2016年09月30日

来年1月解散のほぼ一択

【衆院解散「いつあっても」=山口公明代表】
 公明党の山口那津男代表は28日、東京都内で講演し、「衆参ダブル選挙はなかった。ここから先はいつ(衆院)解散があっても、あまり時間がないから『常在戦場』で自分自身を磨けと言っている」と述べ、早期解散を前提に選挙準備を進めるよう党内に指示したことを明らかにした。政界では、安倍晋三首相が来年1月の通常国会冒頭にも解散に踏み切るのではないかとの観測が浮上している。山口氏は「過去、東京都議選と同じタイミングでやったことはなかった」とも語り、公明党が重視する来年夏の都議選と時期が重ならないよう首相が配慮するとの見通しを示した。 
(9月28日、時事通信)

次の衆院解散は来年一月解散のほぼ一択となった。永田町で言われているのは、1月31日公示、2月12日投票、ないしは2月7日公示、同19日投票である。

タイミングの理由としては、日露交渉の進展により12月の首脳会談で一定の成果が挙げられるという確信があり、その支持率上昇をテコに選挙を行うというもの。自民党にとっては幸いなことに、民進党の支持率も低迷している上、新代表はスネに傷を抱えている身なので、「この機を逃す手は無い」という判断に傾いている。
また、この時機を逃すと、不況の波に襲われる可能性が出てくるのと、来秋以降になると定数減の新区割が確定し、選挙区を失う自民党議員が続出するため、延命を図る意味もあるという(自民関係者談)。
他方、KM党は来夏に彼らにとって最大の関心事である東京都議選を抱えており、来夏の総選挙を回避するためなら何にでも妥協せざるを得ない。それがたとえ前回選挙から2年しか経ていなくても同意するほか無いのだ。

野党側は全く戦う態勢が整っておらず、特に民進党の野田幹事長は他の野党にパイプを持たず、本来共闘に否定的な立場であるため、この点でも自民党に有利だ。冬の選挙と選挙疲れによる投票率低下も期待できされよう。現状では、自民党の300議席超はほぼ確定しており、ゲーマー的観点からしても、「いまダイスを振らないヤツはいない」くらいの状況にある。

こういうことが起きるのは、解散権について憲法の記載が不明確であるため、「総理個人の判断で衆議院を解散できる」という解釈がまかり通っているためだ。その結果、政権側が人気取りの施策を行って解散・総選挙を行うことが可能になり、本来4年ある任期が2年毎に選挙という話になっている。これが、有権者の選挙離れを加速させ、ますます政権側を利している。

【参考】
解散権を改革する 

【追記】
10月に行われる補選は、二つとも自民が圧勝する勢いにある。特に民進党の劣化具合は酷く、東京の候補者は総支部から「公認を取り消して欲しい」と党本部に陳情があり、選対委員長が仲裁したほどだった。福岡の候補者は、街頭でロクに演説できないとの評判。どちらもとても「戦える」タマではないというのが永田町の評価になっている。民進党は戦う前から戦力が枯渇している。
posted by ケン at 11:54| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月29日

二島返還で決着??

【北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件】
政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。複数の政府関係者が明らかにした。択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。
(9月23日、時事通信)

官房長官は全力で否定しているが、全力で否定しているところと、ネタ元が「ヨミウリ」というところがますます信憑性を高めてしまっている。

60年間主張し続けてきた四島返還論の虚偽性(日ソ共同宣言の否定)をどう説明するのか(たぶん何も言わない)。それ以上に、大統領選という、米国が外交的に麻痺状態に陥っている最中に「対露単独講和」するという手法が、果たして宗主国に許されるのか。「ダレスの恫喝」の有効性を含めて興味深い。世論調査上は「二島返還でOK」が多数を占めているので、日比谷焼き討ち事件のようなことは起きそうにない。そして、日露平和条約の道筋をつけて、来年1月に解散・総選挙となる見込みが強い。自民党は三度大勝して、一党優位体制を決定づけるのか。

和田春樹、望月喜市先生から私に列なる「二島プラスアルファ」派としては「ほら、言わんこっちゃ無い、さっさとこうしておけば良かったんだ」という感じだが、ずっと四島返還を唱えていたキムラ、ハカマダ、シモトマイら主流派が何と言うのか気になるところ。我々の案を鼻で笑ってきた外務官僚はすぐにクビにしてやりたいところだ。
北方領土問題は、本ブログ開設間もなく(2006年頃)から継続的に触れてきたが、そのスタンスはずっと「二島プラスアルファ」である。

まずはおさらいしておこう。北方領土問題は、日ソ共同宣言さえ見ておけば十分で、特に90年代以降の交渉を追う必要はない。まずは【賠償・請求権の放棄】を見よう。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日(ソ連の対日参戦の日)以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

ここでソ連は日本に対する(戦勝国としての)賠償請求権を放棄した。さらに、日本・ソ連は相互にソ連参戦以降に生じた戦争結果に対するすべての請求権を放棄している。日本はすでに「不法に北方領土を占拠した」ソ連(ロシア)に対する領土請求権を自ら放棄しているのだ。

もう一つ【平和条約・領土】を見て欲しい。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

これは、法的拘束力を持つ条約で、領土問題よりも平和条約を優先することを自ら規定していることを意味する。つまり、「領土問題解決後に平和条約を」と言う従来の日本政府の主張は、自ら条約違反あるいは条約反故を宣言しているようなものなのだ。

日ソ共同宣言以前の衆議院の決議などを見ても、二島返還を求めるものはあっても、四島を求めるものは存在しない。
昭和27年7月31日 衆議院決議 
領土に関する決議

 平和条約の発効に伴い、今後領土問題の公正なる解決を図るため、政府は、国民の熱望に応えてその実現に努めるとともに、時に左の要望の実現に最善の努力を払われたい。
 一 歯舞、色丹島については、当然わが国の主権に属するものなるにつき、速やかにその引渡を受けること。
 二 沖縄、奄美大島については、現地住民の意向を充分に尊重するとともに、差し当り教育、産業、戸籍その他各般の問題につき、速やかに、且つ、広い範囲にわたりわが国を参加せしめること。なお、右に関して奄美大島等については、従来鹿児島県の一部であつた諸事情を考慮し特別に善処すること。
 三 小笠原諸島については、先ず旧住民の復帰を実現した上、教育、産業、戸籍その他各般の問題につき、速やかに、且つ、広い範囲にわたりわが国を参加せしめること。
  右決議する。

ところが、日ソ平和交渉当時のダレス米国務長官が「沖縄不返還」をちらつかせて、日ソ平和条約の締結に難色を示す。そこで用いられたのが「固有の領土」論だった。以降、日本政府は方針転換して、日ソ平和条約の締結を断念し、それを糊塗するために「北方領土返還運動」に邁進しくことになる。
(前略)米国は、歴史上の事実を注意深く検討した結果、択捉、国後両島は(北海道の一部たる歯舞群島及び色丹島とともに)常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。米国は、このことにソ連邦が同意するならば、それは極東における緊張の緩和に積極的に寄与することになるであろうと考えるものである。

日ソ交渉に対する米国覚書  1956年9月7日

北方領土問題についての様々なスタンスについても説明しておこう。
上に行くほど強硬路線で、下に行くほど柔軟・現実路線である。

四島一括返還論:最右派、右翼の大半が主張するものだが、現実に四島を実効支配するロシアが一括返還するメリットも理由も全くない。研究者では、木村汎氏や袴田茂樹氏らがここにいる。

四島返還論:政府の主張。四島の日本への帰属が明確にされるのであれば、返還の時期などについては柔軟に対応する、というもの。自民党も公式的にはこのスタンスであり、旧民主党は2009年の政策転換で「一括返還」から軸足を移している。研究者では、下斗米伸夫氏を筆頭に多数派を占める。

段階的返還論:鈴木宗男氏や佐藤優氏らの主張(森元首相も?)。二島を先行返還させた上で、残る二島は「交渉継続扱い」とするもの。しかし、鈴木氏らは「我々こそが真に実現性のある四島返還論者なのだ」という旨を述べており、分かりにくい構図になっている。

二島引き渡し+α論:和田春樹先生、望月喜市先生からケン先生に列なるロシア・ソ連研究者非主流派の主張。日ソ共同宣言を忠実に履行し、日ロ平和条約を締結して二島引き渡しを受ける。但し、平和条約締結に際し、国後・択捉の共同利用や共同開発、そして漁業権・資源採掘などについて、同時に付帯条項あるいは協定を結ぶ、というもの。

その他に「三島返還論」とか「領土二分割論」などが存在するが、これはまったく勢力になっておらず、ほとんど「思いつき」の域を出ない。
「領土二分割論」(フィフティ・フィフティ論)は、中ロの珍宝島・ダマンスキーでの国境紛争における最近の解決方法を参考にしたもの。しかし、この島は、ウスリー川の「川中島」に過ぎない島であり、一度洪水でも起これば川の流れ自体も容易に変わりかねない領域である上に、交渉の基礎となる条約もなく、純粋にパワーバランスと経済効果の観点から、ロシア側が譲歩する形で国境が確定している。

今回の政府の政策転換は、公式上(官房長官は否定しているが)は「四島返還論」から「段階的返還論」に移行するものだが、現実の平和条約交渉では限りなく「二島プラスα」に近づいてくるものと推測される。たとえ「潜在的」であっても国後島と択捉島の日本側主権について、ロシア側に認めさせるだけの条件を、日本側が提示するとは考えられないからだ。現実には「継続交渉という名の棚上げ」という形でしか交渉は成立しないだろう。

日本側は、対中包囲網、北朝鮮の脅威、エネルギー確保などを考慮して、対露平和条約の価値が未だかつて無いほど高まっている。一方、ロシアとしては対露経済封鎖によって対中依存が高まっているだけに、中国以外の有力国との連携が非常に重要となっており、シベリア油田の輸出先としても日本が有力視されている。
非公式の世論調査でも、すでに「二島返還でOK」とする回答が「絶対四島」を大きく上回っており、ポーツマス条約締結後に起きた日比谷焼き討ち事件が再現される可能性は極めて低い。

だが、日本がロシアと平和条約を結ぶということは、宗主国であるアメリカからすれば「単独講和」以外の何物でもなく、明らかな「裏切り」と写るだろう。現在のアメリカにとって、最大の脅威はロシアとイスラム国(ジハーディスト)であり、その次にイランが来て、中国は5番目以下でしかない。この脅威認識のギャップが、日本政府をして「単独講和」に向かわしていると思われる。
ただ、米国では大統領選挙が始まろうという時機であり、外交的に麻痺状態にあるところを狙って「単独講和」を図る安倍政権に対し、アメリカが「天罰」を下すのか、「ダレスの恫喝」
が再現されるのか、最も興味深いところである。

12月の安倍・プーチン会談で平和条約への道筋が付けば、経済危機でも起きない限り、1月早々に解散・総選挙が打たれるだろう。民進党をはじめとする野党にはすでに対抗できる力は無く、自民党は再び300議席以上を得て、結党以来初の「衆院選三連勝、国政選挙五連勝」を実現することになりそうだ。

【参考】
北方領土問題についての基本的理解 
北方領土論争における立ち位置 
posted by ケン at 12:45| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月28日

保守政権が賃上げを求める愚

【世耕経産相「しっかり賃上げを」=経団連会長らと会談】
 世耕弘成経済産業相は15日午前、東京都内で経団連の榊原定征会長と会談し、「しっかり賃上げを行わなければ経済の好循環は実現しない」と述べ、収益を上げた企業は十分な賃上げを行うよう求めた。経団連トップとの会談は8月の経産相就任後、初めて。世耕氏は併せて「中小企業の取引条件を改善して賃上げにつなげ、地域経済を活性化することが重要だ」と指摘。中小企業が賃上げできる環境を整えるため、大企業との取引で不利にならないよう条件改善に取り組むことも要請した。
(時事通信、9月15日)

このところ安倍政権はしきりに財界に賃上げを要請し、その成果を誇っているが、野党からは「実質賃金は低下している」との批判を浴びている。改造後の新閣僚も、改めて財界に賃上げを求めていることからも、少なくとも「賃上げ効果が市場に反映されていない」との認識はあるようだ。これに対し、財界側は「国内需要が無い」「為替が安定しない」等の理由から消極姿勢を示している。

これについては、財界からすれば迷惑以外の何物でもないだろう。安倍政権が言う「景気回復」なるものは、「株価が上昇した」だけの話であって、国内需要が伸びているわけでは無く、むしろ国内需要は今後さらに低迷、低下するという認識が一般的だからだ。
安倍政権下における株価上昇は、日銀によるゼロ金利と量的緩和によって企業や銀行が国債から株に乗り換え、さらに年金基金を株式につぎ込んだこと(株式運用の割合を25%から50%に)で実現したものであって、本来の景気(消費)を反映したものではない。

これに対し、国内需要は絶望的状況にある。非正規雇用の割合は4割で高止まりしている上、家計貯蓄率はマイナス、貯蓄ゼロ世帯は4割にも達している。いまや被雇用者のうち2200万人以上が年収300万円以下の生活を余儀なくされている。
大学生の半数は学生ローンを借りている。学生のアルバイトも、我々初老世代のような遊ぶための小遣い稼ぎでは無く、少ない仕送りを補い、教材等を購入するための労働となっている。
さらに団塊世代が丸ごと年金生活に入り、20年以上の余命が想定されることから消費は手控えられる傾向が強まっている。霞ヶ関のエリート官僚がイメージする「孫に気前よく金を出す祖父母」などはごく一部にしか存在しない絵空事と化しつつある。

国内需要が縮小再生産のスパイラルに陥っているのに、設備投資して人件費を増やすインセンティブなどどこにも無いのは当然だろう。需要が増える展望が無いのだから、経営側としては人件費を増やせるワケが無い。
ゼロ金利である今は、とにかく負債を減らすのが企業側として合理的な選択となる。需要が無いのだから、設備も人も増やせず、結果、内部留保ばかりが増えてゆく。この内部留保を、国債で持つか、現金で持つか、株で持つか、という程度の選択肢しか無い。

さらに日本の場合、労働法制や労働組合が機能せず、超長時間労働やサービス残業が容認されているため、企業側としては社員数や賃金を増やさずに「必要なだけ」労働を要求できるだけに、労働生産性を上げるインセンティブが全く働かない。
本来賃上げというのは、労働生産性の向上に対する対価として行われるべきものであるため、この点でも経営側は賃上げする理由が無い。
また、労働組合側も、総需要の低下を受け「現在の(正社員の)雇用を守ること」が最優先事項となり、資本への従属を強めており、労働時間削減や賃上げを求めなくなってしまい、結果的に労働生産性の向上を阻害してしまっている。労働者が資本家に協力するのは、生産性を高めることで労働価値を高め、その代償として賃上げを要求するためだが、そのサイクルが失われて久しい。

実のところ、バブル崩壊後の「失われた20年」というのは、バブル期に最大化された供給と、その崩壊によって極小化してしまった需要のギャップによって生じていると考えられる。
議会制民主主義が真っ当に機能していたのであれば、供給側に立つ自民党が政権を失い、需要側に立つ野党が政権を担うことで、このデフレギャップを埋める政策が採られるはずだった。
だが、日本の場合、ごくわずかの期間を除いて自民党が政権にあり続けたため、常に供給側を支える政策を採ってしまい、総賃金を急速に低下させると同時に、供給には歯止めを掛けられなかった。需要を刺激する政策が採られなかった結果、デフレが長期化したのである。
それでも、リーマンショックを受けて、ようやく選挙による政権交代が実現し、民主党政権が誕生する。
小沢=鳩山路線は、「子ども手当」「高校無償化」「労働規制強化」「公共事業削減」など、まさに需要を拡大させつつ、供給に歯止めを掛ける方向を示したものの、「バラマキ」と批判され、その他の要因が重なってわずか半年で潰え、自民党と何ら変わらない菅・野田路線に転換してしまった。

そして「どうせ同じなら自民党でいいじゃん」ということで安倍政権が誕生し、今日に至っている。その施策は、供給サイドを援助しつつ、貧困層を増大させ、株価を操作することで表面を取り繕う、というものだが、その破綻が見えてきたからこそ、財界に対して賃上げを「お願い」するという行為に出ていると推察される。
安倍政権がしきりに日中対立を煽っているのも、「小規模な戦争によって大需要を生み出す」という陰謀論的側面もあるのかもしれない。
posted by ケン at 12:04| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月27日

教育の公的支出最低レベル続く

【日本、33カ国中32位=教育への公的支出割合−OECD】
経済協力開発機構(OECD)は15日、2013年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合の調査結果を公表した。日本は3.2%と7年ぶりに最下位を免れたものの、比較できる33カ国中ハンガリー(3.1%)に次ぐ32位にとどまり、OECD平均の4.5%も下回った。33カ国の中で最も高かったのはノルウェーの6.2%。次いでデンマークの6.1%、ベルギー、フィンランド、アイスランドが各5.6%で、欧州の国々が上位を占めた。大学など高等教育への支出を公費で負担している割合は、日本は35%で、韓国(32%)に次いで2番目に低く、大部分を私費で負担している実態が明らかになった。OECDは、日本では高等教育への需要が高いにもかかわらず、公的支出が少ないと指摘した。
(時事通信、9月15日)

日本の教育予算に占める公的支出の割合は、すでに長いこと先進諸国中で最下位を争う状態が続いている。OECD平均にまで上げようとした場合、約6.5兆円の予算支出が必要となるが、税収が50兆円という現状では現実的とは言えず、財務省はむしろさらに削減する方向で動いている。
その影響を大きく受けたのが高等教育で、採用される教員は非常勤ばかり、専任の教員は事務作業と授業が大幅に増え、学生にとっては学費や教材費が上がる一方となっている。日本の大学は、人件費を極限まで減らし、自国の学生には借金させ(大学生の半数がローン生活)、海外から出来の悪い(欧米に行けない)留学生を集めることで生命を長らえているものの、実質的には多くの大学が頓死寸前の状態にある。これは実のところ、質の悪い教育を受けた学生に、借金を背負わせて社会に出しているわけで、長期的には社会そのものの衰退を加速させることになるだろう。
本来であれば、子どもの数が少なくなったのだから、一人当たりの予算を増やし、教育の質を高めることができるはずだが、現実には「子どもが減っているのだから、予算も減らせるはず」という判断になってしまっている。予算削減をカバーするために、予算の「選択と集中」を行い、エリート教育を進めようというのが自民党や文科省の方針となっているが、エリート教育というのは国家レベルではほぼ成立しない、あるいは教育の全体水準を下げてしまうことは、歴史が証明している。

この点についても、民主党鳩山政権は予算を大幅に見直し、教育予算を増やす方向性を示していたが、わずか半年で潰え、菅・野田政権が成立し、財務省主導の下で放棄してしまい、今日に至っている。
「国民が選んだこと」「後悔先に立たず」とはいえ、残念な選択であった。
posted by ケン at 12:13| Comment(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月26日

どんどん似てきた日露−ロシア下院選2016

【2016ロシア下院選 プーチン大統領再選に弾み】
 ロシア下院選で政権与党「統一ロシア」が圧勝したことは、欧米の対露制裁などによる経済悪化にもかかわらず、有権者のかなりの部分が政権を支持している現状を示した。プーチン大統領は、2018年春に予定される大統領選に向け、自信を深めたとみられる。一方、今回の選挙では大都市部の投票率が大きく低下し、国民の政治や選挙に対する不信も鮮明になった。
 プーチン氏は19日、政府との会合で下院選の結果に触れ、「たいへん困難な状況で、人々は断固として安定を望み、統一ロシアに依拠する政府を信頼している」と述べた。18日夜には統一ロシアの選対本部で早々と勝利を宣言していた。苦戦の伝えられていた統一ロシアが圧勝した理由としては、まず、特に地方部で権力に隷従する国民心理が根強いことがある。今年は「プーチン時代」で初めて年金の支給額が実質減となり、多くの地方が財政難にあえぐ。しかし、「経済危機だからこそ、政権に救済を求める」(政治学者)という投票行動が起きた。
 11年の前回選では統一ロシアが大きく後退し、選挙不正疑惑に抗議する大規模デモも起きた。この後のプーチン氏は同党から距離を置いていたものの、選挙戦終盤になると同党との密接な関係を誇示してテコ入れした。政権が11年のデモを受けた懐柔策として復活させた小選挙区投票も、選挙区の設定が与党にきわめて有利なものとされた。投票率が48%と下院選史上で最低だったことも与党を利した。モスクワの投票率は前回の66%から35%へ急落。多くの主要地方都市で投票率が3〜4割にとどまったもようだ。政権与党と「親大統領野党」による管理選挙を嫌気し、「選挙では何も変わらない」と諦観する都市部住民の強い政治不信が根底にはある。
 今回の選挙で経済情勢や腐敗に対する国民の不満が解消されたわけではなく、反体制派指導者は「選挙制度が信頼されていない現状は危険だ」と指摘する。選挙不正に関する情報は多数出ているが、11年のような反発が起きる兆候はない。
(9月20日、産経新聞)

長期間にわたる一党優位体制、低投票率、小選挙区・比例代表並立制、整備された市民監視システムなどなど、日本とロシアはますます似てきている。
日本も貧困層が3千万人以上もいて、さらに悪化させる(再分配を弱めて富の集中を図る)施策が採られているにもかかわらず、何度選挙をやってもそれを進める自民党が大勝する構図になっており、この点もロシアとよく似ている。
主だった野党が政府に協力姿勢を示し、半ば与党化して批判力を失っている点も共通している。共産党がほぼ唯一の批判勢力となっている点も似ているが、ロシア共産党は対外・安保政策については政権と共同歩調をとっている。
トップが権威主義的で、大権を振るうところも共通しているが、だからこそ日露交渉が進んでいる(らしい)側面もある。

日本のマスゴミは、欧米のそれの垂れ流しなので、ロシアで選挙と言えば不正選挙と決めつけている。だが例えば、今回選挙制度が改正されて小選挙区制が導入されたロシアでは、各投票所に候補者紹介が大きく貼り出され、プロフィールや政策・主張などの他に、保有資産の一覧についても記載されている。その信頼性はともかく、投票所に名前しか無く、投票の場では何の情報も与えられない日本と違い、投票時に指標となるものを少しでも多く提示しようというロシアの意欲が伺われる。「ロシアにはロシアのデモクラシーがある」というプーチン氏の言にも一理あるのだ。

ロシア人の間には、欧米型の資本主義・民主主義を導入した結果、欧米資本に全土の生産インフラをわずか50億ドルで買い叩かれたことに対する怨念が強く、欧米では人気の高い「市民派・改革派」はこれを再現しようとしているのではないかという根強い不信がある。これが理解できないと、欧米マスゴミが流す陰謀論に傾いてしまうだろう。

また、選挙制度が改正されたとはいえ、小選挙区と最低ラインの高い比例代表制の並立制なので、小政党には圧倒的に不利になっている。これも日本と似ているが、「市民派」の内部対立が激しく、いつまでも一本化できない点も、政権批判層を投票から遠ざけてしまっている原因と推察される。
一党優位体制下で「結果が見えてしまう」小選挙区制が、ますます投票率を下げ、政権党を利するという構図も日露共通のものと言えよう。日本も来年早々に解散総選挙が行われ、自民党が三度大勝、一党優位体制をさらに強固なものにしそうだ。
posted by ケン at 12:26| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月24日

ラノベ祭り(2016.9)

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今月は楽しみにしているラノベが目白押しで、プチ引きこもりモード。
まずは「祝!狼と香辛料再始動」。「貨幣論でラノベ」という斬新すぎる試みを、しかも大成功させた支倉先生の新シリーズ、超期待してます。
でも現時点での一押しは、白鳥先生の「りゅうおうのおしごと」。「ガチ将棋でラノベ」という、これも「有りそうで無かった」斬新な試みだけど、ガチ将棋とガチロリの組み合わせが超熱く、今もっとも「続きが気になる」シリーズ。
蝸牛先生の「ゴブリンスレイヤー」は、どこかで改めて紹介するつもりだけど、「ゴブリン退治専門」のシビアなファンタジー観がたまらないデス。

『狼と香辛料XVIII Spring Log』 支倉凍砂 電撃文庫
『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』 支倉凍砂 電撃文庫
『はたらく魔王さま!0-II』 和ヶ原聡司 電撃文庫

『りゅうおうのおしごと!4』 白鳥士郎 GA文庫
『ゴブリンスレイヤー3』 蝸牛くも GA文庫
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月23日

8、9月の読書報告(2016)

『都知事―権力と都政』 佐々木信夫 中公新書(2011)
都知事が2人連続で辞任、そのどちらも都庁官僚の内部告発に始まっている。中規模国家レベルの予算を持ち、行政権が集中する大統領制であるため、下手をすると同じ国の首相よりも大きな権限を有する東京都知事。だが、その責務と役割についてはあまり知られておらず、解説書も多くない。本書は、東京都の成り立ちから今日に至るまでの行政史と、自治行政における都の役割と都知事の権限機能について概説している。都官僚出身なので、官僚寄りであることは否めないが、必要な情報をコンパクトにまとめており、入門書としては十分だろう。都知事一人に行政権が集中し属人的要素に大きく左右される一方、都議会が立法機関としては十分に機能せず、ただの翼賛機関に成り下がっているという指摘は重い。

『北海道警察 日本で一番悪い奴ら』 織川 隆 だいわ文庫(2016)

『警察と暴力団 癒着の構造』 稲葉 圭昭 双葉新書(2014)
先に紹介した映画『日本で一番悪い奴ら』の原作と、主人公のモデルになった稲葉元警部の書。他の行政機関や市民・議会からのチェック機能が効かない警察組織が、いとも簡単に腐敗し、組織の隅々まで腐敗が拡大しているかがよく分かる。チェックが働かないため、自己改革や浄化のインセンティブが無く、問題が起きてもトカゲの尻尾を切るだけに終わり、腐敗構造そのものは延々と続いている。この辺は旧軍とよく似ている。「○○撲滅週間」のために「ネタ」をとっておくとか、「取り締まりすぎると、その後のノルマ達成が難しくなる」とか、旧ソ連でもよく見られた官僚的習慣が超笑える、いや深刻な問題なんだけど。

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『資本主義の限界』 木下栄蔵 扶桑社(2016)
私が「自由民主主義の終焉」や「TPP情報が開示されないワケ」で記したことの、経済・市場的背景を見事に説明している。アダム・スミスとケインズが正反対の説明がなされる経済学が、「なぜそうなるのか」について、「正の経済と反の経済」という仮説で説明する。これが簡素ながらも、恐ろしく納得度の高いものになっている。需要が低迷する中で、マネーサプライを増やし続けることが何を意味するのか、本書ほど明快な解は見当たらない。ごく薄い本ではあるが、十分な価値がある一冊だろう。

『日露戦争研究の新視点』 日露戦争研究会編 成文社(2005)
先の「日露開戦の代償」を記すに際して参考にした一冊。第一線にある研究者たちの論文集ではあるが、表題の通り新視点に富んでおり、パズルのピースが埋まっていくかのように面白かった。

『シベリア出兵―革命と干渉 1917~1922』 原 暉之 筑摩書房(1989)
「日露戦争の次はシベリア出兵」と考えているが、日露に比べるとかなり資料が少ない。その中でも本書は決定版と呼べる一冊で、まずこれを読まないことには始まらないのだが、なかなかの大部で、十月まで掛かりそう。

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『ナチス第三帝国の崩壊―スターリングラードからベルリンへ』 ワシリー・チュイコフ(著) 小城正(訳) 読売新聞社(1973)
意外と知られていないスターリングラード戦役の英雄チュイコフ将軍の回顧録。とはいえ、1944年半ばからベルリン陥落までの1年ほどの期間限定。ジューコフに批判的で、ロコソフスキー好き、その背景にはスターリン派とフルシチョフ派の色分けがあり、色々と面白い。日本では、とかくドイツ側の視点に偏りがちで、従来の西側研究もそうであるだけに、ソ連側の資料を抑えておくことは重要。ただ、どうやら英語版からの重訳なようで、ネットに上がっている原書を見ると、色々「違くね?」と思われる箇所も多い。ジューコフ回顧録なども、ソ連崩壊後により原文に近い新版が出されており、新訳の刊行が望まれる。「われわれの理性は、言ってみれば血染めの歴史であるこの戦争から得た苦い教訓を深く脳裏に刻みつけておくことを要求している。」
posted by ケン at 06:00| Comment(0) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする