2015年11月18日

約束の土地

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『約束の土地』 アンジェイ・ワイダ監督 ポーランド(1974)

ポーランド映画祭にて鑑賞。平日夜だったが、ガラガラで「これでは一週間で終了しても仕方ない」と思ってしまった。ポーランド映画は良い作品が多いだけに、認知度が低いのは惜しいところだ。

本作は、ワイダ監督が卒業した映画大学のあるウッチを舞台に、ロシア支配下の19世紀の末、繊維産業で一旗揚げようと試みる、ポーランド没落貴族、ドイツ人職人、ユダヤ人の三人の青年を描いている。三人を中心に描いているが、繊維産業に沸く都市の群像劇という雰囲気もある。3時間近い大作。
1974年の制作で、75年にモスクワ映画祭で金賞を受賞するも、公開は81年ということからも、社会主義体制下においてはやや問題のある作品と見なされていたことが分かる。実際、退廃的なパーティーや際どい性描写もあり、ソ連学徒の私からすると「ポーランド映画界(検閲)はソ連のそれよりもよほど自由だったんだな」と思わずにはいられなかった。

セットを殆ど使用せず、中世や近世の面影が残るウッチの街並みを上手に使っており、音楽も印象的な作品に仕上がっている。ウッチは実際に繊維産業が盛んだった街で、東欧ブロックが崩壊するまでは多くの工場が稼働していたようだが、今では殆どが廃墟になってしまっているという。
さすがに社会主義体制下でつくられた作品だけに、資本家や工場長が全員悪人としてややステレオタイプ的に描かれているが、主人公たちも裏取引や陰謀をめぐらし、引き抜きや籠絡など、手段を選ばずにのし上がろうと試みており、現在見ても古さを感じさせないものがある。ただ、中盤の主人公たちが金策に走り回るシーンが非常に長く、資本家の悪徳ぶりの描写が多いなど、今日的感覚からするとムダに思えるシーンがあることは否めない。同時に、肝心の主人公三人の内面や結びつき(必ずしも親友とは言えない微妙な関係)が十分に描かれておらず、今ひとつ人物にのめり込めなかった。
ワイダ監督らしく、光の使い方が巧みで、音楽も非常に印象的な作品になっている。監督の作品は、最近では『カティン』や『ワレサ』を見たが、政治的テーマが入ると思い入れが強すぎて微妙な仕上がりになってしまうようだ。
posted by ケン at 12:22| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする