2016年01月22日

待機児童で責めるのは得策じゃ無いかと

民主党の山尾議員が待機児童問題で安倍首相を責めたことが一部ネットで話題になっている。だが、これも非常にブーメラン性が高い難題であり、単年度で「待機児童が増えた」と言って騒ぐのは得策とは思えない。「野党だからいいんじゃないか」とは言えるかもしれないし、山尾氏的には「総理を嵌めてやった!」と小躍りしているかもしれないが、「やぶ蛇」の喩えもあり、攻撃箇所や戦術はもっと慎重に選ぶべきだ。
待機児童問題については門外漢ではあるが、身内に関係者がいるため、それなりの知識があり、記事にしているので参照してもらいたい。

「待機児童ゼロ」という無謀 
保育所は何故足りないのか? 

減少傾向にあった待機児童がここに来て増加傾向に転じた理由については判然としていない。が、都市部で整備されてきた保育所の新設が頭打ちになりつつあることや、一方で保育所需要の増加傾向に歯止めが掛かっていないことが推測される。需要増については、地方で若年女性が急激に減少する一方で、都市部では従来の専業主婦層が働きに出ることで需要と供給のミスマッチが生じている。その都市部でも、駅前などの一部の保育所に需要が集中する一方で、やや不便な地域にある保育所は定数割れするような有様になっている。

待機児童問題について、行政は政治側の過剰な要求を満たすために保育所の増設を至上命題とするが、予算は限られているため、設置費用を安くしようとすると不便な場所になってしまうが、すると希望者が予測を下回るといった現象が生じている。駅近に保育所を設置するとなると、ビルの一室のような、子どもにとって非常に望ましくない環境になってしまうが、現状では「子どもの環境」よりも「大人の要望」が圧倒的に重視されており、「預けられるならどこでもいい」という傾向が強い。
特に男性は一度見ておいた方が良いが、駅近のビルの一室にある保育所の環境は酷いものが多く、「この狭い一室に無数の他人と朝から晩までいなければならないのか」と子どもに同情を禁じ得ない。
保育所も建てれば建てるほど自治体の赤字が増える構造になっている。
建設費を除く運営費だけ見ても、公営保育所で児童一人当たり年間150万円円程度のコストが掛かるが(地域や年齢による違いが大きい)、利用者が実際に支払う保育料は平均で30〜50万円に過ぎない。民間保育所でも年間100万円程度はかかる。ゼロ歳児保育になると2〜3倍のコストが必要となる。
さらに都市部になると地代や人件費の高さから、平均をはるかに上回るコストが掛かる一方、人口は地方からだけではなく郊外からも都市部への流入が続いているため増加傾向にあり、どうしても供給が需要に追い付かない。運営費は国から補助が出るが、初期費用については補助がないため、地代が高く優良物件が少ない上、「迷惑施設」と敬遠されがちな保育所の新設は非常に高コストとなり、自治体に二の足を踏ませている。
これ以外にも自治体ごとに無認可保育所に対する支援や独自の負担軽減策がなされており、要は保育所が増設され、利用者が増えるほど自治体の財政負担が重くなってゆく。
保育所は何故足りないのか?) 

学校や保育所は地域への依存が高いため、その地域の人口構成や年齢層が変化すると、需要も変化する。例えば、ある地域に大型団地が建設され、多くの若年層が入居、それに応じて学校や保育所をつくったところで、15年や20年もすると、需要が急激に減ってしまう恐れがある。だが、需要が減ったからといって、学校や保育所は民間企業のように簡単には店をたためないため、定員割れした施設が増えて行くことになり、自治体の財政を圧迫するのだ。

この問題は根が深い。従来の入所ルールである「正規職員優先」がまだまだ幅を利かせているため、夫婦で1千万円以上稼ぐ親が公立の保育所に子どもを預ける一方、年収200万円台の非正規職の一人親が子どもを高い認可保育所に預けざるを得ないみたいな話がまだまだ横行している。正規・非正規の待遇差別はここでも如実に表れている上、非正規は女性に圧倒的に多く、その割合も増加の一途を辿っている。こうした「保育格差」も是正される必要がある。

より大きな話をすれば、これは「中間層の没落」の結果とも言える。従来なら専業主婦がいたであろうホワイトカラーの中間層が非常に薄くなり、働きに出ざるを得なくなっているためだ。また、「男女共同参画」やら「一億総活躍」などと言いながら、現実には女性被雇用者の6割弱が非正規で、その割合は男性の3倍弱にも達し、女性非正規職の半数は貧困ライン以下にあるという。これは、「女性の貧困」と「男女不平等社会」の表れなのだ。
仮に日本で、均等待遇や時短労働が実現していれば、多少不便でも子どもを環境の良い保育所に預けることもできるだろう。あるいは、税収が上がれば、駅近で良い条件の保育所が建てられるかもしれない。だが、日本の労働政策は「人をできるだけ安く、そしてできるだけ長く働かせる」ことに主眼が置かれているため、子育て環境も一向に改善されない。結果、保育を増設したは良いものの、保育士が不足しているため定員を増やせず、定員を増やすために「資格無し」あるいは「準資格」でも働けるようにしようという「陰謀」がめぐらされるという悪循環に陥っている。

確かに問題になっているのは待機児童なのだが、現実には女性あるいは男性の労働環境が大幅に改善されない限り、根本的には何も解決しないのである。その意味で、「自民政権には待機児童問題は解決できない」という視点からの「決め打ち」はブーメランとなって跳ね返ってくる恐れが強いと言える。
質問した本人は「アベを嵌めてやった」と思っているかもしれないが、安倍氏からすれば「ハメ手じゃねぇか!」と怒るのは当然だろう(総理の器としてはビミョーだが)。やはり国会質問は一定の品位を持って行うべきだ。NK党のように正面から貧困と経済格差、再分配の面から責めるのが「正統派」なのである。
posted by ケン at 13:14| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする