2015年12月11日

軽減税率の与党間合意で衆参同日選へ

【<軽減税率>食料品全般…加工も対象 財源1兆円で自公合意】
 自民、公明両党は9日、軽減税率の対象に関し、2017年4月の消費増税と同時に生鮮食品と加工食品を含む食料品(酒類、外食を除く)とすることで合意した。軽減措置で必要な財源は1兆円規模となる。来夏の参院選での選挙協力を念頭に、生鮮食品に限定するよう主張した自民党が大きく譲歩することで決着した。与党はこれを受け、10日にも16年度税制改正大綱を決定する。合意では、コメや肉などの生鮮食品と、パンやめん類、菓子類、飲料を含む加工食品について、17年4月の消費税率10%への引き上げ後も税率8%に据え置く。一方、酒類の購入や、レストランやファストフード店など外食で支払う税率は10%に引き上げられる。政府は来年1月召集の通常国会に消費増税法の改正案を提出し、16年度予算案と同時の成立を目指す。
 自民党の谷垣禎一、公明党の井上義久両幹事長は9日、東京都内のホテルで断続的に協議。菅義偉官房長官は同日の記者会見で「両党の幹事長の間で精力的に協議が続けられている。それを見守っていきたい」と語った。自民党は当初、「税と社会保障の一体改革」の枠内で工面できる財源4000億円に収まる生鮮食品(3400億円)のみを対象とするよう主張。事業者が導入する会計システムも、対象を拡大すれば間に合わなくなると説明した。一方、公明党は生鮮食品のみでは痛税感の緩和が不十分だと反発。軽減対象を加工食品まで広げるよう要求し、与党の協議は行き詰まっていた。谷垣氏は9日、安倍晋三首相や菅氏と協議の上、加工食品を対象に加える方針に転じた。協議の最終盤では、自民党側は加工食品のうち菓子や飲料を除く8200億円規模とする案を提示。だが「パン」と「菓子類」などの線引きが難しく、国民生活が混乱することへの懸念から、最終的には菓子なども含む1兆円規模に落ち着いた。
 軽減税率の規模が1兆円に膨らんだことで、6000億円の新たな財源確保が課題になる。一体改革に盛り込まれた社会保障政策をこれ以上見送るのは困難とみられ、政府・与党は税収の上ぶれ分の活用のほか、たばこ増税など消費税以外も視野に入れた財源探しを迫られそうだ。自民党内では、税調幹部らが財政規律を優先し、軽減税率の対象を限定する姿勢を貫いてきた。参院選での選挙協力を優先し、全面的な妥協に転じたことに党内で反発が出ている。また、対象品目が増加したことで、小売店など関係する事業者数が増える。税率10%への引き上げ時に向け、政府は混乱回避が課題となりそうだ。軽減税率は消費増税時の消費者の負担を緩和するための制度。消費税は所得の低い層の相対的な負担が大きいため、低所得者層の痛税感の緩和につながるとして公明党が強く導入を主張してきた。
(12月10日、毎日新聞)

政府も自民党も忌避してきた消費税に対する軽減税率の適用拡大だが、ここに来て急に官邸主導の下、KM党に全面妥協する形で話を進めている。これは官邸の政治的意向が強く反映していることを意味し、その意図するところは、来夏の参院選においてKM党に全面協力させるためだと見るべきだ。通常の選挙協力であれば、小幅な妥協で十分だったはずだが、大幅に妥協したということは何らかの大きな取り引きがあったものと見られる。その可能性が最も高いのは、KM党が忌避する衆参同日選であろう。

衆議院総選挙は昨年12月に行われたばかりでまだ一年しか経ていないものの、再来年の2017年4月に消費税が引き上げられる予定であり、来年中には総選挙が行われるだろうというのが永田町の一般的観測だった。だが、衆参同日選は組織的理由(支持者の住民票を異動させるなど)からKM党の忌避するところで、また4年後の夏のオリンピック開催と衆議院任期の関係を考慮しても、衆院選は恐らく来年末に行われるのではないか、というのが私の見立てだった。

ところが、ここに来て官邸が霞ヶ関と自民党内の反対を押し切って、KM党に全面妥協した。これは、KM党が忌避する衆参同日選を強行するために、取り引きを行ったと考えるのが自然だろう。私的には、衆参同日選の可能性は7割超になったと考えている。
その理由としては、消費増税の時期に近づくほど自民党に不利であること、そして官邸としては(意外なことに)野党協力による統一候補を警戒しており、野党協力が準備不十分な状態で、かつより協力の難易度が上がる同日選こそが、「最も勝ち目が高い」と判断しているようだ。ケン先生的には、今の情勢下なら夏にやろうが冬にやろうが、「自民党の現状維持ないしは微減」だろうと見ているのだが、官邸は非常に警戒している。
確かに野党側は参院選を目指して選挙協力を進めており、遅れてはいるものの協力体制が築かれつつある。だが、衆参同日選となれば、そのハードルが一気に高まり、候補者選定に難渋する恐れがある。民主党で言えば、同日選の場合、労働組合は自らの参院選候補に付ききりとなるため、衆院候補の支援まで手が回らなくなる。まして野党統一候補など放置されるだろう。そして、「政権選択選挙」となるため、自公側は「コミュニスト政権を選ぶのか」という攻撃カードを手にすることとなる。「万が一にも野党に勝たせない」という万全の体制を考えてのものだろう。
同日選で自公が両院の3分の2を獲得すれば、一気に憲法改正熱が高まり、戦後日本の一大転機となることは間違いない。

とはいえ、政治的な理由からKM党に妥協したは良いものの、軽減税率適用拡大による税収の「穴」は6千億円にも及び、それを埋める財源をどこから引き出すのか、あるいは恒久的な歳出減で対応するのか、課題は残る。「全ては選挙に勝ってからだ」ということなのだろうが、無責任の誹りは免れまい。
posted by ケン at 12:40| Comment(4) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする