2016年12月22日

議会が自動化される日

【国会答弁、AI下書き実験へ…過去の議事録学習】
 政府は、国会答弁の下書きなどの行政事務に人工知能(AI)を活用する方向で具体的な検討に入った。国会審議の議事録を基礎データとし、経済産業省で実証実験を近く始める。成果次第では、政府全体でAI導入が可能な行政分野を検討する。政府の成長戦略はAI開発などの「第4次産業革命」が柱で、官の立場から新産業育成の流れを後押しする狙いだ。 実証実験では、AIに対し、過去5年間の国会審議の議事録を学習させる。実際の活用場面では、職員が国会で質問された政策課題を入力すると、AIが、過去の関連質疑や、政策の論拠、課題などを整理して提示することを想定している。最終的には、職員がAIの示した論点整理や下書きを元に答弁資料を作成する。
(12月5日、読売新聞)

ぶっちゃけ、議会質問も答弁もAI化される日は遠くないだろう。ケン先生も職務上、議員の質問をつくることがある。国会には様々な委員会があり、国政全般にわたるが、議員は各々の得意分野があり、必ずしもそこに配置されるわけではないし、たとえ得意分野でも良く知っていることと知らないことがある。不得意分野などは自然、秘書が様々な手段を用いてサポートすることになるが、質問自体が苦手な議員の場合、秘書に丸投げすることもママある。
私の経験では、前ボスは全ての質問を自分でつくっていたが、今のボスは相当部分を秘書に投げている。

質問を作成する場合、まともにやろうとすれば、膨大な資料を集め、関係者からヒアリングし、所管省庁と談判して、質問から答弁まで精密に仕上げることになるが、日本の国会議員は国会に1人か2人しか秘書がおらず、とてもそれだけの時間を捻出できない。
結果、国会図書館や議会調査局が作成した二次資料を見て、過去の国会審議と照らし合わせ、法案の問題点や政策課題を整理し、質問化することになるが、これは実はAIで十分な作業なのだ。

じゃあ、本人は何をやるのかって?陳情処理と利権漁りデスよ。
秘書としては、腐敗の温床である陳情こそ人間(政治家と官僚)を通さずに自動化して、AIにマルバツを判断させて欲しい・・・・・・ちなみに実感としては、利権の絡まない陳情は百件中数件くらいしかない。
日本の国会議員は、地元有権者から陳情を受け、それを処理することで政治献金と票をもらう。自民党は、霞ヶ関と一体化しており、霞ヶ関の出す法案を通す対価として、予算や利益誘導などの陳情(行政権の恣意的行使、便宜供与)を受けているため、小選挙区において圧倒的な強さを誇っている。

質問と答弁が自動化されれば、ますます国会審議は形骸化し、自民党や民進党の議員さらに汚職に邁進することになるだろう。
この点でも、議会制度やデモクラシーの空洞化が進んでいる。
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2016年12月21日

一月解散遠のく

【静まる1月解散説=国会召集20日か23日、日程厳しく―与党】
 与党内で取り沙汰されていた1月の衆院解散をめぐり、日程的に厳しいとの見方が広がっている。首相の外交日程が立て込んでいるほか、1月召集の通常国会は重要法案が山積しているためだ。一方、野党はなお早期解散を警戒している。首相は20日、東京都内で開かれた内外情勢調査会での講演で衆院解散について、「解散の二文字は全く頭にない」と述べた。17日の日本テレビの番組でも解散を否定した上で、「経済最優先で景気をさらによくしていく。来年度予算の早期成立が私の使命だ」と強調した。
 1月解散をめぐっては、先の日ロ首脳会談の外交成果を掲げて1月解散に踏み切るとの観測があった。しかし、北方領土問題で進展がみられなかったことから沈静化。高村正彦自民党副総裁は18日のNHK番組で1月解散について「私が首相だったらやらない」と述べた。  政府・与党では通常国会の召集時期について「1月20日か23日」(自民党幹部)とする案が浮上。政府は2016年度第3次補正予算案を1月中にも成立させ、17年度予算案の審議に入りたい考え。ただ、災害復旧対策などを盛り込んだ補正予算成立後に衆院解散となれば、来年度予算の成立がずれ込み、暫定予算を組まざるを得なくなる。暫定予算は経済への影響が少なくない。
 通常国会は、天皇陛下の退位をめぐる法整備や衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)の5月27日を期限とする勧告に基づく公職選挙法改正案など、重要法案の審議も待ち受けている。首相が「解散カード」を切るタイミングはおのずと限定されてくる。首相外遊が1月に相次ぐことも日程を窮屈にさせている。首相は同月中旬にオーストラリア、ベトナムなどへの訪問を検討。米大統領に就任後のトランプ氏との会談も27日を軸に調整しており、国会日程の合間を縫っての訪米となる。
(12月21日、時事通信抜粋)

概ねそういうことのようで。
内部情報によれば、安倍氏的には、今選挙やって、大敗はしないにしても議席を減らして3分の2を下回った場合、政権がレームダック化して「後継レース」が始まってしまう恐れがある、という守りの判断に傾いているとの話。「よりマシな現戦闘比で戦う」ベネフィットと「現有戦力の損失による不安定化」リスクを比べて後者に重きを置いた判断だろう。

他の要素としては、日露首脳会談で具体的な成果が挙げられなかったこと、カジノや憲法改正問題などを通じてKM党との関係が微妙になり、従来のような満額の支援を受けられるか不透明である(手を抜く可能性がある)こと、そして新潟知事選に象徴されるように連合を取り込んですら敗北するという自民党の足腰の弱さ、特にTPPや原発問題により北日本で大敗を喫するリスクがあること、などがある。
従来であれば、大型補正を組んで地方に予算をバラ巻いて公共事業を乱発するシーンだが、昨今では公共事業の大半が中央ゼネコンが受注してしまい、地場の業者は旨味の無い下請けばかりで、むしろ不満を強めているという。
結果、将来的に大敗する可能性よりも、いま3分の2を失う方が恐いという判断に落ち着いたものと推察される。これはこれで合理的判断であり、十分な納得性がある。

ケン先生であれば、無能な野党が連携を欠いている方を重視して蛮勇をふるって解散・総選挙に打って出るだろうが。「アベノミクスで経済がさらに活性化する」と信じている安倍氏は、良くも悪くも「おぼ」なのだろう。「おぼ」という点では私も同類なのだが、鍛えられ方が違うということか。
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2016年12月20日

プーチン氏訪日首脳会談を評価する

【プーチン露大統領 北方領土「主権はロシアだ」 平和条約締結「簡単ではない」】
 ロシアのプーチン大統領は20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開催地リマで会見し、北方領土問題をめぐり「(北方四島は)国際的な文書によりロシアの主権があると承認された領土だ」と明言した。インタファクス通信が伝えた。
 平和条約締結問題をめぐっては、日本側と「複数の案が可能だと話し合っている」と明らかにする一方で、条約締結後の歯舞、色丹2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言については、「どのような根拠で、誰の主権の下に置かれ、どのような条件で返還するかは書かれていない」と発言した。
 プーチン氏はこれまでも同様の主張を行っており、12月に予定される訪日を前に自身の考えを改めて明示することで、領土交渉の早期進展に期待を強める日本側を強く牽制(けんせい)した格好だ。プーチン氏は日露間で平和条約が結ばれていない状態は「時代錯誤であり、両国関係の発展を阻害している」と述べつつ、「平和条約(締結)への道は簡単でもない」と語り、早期の条約締結の可能性に対し否定的な見通しを示した。
 プーチン氏はまた、19日に安倍晋三首相と行った日露首脳会談において、北方四島での経済、人道分野に関わる活動について話し合ったと明らかにした。ただ、「この問題に関する合意はできていない」とも語り、交渉が難航している状況を示唆した。一方、露経済発展省のボスクレセンスキー次官は20日、プーチン氏の訪日の際に両国間で覚書を含め30の経済協力に関する文書に署名する予定だと述べた。同氏によると日露両政府は18日の協議で、第三国市場に輸出する製品を共同で開発する計画も話し合ったという。
(11月21日、産経新聞)

ロシア・プーチン大統領が来日し、12月15〜16日に行われた日露首脳会談について、左右を問わず厳しい評価が上がっている。その多くは、「プーチンに騙された」「食い逃げされた」など感情論が先行したもので、批判の内容自体は話にならないが、数量的には圧倒的多数を占めており、馬鹿にはできない。

これとよく似ているのが「日比谷騒擾」(焼き打ち事件)である。日露戦争に際し、政府は戦争の実態を隠蔽し、大勝利の宣伝を続けてきた。それは不足する戦費を内外債にて補うために致し方ないことではあったが、現実には日本人の多くが、ロシア皇帝を屈服させられるくらいに考えていた。ところが、講和条約交渉が始まると、ロシア側は想定外に強気の姿勢に出て、日本側は財政的にも軍事的にも限界に来ており、交渉地となった米国内の世論は対日警戒論が高まっていたため、日本政府は交渉妥結を優先した。結果、ポーツマス条約の内容を知った日本国民は、「賠償も取れないとは何たる国辱」とばかりに激高し、日比谷に集結、暴動に発展し、明治政府初の戒厳令が敷かれるに至った。

今回はそこまで関心は高くなく、左右を除外すれば、「まぁこんなもんじゃね?」くらいの評価が多いように思われる。右翼が騒ぐのは「いつものこと」とはいえ、ふだん善隣外交を唱えているような左翼人が、こと北方領土問題でロシアが相手となると、とたんにナショナリストと化してヒステリックな言動を露出させているのは噴飯物だ。
そこで、肝心の首脳会談の成果を見てみよう。

・領土問題には触れず
・平和条約交渉の継続を確認
・「2プラス2」などによる安全保障対話の再開確認
・経済協力の促進確認(3千億円の投融資)
・国際情勢の認識共有
・エネルギー開発の協力確認


という辺りだろう。結果だけを見れば、「領土問題は進展せず、平和条約の締結合意に至らず、金だけ取られた」という評価になりがちだが、冷静に見てみよう。勝敗判定は以下の要素から定義される。

1.物理的事実
2.自陣の認識
3.敵方の認識


事実認定は、共同声明がなされず、具体的な成果がなかった点で成功とは言いがたい。

日本側(官邸)は、当初「領土問題を解決して平和条約の締結合意」と謳っていただけに、達成水準を大幅に下げたことになる。だが、「2プラス2」や経済協力は、今後の交渉の土台、前提となるものであり、「良い形で次に繋げた」(次回交渉にプラス修正)とは言える。評価としては「失敗とは言えない」程度だろう。それも官邸が最初にブチ上げ過ぎたためであり、専門家の評価としては「十分」のレベルにある。米国や日本国害夢省の妨害を考慮すれば、なおさらだ。
「十分」と言うのは、いまだ米国の覇権が存続する中で、日露枢軸を形勢するのは困難であるだけに、将来的に向けて友好関係の構築と外交交渉の基盤をつくることができれば、「現時点では十分」という意味である。
ちなみに批判者は「3千億円食い逃げされた」と騒いでいるが、経済協力の多くは日系資本が事業を受注することが前提なので、「日本人の税金でロシアのインフラを整備するのか」とは言えるものの、投下された資金は日本企業が回収する上、シベリアなどのエネルギー開発に投じられるのだから、日本側にも十分見返りはあると見て良い。アフリカや中東の小国にバラ巻くのとは少し違うだろう。

ロシア側は、上記の記事の通り、以前から今回の交渉の到達点を見切っており、プーチン大統領も記者会見で「これらの島々(北方領土)は、ロシアと日本の不和の原因にならず、寧ろ結び付ける可能性があります。我々は単に経済関係構築に興味を持ち、平和条約締結を延期しようとしているのではありません」と述べていることからも長期戦を覚悟しつつも、将来的な日露枢軸の可能性に期待していることを臭わせている。
ロシア側としては、「欧米の包囲網の打破」「対中依存度の低下」こそが主目的であり、制裁に加わっている日本がプーチン氏を招待し、自ら経済協力を申し出て、安全保障協力の継続を確認できたのだから、交渉が遅々としてしか進まないことについては内心「時流に乗り遅れるぞ」と思っているかもしれないが、やはり「現時点ではこんなところか」と現実的な評価に傾いているものと想像される。
プーチン氏が、「シリア問題への対応」を理由に遅刻し、同じ理由から会見後のランチを断って早々に帰国したのも、傍証としては十分だろう。

後の評価は読者に任せたいが、ケン先生としては「成功とは言えないまでも十分」と考えたい。だが、強い支持基盤を有する右派の安倍政権のうちに解決しなければ、今後、日露交渉はさらに難しくなる可能性が高いことは指摘しておきたい。

【追記】
冒頭の記事にあるように、プーチン氏は日ソ共同宣言について「どのような根拠で、誰の主権の下に置かれ、どのような条件で返還するかは書かれていない」と述べており、これに対し、左右ナショナリストが「ロシアはそもそも領土を返す気が無い」などと気勢を上げている。だが、プーチン氏は「返さねぇよ、バ〜カ!」と言っているわけではなく、法律家として冷徹な目で共同宣言を読み、事実を指摘しただけに過ぎない。その意図するところは、「共同宣言に明記されていない以上は、この点についても日露交渉の対象である」という点にある。この点については、別途記事にしたいとは思うが(大変そうでイヤなんだけど)、例えば、日清媾和條約(下関条約)には「C國ハ左記ノ土地ノ主權竝ニ該地方ニ在ル城壘兵器製造所及官有物ヲ永遠日本國ニ割與ス」と領土割譲に際し、「土地の主権」を明記しているが、これも漢文(等しく正文)には「土地の権」と書かれているという。また、日露講和条約(ポーツマス条約)には、南サハリンについて「完全ナル主權ト共ニ永遠日本帝國政府ニ讓與ス」と書かれている。これに対し、日ソ共同宣言は条約ではあるが、「ソヴィエト社会主義共和国連邦は,日本国の要請にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」となっており、主権も施政権も明記されていない。この点で、プーチン氏を非難するのは、自らの無知と無定見をさらすだけにしかならない。
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2016年12月19日

オバマも老いては駑馬に劣る

【米、ロシアにサイバー報復も…大統領選介入問題】
 ロシアがサイバー攻撃で米大統領選に介入したとされる問題で、オバマ米大統領は15日、ロシア政府に対し、何らかの対抗措置をとると警告を発した。オバマ政権は、残り約1か月の任期中にこの問題に関する報告書をまとめる見通し。報告書を踏まえ、任期中に報復措置に踏み切ることを検討している模様だ。オバマ氏は15日、米公共ラジオのインタビューで、ロシアを念頭に「外国政府が我々の選挙の健全性に影響を与えようとする場合、行動をとる必要があることに疑いの余地はない。我々の選ぶ時期と場所において行動する」と述べた。
 ホワイトハウスのアーネスト報道官も15日の定例記者会見で、「米国は強力なサイバー能力を保持している」と述べ、ロシア政府への報復措置として、サイバー攻撃を仕掛ける可能性を示唆した。また、オバマ氏側近のベン・ローズ大統領副補佐官は15日、「(ロシア大統領の)プーチン氏の統治手法を考慮すれば、これほど重大なサイバー侵入は政府の最高レベルの関与を意味する」と述べ、プーチン氏自身の関与を指摘した。
(12月17日、朝日新聞抜粋)

「何を今さら」と「貴様が言うな!」が半分半分というところか。
大国が他国の政治に干渉するのは当たり前の話で、ロシアが例外なわけではない。イスラエルも中国も米国内に巨額の資金をバラ巻いてロビイスト・グループを形成している。かつて帝政ロシアは、日露講話交渉に際し米国内の新聞社を文字通り買い上げて自国に有利な世論形成を行った。この点、むしろ日本が他国内における親日派の形勢や親日世論の醸成に対し無頓着すぎるくらいなのだ。
古来、一方で欺瞞情報を流して敵方を攪乱し、他方でビジネスなどを通じて友好関係を築くのは常套手段である。現代では、IT技術を駆使して「偽ニュース」を発し、世論を操作して、可能ならば選挙にも介入するだけの話だ。それとも、米国はそれらの手段は一切採用していないというのだろうか。

日本で言えば、アメリカは歴代の自民党有力者を協力者としてきた。最も象徴的なのは岸信介で、米当局と取り引きして協力者となって巣鴨監獄を出獄し、総理大臣にまで上り詰めている。歴史文書の公開を積極的に進めているアメリカが、いまだ岸関係の文書を公表しないのはそのせいだろう。
公開された米国公文書によれば、緒方竹虎はCIAの「POCAPON」、賀屋興宣は「POSONNET-1」であったことが判明しており、左派では西尾末広が協力者だったことが分かっている。CIAは、社会党分裂から民社党が独立するのを支援し、その後も暫く資金を提供し続けている。

現代ロシアで言えば、アメリカはソ連崩壊期からずっと、最初はエリツィン一派を支援し、ソ連・ロシア内の生産インフラの買収を進めた。その全評価額はわずか50億ドルに過ぎず、これが現在の対欧米怨嗟の元凶となっている。その後、プーチン氏が国政の前面に登場する頃から、米国の支援先はエリツィン一派からリベラル派に移り、今日に至っている。だが、ヤブロコなどに代表される新欧米のリベラル派は国会に殆ど議席を持てないでいる。そもそも欧米資本の支援でつくられた調査機関による世論調査でも、数パーセントの支持しか得られておらず、米当局の工作は失敗し続けている。
この親欧米派に対する支援は、すべて欧米資本で設立された「デモクラシーの普及」を目的としたNGOなどを通じて行われていたため、プーチン氏はこれらのNGOの活動を大幅に規制したが、欧米諸国はこれを「デモクラシーの後退」として非難している。

つまり、何をどう見ても先に仕掛けたのはアメリカ側であり、これを「新冷戦」と呼ぶならば(私自身は適当では無いと考えている)、ロシアは反撃しているだけの話なのだ。自国に有利な世論を形成しようとするのは誰もが行うことだろう。

すでに何度も述べている通り、米国内には「世界の警察官を気取っている場合じゃねぇだろ!」という気運が蔓延しており、それをエリート層が払拭・否定しようと必死にあがいたのが、今回の米大統領選だった。
米国が抱えている問題は、予算の15%以上を占めている過大な軍事負担と、新旧自由主義に起因する国内産業の衰退と貧困にある。これに対し、保守派のクリントン氏は、従来の安保政策と自由貿易を堅持しているのに対し、改革派のトランプ氏は、孤立主義への転換による軍事負担の大幅軽減と保護貿易による産業保護を訴えている。
つまり、米国民がクリントン氏を選ぶということは、1985年3月の政治局会議で「ゴルバチョフを選ばない」という選択肢を採ることに等しいのだ。詳細は「ペレストロイカを再検証する」を読んで欲しいが、当時のソ連で「ペレストロイカを発動しない」という選択肢を採った場合、より緩やかながらも、より凄惨な経済破綻を迎えていたことは想像に難くない。
ここでトランプ氏が選ばれない場合、米国はより凄惨な事態となり、将来的にはトランプ氏をはるかに上回る危険人物が大統領となって猛威を振るうことになると思われる。
ゴルバチョフを選ばないソ連?、2016.11.09)

オバマ氏が何と言おうと、問題は米国内に山積しているのであって、自分で解決できない責任を他国の指導者に押しつけるのは「見苦しい」としか言いようが無い。
オバマ氏としては、トランプ政権に何としても反ロシア路線を継承させようと必死なのだろうが、恥の上塗りでしかない。そもそも大統領の器では無かったのだろう。

【参考】
・ソ連・東欧学のススメ〜米大統領選を受けて 
posted by ケン at 12:51| Comment(2) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

こんな野党は要らない!

【民進・野田幹事長「安倍晋三首相はプーチン大統領に面と向かって抗議すべき」】
 民進党の野田佳彦幹事長は12日の記者会見で、ロシア軍が北方領土の択捉島と国後島にミサイルを配備したことに関し、15日に日露首脳会談が予定されていることを踏まえ「安倍首相は(プーチン大統領に)面と向かって厳しく抗議すべきではないか」と述べた。また、「資金協力ばかりすれば、脅されて金を出している姿に見える。それはおかしい」とも語った。
(12月12日、産経新聞)

野党第一党の幹事長は、どこまでも無能だった。自民党は狂喜乱舞していることだろう。もっとも、こんなヤツが総理大臣だったのだから、政治のクオリティそのものが終わっているのかもしれないが。
すでに何度も述べているように、アメリカの衰退が著しく、アジアからの撤退と日米安保の希薄化が確実となる中で、日本の採りうる安全保障の選択肢は限られている。

1.日中同盟
2.東アジア共同体による集団安保
3.武装強化による自主防衛路線


このうち日中同盟は対中従属を意味し、東アジア共同体は今となっては「中国を盟主とする東洋ブロック」で日中同盟と大差なくなっている。日本では、戦後70年間のうち65年を自民党などの親米派が政権を握ってきたため、外交政策を転換するコストが異常なほど高まってしまっている。具体的には、自民党と外務省を粛清するようなことが無い限り、不可能なのだ。
すると自然と3番目の自主防衛路線に行き着くが、その場合、核武装が必須となるが、日本にはその技術が無く、エネルギー問題も連動して、自然と「日露枢軸」に傾いてゆくことになる。

ロシアはロシアで、主敵は欧州・NATOであり、潜在的脅威は中国なので、日本との連携が重要なカギとなる。経済制裁で中国以外の外資が止められ、天然ガスの輸出先にも難儀しているだけに、対日関係の強化は、日本人が考えている以上に重要なのだ。
また、日本にとっても全く見通しの立たない核廃棄物の処理先のメドがたつという点で、これも「他に選択肢が無い」状態にある。

以上を考えれば、いまや北海道の維持すら困難になっている日本にとって、日露枢軸の緊急性は北方領土の価値をはるかに上回るところに来ている。そもそも択捉と国後のミサイルはアメリカに向けてのものであり、それは米によるポーランドやルーマニアなど東欧におけるミサイル防衛網の構築に対する対抗策であって、日本は関係ない。

民進党は、日米安保に替わるオルタナティブを早急に提示することが求められているのであって、政府をただ非難するのは自らの無為無策を暴露するだけの話でしかない。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月16日

解散は1月か?

【首相、年内解散見送り 外交優先…来秋ずれ込みか】
 安倍晋三首相は、年内の衆院解散を見送る意向を固めた。15、16両日の日露首脳会談に続き、26、27両日に米ハワイの真珠湾でオバマ大統領とともに慰霊することが決まったこともあり外交日程を優先させた。政府・与党には、来年1月召集の通常国会の冒頭で平成28年度第3次補正予算を成立させた後の「1月解散」を求める声も根強い。首相がこれを見送れば、来夏に東京都議選が予定されていることから、解散は来秋以降にずれ込む公算が大きい。
 自民党の二階俊博幹事長も7日、大阪市内で講演し、衆院解散について「年内はありません。年が明けてどうなっていくか。これからまた新しい流れがくるか」と述べた。その上で「今がチャンスだと耳元でささやく人もいないではない。だが、長期政権をやりたいからといって『今がチャンスだ』と解散を弄ぶものではない」と語った。また、二階氏は党本部で記者団に「年が明けたら、いろんな動きが出てくるだろうが、私には占い師みたいに先の先まで見通して言う資格はない」と述べた。
 来年の通常国会以降、憲法改正論議が本格化する見通し。現在、衆参両院とも改憲勢力が3分の2を超えており、首相が解散に踏み切るかどうかは、衆院の改憲勢力を積み増しできるかが重要な要素となる。民進、共産両党などが次期衆院選で野党統一候補を擁立すれば、自民党は50議席弱を失うとの分析もある。首相は野党共闘の動きをにらみながら解散時期を判断するとみられる。
(12月8日、産経新聞)

【安倍首相、アジア・豪州歴訪へ 来年1月中旬で調整】
 安倍晋三首相は来年1月中旬、オーストラリアとインドネシア、フィリピン、ベトナムを歴訪する方向で調整に入った。各国首脳と会談し、中国が海洋進出を強める東・南シナ海問題で連携を図るほか、オーストラリア、ベトナムとは環太平洋連携協定(TPP)を巡り共同歩調を確認したい考えだ。日本政府関係者が7日、明らかにした。訪問は5日間程度を検討している。このほか、訪米し、新政権発足後のトランプ次期大統領との会談も1月27日を軸に調整中。同月召集される通常国会の日程と外遊スケジュールを詰めている。
(12月7日、北海道新聞抜粋)

この日程を見る限り、「総理の外遊中に選挙はやらない」(サミットは例外)原則から考えて、1月31日公示、2月12日投開票、あるいはその一週遅れの2月7日公示、同19日投開票、という可能性が高そう。ちなみに永田町では、「トランプ氏との会談」はブラフという見方が強い。

「解散は来秋以降」という見方をする大ベテランもいるが、であれば「維新対策」でしかないカジノ法案をここまでゴリ押しする理由が説明できないし、日露会談の失敗を見越してあわててハワイ行きを決めたことも説明できない。
自民党側は、実態以上に野党共闘を恐れる空気が強く、「NK党が多数の公認を出した今選挙しないでいつやるんだ!」という声が聞かれる。
安倍氏のこれまでのやり口を見る限り、「勝てると判断したときにやる」を基本方針としており、その意味でも「1月中の解散」という「確実に勝てるタイミング」を逃すとは考えにくい。もちろん、これを見送る以上のベネフィットが安倍氏にある場合は別だが、これを上回る利益が来年の通常国会にあるようには思えない。

産経が「首相1月解散を断念」などと報じているが、ブラフの可能性が高い。自民党内の調査で「いま解散すると3分の2を割る可能性が高い」という結果が出たためというが、これは野党共闘を前提としたもので、現時点ではNK党も自由党も続々と候補を出しており、その前提は当てはまらない。
内閣支持率は高位安定する一方、民進党の支持率は一向に上がらず、民進党内には「蓮舫リスク」「連合リスク」「分裂リスク」があるため、民進党の支持率が上がる理由はどこにも見出せない。逆に安倍政権としては、「アベノミクス崩壊」「日米安保希薄化」のリスクがある以上、ゲーマー視点から見れば、「今解散しない手は無い」くらいのレベルにある。

実際の緊張度はそこまで高まっていないものの、警戒しておくにこしたことはない、という段階だろうか。
posted by ケン at 13:00| Comment(2) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月15日

日露交渉が上手くいかないワケ

【日露首脳会談、共同声明の発表予定なし…露高官】
 ロシア外務省高官は15日のプーチン大統領の訪日を前に、読売新聞などの取材に対し、今回の安倍首相との首脳会談では、平和条約締結に向けた決意などを盛り込んだ共同声明を発表する予定はないと明らかにした。この高官は、2013年4月の安倍首相の訪露のさいに共同声明を発表したものの、その後、日本がウクライナ情勢をめぐり対露経済制裁を導入し、日露間の対話が凍結したことで「履行されていない状態にある」と指摘。その上で、「履行されていない以上、新しい共同声明を採択するのは理屈に合わない」と述べ、新たな共同声明を出す必要はないとの考えを強調した。
(12月14日、読売新聞)

日露交渉を急ぐワケ」とかぶる部分が多いが容赦されたい。
共同声明が見送られたということは、発表できるだけの成果が無いことを意味する。日本のマスゴミは、「トランプ氏が当選してロシアが態度を変えた」などという外務省発のプロパガンダを垂れ流しているが、そのような事実は見受けられない。
実際、私は本ブログ9月7日付けの記事で以下のように書いている。
(日露交渉に関する)情報が少ない理由は、「情報自体が存在しない」と考える方が妥当だ。つまり、日ロ間で従来の交渉内容を覆すような特別な交渉は行われておらず、ただ経済協力をめぐる交渉のみが進んでいる、という認識である。
(領土交渉はネタでしょ?) 

日本のマスゴミは、やたらとプーチン大統領にインタビューしたり、ロシア外務省の高官や大使館員に話を聞きに行って、そればかり報じている。が、実は日本人にとってより重要なのは、日本政府・安倍政権が「どのようなスタンスで日露交渉に臨み、何を獲得目標にするのか」だったはずだが、それについてはロクに報道されていない。つまり、マスゴミは官邸や霞ヶ関が恐くて聞きに行けないため、公式発表を垂れ流しているだけになっている。

日露交渉が上手くいかないのは、その大半が日本側に原因が求められる。
ロシア側は日露交渉の価値を、

@ 安全保障
A 経済協力
B エネルギー提携


に求めており、それは「領土交渉はネタでしょ?」と「日露交渉を急ぐワケ」ですでに説明している。

これに対し、日本側の交渉方針は、

主:領土交渉
従:経済協力


であり、その経済協力もどちらかと言えば「領土交渉で妥協を引き出すため」という側面が強い。これでは、話がかみ合わないのは当然だろう。
本来であれば、ロシアが持ちかけている交渉内容は、どれも日本と利害を共有できるものだった。

安全保障で言えば、「日米安保後」を見据えた「日露枢軸」は中国の脅威から独立を維持する上で不可欠のものだ。
経済協力は、アベノミクスの無制限金融緩和で銀行や企業に溢れかえってしまっている資本の投下先として有望なものと言える。
エネルギー提携は、化石燃料の中東依存からの脱却、あるいは原子力政策を進める上で不可欠の要素となる。

常識的な国家であれば、これらの要素と領土問題の重要性や得失を計算して、前者が勝れば後者は捨てるなり凍結するなりするはずだ。日本側は殆ど報じていないが、プーチン大統領は「必要ならミサイル技術の供与もやぶさかではない」とまで述べており、日本側報道とは真逆にやる気満々にしか見えない。しかし、日本の外交は現実的利益よりも観念を先行させる伝統があり、今回も「領土交渉を前提とした経済協力」に固執したあまり、何の成果も挙げられなかったものと推測される。

ロシア・ソ連学徒の視点で言えば、順序として上の3つの要素で日露が強い協力体制を築き上げ、「日露枢軸」を構築できれば、領土問題は自然と良い方向での解決に向かうものと見られるが、日本は入口でそれを拒否してしまっているのだ。

過去にも、日本は満韓交換論を前提として日露協商を自ら否定して宣戦布告したり、日独伊三国同盟に替わる日ソ不可侵条約(日ソ同盟)を自ら取り下げて日ソ中立条約にしたりと、ことごとく(我々的には)「何故そっち?」という選択肢を採ってきたが、今回も日本は大きな魚を逃すことになりそうだ。

【参考】
日露開戦の代償 
posted by ケン at 12:42| Comment(4) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする