2016年01月18日

秘密保護法で決算不要に?

【<特定秘密>「検査院に提出」通達…施行後1年出さず】
 特定秘密保護法に基づき秘密指定された書類について内閣官房が、会計検査院から要請があれば提供するよう求める通達を関係機関に出していたことが分かった。検査院は法案閣議決定前の2013年9月、秘密指定書類が会計検査に提出されなくなる恐れがあるとして「すべてを検査するとした憲法90条の規定上、問題」と法案の修正を要望した。内閣官房は応じず、代わりに「遅滞なく」通達を出すことを約束していたが、14年12月の法施行後1年以上出していなかった。
 内閣官房によると、通達は昨年12月25日付で「秘密事項について検査院から提供を求められた際には、提供していると承知しているが、法の施行によりこの取り扱いに何らの変更を加えるものではない」としている。防衛省、外務省など特定秘密の指定権限を持つ20の行政機関に出した上で、今月8日に検査院に内容を説明した。
 13年10月に内閣官房と検査院が合意した通達案では「検査院が特定秘密を利用するときには、『(秘密保護法が秘密提供をしなくてよい場合とする)我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ』はないと解される」と明示していた。しかし、この部分は今回の通達に盛り込まれなかった。
 内閣官房は「明示的には盛り込まなかったが、これまでの取り扱いと変更はないとしており、趣旨は含まれる。そもそも秘密保護法は憲法上問題があるとは認識していない」と説明。通達の遅れについては「実際の運用を見つつ、適切な時期に出そうと考えていた」とコメントした。
 会計検査院法規課は「法令協議の過程で、検査院が内閣官房に伝えていた内容が反映されており、検査に必要があるとして要求した場合には、各省庁から特定秘密が適切に提供されると考えている」とコメントした。
(1月12日、毎日新聞)

2年前に秘密保護法が審議された際、私も記事にあるような懸念を覚えて会計検査院の担当者を呼んでレクを受けたが、「内閣官房と調整して、秘密指定に関わる事項でも会計検査院に適切に情報提供されるようになっているので、懸念されるようなことにはならない」旨の回答があった。当時は他にも質問すべき事項が山積みされていたため、この点からの質問は見送ってしまったが、今から思えば、やらない手はなかったかもしれない。

戦前の軍部には「臨時軍事費特別会計」という魔法の財布があって、一般会計とは別に組まれ、概要のみが提示されて一括審議され、しかも会計法の適用外として予算の流用や前払い、概算払いなど軍の自由裁量が認められ、帝国議会はおろか、大蔵省や会計検査院のチェックすら働かないシステムになっていた。
秘密保護法を除外しても、現状で復興特別会計はかなりザルとなっていて、議会や検査院のチェックが十分に及んでおらず、闇の中になっている。新国立競技場建設をめぐる会計も恐ろしく杜撰だったことは記憶に新しい。そこに秘密保護法によって、防衛費や外交費の多くが検査対象外となれば、もはや「行政府の予算執行が適切かどうかをチェックする」という議会の存在意義が失われてしまう。

象徴的な例を挙げれば、2003年から09年にかけて米軍の後方支援として(表向きは復興支援)自衛隊をイラクに派遣するために要した費用は直接費用だけで1200億円以上に上るとされているが、イラク戦争の開戦経緯と戦争支持決定を検証した政府(外務省)の報告書はわずかA4で4枚(うち表紙一枚)という形でしか公表されなかった。要は、直接費用で1200億円をかけ、陸海空で1000人以上の規模でなされた海外派兵を行った根拠について、政府は主権者・納税者たる国民に対して説明・開示を拒否したのである。これでは、勝手に徴税して勝手に軍を動かして戦争を始めてしまう17、18世紀の英王室と同レベルであり、日本の国会は当時の英議会よりもレベルが低いことを意味する。
イギリスの清教徒革命は、国王チャールズ1世がスコットランド侵攻を行って敗北し、その戦費と賠償金に困り果てて、議会に新規課税を高ピーに要求したところ、議会はこれを拒否。そんな折にアイルランドでもカトリックによる蜂起が起こって、再度遠征することにもなって、議会は国王非難の姿勢を強め、その外交大権を抑制しようとしたところ、それに反発した国王が、議会の武力弾圧を試みたため、内戦を勃発させてしまった。

また、フレンチ・インディアン戦争で財政危機に陥った英国議会は、「植民地の維持費は植民地で」の方針から、植民地からの砂糖に(のみ)課税する砂糖法を可決し、さらに植民地における印紙に新規課税をなし、その上「東インド会社が輸入する茶だけは無税」という茶法を成立させるに至り、有名な「代表なくして課税なし」のスローガンの下、英国本土による独断支配を拒否する空気が強まった。そこに英国王ジョージ3世が軍隊を介入させたため、アメリカ独立戦争が勃発してしまった。
その独立戦争で英国は増税を余儀なくされるが、議会は増税を承認する代わりに軍事支出の予算科目の細目開示を要求した。それまでは軍事費全体で一括審議されていたものが、1789年から予算科目の区分と細目別の審議がスタートした。

政府の戦争遂行に対して、主権者あるいは納税者の立場から監視と統制を行い、正当な支出であるかどうかを検証するのが本来の議会の役割であり、その権限を強化してきたのが議会史の根幹だった。外交と戦争の情報が秘匿されるというのは、デモクラシーと議会制度の明らかなる逆行であり、行政府の暴走を許すことにしかならない。
集団的自衛権と秘密保護法

しかも、日本の場合、情報公開法と公文書管理法が不十分であるため、秘密指定された情報や資料が永遠に指定解除されなかったり、あるいは指定解除される前に廃棄処分されたところで、これを止める術もなければ担当者を罰することもできないため、実質的に「廃棄し放題」となっている。結果、予算執行が適切だったか、予算付け自体適切だったのかなどの政策評価や歴史検証ができなくなっており、誤りを正すことを不可能にしている。
軍事費のチェックが効かなくなった戦前の日本がどのような末路を迎えたか、改めて思い返すべきである。
posted by ケン at 13:11| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする