2016年08月10日

分配から成長に傾斜する霞ヶ関

【雇用保険料率0・6%に引き下げへ…政府調整】
 政府は、月内にもまとめる経済対策に盛り込む失業給付などに充てる雇用保険料率の引き下げについて、下げ幅を0・2ポイントとする方向で調整に入った。現行で0・8%の料率を、0・6%に引き下げる。働き手の負担を軽くして可処分所得を増やし、消費を喚起する狙いがある。雇用保険料は、働き手の賃金のうち保険料率に応じた金額を、労使が折半して負担する仕組み。現行の料率で、年収400万円の会社員の場合、年間3万2000円を、労使で1万6000円ずつ支払う。料率が0・6%に下がると、労使の保険料負担はそれぞれ4000円ずつ減る計算だ。政府は今後、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の議論などを経て、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針だ。
(7月22日、読売新聞)

すでに雇用保険料率は過去最低水準になっており、それをさらに引き下げることとなる。表面上の失業率の低下を根拠とし、企業の負担を減らしつつ、労働者の消費を増やすことを目的としているようだ。
だが、現実には失業率の低下は、高齢化や求職活動停止などの要因が大きいと考えられる。同時に、非正規雇用の割合も上昇し続けており、そもそも失業保険の対象外に置かれる層が増えている。

問題は、失業者に占める失業手当受給者の割合で、2012年で79%、2013年で80%もあり、実数にして200万人以上が失業したにもかかわらず、同手当を受給できていないことにある。
例えば、2013年の調査によれば、ハローワーク申請者の求職理由について、「非自発的な離職」が90万人で、うち「勤め先や事業の都合」は61万人、「定年または雇用契約の満了」は29万人。このほか、「自発的な離職(自己都合)」は96万人、「新たに求職」は74万人などとある。同年の失業手当受給者は52万人であり、「非自己都合」退職に限っても57%の人しか受給できていないのが現状だ。
77%以上の失業者が失業給付を受けられないのは、単純に受給要件が厳しいからに他ならない。
受給資格は、年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定され、それによって受給期間も90日〜360日の間で決められる。そして「求職活動している(働く意思と能力がある)」ことが求められる。
非正規の場合、雇用保険に入っていないことも多く(私設秘書の大半も未加入)、保険加入期間も半年ないしは1年以上必要であるため、雇用期間が短い場合も受給資格を有することができない。
要するに単純に「解雇されました」だけでは失業保険は下りないのだ。

失業給付が受けられない77%以上の失業者たちは、貯金を取り崩すか、借金するか、親族にすがるしかない。
現状は、ホームレスの急増や急速な治安の悪化などといった目に見える形では反映されていない。が、失業期間の長期化とセーフティネットの不整備によって、「派遣村」が提起した問題が、近い将来、再び生起してくることになるだろう。
特に、団塊世代の定年退職が進むことで、家族の担保能力が低下する中、現役世代の貯蓄が底をついた場合、「失業=ホームレス」という状況はより一般的なものになってくるだろう。
失業者の8割が失業手当すらもらえない国

本件の本質は、霞ヶ関が分配から成長への傾斜を深めているところにある。労働市場における弱者からの収奪を強化して、その利益で経済成長に投資するのだろう。社会保障制度全体で考えても、増税を見送った以上は、社会保障給付費を削減するしか対応策がなく、近い将来、本格的な切り下げが始められるだろう。

我々は、この引き下げに反対し、失業保険機能の拡充、具体的には同手当受給層の拡大をこそ主張すべきだ。
posted by ケン at 12:35| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする