2015年12月27日

3デイズイントレンチ

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2011年制作のロシア製テレビドラマ。1話45分で全4話。
原題は、「Три дня лейтенанта Кравцова」(クラツォフ中尉の三日間)なので決して外してはいないが、酷い邦題だ。



1944年晩夏、場所は明記されていないが、「葡萄が実るな」とか言っているところを見ると、たぶんウクライナの設定。ドイツに向けて進撃を続けるソ連軍は、補給不足により停止するが、ドイツ軍もまた高台にある風車から砲兵観測を行いつつ、強固な陣地を構え、戦線は膠着状態にある。
舞台となる中隊は名ばかりで、1個小隊ほどの人数も微妙な定数不足に陥っている。そこに士官学校を即席で卒業した若い中尉が中隊長として赴任してくるところから、物語が始まる。
その赴任途上、トラックの運転手から「統計学的に、小隊長の大半は三日以内に戦死している」などと聞かされた上、ドイツ軍の空爆に遭ってトラックを失ってしまうのだから、開始早々から「ロシア人の自虐っぷりだよ〜」と思ってしまう。

歩兵による塹壕戦を主体にした戦場の日常を描いており、戦闘シーンはあるものの、戦車も航空機も出てこない塹壕戦なので、基本的には地味な作品と言える。だが、奇をてらうことなく、美化することもなく、生の戦場を描いている。無能な上層部もいれば、有能な上官もいるし、政治将校もことさら悪し様に描くことなく、良い面も悪い面も出しており、「実際こんな感じだったのかもね」と感心させられる部分が多い。

独ソ戦も1944年ともなると、負けているドイツ軍は当然ながら、ソ連側も人的資源が枯渇しており、「そもそも兵士にできるような男子がいない」という状態になっていた。故に何十万人という女性が動員され、最前線で戦闘任務にも従事したわけだが、そんなことをしたのはソ連だけだった。
本作でも、連隊とか大隊という言葉こそ出てくるものの、どう見ても数が足りていないようで、主人公が配置される中隊も一個小隊ほどの人数しかいない始末。しかも、やけに老兵が多く、逆に補充兵は18歳になったばかりという感じ。これも長く戦っている軍隊に見られる傾向で、戦死傷するのはまず若手で、次いで中間層が離脱、ベテランだけが残っていくと言われる。これは、決して無理をせず、戦場感覚に研ぎ澄まされたものだけが、生き残ることを表している。
また、これも独ソに共通することだが、戦争末期には深刻な将校不足に陥っており、特にドイツ軍歩兵部隊では小隊長の大半が下士官(曹長級)という状態にあった。本作でも、即席錬成の若い中尉がいきなり最前線に投入されるが、全く珍しいことではなかったし、「新人小隊長の大半は三日以内に戦死」というのもあながち誇張とも言えなかったようだ。

「凄い」「お薦め」という程ではないが、見て損(ガッカリ)するようなものではなく、マニア向けの佳作というところだろうか。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする