2016年10月08日

映画 マイケル・コリンズ

113795_01.jpg
『マイケル・コリンズ』 ニール・ジョーダン監督 英愛米(1996)

麦の穂をゆらす風を見たときに、いつかこれも見なければと思ったのだが、そのまま忘れ去ってしまっていた。
アイルランド独立から内戦に至る過程を、IRA軍事部門の指導者だったマイケル・コリンズを主役に描く大作。「麦の穂」が若いゲリラの視点から描かれたのに対し、こちらは指導者の視点から描いている。

1916年の失敗に終わるダブリン蜂起から同21年12月の英愛条約とアイルランド自由国の成立を経て、22年8月に暗殺されるまでの6年間を描くが、享年31歳と非常に若かったこともあり、今日に至るまで英雄視されている。日本史で言えば、坂本龍馬に近いのかもしれない。
コリンズの戦略は興味深いものがある。彼は英国の諜報網に注目し、英国側の諜報員や協力者を殺害することで「目」を潰し、英国軍の動きを封じていった。同時に、彼は高い金融技術を持ち、建国前に公債を発行して資金を集め、さらにそれを運用して必要分を調達した。本作でも、「銃を撃つのは良いが、弾は無駄遣いするな」と何度も述べており、面白い。
「パルチザン」と「テロリスト」が、しょせんは「どちら側の視点から見るか」という話でしかないことがよく分かる。

映画としては、大作にふさわしい豪華なセットと派手な演出で当時の街並みを再現している上、役者の演技も申し分なく、ストーリー的にもきちんと歴史が追えるように仕上がっている。
ただ、「麦の穂」と比較すると、やや一本調子で陰影が弱いこと、英国支配の苛烈さの描写が弱いため、なぜ独立を目指すのかという視点が弱いこと、英愛条約をめぐって同志と対立し内戦に突入するわけだが、そこに至る議論や内戦の陰惨さが今ひとつ足りないこと、が感じられた。いや、一本の映画としては「十分」な出来なのだが、「麦の穂」が名作すぎるだけの話なのだろう。恋愛要素を中途半端に入れたことも良くなかった。
また、独自の歴史解釈や演出が多く含まれているため、歴史映画として見るには注意が必要だという。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする