2016年07月13日

外国語能力の価値を否定する東京外大

【大学生通訳、ボランティア参加 東京へ懸け橋】
 開幕が1カ月後に迫ったリオデジャネイロ五輪には、東京外国語大の学生19人が日本語の通訳ボランティアとして参加する。大会組織委員会の「SOS」に応じた形だが、学生たちは「4年に1度の大会でしか得られない経験がある」と話し、2020年東京大会に向けボランティアの懸け橋となる自覚も芽生えている。 担当の鶴田知佳子教授によると、今年2月、知人を通じて組織委から「日本語の通訳ボランティアが不足している。学生を派遣してほしい」と打診があった。各会場で日本の選手やメディア関係者らが話す日本語を、五輪の公用語の英語に訳すのが主な仕事で、その逆も担う。
鶴田教授は大学のホームページで、英語のコミュニケーション能力を測るTOEICで高得点の800点以上を条件に参加者を募集した。応じた約60人の学生はインターネットを介したテレビ電話で組織委担当者の面接を受け、五輪19人、パラリンピック9人の採用が決まった。うち2人は両方に参加するので計26人。大学側も通訳ボランティアを短期海外留学科目「スタディーツアー」として今年度の履修に加えた。
 ユニホームや活動日の食事は提供されるが滞在費や渡航費は自己負担。宿泊先は大学側が手配したものの、地球の反対側への渡航費約30万円は学生が賄うため、一時的に親に援助してもらう学生が多い。フランス語科2年のNさん(19)は「将来は海外に関わる仕事を考えており、参加は金額以上の価値がある」と話す。 五輪のボランティア期間は8月5〜20日でシフトは6勤1休の予定。さらに学生たちは、ブラジルの公用語ポルトガル語の日常会話習得にも意欲的だ。
(7月5日、毎日新聞より抜粋、氏名略)

わが母校(院の方だけど)は最悪の選択をなした。
当然ながら通訳料はゼロ。それどころか、渡航費30万円プラス滞在費も自己負担。で、応募条件はTOEIC800点以上。わが母校は、自らの学生の語学能力が「ゼロ円」であることを社会に宣言してしまった。いまや唯一の国立外国語大学であることの経済的価値を否定したのだ。

喩えるなら、軍士官学校で、「某国義勇兵募集、報酬ゼロ、渡航費と滞在費は自己負担」という掲示が出るのと同義のはずであり、士官学校がそのような募集を許さないのは当然だろう。
リオデジャネイロの現状は、まともに路上も歩けないほど治安が悪化している上、ジカ熱などの風土病が蔓延しており、大学としてはむしろ渡航自粛を呼び掛けるくらいのレベルにある。東外大は学生の安全にあまりにも無頓着だ。

競技場の整備には3500億円とか費やして、それを2千億円に値切った都知事はバッシングして追放刑に処すのに、通訳はタダで済ませようというのが日本の実情。これではまともな人が皆外資系に行ってしまうのは当然だろうし、外国語に堪能な人材も育たない。
外国語大学であるからこそ、外国語能力の価値を高める努力をなすべきなのに、むしろ価値を下げているのだから、愚劣極まりない上、全く学生の将来を考えていないことを示している。学生が組織委員会の募集に勝手に応募するのは自由だが、大学当局が斡旋するなどあり得ない話だ。
また、これを美談と報じてしまうマスゴミも同罪である。
posted by ケン at 13:00| Comment(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月12日

参院選2016の結果を受けて

【民進、改選議席大幅割れ…野党共闘は一定効果】
 民進党は、前回2013年参院選で民主党が獲得した17議席から上積みを果たしたものの、改選議席の45を大幅に下回り、振るわなかった。旧維新の党との合流・党名変更を決断し、選挙戦に臨んだが、与党に改選定数の過半数確保を許す結果となった。一方で、野党共闘には一定の手応えも感じており、次期衆院選での候補者一本化に向けた共産党との協議が進む可能性もある。岡田代表は10日夜、党本部で記者会見し、「(前回選から)かなり増えたことは間違いないが、まだ再建途上だ。政権を担えるところまでもっていかないといけない」と述べた。選挙戦で展開した安全保障関連法の廃止を掲げる市民団体との連携については、「非常に高く評価している。さらに広がっていくことを期待したい」と歓迎した。
 今後の憲法改正論議に関しては、「まず与党が何を変えたいのか明確にしてもらう必要がある」と述べる一方、「安倍首相の立憲主義の解釈が理解できない」と語り、改めて首相の下での改憲論議に消極的な姿勢を示した。民進党では、野党統一候補が善戦した4月の衆院北海道5区補欠選挙を契機に共産党との共闘を容認するムードが高まった。しかし、選挙戦で共産党が自衛隊を「違憲」と明言したことや、藤野保史・共産党政策委員長(当時)が防衛費を「人を殺すための予算」と発言したことで、共闘の危うさを指摘する声も漏れた。
 枝野幹事長は民放番組で、野党共闘について、「一定の効果はあったと思うが、いろいろと課題も浮かび上がった。今回の結果をよく分析したい」と語った。9月に予定される党代表選では、共産党などとの共闘路線のあり方が議論されそうだ。岡田氏は代表選への出馬について、「これからしっかり考えたい」などと明言を避けているが、岡田氏周辺は11日未明、「代表選に出ない理由はない」と語った。党内で責任ラインとみられていた「30議席」を超えたことや、代表として進退をかけた地元・三重選挙区で勝利したことが理由だ。一方で、代表選には、共産党との共闘に冷ややかだった前原誠司元外相や細野豪志元環境相の出馬も取りざたされている。
(7月11日、読売新聞)

参院選の投開票が行われた。いわゆる「改憲勢力」がギリギリ3分の2を獲得したが、自民党の単独過半数は実現しなかった。

【参議院結果(改選121、後者は比例獲得票)】
自民 56:2011万票
民進 32:1175万票
KM 14: 757万票
NK  6: 601万票
維新  7: 515万票
無他  6


以下は、同日選を想定しての5月20日段階の、私の予想。

【参議院予想】
自民 70±5
民進 20±3
KM 11±2
NK  9±2
維新  5±2
無他 10±2


選挙戦開始までに自民党がやや失速し、野党の支持が若干高まったものの、自民党が60台前半、民進は25程度だろうというのが、私や周辺の見立てだった。
つまり、自民党は圧倒的な内閣支持率や政党支持率を活かすことができず、「圧勝のつもりが辛勝」に終わり、選挙指導に疑問符が付けられる。だが、「改憲勢力で3分の2」という大目標は達成したので、責任に問われることはないだろう。
一方、民進党は「NKよりはマシ」という政党支持率でありながら、実戦は予想外に健闘した格好だった。特に比例区で1千万票を超えたことは、全く想定外であり、コミュニストに流れると考えられた票の多くが民進に投じられたと考えられる。
逆にNK党は、躁状態のようにノリノリだった割に、実際には票が伸びず、舌禍事件もあって完全に失速した。とはいえ、特に東京以外の選挙区、例えば大阪、愛知、神奈川で当選させられなかったことは、「勝てるところで勝てなかった」という点で、ゲーム・プレイヤーとして低評価が下されるだろう。
重要な32の一人区では、野党候補が11勝を挙げており、全体の戦況を鑑みれば「大健闘」と言える。その殆どが接戦を制しており、自民党としては「勝てるところで勝てず、少なからず取りこぼしをした」と評価すべきだ。

結果論的には、自民党は衆参同日選を回避したことで、野党共闘と労働組合の組織を効率的に稼働させてしまい、高支持率に緩んだ自民党はタガを締めるのに失敗したと言える。例えば、選挙期間中も衆議院の議員会館には自民党議員の秘書が数多く残っており、「戦力の温存」が見られたことは、「持てる戦力を決勝点に集中させる」という戦術の要諦に反している。
「衆参両院で改憲派が3分の2」を達成したものの、ゲーマーとしては「自民党はもっと勝てたはずだ」と見ずにはいられない。

ただ、野党共闘も一定の成果は認められたものの、自民党の「楽勝ムード」に助けられた部分もあり、全面肯定するには至らなそうだ。特に野党共闘を強く推進したNK党が、むしろ議席を減らす結果に終わっており(13年の8から6へ)、他方で民進党が大躍進していることから、独自路線派が党内攻勢を強めるだろう。
選挙終盤には、シールズや市民連合などの市民団体が、街頭でコミュニストへの投票を呼び掛けたものの、これも確たる成果を挙げなかった。次の衆院選はかなり先送りされそうなので、野党共闘は「今後の協議」ということになりそうだ。「一人区で11勝もした」と判断するか、「11勝しかできなかった」と判断するかがカギとなる。

「3分の2はとらせない!」という民進党の目標は果たせなかったものの、民進党は本来持つ実力や支持率に比して、はるかに好成績を出せたので、岡田代表の責任が問われることはないだろう。だが、その求心力はすでに大きく低下しており、代表選には出馬せずに、枝野幹事長への「禅譲」が目指されるかもしれない。
また、「勝てなかった」とはいえ、一定の成果を挙げた要因について、果たして「改憲反対」を前面に掲げたことが良かったのか、「改憲反対」だからこそ「この程度の結果に終わったのか」については別途吟味する必要がある。少なくとも、投票率の低さは「改憲反対」の主張が、多くの無関心有権者層に伝わらなかったことだけは確かだろう。

いずれにせよ、権威主義勢力が圧倒的な勢力を誇り、政府とマスゴミが同調してプロパガンダを打ち、国民間に諦観と無関心が広まる中、民進党はギリギリのところで踏みとどまり、何とか戦線崩壊を防いだ形だと言える。民進党はまだまだ攻勢に出られる力を有しておらず、ここは地道に自治体議員を増やし、党の基幹部分の再建に注力、敵失を待つのが上策だろう。
posted by ケン at 01:00| Comment(9) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月11日

民進、また都知事候補を決められず

【<都知事選>松沢、古賀氏が浮上 民進都連】
 東京都知事選(14日告示、31日投開票)で民進党都連は8日、前神奈川県知事の松沢成文参院議員(58)と経済産業官僚出身の古賀茂明氏(60)の擁立を目指し、党本部と折衝することを決めた。同日の選挙対策委員会後に都連会長の松原仁衆院議員が明らかにした。松原氏は今後、都連の一任を受けて党本部と協議する。
 同日の選対委で2人を推す声が上がったという。松原氏は松沢氏について「(2012年の)前々回都知事選に立候補している。(かつて旧)民主党の国会議員としても活動した。神奈川県知事として実務的能力も振るった」と説明した。古賀氏に関しては「野党4党の枠組みで戦い得る一人」と述べた。
 都議会民進党の有志は長島昭久元副防衛相(54)を推し、いったんは都連も長島氏を軸に候補者調整を進めることを決めた。しかし松原氏は同日、「野党4党の枠組みとの距離感がある」として、長島氏の擁立は難しいとの見解を示した。長島氏は、安全保障関連法の成立を巡って、旧民主党と共産党が共闘して反対したのを批判したことがある。
 ただ、長島氏は10日の参院選投開票後に態度を決めるとしている。松原氏は「長島氏が11日に判断することを尊重したい」と述べ、長島氏が出馬表明した場合は再調整が必要になると示唆した。
 一方、自民党都連は11日午前に会議を開いて推薦する候補者を正式に決めると明らかにした。10日夜の会議で、都連会長の石原伸晃経済再生担当相が小池百合子元防衛相(63)の出馬表明の経緯を説明した上で、擁立候補についての基本方針を確認する。
(7月8日、毎日新聞)

民進党は先に片山善博氏に立候補を要請しても断られ、某芸能人の自薦は忌避して、身内の中で「ババ」を押しつけ合っている間に「時間切れ」が来そうだ。
記事に上がっている両者も相当に筋が悪く、とても都知事が務まる器では無い。松沢氏は、所属した政党が7つにも及ぶ「政界渡り鳥」で、藤堂高虎並みの節操の無さを誇るが、神奈川県知事としては表現規制以外はまず無難に務めたものの、仕事に飽きて二期で辞めて、自民党から都知事選に出ようとして梯子を外され、戻ることもできずに浪人したという恥ずかしい経歴を持っている。人口の大半が政令市(横浜、川崎、相模原)を占める神奈川なら知事が務まるかもしれないが、中規模国家並みの予算と職員を持つ東京都知事は務まりそうに無い。
古賀氏は、あまりもの変人ぶりで経産省から追放された人物で、これまた大組織のトップが務まるような人物では無い。

もっとも、自民党都議団が担ぐ増田氏も、任期中に放漫財政と緊縮財政を行うという「偉業」をなして、岩手にいられなくなった人物であり、これまた都知事が務まる器では無い。自民党議員からすれば、片っ端から公共事業をやらせることができる「良い器」なのだろう。
「漁夫の利」を得そうな小池女史は、業界用語的に「誰とでも寝る」典型で、権力の臭いをかぎ分ける本能は業界随一かもしれないが、それだけの人物であり、やはり東京の長に相応しくは無い。事前予想では小池氏がダントツだが、いかんせん女性からの嫌われようがハンパ無いので、選挙が始まってみないと分からない。

いずれにせよ、自民も民進も、「次のタマ」を用意する前に舛添氏のクビを取ってしまい、取ってから「候補がいない」と大騒ぎしている。「泥棒を見て縄をなう」という諺を子どもに説明するには最適だが、主権者にとっては最悪の事態となりつつある。
posted by ケン at 15:31| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月10日

超高度なボランティア

【東京五輪ボランティア、必要なのは語学と… 素案が判明】
 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は4日、大会ボランティアに求める要件の素案を明らかにした。「コミュニケーション能力がある」「外国語が話せる」「1日8時間、10日間以上できる」「採用面接や3段階の研修を受けられる」「20年4月1日時点で18歳以上」「競技の知識があるか、観戦経験がある」など。18年8月ごろ募集を始める予定で、組織委の担当者は「大会まで4年あるので、希望者は語学の勉強をしてほしい」と話している。組織委が募集する大会ボランティアは8万人を想定しており、観客誘導や警備など、原則的に会場内で活動する。宿泊や交通費は自己負担だがユニホームが支給される。組織委によると、12年ロンドン五輪では7万人の大会ボランティアを募集し、24万人の応募があった。東京も同程度の応募数があると見込んでいる。
(7月4日、朝日新聞)

記事を読んで目を疑ったが、もう一度確認しよう。五輪ボランティアになるための要件。

・コミュニケーション能力がある
・外国語が話せる
・競技の知識があるか、観戦経験がある
・20年4月1日時点で18歳以上


この時点で日本人の95%以上が排除されるのではないか、少なくとも自分の印象ではそうだ。そもそも、コミュニケーション能力があって外国語が話せるなら、ボランティアなどやらずに相応のビジネスに従事するだろう。さらに、

・1日8時間、10日間以上できる
・採用面接や3段階の研修を受けられる


これは本当にボランティアの要件なのか、改めて目を疑う。完全に「仕事」「就職」のレベルだろう。しかも、20万人以上の応募を見込んでいるというのだから、この組織委員会の連中の脳内はすっかり「お花畑」と化しているようだ。
求められる能力と仕事の内容を考えれば、日給1万5千円以上でなければ「割に合わない」ものであるはずだが、これを無償で済ませてしまう辺り、日本社会における外国語能力に対する評価の低さと労働と報酬に対する無理解が見て取れる。
この条件に適合するのは、外国語能力を有する大学生が想定されるが、観戦経験があるものは少ないだろう。あとは定年後の高齢者だが、真夏の炎天下で8時間、10日間以上という条件がまずクリアできない。日本の有休取得率を考えれば、現役層はまず不可能だ。
つまり、組織委員会の無能ぶりを露呈している。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月09日

ドイツ兵の手紙にデジャヴ

言うまでもなく、ドイツの人間は総統の背後で幸いにも一致団結している。それは、総統が国民に自由と、より美しくより良い生活を再び与えるために、やむなくこの戦争をしているからだ。
(1942年5月、東部戦線のあるドイツ兵の手紙より)


このハンパ無い既視感たるや、どうだろうか!
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月08日

対テロ注意喚起って何?

【留学など注意喚起へ=全国の大学に通知方針―テロなどの事件受け文科省】
 バングラデシュの飲食店襲撃事件で日本人が巻き込まれ、世界各国でテロなどの事件が相次いでいることを受け、文部科学省は4日までに、全国の国公私立大などに対し、夏休みに短期留学や海外旅行などをする学生らへの注意喚起を促す通知を今月中に出す方針を固めた。  通知では、留学予定の学生らに、海外の治安情報などを電子メールで知らせ、緊急事態の発生時には安否確認にも利用される外務省のシステム「たびレジ」への登録を求める。大学などには、留学生が現地で事件に巻き込まれた場合に備え、危機管理体制を整えることを改めて要請する。 
(時事通信、7月5日)

いかにも「何もしないと苦情が来るから、取りあえず何かしないと」的なヤクニン根性の表れだろう。
テロは(素人が)注意すれば避けられるものではなく、当局への登録は監視と一対のものであるだけに、「テロか国家監視か」みたいな二者択一になってしまっている。しかも、登録したからといって、日本の当局が保護してくれるわけでは無く、「テロ被害に遭ったときに管理しやすい」というこれまたヤクニン根性の表れでしか無い。

今回のダッカ事件が起きたのは、外国人しか入れないような高級飲食店であり、これを回避するとなると、今度は治安の悪い地域の飲食店に行くことになるが、別の犯罪者が待ち受けているだけで、根本的解決にはならない。むしろ頻度・遭遇率の点では悪化するだろう。となると、かつての租界やバグダッドのグリーン・ソーンのような要塞を築いて閉じこもる他なくなるが、全く現実的ではない。

今回の事件に際しては、現場で「自分は日本人だ(見逃してくれ)」との声が聞かれたというが、ここに問題の一端が見て取れる。犯人たちはイスラム国の呼び掛けに呼応した現地ジハーディストと見られている。殆どの日本人は、イスラム国との対テロ戦争を行っているのは、アメリカとヨーロッパ諸国と考えており、それ故に「日本人は中立だ」と言いたくなってしまうのは当然だろう。だが、この認識は根本的に間違っている。
日本は、2014年9月にアメリカが主導して結成された「反イスラム国同盟」に参加している、立派な「交戦国」の一員であるが、交戦国と公言しないのは日本国憲法第9条の縛りと、イスラム国を国家として認知していないために過ぎない。対国家でないから、「武力行使」とも「戦争」とも言わない、というのが日本政府の公式見解なのだ。これは、私個人の主張では無く、米国国務省のHPを見れば、誰でも確認できる。

・The Global Coalition to Counter ISIL 

また、今回被害者を出したJICAは、北岡伸一理事長の下で軍事支援を解禁、新たな軍事支援スキームの構築を進めている。名目を「平和構築支援」としている辺りが、安倍政権や外務省と同じくどこまでも姑息だが。
平和構築支援では「軍事」「政治」「社会/経済」の3つの枠組みで行う包括的な取り組みが必要です。紛争を予防、解決し、平和を定着させるためには、軍事的な手段や予防外交などの政治的な手段とともに、紛争の要因となる貧富の格差の是正や機会の不平等などを改善するための開発援助が重要となります。
JICAのHPより)

問題は、日本政府・外務省が「日本は反イスラム国同盟の一員であり、同国と交戦中である」ことをひた隠しにしている点にある。確かに日本は、空爆に参加しているわけでもなければ、無人機を提供しているわけでも無いが、すでに2900億円以上の軍資金を「反イスラム国戦争」に提供しており、イスラム国側からは明確に「敵側の一員」として認定されている。しかし、政府がその事実を公表しないがために、「日本は中立」なる誤認が定着してしまっているのだ。
現代戦が非対称戦争である以上、イスラム国側は、反IS同盟が正規軍を出すイラク・シリア方面で正面から戦うつもりはなく、「後方の脆弱な部分」を攻撃する戦術を採るのが筋であり、それは全ての国家と地域が対象になる。日本本土は「脆弱では無い」から狙われないだけであり、日本人を対象外にしたわけではない。同時に非対称戦争では、非軍人が武器を持って戦闘に加わり、その対象も軍隊に限らず、双方が互いに非戦闘員を巻き込む形となるため、前線も後方も存在しない。

政府がやるべきことは、日本が「対テロ戦争」の遂行国の一員であり、同戦争に前線も後方もなく、全世界にいる日本人がジハーディストの攻撃目標になっていることを、明らかにした上で、個々の責任でリスク管理するように伝えることである。政府が真に国民の安全を願うながら、少なくとも政治的安定度の低い、ムスリムの多い国への渡航自粛を呼び掛けるべきだろう。まして、留学の場合は必要度が高いものではなく、可能な限り自粛させるべきであり、自粛に応じないものについては、コーランの一節をカタカナで書いた紙でも渡して暗記するよう推奨すべきだ。

【追記】
今回の報道を見ていても愚劣なものが多い。例えば「親日国でなぜ」は全く無意味で、テロに遭遇する確率は、ロシアであれ欧米であれ、親日度とは無関係だからだ。また、やたらと犯人の「裕福な高学歴」が強調されているが、日本赤軍やドイツ赤軍の事例からも明らかなように、テロリズムや政治的急進性はむしろ富裕な高学歴層において発現しやすいと言える。ただし、テロリズムを支持する社会的基盤に貧困があることは、ロシア革命期のロシアや昭和前期の日本で証明される。

【追記2】
繰り返すが、日本はイスラム国と戦っている当事国である。現代戦は非対称戦争なので、前線も後方も無く、安全なところなど無い。自分の身は自分で守るしかない。ちなみに、憲法9条と国家認定しないことで、政府は戦争とは言わないだけなので、「自分は日本人だから中立」と言ってみたところで、相手方は聞く耳を持たない。

【参考】
4fd88e3f-s.bmp
posted by ケン at 14:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月07日

やっぱ若年層はジミン?

【自民、比例第1党の勢い…10代の半数与党支持】
 読売新聞社が実施した終盤情勢調査では、比例選(改選定数48)は自民党が序盤情勢調査から伸ばし、2013年参院選に続いて比例選第1党をほぼ確実にする勢いだ。与党で比例選過半数をうかがう。民進党など野党は反転攻勢をかけられていない。自民党は13年参院選並みの18議席獲得も視野に入ってきた。年齢別に見ると、全世代で他党を上回る支持を得ている。特に若年層に強く、18、19歳は5割近くが自民党を支持している。18、19歳は安倍内閣の経済政策を6割弱が評価していて、30歳以上の世代よりも10ポイント以上高くなっている。自民党は20歳代で4割強、30歳代でも4割弱の支持を集めている。新たに選挙権を得た18、19歳は、半数以上が与党を支持している。
 公明党は序盤調査の勢いを維持し、13年参院選で獲得した7議席を固めつつある。公明支持層の9割に加えて自民支持層の一部を取り込んでおり、選挙区で自民党候補を応援する代わりに、比例選で公明党に票を回してもらう選挙協力が一定の成果を上げていると言えそうだ。
 民進党は序盤調査から伸び悩んでいる。民進支持層の8割強を固めて2桁の議席獲得を射程圏内に入れたが、無党派層の支持は序盤調査に比べ自民党に迫られている。年齢層が高くなるほど支持を集める傾向にあり、18〜29歳の支持は1割だったのに対し、60歳以上では2割弱だった。
 共産党も60歳以上から1割弱の支持を集めるが、若年層に浸透していない。13年参院選で獲得した5議席からの上積みを狙うが、序盤調査以降の勢いは弱まっており、比例選第3党争いでは公明党にリードを許している状況だ。
 序盤調査で近畿地方を中心に健闘して複数議席を確実にしていたおおさか維新の会は、東日本でも支持を広げつつある。70歳以上を除く全世代でまんべんなく支持を集め、4〜5議席の獲得も見えてきた。
 社民党と生活の党は序盤調査からほぼ変わらず、議席獲得の可能性を残している。その他の政党・政治団体は議席を獲得できるかどうか微妙だ。
(7月6日、読売新聞)

ヨミウリの調査なだけに慎重な取り扱いが求められるが、若年層ほど野党に冷たく、自民に親和的というのは、私が抱いている印象と一致している。
私の周囲の左翼人たちは、みな「シールズ大好き」で、「若い人が頑張っている」と持ち上げているが、現実にはロシア革命期のボリシェヴィキ(意味的には多数派)並みの少数者でしかない。
現に低中レベルの大学で教えている私の知人たちは、こぞって「学生は政治に関心などない」「学生に何か聞いても、テレビのコメンテーターの受け売りで、安倍政権のどこが悪いのですか、デマで政府を攻撃しているのは野党の方では?と返される」などと証言しており、こちらの方が私の直観に適合している。

1960年代の学生運動は、エリート予備軍が政治的疑義を提唱し、その挫折と大学の大衆化に伴って運動も衰退していった。今日のシールズなども一部のエリート予備軍が「民主主義の危機」に対して立ち上がった形だが、「エリート予備の反体制派」という「少数者の中の少数」に終わってしまっているが故に、どこまでも孤立してしまっている。実際、シールズなどの勢力が学生間に大いに拡大しているという話は耳にしない。
デモクラシーは主権者間の平等に、権力の正統性を置いているが、経済格差が深刻化し、平等性が侵害されている今日、その正統性が揺らいでいると見て良い。
近代国家の命題は、例外なく工業化(経済成長)にあり、それは権威主義国家であれ、民主主義国家であれ同じだった。だが、いざ工業化が実現すると、国家は命題を失うと同時に権力の正統性が危機を迎えた。この危機に際し、西側は消費社会とグローバル化で乗り越えるが、ソ連・東欧ブロックは産業構造のシフトに失敗、権威主義国家の権力源泉である権威そのものが国民の信頼を失って瓦解していった。
他方、西側は産業構造のシフトに成功したものの、今度はグローバル化と激しい自由競争にさらされる中で、経済格差と貧困が進行、民主主義国家の権力源泉である平等性を喪失しつつある。そして、平等性の喪失に対して、現行の政党や議会がほぼ無力であることが、デモクラシーへの不信となり、権威主義や排外主義への支持の源泉となっている。
(中略)
今の日本を見た場合、自民党と霞ヶ関は、自由経済を維持しつつ、民主主義を否定して権威主義化することで、社会保障を切り捨てて危機を乗り越えようという選択肢を示している(明言しないところがタチが悪い)。これに対して野党は、「自由と民主主義を守れ!」で合同・協力を図ろうとしているわけだが、これは米国のヒラリー氏やソ連共産党保守派の主張と同じ文脈のものでしかなく、現状の諸課題への対応策にはなり得ない。一定の既得権益層には訴求力があるとしても、既得権益から外れた貧困層には「エリートのボヤキ」程度にしか聞こえないだろう。こうした状況は、歴史的に見た場合、昭和期の社会主義政党の中で「反戦平和」を訴えた日本無産党が支持を得ず、「広義国防」を訴えた社会大衆党が競争に勝ったケースが傍証となる。
自由民主主義の終焉

若年層の支持を得るためには、対外タカ派と労働・再分配政策の組み合わせで勝負するのが最も勝率が高いと考えられるが、これはまさに戦前の社会大衆党の路線であり、歴史を知るものとしては全く笑えない状況になっている。
posted by ケン at 12:24| Comment(0) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする