2016年08月09日

自衛隊の初交戦近づく

【駆け付け警護付与 11月派遣、南スーダンPKOに 政府方針】
 政府は、今年11月から南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の部隊に、駆け付け警護など今年3月に施行した安全保障関連法で可能となった新任務を付与する方針を固めた。月内にも防衛省が発表し、任務遂行に必要な訓練に着手する。自衛隊に安保関連法による任務が与えられるのは初めて。複数の政府関係者が7日、明らかにした。新たに付与される任務は、離れた場所で武装勢力に襲われた非政府組織(NGO)職員などを救援する「駆け付け警護」と、治安悪化などによる緊急時に他国軍と協力して宿営地を守る「共同防衛」の2つ。
 南スーダンの首都ジュバは7月に入り、政府側と元反政府勢力の戦闘が再燃。駐南スーダン大使ら日本大使館員が陸自の宿営地に避難する事案や、日本人4人を乗せた国際協力機構(JICA)の車両が走行中に銃弾を受ける事案などが発生している。政府関係者は「いざというときに現地の日本人や宿営地を守るため、自衛隊による新任務の必要性が高まっている」と指摘する。
 安保関連法では、PKO派遣部隊が現地の監視・巡回を行う「安全確保業務」も可能となったが、政府内には「いきなりすべての新任務を与えるのはリスクが高い」(官邸筋)との慎重論もあることから、今回の付与は見送る。派遣する部隊の人数は現状の約350人体制を維持する方向だ。政府は、平成24年から南スーダンPKOに参加。陸自の施設部隊を半年交代で派遣し、幹線道路の整備や避難民への支援活動にあたっている。駆け付け警護などが可能となる安保関連法施行後も「隊員の安全のため慎重の上にも慎重を期す」(中谷元前防衛相)との方針から、表立った訓練を見送ってきた。
(産経新聞、8月8日)

南スーダンでは、すでに戦闘が再開され、反大統領派が部隊を引き連れて首都ジュバを大挙、実質的に停戦合意は反故になっている。従来の「PKO五原則」からすれば、「紛争当事者間の停戦合意」が破られている以上、南スーダンはPKOの対象から除外され、撤退する段階にあるはずだが、近年では「住民保護(難民化抑止)」の立場から、同名目が成立する場合、戦闘も辞さないスタンスをとっており、「三番目の当時者」であることに躊躇しなくなっている。

首都ジュバは、これまで「治安が安定している」と言われ、自衛隊もインフラ整備に携わっていたが、7月8日に戦闘が起こり、政府軍だけで150名以上の戦死者が出た。これを受けて、350人からなる自衛隊部隊は国連施設内に籠城、ごく近隣の道路整備だけ行うのみとなっている。
7月以降、自衛隊の宿営地周辺でも激しい戦闘が行われ、宿営地内にも砲弾が着弾したと言われる。また、ジュバ国際空港に向かったJICAの車両が銃撃を受けるという事態まで発生している。
アフガニスタンでもイラクでも同じだが、非対称戦争においては前線も後方も無く、「首都だから安全」などということはあり得ない。つまり、自衛隊はすでに交戦地域にいるのだ。そこに「駆け付け警護」などとなれば、自衛隊が交戦に参加する確率は飛躍的に上がるだろう。

ところが、現実の自衛隊には不安要素が多い。まず、自衛隊は憲法上「戦力=軍隊」ではないため、交戦規定を有しておらず、今回は便宜的にPKOのものを共有することになるが、その交戦対象は反政府組織や武装集団だけでなく、政府軍や警察、政府側民兵をも含むという幅の広さがあるため、仮に政府軍から銃撃されたとしても、応戦しなければならなくなる。まして、「駆け付け警護」が任務化され、PKOの目的が「住民保護」である以上、適当な理由を付けて戦場から離脱することもままならない。
また、自衛隊には軍事法廷に象徴される軍司法機能が存在しないため、戦闘を始めとする軍事行動に際して犯罪行為や不祥事が起きたとしても、これを取り締まって裁くことができず、現地住民や国際社会に対して説明責任を果たせない。その結果、イラク派兵以降、自衛隊内では不祥事を隠蔽する傾向が強まっているが、今回それが加速する恐れがある。

仮に南スーダンなどで自衛隊が交戦を行ったとしても、政府は憲法上、「武力行使には当たらない」と強弁するほかなく、それは悪しき前例となり、いずれは満州事変のような大規模な軍事行動すら「自衛権の行使で、武力行使(侵略)には当たらない」などと意味不明の説明がなされ、憲法の空洞化を加速させることになるだろう。
posted by ケン at 12:39| Comment(6) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする