2016年08月01日

鳥越氏が負けたワケ

【宇都宮氏が明かす、鳥越氏の応援演説しなかった理由】
 元日弁連会長の宇都宮健児氏と、同氏を支援する「希望のまち東京をつくる会」は31日、文書を発表し、野党統一候補となった鳥越俊太郎氏の応援演説を行わなかった件に関する経緯を明らかにした。文書の冒頭で、双方が数回の調整を行ったものの、結果的に合意に至らなかったとしている。
宇都宮氏と同会は、鳥越氏の陣営から応援要請があったことを受け、7月27日付で鳥越氏宛てに文書を送付した。その中で、築地市場の移転作業を停止し、関係者を入れて計画を見直すことなど、7つの政策の実現に向けて誠実に努力することを求めた。さらに「女性の人権問題について」と題し、「週刊文春」と「週刊新潮」で報じられた女性問題について「鳥越候補自らが記者会見など公開の場で説明責任を果たし、被害者女性への配慮を示すこと」を求めた。文書の中で、宇都宮氏と同会は「鳥越候補は、根拠を述べることなく『事実無根』として、刑事告訴まで行っています。しかし、私たちはこの記事そのものから見て、事実無根と考えることはできません。むしろ、女性とその関係者の証言まで否定することは、被害女性に対するさらなる人権侵害となる可能性があります」と指摘した。加えて、鳥越氏がテレビなどの討論会を欠席していることに対しても「明日(28日)朝以降、候補者間の政策討論等の機会があるならば、欠席しないこと」とも求めた。
 鳥越氏サイドから返答があったことを受け、宇都宮氏と同会は、翌28日に再び鳥越氏宛てに文書を送った。その中で、鳥越氏の女性問題に関する返答に対し「具体的な報道内容を見る限り、これを『事実無根』として退けられる案件とは考えられません。また、『事実無根』だとする説得力ある反証も挙げられていません」「被害を受けたという女性がおられる以上、都知事候補として、どのような事実があったのかを自ら公開の場で説明し、被害女性および都民の納得を得る責任があると考えます」と指摘した。その上で、宇都宮氏は「私はこれまで多くの人権問題に携わってきました。その原則をここで曲げることはできません。鳥越候補がこれまでの対応を撤回せずに説明責任を果たされないとすれば、きわめて遺憾ではありますが、都民に対してあなたを都知事にふさわしい方として推挙することができず、応援に立つことはできません」とつづった。女性問題について説明責任を果たさなかった鳥越氏の姿勢が、宇都宮氏が応援演説に立たなかった、最大の要因だったことが明らかになった。
(8月1日、日刊スポーツ)

都知事選は、小池氏が圧勝、鳥越氏は増田氏にも負けて、小池氏の半分以下の得票に終わった。投票率は59%と、近年では高い方であったにもかかわらず、全650万票のうち自民党の主流派と反主流派で470万票(70%以上)も獲得したことは、他党派や無党派からも小池氏に流れたことを示しており、いよいよ「ワイマール化」「デモクラシーの空洞化」が進んでいる。

小池氏が圧勝したのは、小泉純一郎氏の手法を上手く真似して「自民党と闘う孤高の女戦士」を演出して、保守層のみならず、野党や無党派の支持をも得たことが大きい。今回の選挙では、NK党の支持層からも票が小池氏に流れており、その深刻さが伺われる。
増田氏は、自公の組織票に基盤を置いた手堅い選挙をやったものの、「利権集団の傀儡」という印象を払拭できないまま、自公の支持層も固められずに終わった。
鳥越氏については、先にも指摘した通り、宇都宮氏を辞退させた悪影響が予想以上に大きかったようだ。一部の「意識高い」層が、「反ファッショ統一戦線で鳥越を」と呼び掛けたものの、浸透度は低かった。民進党支持層に至っては、鳥越5割、小池4割という有様で、都議団の中立化が響いた格好だ。「野党共闘」とはいえ、共闘者が内部分裂しているのだから、その効果が半減するのは当然だろう。このことは、十分な合意の無い、トップダウン式の共闘の厳しさを示している。

だが、鳥越氏に関しては、候補選定プロセスや組織上の課題以上に、属人的な条件が悪すぎた。全て上の記事に書かれている通りで、「説明責任」という、有権者が候補者に主権を委任する際の条件(対価)を満たせなかったのだから、マスコミや司法対応でむしろ不信感が高まってしまった観がある。左翼人は「スキャンダル報道で票を減らした」と騒いでいるが、私に言わせれば、危機対応・リスク管理の拙さこそが問題だったのであって、二言目には陰謀論を唱える旧式左翼が支持されないのは当然だろう。

さらに決定的だったのは、選挙中はさすがにほのめかす程度しか書けなかったが、ネトウヨが指摘していた「認知症の疑い」である。鳥越氏が立候補を決めたのは、告示日前日だが、告示されて数日後には、「演説原稿を渡しても覚えられない」「長時間話すと支離滅裂になる」といった話が聞かれるようになり、「日に二、三箇所の街頭演説」「本人が話すのは3分以内」といった事実が傍証となっていた。
どうやら認知症の初期症状のようで、選対本部もそれを隠蔽するのが関の山だったらしい。これで選挙しろというのがムリな話で、そもそも鳥越氏を連れてきた岡田代表は、投票日前日に代表選不出馬を宣言、自らの敗戦責任を認めてしまったが、あまりにも無責任な対応だった。

鳥越氏は「負けるべくして負けた」と言えるが、岡田氏の狙いは裏目に出て、不満と遺恨が強く残る、野党共闘に大きな影を落とす結果となった。知名度頼みの限界とも言えるが、小池氏を見た場合、知名度なくしては当選もおぼつかないとも言えるだけに、大きな選挙における候補の選定がいかに難しいかも示している。

【追記】
「もしケンちゃん(が候補)だったら何を主張した?」と聞かれた。私であれば、「東京五輪返上」のワンイッシューで勝負しただろう。運営費が最低で1兆8千億円、対して収入が最大で4千億円でしかない東京五輪は、それ自体が最大のムダである。また、小池氏は五輪開催のために財産接収の可能性まで言及し、治安維持のためとして公安や公調が急速に肥大化する中、基本的人権を制限しなければ開催できない五輪は、近代国家の基本的価値を侵害するものでしかない、という認識である。世調では、五輪賛成が6割、反対が4割で、賛成票が二分されている以上、反対票をまとめれば十分に勝機があったはずで、むしろ「五輪の是非」に争点を持ち込むことで、相手方の分裂を誘い、対応を難しくさせたはずだった。それ以外には(あえて言うなら)、「海外出張を半分に」「天下り(都外郭)団体を半分に」を主張しただろう。個人的には、巨大な権限を有しながら行使できない知事を補強するために、政治任用ポストを増やすことを提唱したい。知事と議会が対立すると、副知事すら決められないし、都官僚が強大な権限を有して知事を妨害する現状は大いに改善されねばならない。これは諸刃の剣であることも確かなのだが。東京分割論も主張したいけど、これはどうかなぁ。

【追記2】
もっとも、宇都宮氏は宇都宮氏で、「人の話を全く聞こうともしない人」という評価があり、弁護士内ですら必ずしも評判は良くなく、現実にはなかなか難しかったかもしれない。
posted by ケン at 12:43| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする