上応募者がいないのは当然過ぎる話だ。

まぁ私も某所の非正規職員だったが、英語ペラペラの正規職員がいるにもかかわらず、指名でイラクに派遣された経験があるだけに、よく分かる。先日、中国で逮捕された人たちも、公調から10万円程度の端金を渡されて、命がけのスパイ活動をしていた。エリートの保身と腐敗が国の土台を蝕んでいるのだ。

国会図書館で対ソ分析官を担っていた伯父上も嘱託待遇だったけど、訪ソ団の通訳や諸政党の相談役で小遣いもらっていたみたい。時代が違うからなぁ。
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2015年11月27日

自由主義と決別するとき

【石破氏「共謀罪は必要」】
 石破茂地方創生担当相は20日のTBS番組収録で、パリ同時テロを受けて「共謀罪」創設を含む法整備を求める声が自民党内で上がっていることに関し、「テロは待ってくれない。丁寧で真摯な説明をして議論する。成立は必要なことだ」と訴えた。共謀罪の創設に当たっては「(対象を)重大な罪に限るとか、国民の権利を抑圧してはいけないとか、何重にも縛りをかけないといけない」と指摘した。
(時事通信、11月20日)

右傾化した自民党でも比較的自由主義寄りと思われていた石破氏が、この時期に共謀罪の必要性を訴えたことは大きい。だがこれまでに、共謀罪を含む「組織犯罪処罰法改正案」(犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案)が、内閣から三度提出されて三度とも審議未了で廃案(継続ですら無い)になっていることは、本法案に致命的な問題を抱えていることを示している。

共謀罪については、法務省も「組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪から国民をより良く守ることができるようになります」「国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません」(法務省HP)などと説明しているように、あたかもテロリストや暴力団を対象とするもので、一般市民には無縁のような印象を与えようとしているが、大ウソである。実際に内閣が提出した法案では、窃盗罪や詐欺罪を含む600を超える罪状に対して共謀罪に適用を可能としている。もちろん、共謀罪を成立させるためには、電話やメールなどの通信傍受が不可欠となるため、通信傍受法の改正が先行して進められている(現在継続審議中)。つまり、ラインでオレオレ詐欺の検討をしただけで共謀罪が適用できる構成となっており、法務省の説明は「法理上はそうだが、運用で一般市民には適用しない」というだけの話でしかない。

そもそも、犯罪を実行していない段階で、計画あるいは「検討した」というだけで罪に問うことは、当局の捜査権や裁判権を大幅に認め、甚だしく基本的人権を侵害する恐れがある。民主的な国家で市民から信頼されている場合は一部例外的に認められるケースもあるが、日本のように権威主義的で人権が不十分な社会体制の上、政府が市民から信頼されていない国での運用は、まずもって失敗に終わるだろう。

共謀罪の恐ろしさは、ソ連やナチス・ドイツのケースを挙げるまでも無く、日本の戦前に見ることができる。1910年の大逆事件では、明治天皇暗殺計画が発覚し、宮下太吉ら5人によるものであったにもかかわらず、幸徳秋水を始めとする24人が死刑に処せられた。当局は当初から5人の計画であったことを知っていたが、大逆罪を拡大適用した。事実が判明したのは戦後のことだった。なお、幸徳が死刑になったのは、公判で「いまの天子は、南朝の天子を暗殺して三種の神器をうばいとった北朝の天子ではないか」と述べたことによるとされている。

1923年の朴烈事件では、関東大震災直後に治安警察法による予防拘束(まだ事件を起こしてもいないし、計画も発覚していない段階での検束)を受けた朴烈が、拷問を受けて、愛人の金子某との「皇太子襲撃計画」について、特高の誘導尋問に同意したと見なされ(自白すらしてない)、大逆罪が適用され、死刑宣告された。後に恩赦で無期懲役になったものの、戦後の1945年10月末(8月15日でも9月3日でも無い)まで刑務所に収容されていた。

1937年12月に起きた人民戦線事件では、当時すでに共産党が非合法化されていた中で、「人民戦線(社共協力)を企てた」カドで日本無産党の議員や労農派学者グループ・活動家が一斉検挙された。その数は446人に及んだが、二審で有罪になったのはわずか3人で、量刑が確定しないまま戦後を迎えて免訴となっている。「共産党の次は労農派」という当局の思惑によってハナから組織解体を目指したものだった。その証拠になったのは、加藤勘十が訪米した際に、亡命中の野坂参三から渡されたコミンテルンのパンフレットだったが、帰国後は自宅で放置されていたという。この野坂は、三・一五事件の共産党一斉検挙で逮捕されたものの、「眼病治療のため」として保釈され、外国に渡っており、合法左翼撲滅のため内務省に協力した疑いが濃厚とされている。

戦時中に起きた横浜事件では、出版社の温泉旅行を共産党再建のための謀議と見なした特高によって治安維持法違反で60人以上を逮捕、拷問で4人が獄中死した。後に起訴されて、ポツダム宣言受諾後に「駆け込み判決」が下されて、30人余が執行猶予付き有罪となった。恐ろしいことに、この公判の記録は、戦争犯罪追及を恐れた政府・裁判所によって焼却処分されている。なお、裁判で検察が証拠として提出した写真は、全く別の機会に撮影されたものだったことが判明している。そもそも、戦時下で共産党再建の謀議を行っている者たちが、記念撮影をするとは考えがたい。

日本の現政府は、基礎骨格を明治帝政から継承し、連合国との戦争に敗れて休戦条約の条件として渋々「民主化」しただけの存在であるため、根源的に自由主義や民主主義を否定し、権威主義に傾く傾向を有している。その政府に共謀罪やら通信傍受やらを許せば、容易に戦前のおぞましい暴力支配を復活させるであろう。権威主義者に際限なき権力を与えることは、「狂人に刃物」であり、その刃先は近い将来、一般市民に向けられること間違いない。
真の民主化を実現しなければならないのは、中東などでは無く、この日本である。
posted by ケン at 12:38| Comment(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年11月26日

ロシアが望む混沌化する世界

【クリミアで大停電=反ロ派の「テロ」? ―ウクライナ】
 ロシアが編入したクリミア半島で22日、ウクライナ本土からの送電が停止した。クリミアに接するウクライナ南部ヘルソン州で謎の爆発が起き、送電線が損傷した。親ロシア派「クリミア共和国」は23日を公休と定め大停電による混乱を回避。一方で「(反ロシア派の)テロだ」と非難している。 爆発があったのは20日。犯行声明は出ていない。クリミアの経済封鎖を訴えてきたウクライナの反ロ派は、インターネット上に爆発で損傷した鉄塔の写真を掲載したが、自らの関与は否定した。 
(時事通信、11月23日)

これは概ねウクライナのキエフ政府か、その支援を受けた反ロシア団体による工作と見て良いが、「誰がやったか」はあまり重要では無い。ただ、キエフ政権はパリで起きたテロ事件によって、欧米の目が中東に向かい、ウクライナへの関心が低下してしまうことを恐れている。ウクライナ問題では、当初「反ロシア」の筆頭格だったハンガリーが、シリア難民を重視することもあって、早々に「反ロ同盟」から降りてしまった。同様に、ドイツもますます対ロ宥和に傾いているだけに、キエフ政権の焦燥は募るばかりとなっており、上記の工作活動はその表れだろう。

一方、ロシアはロシアで、欧米の目をウクライナから逸らすことを一つの目的として、シリア介入を本格化させている。これは、実際に大きな成果を収め、刺激されたイスラム国が欧州本土でのテロを実行し、欧米の目は嫌が応にもウクライナから中東へと向かっている。
ロシア人的には、アメリカが仕掛けたアフガニスタンの「熊罠」に引っかかって政治的大敗を喫したソ連の過ちを踏まえ、シリアに「鷹罠」を仕掛けている。つまり、ロシアは欧米諸国が中東に地上軍を派遣するように誘導しているのだ。
仮に欧米が罠に引っかからず、自制して地上軍を派遣しなかったとしても、今度は欧米の中東に対する影響力と国際的威信が低下し、ロシアのそれが上昇し、「ロシア=イラン同盟」的なものが成立することになるので、「それはそれで良し」という判断なのだろう。
ただし、ロシアはエジプトで自国旅客機がテロに遭い、トルコでは戦闘機が撃墜されているだけに、相応のリスクは取っている。それでも、「ウクライナで紛争が続くよりはよほどマシ」と考えているものと思われる。

トルコでの戦闘機撃墜事件の真相はよく分からないが、天然ガスの50%以上をロシアから輸入し、原子力発電所の建設や観光業についても対ロ依存度の高いトルコが、積極的にロシアと敵対する理由は見当たらず、「現場の暴走」と見るのが妥当かもしれない。一方、ロシアとしても、「イスラム国を攻撃する」としていたものが、実は反アサド派を攻撃していたことが明らかになってしまっただけに、あまり強く出られないところがある。トルコ軍は反アサド派を支援している以上、ロシア軍による空爆を放置できなかったのだろう。
また、反アサド派は、トルコの他に米英仏が支援しているものの、アサド政権やイスラム国に比して劣勢に置かれており、欧米諸国による地上軍派遣を心待ちにしている。米国の担当官などは、「連中にいくらカネや武器を与えても、全部イスラム国に流れてしまう」と嘆いており、小党乱立状態の反アサド派に勝利の目は殆ど無い。同時に、パリで起きた連続テロ事件は反アサド派にとって「僥倖」だったという皮肉が生じている。

また、ロシアはこの方、最新鋭のSu35戦闘機と地対空ミサイルS400を中国に提供することを決めたが、このどちらも航続距離、射程の長さが評価されており、南シナ海や東シナ海を想定したものであることは明らかだ。ロシアとしては、中国に最新鋭兵器を供給することで、米日との軍事バランスを刺激しようとしている。ロシア人的には、中国と米日の対立は「一挙両得」であり、「戦端は開かれないが、深刻な対立」くらいの状態にあることが望ましい。
もっとも、これはロシア人の願望に過ぎず、実際の米国の安全保障観はロシアとイスラム国を第一あるいは第二の脅威と見なしており(その時々で優先順位が入れ替わる)、中国は常に3位以下にあるという。日本の政府やマスゴミは、米中対立を煽っているが、現実にはアメリカは中国に対抗するつもりなど殆ど無い。
日本は日本で、米国のアジア関与を引き留めつつ、国内で権威主義体制を復活させるために、東アジアの緊張度を意図的に高める政策を採っており、中国との冷戦状態を演出している。この点で、日本とロシアは同床異夢の関係にあり、安倍首相とプーチン大統領が親和的であることを説明できる。

ロシアの安全保障は、自国の周囲に緩衝地帯を設け、脅威と直接接しないことを最優先としている。だが、欧米からすると、その「緩衝地帯」自体が「ロシアによる侵略」にしか見えないため、常に紛争のタネになっている。
他方、欧米資本主義の繁栄は、旧第三世界からの資源と労働力の収奪(買い叩き)によって成り立っているだけに、資本主義とその隠れ蓑となっている民主主義を否定するイスラム国やジハーディストは、自らの根幹を否定するものとして存在そのものを抹消せざるを得ない。それだけに、欧米としては中東対策を優先せざるを得ないわけだが、それは結果としてロシアや中国を利することとなる。
日本は、アメリカの衛星国として近い将来、中東・アフリカ戦線に参戦することになるのだろうが、その末路は決して明るいものではない。
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2015年11月25日

野党共闘の難しさについて:大阪市長選を受けて

【大阪ダブル選 共産、異例の共闘裏目に 民主、静観で存在感なく】
 安倍晋三政権の打倒を訴える共産党は、大阪ダブル選で自民党推薦候補を自主支援した。「大阪維新の会がやってきた住民自治と民主主義の破壊は他の県に見られない特別なもの」(志位和夫委員長)という理由だったが、“ご都合主義”との批判も出かねない。
 共産党は党機関紙「赤旗」や党大阪府委員会のホームページに加え、独自のビラも作成して積極的に自民党候補を応援した。自民党候補の街頭演説では「さよなら維新」のプラカードを掲げた共産党系とみられる支持者が熱心に声を上げる一方、「アベ政治を許さない」のステッカーを貼った聴衆が拍手を送る場面もあった。志位氏は自民党候補を支援することについて「大阪維新を倒すとの大義で一致する政党が協力することに矛盾はない」と強調した。ただ、大阪維新の「敵」同士が手を組むという奇妙な選挙戦となり、逆に大阪維新から「自共共闘」を「暗黒軍団」(橋下徹大阪市長)と批判されることにつながった。実際、この共闘を敬遠する一定の有権者が大阪維新側に流れたとみられる。
 一方、府連が自民党候補を自主支援した民主党は選挙戦で党幹部を現地入りさせず、静観を決め込んだ。5月の「大阪都構想」の住民投票では、辻元清美政調会長代理ら地元選出の国会議員が「反大阪維新」を訴えて街頭に立ったが、今回はそれも見送った。国政で対立する自民党と表だって連携することを敬遠した形で、民主党幹部は「派手に自民党と活動をともにするわけにはいかなかった」と話す。ただ、政権を転落してから低迷が続き、最近は党内で解党か否かの路線問題が再燃している。注目の大阪ダブル選で存在感を発揮できなかったことで、来年夏の参院選に不安を残すことにもなりかねない。
 大阪維新側と分裂状態になった維新の党の今井雅人幹事長は22日夜、ダブル選挙の結果を受けて「都構想はわれわれも賛成しているので、実現に向けて頑張ってほしい」とのコメントを出した。
(産経新聞、11月23日)

先の稿で懸念していたことが現実のものになった。府知事選については当初から野党候補(自民)に勝ち目が無かったようだが、市長選については「健闘」情報も聞かれたものの、最終的には大差となった。

自民党側の証言を聞く限り、支援団体も業界団体も稼働していなかった。NK党は独自支援、国会との「ねじれ」を理由に推薦を断った民主党も府連が独自判断で支援しようと試みたものの、候補側から「民主の支援は不要」「余計なことはするな」と拒否されたという。つまり、野党側は候補選定の遅延により出遅れたにもかかわらず、それを挽回する努力を怠り、名ばかりの「統一候補」となって、実質的な共闘は実現しなかった。選挙支援に入ったのは、橋下氏との協力を唱えている自民党議員ばかりで、むしろ逆効果だったという人もいる。
他方、大阪維新側は十分に準備して、選挙中は「自共民の野合」「改革をムダにするな」と唱えていれば十分という有様だった。維新はかつてのような支持こそ無いものの、「自共よりはマシ」と判断されたのだ。

今回大きく投票率を下げたにもかかわらず、維新が大差を付けて勝利したことは、無党派=政治的無関心層が投票せずとも、自民党や民主党の支持者が大挙して維新候補に投票していたことを暗示している。NK党の支持者でも、野党(自民)候補に投票するのが憚られた可能性も十分にある。要は野党の「デモクラシーを復活させる」「大阪を取り戻す」なる主張は、有権者に浸透せず、私が懸念したように「アンシャン・レジームを復活させる(取り戻す)」と取られてしまった可能性が高い。「都構想とかよく分からないし、バカバカしい感じだけど、自共のアンシャン・レジームは無いわぁ」というのが、多くの人の直観だったのだろう。

実はこの構図は、ある程度国政にも当てはまる。安保法制、秘密保護法、あるいは原発再稼働については政府・自民党に反対するものが多いとしても、それは来夏の参院選や次の衆院選において野党に票を投じるものとは限らないということである。
もともと「自民はもうイヤ」という声が増えて、2009年の政権交代が実現したものの、わずか半年で鳩山内閣が瓦解し、自民とほぼ変わらない菅・野田路線になってしまい、「じゃあ、自民党でいいじゃん」ということで一定の票が自民に戻り、批判票は維新が受け皿となって、民主党は半壊状態となった。

批判票の受け皿となるためには、一定の信頼と主張の正当性が必要だが、民主党は信頼が失われて久しく、岡田執行部が菅・野田路線を継承している以上、野党としての正当性についても非常に弱い。現状でNK党を含めて他の野党と連携を試みたところで、今回の大阪ダブル選挙と同じ結果に終わる可能性が高い。
民主党としては、自主再建を目指すならば野党の旗を高く掲げるべきだし、それが出来ないなら解党して新党を立ち上げて一から出直すしかない。
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2015年11月24日

対テロ戦争の難しさとデモクラシー

【「数日以内に攻撃」仏に各国が警告…情報生かせず】
 パリ同時多発テロでは、「イスラム国」と対峙するイラクやトルコからフランス政府側に対し、テロの危険を事前に警告する情報が提供されていたが、凶行を防ぐことはできなかった。国際的な対テロ情報網の強化が急がれる中、確度の高い情報をすくい取り、テロ対策に生かすことの難しさが浮き彫りとなっている。トルコからの報道によると、同国警察は昨年12月と今年6月の2回にわたり、パリ同時多発テロの実行犯の一人であるフランス人のイスマイル・モステファイ容疑者に関連する情報を仏警察に提供し、テロへの警戒を促していた。これに対しフランス側から反応はなく、照会があったのはテロ発生後だった。
 また、AP通信は15日、イラク情報当局がパリ同時多発テロの前日、フランスも参加する対イスラム国有志連合に対し、イスラム国による切迫したテロの危険があることを警告していた、と伝えた。その中でイラク側は、テロ計画の詳細は不明ながら、イスラム国指導者のバグダーディ容疑者が有志連合各国やロシアに対して爆破や拉致、暗殺といった攻撃を数日以内に実行するよう命じた、との情報を伝えたという。
 一方、米メディアによれば、米情報当局は今年5月の報告書に、ベルギーで1月に摘発されたテロ計画などに関する分析とともに、同時多発テロの首謀者とされるアバウド容疑者の名前と顔写真を掲載していた。これに対し、仏治安当局高官はAP通信に対し、「仏情報機関は毎日、四六時中そのような情報を入手している」と語り、これらの警告情報を重視しなかったことを示唆した。欧米の治安当局は、さらに見落とした事件の“予兆”がなかったかどうか、手持ちの情報を精査している。
(産経新聞、11月20日)

「テロを未然に防げなかった」と非難するのは容易だが、現実には「無理ゲー」の観がある。さすがにテロ関連情報は公開されないため、分からないことが多いものの、実際に発生したテロの何倍ものテロ活動が未然に防がれていると見て良い。もちろん攻撃する側も、当局の動きを見ながら、複数の計画を用意(プロット)して、ブラフを張り、偽情報を流すといったことを行っている。また、治安当局とテロリスト側は相互にスパイを潜り込ませたり、協力者を仕立てたりして、そこでも様々な情報がやり取りされている。まして、フランスの場合、国内に無数の協力者、あるいは協力予備軍を抱えており、壊滅させるためには国民の多くを監視下におく必要がある。
テロが発生すると、当局側は諜報網の拡大を企図して情報収集を強化するが、膨大な情報が集まると、「正解」に至る情報が入る可能性が高まると同時に、同じかそれ以上の欺瞞情報も混入してしまう。結果として、情報の解析が遅れたり、誤った分析に誘導されてしまう確率も高まってしまう。
これは「ネット社会の落とし穴」でもある。インターネットの普及により、個々人が得られる情報量は飛躍的に増加したが、それと個々人が「正しい」認識を得られるかというのは全く別の話で、むしろプロパガンダが容易になり、ネトウヨのような存在が増殖する結果にも繋がっている。
2003年のイラク戦争開戦時における大量破壊兵器をめぐる米英の判断ミスも同じ理由から説明できる。ゲーム・プレイヤーが相手の手札の全てを見ることは不可能である以上、どちらも「100%の勝利」はあり得ない。

【参考】 イラク大量破壊兵器に見る政治決断の限界

同時にデモクラシーはテロに対して脆弱性を有している。移動、通信、流通などの自由が保障されているが故に、テロリスト側としては計画・準備が容易であり、その攻撃対象はすべからく主権者であるため、攻撃自体が「国民主権に対する打撃」となる。権威主義国家では、自由が保障されない代わりに、テロなどの攻撃を行うのが難しい上、攻撃対象も実質的な奴隷(物体)に過ぎないわけで、テロ攻撃を受けた時のダメージも少ない構造になっている。この間の、フランスとロシアの対応を見れば、想像しやすいだろう。

そして、民主主義国家でテロが頻発すると、世論の硬化と野党の突き上げを受けて、選挙対策のためにも、政策的に強硬策を採らざるを得なくなる。治安体制や国民監視を強化するためには、基本的人権の抑制が不可欠となり、テロ対策を理由に正当化される。戦前の日本は民主主義国ではなかったものの、共産党対策として治安維持法が導入され、右翼テロの頻発に乗じて同法が強化・拡大適用されるに至り、わずかに存在していた基本的人権や民本主義の芽が潰されてしまった。現代の例を挙げるなら、9・11事件を受けて米国では、「愛国法」が制定され、国民監視が合法化され、基本的人権の抑制が正当化された。

ところが、たとえ戦時体制への移行が理由としても、基本的人権や市民権を抑制することは、自らのデモクラシーの正当性を否定することになるため、権威主義者(コミュニスト、ファシスト、ジハーディストを問わず)にとって有利に働くことになる。これは、「愛国法」を制定して、国民を弾圧したアメリカが、中東や中央アジアなどでデモクラシーを押しつけても説得力が無く、失敗に終わったことからも説明できよう。
興味深いことに、1940年の米国大統領選挙において、三選を目指すルーズベルトが「(レンドリース法は)火事が起きた隣家に水ホースを無料で貸し出すのは当たり前」と主張したのに対し、共和党のパンフレットには「他国に武力で民主主義を押しつけるものは、自国の民主主義を害することになるだろう(欧州大戦不介入)」旨が記載されていたという。
結果、ジハーディスト側がテロ活動を行い、米欧の対応が強硬策に傾くほど、イデオロギーとしての民主主義の優位性は失われ、世界の不安定化を促進させてゆくのだ。

「カラー革命」「アラブの春」などと喜んでいたものたちは、今やそのツケを払うことを要求されている。
日本でも、秘密保護法、安保法制が制定され、今度は拡大通信傍受法と共謀罪が用意されている。戦後デモクラシーは終焉を迎えつつあると言えよう。

【追記】
テロ戦争において、例えば今回の場合、イスラム国はフランスの国家や民族を否定するものではなく、恐らくはフランスが自国を承認して不介入を宣言すれば「良し」とするだろうが、フランスはイスラム国の存在を否定し、完全破壊を目論んでいる。1917年に始まったロシア内戦の構図とよく似ているが、列強が軍事介入してボリシェビキ政権の殲滅を試みた結果、ソ連は過剰な軍事国家を目指すところとなり、国内統制と対外強硬路線を常態化させてしまった。イスラエルのように自国の存亡が掛かっているならばともかく、イスラムとほぼ無縁の日本が介入しようというのは愚策としか言いようが無いが、対中強硬路線の対価として政府・自民党が積極介入に傾くのは確実だろう。
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2015年11月22日

野党連携の形は?

【年内に共闘合意を=生活・小沢氏】
 生活の党の小沢一郎代表は17日のTBSラジオの番組で、来年夏の参院選に向けた野党共闘について「手を携えて候補者を1人にして戦えば国民の支持は必ず集まる。野党が協力して戦うというコンセンサスが今年中にできればいい」と述べ、年内に選挙協力の合意を目指す考えを示した。民主党などの一部に出ている「解党論」については、「現状で各党が解散して一つにまとまるのはちょっと無理だ。そこまでやる必要はない」との見方を示した。 
(時事通信、11月17日)

来夏の参院選を控えて野党連携が取り沙汰されているが、維新の分裂騒動と民主の内部対立により殆ど話が進んでいない。現状のままではかなり絶望的だろう。

小沢氏は以前から「オリーブの木」構想を唱えているが、これは現在ある政党を解消せずに、選挙用に別団体を仕立てて候補者は党籍を残したまま新団体から出馬するというもので、欧州などでは広く普及している。
日本でも法律上は不可能では無いらしいのだが、当選後の政党交付金の受給に際しては問題が発生するという。いかんせん総務省としても前例の無い話なので、レクを受けても今ひとつ要領を得ないところがある。「政党交付金なんて当選してナンボだろう!」と言われそうだが、古来、組織内紛の大半はカネの分配をめぐる対立に起因しており、現実に選挙にも日常活動にも多額の資金が必要である以上、「カネの話は後回し」とはなかなか行かないのが実情だ。
また、政党連合は比例代表制がメインの欧州で、5%条項などの「足切り」を避けるために普及しているが、選挙区制がメインの日本では有権者の理解が追いついておらず、実際の投票に結びつくか未知数の部分が大きすぎる。

民主党内は主に、大阪維新と保守新党を結成しようとする右派、民主党を中心に野党再編を図ろうという岡田・中間派、NK党と連携しつつ社民や生活を取り込んで新党結成を目指す左派の3グループに分かれて主導権争いをしている。現状ではやや右派が弱く、強攻策に出ているように見受けられるが、かと言って中間派はほぼ何もしていないに等しく、NK党との連携を強化している左派に対する反発も強い。
現実的には、右側に巨大な自民党があり、自民党から保守票を奪うだけの主張が無い限り、保守新党は殆ど需要が無い。「自民より右」を志向した次世代、「新自由主義」を志向した「みんな」は共に求心力を失っている。前原・細野らが「言うだけ番長」と化しているのも、離党して大阪維新と新党をつくったところで、展望が見えないからだと思われる。

ケン先生的には、まず一度「NK党との連携」を封印した上で、維新残党、社民、生活等と合流して新党を結成し、「修正鳩山・小沢路線」を掲げて安倍政権との対立軸を明確にすることが肝要だろうと考えている。そのためには、やはり日本会議系列の右派を放逐しなければならない。NK党との選挙協力は、新党結成後に必要に応じて検討すれば良い話であり、交渉体力の無い現状では「百害あって一利無し」だろう。

【追記】
一部では、参院選に向けて市民団体系の確認団体をつくり、そこから候補者を出して野党各党が推薦を出す、という方式が考えられているようだが、選挙の実務と実働部隊を誰が担うのかを考えた場合、「机上の空論」にしか思えない。結局のところ、誰も真面目にやらないまま、選対をNK党に乗っ取られて終わってしまう可能性が非常に高い。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする