2015年11月02日

猟犬の國

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『猟犬の國』 芝村裕吏 角川書店(2015)

マージナル・オペレーション』『遙か凍土のカナン』の芝村先生による書き下ろし作品。
「何事もないのが一番いい。そのためならどんなこともする」をモットーとする、日本の名も無き諜報機関「イトウ家」を舞台に、非公式工作員と警察から出向した新人の正規職員のドタバタを描く。「イトウ家」はマジオペにも出てくるし、新人のヒロインもどうやらマジオペに出てきたその人らしく、物語的に繋がっている設定なのだろう。
恐らく公安調査庁をモデルとしているようだが、実物よりはかなり理想化されているようにも見られる。確かに「これ位は頑張って欲しいよね」と言いたくなる気持ちは分からなくも無い。

他の作品と同様、淡々とした筆致でどこか煙に巻くような描写もあり、会話に至ってはラノベ同然なのだが、中身的にはなかなかディープで深刻。この点でもやはりマジオペと同軸線上にあると言えよう。国会議員を協力者にし、警察と取り引きし、ヤクザを裏から操り、敵国の工作員をパージする。淡々と読み進んでしまうが、意外とえげつない。諜報機関としては当然のことなのだが、筆致と内容の落差が相変わらず面白い。スパイものと言うと、どうしても対外諜報で派手に活躍する話を思い浮かべてしまうが、基本的には地味な防諜任務を主としており、「確かに現実はこんなモンなんだろうな」と感じさせるリアリティがある。

主人公に敢えて日本人では無く、「日系人?」を据えている辺りも巧妙で、やはり深刻ながらもニヤリとさせてくれる。新人の元女性警官も、バカっぽく見えてしまうが、ズブの素人が突然こんな業界に投げ込まれれば、当然の話で、面白おかしく描かれているだけの話だろう。

マジオペやカナンほどの読みやすさは無いものの、国内の諜報機関を扱った一風変わったスパイものとして貴重な一冊と言えよう。
まぁ思い出したくも無いT元の話を思い出してしまったのも、少し前に本作を読んでいたからに違いない(爆)
posted by ケン at 13:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする