2015年12月03日

マリインスキー劇場 愛の伝説

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バヌー:ウリヤナ・ロパートキナ
シリン:クリスティーナ・シャプラン
フェルハド:アンドレイ・エルマコフ
宰相:ユーリ・スメカロフ


マリインスキー・バレエ団による「愛の伝説」を観る。日本では無名に近い演目だが、有吉先生の『Swan』を読むくらいのバレエ好きなら知っているかもしれない。ロシアというよりもソ連の作品だけにさらにマイナーだ。だが、ホールはほぼ満席で、意外と男性(しかも私含めて一人客)が多かったのは興味深い。ロパートキナ効果かもしれない。

原作はトルコ共産党員にして詩人のヒクメット、作曲はアゼルバイジャン人にしてショスタコーヴィチの弟子筋に当たるメリコフ。この時点で、ソ連らしい国際色が見られる。そして、振付のグリゴローヴィチは90歳近くでまだ健在であり、現代作品なのだ。
ロシアでは今でも上演されるが、外国で上演されるのは珍しく、日本では初めてとなる。それどころか、マリインスキーが外国で本作を上演するのも初めてだというから、非常に名誉なことだろう。日本におけるバレエ人気(世界最大数のバレエ教室)、特にロシア・バレエへの支持を裏付けている。

内容的には、ぶっちゃけ、主人公が自己犠牲を捧げて民衆を救うも、本人たちは誰も救われない、みたいなトルコというよりはロシア・ソ連的な感じで、ビミョー感溢れているのだが、そこはバレエと割り切って見るべきだろう。まったくロシア人の不幸エンド好きにも困ったものだ。

本作は私も初めて観るのだが、とにかくダンサーに凄まじい体力と精神力を要求する演目だった。ただでさえ三幕八場で2時間超という長い作品なのに、激しい振り付けが多い上に、群舞に至るまで高度な技術が要求されるのだ。「コール・ド・バレエにそれは無いだろう。こんなの出来るバレエ団は、世界に数える位しかないんじゃね?」というのが素直な感想。しかも、『スパルタクス』も振り付けたグリゴローヴィチらしく、とにかく男性のみの群舞が次々と続き、随分とマッチョな仕上がりになっている。確かにこれははまる人ははまるだろう。ただ、本作の魅力を満喫するには、東京文化会館ですら手狭だったように思え、窮屈な感じは否めなかった。ロシアから男性群舞要員や管弦楽団まで連れて来ていることからも、どうやらこれは国策による、採算度外視の上演だったのだろう。

私的にはロパートキナ様が観られれば十分なのだが、こちらは絶対の安定感。身体の隅々までコントロールが行き届き、全てが滑らかに自然に動いて、ピタリと止まり、微動だにしない。その表現力も隔絶しており、バレエとは思えない演技力を見せていた。彼女の演技を観るために1年待ったと言っても過言ではない。
それでも本作のヒロイン役は出ずっぱりで、高難度の演技が続くだけに、40歳を超える彼女の肉体に掛かる負担は非常に大きかったように見受けられた。

男性としては、フェルハド役のエルマコフよりも、宰相役のスメカロフの方がイケてた気がする。非常に力強く、悪く言えば荒々しい暴風のように飛び回るのが私の好みに合っていた。ただ、やはり舞台がやや手狭で窮屈感が否めない。東京文化会館でも狭いとなると、日本で上演できる会場は無いのかもしれない。

これを期に、日本ではマイナーな演目をどんどん紹介して欲しいと思う。
次はギエムの引退公演〜〜
posted by ケン at 12:17| Comment(2) | バレエ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする