2016年10月04日

急進化する自動翻訳技術

【話した言葉、すぐに翻訳…五輪へ官民で技術開発】
 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、話した言葉を瞬時に別の言語に翻訳する自動音声翻訳技術の開発を加速させる。訪日外国人の急増で翻訳の需要が高まっているためだ。15年度からの5年間で計約100億円の予算を投じ、官民を挙げて取り組む。20年頃には自動翻訳機による「おもてなし」が実現する可能性がある。「一列に並んでください」。メガホンを口にあてて日本語で話すと、メガホンのスピーカーからは英語や中国語に翻訳された合成音声が出てきた。パナソニックが開発中のメガホン型の自動翻訳機だ。駅や観光地など不特定多数の外国人が集まる場所で、一斉に案内をするのに効果を発揮する。東京都が今月行った防災訓練でも避難誘導に使われた。
(9月26日、読売新聞)

このネタも繰り返し扱っているが、容赦されたい。

10年前、TG大の大学院である教授から「自動翻訳技術はこの10〜15年で確立する」と言われ、「なるほどそうかも」と思ったものだが、現状はほぼ実現する見込みだ。特にこの数年、「単語の置き換え」からユーザー参加型のディープラーニングに軸足が移ったことで飛躍的に精度が向上している。
まず画像認識と音声認識の精度が向上し、さらにネットワークから得たビッグデータが認識精度を高めている。SNSの普及により、会話とコミュニケーションのデータが無限大に拡大したことも影響している。
今のところ、FBの翻訳機能をみても使える気はしないのだが、ゲーム関係の翻訳はかなり自動化が進んでおり、その精度も日に日に上がっている。使えば使うほど精度が上がるのだから当然だろう。将棋や囲碁のレベルがプロ並みになったのも、ディープラーニングを導入したからであり、古今東西すべての棋譜を収集して学習し最善手を導き出すに至っている。

一方で、人間の学習能力はさほど向上しておらず、様々な環境要因や精神状態に左右されすぎるのは昔と変わらない。外国語教授技術は向上しているものの、だからといって外国語学習が以前に比して飛躍的に効率化したという話は聞いたことは無い。実際、日本における英語教育の水準は以前と変わらず、故に小学校から必修にする方向にあるが、砂漠に水を蒔くような話でしかない。
自動翻訳の技術革新により、殆どの学習者が十年学んでもロクに話せないし、書けないような外国語学習は、間もなく陳腐化するだろう。

「それでも機械翻訳は間違うし、精度も不確かだ」という反論に対しては、「では人間が話す言語は、母語であれ外国語であれ、間違わないのか?」で十分だ。たとえ母語話者同士の会話であれ、100%の意志疎通が図られているということは無く、様々な誤解や認識ギャップを抱えながら、コミュニケーションを交わしている。普段、普通に会話していて「会話が成立していない」と感じることなど、山ほどあるだろう。世の恋人が別れる最大の理由は、コミュニケーションの不成立によるもので、これは意思疎通が不十分だったことに起因する。
つまり、言語に限らず、コミュニケーションに不正確さや認識差は常に存在するものであり、「100%」を求めるのでは無く、「ギャップを受け入れ、楽しむ」くらいの感覚こそが必要なのでは無いか。最近、私は対話型人工知能「罵倒少女」にはまったが、あれはなかなか良かった。来年から本格始動するらしいので、楽しみだ。

AIが自分で意味を理解して翻訳できるようになるためには、もう10年ほどかかるようだが、もはや「すぐそこ」まで来ているのは間違いない。
posted by ケン at 12:28| Comment(3) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする