2015年12月10日

フランスにおける既存政党の難しさについて

フランスの地域圏議会選挙において半数の地域圏で「極右政党」の国民戦線(FN)が勝利した。日本のマスゴミは基本的に翻訳報道なので、欧米のマスコミが「極右」としてしまえば、それをそのまま流してしまう。ところが、国民戦線の現在の主張を見てみると、今の自民党とさほど変わらず、欧州のいわゆる極右政党の幹部はこぞって「オレたちは極右じゃ無い、日本の自民党程度の主張をしているに過ぎない」旨を述べている。つまり、ヨーロッパの極右政党人の理想は「日本の自由民主党」なのだという。では、そのFNの主な主張を見てみよう。
・移民の制限(排斥では無く、フランスの価値を尊重する移住者は認める)
・フランス国内におけるモスク建設の規制
・死刑復活
・公務員の削減
・減税
・同性パートナーシップ制度の廃止
・国籍の血統主義化
・補助金制度の見直し
・農村社会の重視

主張を見ている限り、日本の自民党と維新を足して二で割ったようなイメージであり、これを極右としてしまうと、日本では極右政党が議会の3分の2以上を占めていることになる。ただし、重農主義を唱えている点で、国民戦線は自民党よりも「伝統重視」と言える。
もちろん、我々の立場からはそう考えて良いのだが、であれば、日本のマスゴミも「日本ではすでに極右政党が国政でも地方でも絶対多数を占めている」事実を報じるべきであろう。日本のマスゴミ人は何も理解しないで、ただ欧米の報道を翻訳して流しているに過ぎない。
国民戦線の場合、父親のジャン・マリー・ル・ペン氏が党首だった頃は確かに日本の排外主義団体とさほど変わらない主張を繰り返していたが、娘のマリーヌ・ル・ペン女史が党首に就いた頃から大きく現実主義に転換し、今日に至っている。マリーヌ氏個人としては同性愛や妊娠中絶も否定しないと言われるほどだ。

問題は、既存の政党が有権者の需要に応じられなくなっている点にある。フランスの場合、EUを主導し、移民と難民を積極的に受け入れてきた結果、国内産業の衰退に比して労働力が過剰となり、さらに重税がのしかかっているところに、治安も悪化の一途を辿っている。公務員と大企業従業員は従来通りの裕福な生活を送っているが、それ以外の市民は労働力余剰(移民)のせいで賃金が上がらず、税金の負担ばかりを意識する状態にある。
こうした現状に対し、右派は「さらなるグローバル化と企業優遇」を唱え、「対テロ戦争」で安価な資源を確保しつつ、EUの辺境部に工場を建て、国内では安価な移民労働力を酷使する戦略を採っている。そして、左派は「移民との共生と公共サービスの重視」を主張、企業課税を強化しつつ、現行の社会保障制度を維持、移民などのマイノリティとの共生を図る政策を掲げている。
ところが、現実には少なからぬ有権者が投票先を失った。右派の政策によってブルーカラー層や地方の商工業者が職を失い、それに対して左派は最低生活こそ保障するかもしれないが、移民を肯定し、企業重税を課すため、彼らの問題の解決には全く寄与しなかった。こうして行き場を失った票が国民戦線に流れていると見られる。

この構図は、ナチスが登場した時のワイマール共和国と似ている。当時のナチスも、既存の左翼・保守層がつかみきれない票を囲い込むことで支持層を増やしていき、それに対して既存政党は有効な対抗策を打ち出せなかった。我々としては、「ナチス左派」が既存の左翼票を取り込んだ過程を重視すべきだろう。

こうした現象が起きるのは、社会構造の変化に対して、既存政党が従来の主張(支持層)を守ることで十分に対応できなくなるためだ。フランスの場合、共和党(旧国民運動連合)が経営者層やホワイトカラー層を代表、かつては地方の商工業者もここに含まれたがFNに奪われている。そして、社会党などの左派は公務労働者とブルーカラー層を代表していたが、ブルーカラー層の票がFNに逃げている。また、地域的には移民の多い南部と鉱工業の衰退が著しい北部において、FNが激しく進出している。
ところが、これに対して既存政党は社会構造の変化を十分に認識せず(知っていながら認めていない可能性もある)、従来の政策を変更して失った支持層の回復に努めないため、国民戦線の伸張を許してしまっている。
フランスの場合、右派ならば移民を規制して地方の商工業の振興策を取り入れるべきだし、左派ならば公務労働重視を是正しつつ、国内企業・工場の保護に重点を置くべきだった。それをせずに、ただFNを「極右」とレッテルを貼って攻撃してみたところで、ワイマール・ドイツの二の舞に終わるだろう。

また、私的に特に問題を感じているのは、フランス社会党が余りにもエリート主義に偏ってしまっている点だ。オランド氏や元首相のロワイヤル女史、オランドと大統領候補の座を争ったオブリー女史など、左右にかかわらず皆ENA(国立行政学院)やパリ政治学院の出身で、官僚や弁護士を務めている。共和党と対抗しつつ、行政府の上に立つ政権担当能力の点では十分な人材が確保されているのだろうが、その反面、社会党の支持層や周辺の有権者のニーズを取り込んで党の政策に反映させる能力が低下しているように思われる。つまり、理念と政策が先行して、リアル・ポリティクスの側面が弱くなっているのではなかろうか。戦後初の社会党大統領となったミッテランが、鉄道員出身の対独レジスタンス員だったことを考えれば、隔世の感がある。
卑俗な言い方をすれば、フランス社会党が「よゐこ」になってしまったがために、ヤンキー層をFNへと追いやってしまった、というのが私の見解である。

以上のことは、フランスに限った話ではなく、欧州の多くの国で見られる現象だが、日本にも当てはめることができる。が、それはまた次の機会にしたい。
posted by ケン at 12:06| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする