2016年01月16日

1月の読書計画(2016)

当初、年末年始は読書を充実させようと思っていたものの、いざ休みに入ってみると、「どうも頭が疲弊気味」と思うようになり、頭脳を休める方向に方針転換した。そのため、「積ん読」が増えてしまったが、「そこはそれ」としたい。

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『歴史としての冷戦−力と平和の追求』 ジョン・ルイス・ギャディス 慶応大学出版会(2004)
冷戦研究の泰斗として、「対称的封じ込め」と「非対称的封じ込め」政策の概念を提唱されたギャディス教授による冷戦研究の集大成。特にソ連崩壊後に公開された東側資料をふんだんに使うことで、東側からの視点を充実させている。ただ、色々はしょってしまうと「冷戦はスターリンの妄想に始まった」とする教授の見解には違和感を覚える。過剰なまでの防衛意識はスターリンの特質ではなく、ロシア人に共通するものであり、また十月革命後の列強介入がボリシェビキの恐怖政治を固定化させてしまったところが大きのであって、スターリン個人の責任にしてしまうのはどうだろうか。

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『ウクライナ 2.0』 塩原俊彦 社会評論社(2015)
ウクライナ紛争についての解説は、欧米視点からのものが溢れかえっており、ソ連・ロシア学徒の私からするとただのプロパガンダにしか見えないものばかりとなっている。私がウクライナ問題で何か書けば「ロシア寄り」と言われるのに、巷に溢れる解説は「欧米寄り」と非難されないのは、どういうことだろうか。著者の塩原先生は、直接お会いしたことはないものの、私以上にそれを感じておられるようで、現代ロシア軍事研究の知見(本職は経済)を生かして本書を出版されている。本書を読むと、私などよりも「ロシア寄り」に思えようが、塩原先生は『ロシアの軍需産業』を書いたことで、ロシア当局から要注意人物と見なされているほどなのだ。ウクライナが、「新冷戦」の最前線である以上、ロシアと米欧の利権と権力が最も激しく衝突する「角逐場」であることは間違いなく、そこに「どちらが正しい」などということはあり得ない。ただ、ロシアに関する基本的知識が無いと難しいのと、横書きなのが難点となっている。恐らく今の日本で「ロシア側の視点」を交えてロシア情勢を解説しているのは、公式的には塩原先生と上野先生くらいしかおられないのではなかろうか。

『蘇我氏−古代豪族の興亡』 倉本一宏 中公新書(2015)
どういうわけか最近連続して出版されている古代蘇我氏研究の中から手頃そうなものを選ぶ。ここでも他の歴史と同じことが見られるが、「乙巳の変において、中大兄皇子らが、専横と悪徳を極めた蘇我氏を倒して政治を正した」というのは「勝者の歴史」に過ぎず、近年の研究では、むしろ蘇我氏が統治機構の近代化や現実的外交を進めたのに対し、保守派の中臣鎌足らが反動クーデターを起こし成功した、という理解が近年の歴史研究の主流となっている。そして、新たに成立した天智帝政権は、半島介入政策を進め、百済支援軍を派兵、「白村江の戦い」で大敗し、その反動で「壬申の乱」が起こる。私的に古代史は全く不明なだけに、この機会に少し知識を蓄えようと思った次第。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする