2016年10月28日

連合が自民党と合一的である理由について

連合はなぜ自民党を支持しないのか」(何故か凄い読まれている)の補足の意味を込めて。

日本で初めて開催された本格的メーデー(労働組合が主催)は1920年のことだったが、その際掲げられたアピールは、

・8時間労働制の実施
・失業の防止
・最低賃金の導入


だった。その100年後を見てみると、

・12時間労働
・4割が非正規(不安定)雇用
・生活保護以下の最賃


である。さすがに大正時代に比べれば、法律や制度は整備されたものの、その実施は担保されておらず、特に非正規労働者の実態は大正期からどれほど進歩したと言えるのか全く自信が無い。その労働法制にしても、全てGHQ改革によってもたらされたものであり、労働運動の成果では無かった。ナショナルセンターの一つである総評からして、「民主化には、民主的なナショナルセンターが必要」との理由からGHQの肝いりで創設されたものであり、労働者が自らの階級性を自覚したことによって発現したものではなかった。
なお日本で初めて就業規則で8時間労働を定めたのは、川崎造船(現重工)で1919年のことだった。当時の川崎神戸造船所の労働争議は凄まじいものがあったらしく、あくまで労働組合が戦って獲得した成果だった。

国家として見た場合、戦前期かたくなに労働基本権を認めてこなかった政府だが、敗戦を経てGHQの指導下に入り、その強い指導を受けてようやく労働基本権の法制化を始めた。ところが、日本政府は現在に至ってもなお、ILOの国際労働条約第1号「8時間労働制の導入」(1919年)を批准していない。これが未批准なのは「古い条約だから」ではない。例えばグアテマラは1988年、チェコとスロヴァキアは1993年に批准しており、あくまでも日本政府の意志で批准していないことが分かる。恐らくは、「GHQに言われて仕方なくやったことだ!」という意思表示なのだろう。

とはいえ、戦後まがりなりにも労働基本権が認められ、ナショナルセンターが成立し、労働運動は60年代までには鎮静していった。これは、いわゆる戦後和解体制の成立が大きく寄与している。戦後和解体制は、資本が労働者の権利と待遇を保障する代わりに、労働者が資本に協力することで成立していたが、戦後復興と冷戦構造(社会主義陣営の存在)の中で資本側が妥協した側面が大きい。
日本では、企業福祉の充実が図られる一方で、労働組合の経営協力が進んでいった。これにより企業の安定経営が保証される一方で、個々の労働者の権利を保護するという労働組合の存在意義は急速に失われていった。
そして1990年代以降、社会主義陣営の瓦解を受け、戦後和解体制も急速に解体されていった。ソ連という敵が失われた以上、資本からすれば「飼い犬」に余計なエサをやる必要がなくなった。また、グローバル化の進展によって第三世界からの搾取が難しくなり、労働賃金の国際的フラット化が進んだことで、自国の労働者を搾取することでのみ利潤を上げることができなくなったという環境も大きく影響している。
90年代以降の構造改革により不安定雇用の割合は5%から40%に増え、労働組合の弱体化と「資本化」により違法労働や過剰な残業が放置されるところとなっていった。業務請負などの形態が増え、最低賃金すら適用されないケースも急増している。

そこで連合である。連合は、ナショナルセンターの総評と同盟が合流してできたものだが、この二つのナショナルセンターは、戦後和解体制における最大の受益者でもあった。そして、戦後和解体制下で得た正規雇用労働者の「特権」の数々を維持するために、90年代以降の構造改革に積極的に協力していった。非正規雇用を容認する労働法制改悪を容認したのは、正規雇用者の待遇を守るためだった。最低賃金の引き上げに消極的なのも同じ理由から説明される。
電力総連や電機連合が原発を支持し、自動車総連がTPPを支持するのは、まさに「正社員の待遇を守るために経営側に積極的に協力する」という戦後和解体制の慣習そのものなのだ。だが現実には、原発の下請けや自動車工場の期間工や外国人労働者を見た場合、『蟹工船』同様の惨劇がまかり通っており、正社員の待遇は同じ労働者の搾取の上にしか成り立っていない。

つまり、戦後和解体制の残滓となっているのが連合であると解釈すると、分かりやすい。大企業の正社員互助会である連合としては、組合員の待遇を守るためには、今まで通り資本に協力するのが「合理的」であり、それは非正規雇用労働者を積極的に搾取することでしか成り立たない。そのスタンスは自然、野党では無く、自民党や政府に近いものにしかならない。
にもかかわらず、民進党を支持し続けているのは、hanamaru同志が指摘されているように「野党の最大支援組織」というポジションが、自民党に対しても政府に対しても最も有効な交渉材料(カード)であるためだと推測される。そして、その「ムリ」が表面化しているのが、昨今の惨状なのではなかろうか。
posted by ケン at 13:15| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする