2016年09月13日

タイトル見ただけで生きた心地しない三冊

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『ペリリュー・沖縄戦記』 ユージン・スレッジ 講談社学術文庫(2008)
太平洋戦争に海兵隊の一兵卒として出征したユージン・スレッジの戦場回顧録。米HBOが制作した『ザ・パシフィック』の原作二本のうちの一冊になる。
個人の戦争体験記はアマチュアであるが故に文章や表現が稚拙だったり、視点が主観的過ぎて読み手の想像力が追い付かなかったりする上、翻訳物は翻訳と表現文化の違いからさらに読みにくくなりがちだが、本作は翻訳物の戦争体験記ながら記述が非常に客観的かつ明快で、読み手の想像力を喚起し戦場の実像に近づかせてくれる。明快ながらも緻密で、表現に無駄が無く、客観的ながらも自分の信条や精神状態については誠実に回顧しており虚飾が無い。一兵卒の戦場記録としては、本作以上の水準のものを私は読んだことが無い。日本や日本兵に対する感情までが客観化されているため、日本の読み手にとっても抵抗が少ないと思われる。以下、詳細はこちら

『ノモンハンとインパール』 辻密男 旺史社(2000)
最近見つけて即買いした一冊。第23歩兵師団所属、熊本野砲6連隊の衛生兵として出征した辻密男の回顧録。ハイラルに赴任すると、いきなりノモンハン事件が起きて、中隊で200名からの戦死者を出し、17名の生存者の一人となった。筆致は淡々としているものの、出だしから生きた心地がしない。一年後にようやく内地に帰還して除隊し、釣具店店主に収まるも、2年半後の昭和18年4月に再招集を受け、同じく熊本野砲6連隊に入隊、今度はビルマに送られる。インパール作戦では、第31歩兵師団(烈)宮ア支隊所属として、最前線となったコヒマ攻略戦に参加している。ノモンハンでもコヒマでも、戦車に対して火炎瓶で攻撃するほか無かった日本軍が、どういうものだったかよく分かる。2度も最悪の激戦区に投入され、しかも生還するという超悪運と超幸運自体、凄まじいとしか言いようが無い。

『最悪の戦場に奇蹟はなかった―ガダルカナル、インパール戦記』 高崎伝 光人社(2007)
ガダルカナルとインパールという15年戦争の中でも二大双璧と言える地獄の両方に投げ込まれ、文字通り万死に一生を得て生還する話なのだが、文章は軽妙洒脱で「兵隊やくざ」的な語り口なので、勝手に想像していた陰惨極まりないというイメージは無く、その点ではいささか拍子抜けさせられた。クドカンが一兵卒として軍に入って回顧録を書いたらこんな感じかもしれないというノリと文才。学歴こそないかもしれないが、500ページ近い大著を一気に読ませるものがある。以下、詳細はこちら
posted by ケン at 12:31| Comment(0) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする