2016年12月14日

あるイミ期待を裏切らない民進党

【民進、解散恐れ腰砕け=共産「理解不能」】
 国会最終盤で焦点となった年金制度改革法案とカジノ解禁を柱とする統合型リゾート(IR)推進法案をめぐり、「廃案に追い込む」と意気込んでいた民進党が突然、柔軟姿勢に転じた。  年金法案の採決に応じるとともに、カジノ法案では、修正した上で採決するとの自民党提案を容認。与党側が野党の出方次第で今国会会期の再延長をちらつかせたことで、衆院解散を恐れた民進党の腰が引けた格好だ。「現段階でも政府の説明不足に納得していない。ただ、ようやく政府が(年金支給額の)試算を公表することを明言した」。民進党の蓮舫代表は13日の常任幹事会で、年金法案採決を受け入れた方針転換に理解を求めた。
 年金法案をめぐり、民進党は衆院審議の段階から「年金カット法案」と厳しく批判。共産党などとともに廃案を目指す方針を確認していた。これに対し、自民党からは年金・カジノ両法案の成立のためには「小幅の再延長も仕方ない」との声も出ていた。会期末を翌日に控えた13日になって突如、民進党が自民党と採決日程で合意した背景には、選挙準備不足から衆院解散を回避したいとの「本音」をのぞかせたとの見方もある。実際、12日の執行役員会で幹部の1人が「再延長は解散の呼び水となる」と、徹底抗戦路線に慎重論を唱えた。
 カジノ法案をめぐっても、自民、民進の参院幹部が協議を重ね、ギャンブル依存症対策の明示などを盛り込んだ修正案を採決することで合意。蓮舫氏が8日の記者会見で、廃案にして再提出を要求した攻めの姿勢は消えうせていた。民進党の「変節」に他の野党は不満を募らせている。共産党の井上哲士参院幹事長は記者団に「修正案の相談もなかった。採決に応じるのではなく、徹底審議を求めていくべきだ」と主張。別の同党幹部も「(民進党の対応は)理解できない」と納得がいかない様子だった。 
(12月14日、時事通信)

記者はトンチンカンなことを書いているが、自民と手打ちしたのは参院の榛葉国対委員長なので、衆議院の解散云々は関係ない。どうやら彼の個人プレイらしく、同党の参院内閣委すら「寝耳に水」のことだった。実際、昨日の常幹で蓮舫代表は「明日は会期末。廃案にぜひ追い込んでいただきたい」「今日も参院内閣委員会で統合型リゾート法案(カジノ法案)の質疑が行われているが、違法性の阻却、ギャンブル依存症への対策、ほぼ質疑者と答弁がすれ違ったままで、国民の不安に対する納得できるしっかりした答弁は返ってきていない」と抗戦意志を示していた。
一方で「野田幹事長の指示」という噂もあるので、本当のところは分からない。ただ、榛葉氏は細野氏に近く、カジノ推進派であり、同時に「隠れ反蓮舫」との噂もあるので、「ちょっとした造反」だった可能性は否定できない。
そもそも民進党内につくられた「カジノ議連」には40人近くの参加者があったと言われるが、このことは「本来は自民党にいるべき議員」が全体の3割近くを占めていることを示している。これでは、関ヶ原合戦における西軍と同様、まともに戦えるわけがない。

これとよく似た故事がある。慶長4年1月3日に始まった鳥羽伏見戦で薩長の三倍の兵力を有した幕府側は大敗、敗走する。その知らせを聞いた将軍・徳川慶喜は、敗戦を予期して大坂城からの退去を決断するが、城内は主戦論が沸騰し、とても言い出せるような状況に無かった。そこで慶喜は、主立った幹部を集め大演説を行う。
戦すでにここに至る。たとい千騎戦没して一騎となるといえども退くべからず。汝らよろしく奮発して力を尽くすべし。もしこの地(大坂城)破るるとも関東あり、関東破るるとも水戸あり、決して中途にして止まざるべし。
『会津戊辰戦争史』

これを朗々と名調子で謳ったため、聞き入った将士は感涙に咽び、「いざ反撃!」と勇みだったという。その間隙をぬって、慶喜は稚児に身をやつして大坂城を脱し、大坂湾に遊弋する榎本艦隊に命じて江戸に逃げ帰ってしまった。

民進党がどのような説明をしようと、徹底抗戦を謳っていた案件で、他の野党に黙って政権党と勝手に妥結し、しかも採決だけ応じて修正案そのものには反対するという、どう説明しても理解されない行動に出た。
とにかく、これで民進党の威信と戦意は地に堕ち、野党は分裂、自民党は安心して解散・総選挙に打って出られる状況になったのである。

【追記】
民進党衆院国対は徹底抗戦し、夜中の0時を超えて時間稼ぎ(無駄な抵抗)をする意向のようだが、翌15日の日露首脳会談を妨害する効果しか無く、後で「民進党が抵抗したから大事な領土交渉に支障が出た」との非難が起こることは目に見えている。。
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2016年12月13日

日露交渉を急ぐワケ

今週末、ロシアのプーチン大統領が来日する。領土問題ではほぼ進展がないだろうと推測されているが、経済協力とビザ要件の緩和などを先行して、外交関係の改善を進める方針に変更は無いと見られる。
官邸の見込みとしては、領土問題でも一定の成果を挙げて、日露平和条約への道筋を付けたことで、解散・総選挙に打って出るつもりだったようだが、そこまでの成果は難しいだろう。それをカバーするために、急遽ハワイ行きが決められ、「米ロの橋渡し役」を強調することで、成果を代替するつもりなのかもしれない。それが「成果」になるのかは分からないが、内閣支持率が圧倒的高位にある現在、「それっぽい」ものであれば何でも良いのだろう。

官邸が目測を誤ったのは、外務省が米大統領選の観測を誤ったことに起因している。外務省は早々に「クリントン勝利は確実」と判断し、安倍総理に大統領選挙の最中にヒラリー氏と会談させた上、トランプ氏が当選すると狼狽して、就任前のト氏に土産を持って会いに行かせた。ところが、日本と異なり、米国では政治家への「土産」は「買収」と見なされるだけに迷惑以外の何物でもなかった。また、大統領就任前に次期大統領を詣でたことは、現オバマ政権の幹部や国務官僚を激怒させ、改めてハワイに行くハメに陥った。ゲーマー視点では、「恥ずかしい」失点を重ねている。
外務省の望まない日露外交を進める官邸に対する、外務省の「意趣返し」という見方も可能だが、それにしては自分のクビを締めているとしか思えないので、単純に外務省の無能がなせる業と見て良い。

とはいえ、安倍総理・官邸が外務省や米国の強い反対を無視して、日露交渉を強行する理由については、専門家の間でも見解が分かれている。基本的には以前書いたものと変わりは無い。
では、なぜ安倍政権はロシアにこだわるのか。一つは、安全保障上の理由で、日本が「対中封じ込め策」を採る以上、最大のカギは「ロシアを中国側にやらない、最悪でも中立状態にさせておく」こととなる。ところが、現状では米英がロシアを「私の敵は貴公でござる」と宣言してしまい、EUが同調している以上、ロシアとしては中国と手を組むほか無い。だが、それは完全に日本の国益に反しているため、日本としてはロシアの「100%中国寄り」を、80%にでも70%にでも下げておきたいのが本音なのだ。そのためには、「日ソ共同宣言」の休戦ではなく、「日ロ平和条約」で最終講和を結ぶ必要がある。だが、それは日米安保上許されないため、少しでも講和状態に近い状態にしたいのだろう。結論としては、「平和条約は結ばないけど、実質的には講和と同じ状態」を目指しているものと推察される。

第二は、経済上の理由だろう。「アベノミクス」が完全に行き詰まりを見せているが、これは「金融緩和して市場に大量にカネをバラ巻いたけど、誰も使わない」ことに大きく起因している。この点については、改めて近いうちに説明する。安倍政権としては、銀行や企業内に滞留する巨額の資金の投資先を用意しなければ、早晩「アベノミクス」が破綻をきたすだけに、その投資先として、安全保障上の理由や同じ権威主義政権のよしみもあり、「ロシア」が選ばれたと考えるのが妥当だろう。
領土交渉はネタでしょ? 2016.9.7)

実はもう一点あったのだが、本ブログで指摘するのは穏当では無いと判断し除外していたものの、他に指摘している論者が見当たらないので、敢えて触れておく。
日露交渉を強行する第三の理由、それは核政策である。
アメリカによる「西側陣営の解体〜アジア・欧州からの撤退」が現実味を増す中、日本としては日米安保に替わる安保政策が必須となっているが、代替案としては、

1.日中同盟(対中従属)
2.東アジア共同体による集団安保
3.武装強化による自主防衛路線


が挙げられる。霞ヶ関は頭から全否定しているため、対米従属に血道を上げているが、それは政策転換のコストを高めるだけで、行政であっても政治とは言えない。だが、代替案のうち、1と2は、これまで政府が進めてきた反共・入欧政策に反するため、国民の理解と支持が得られない構造になっている。結果、第三の自主防衛路線を採るほかないが、国力が低下の一途を辿り、急速に少子化が進んでいる今、強兵路線は現実的ではない。となると、核武装した上で現行水準の武装を維持する程度が「ギリギリ」の選択肢になると考えられる。
日本がNATO並みの「防衛費対GDP比2%」を実現した場合、5兆円が増額されることになり、現在米国が負担している駐留経費の6千億円など余裕で支払えるのだ。また、トランプ氏が言うように、独自に核武装する場合も、もちろん規模によるが、英仏並みで考えた場合、開発費で3〜4兆円、維持費で年間3〜5千億円程度と見られるだけに、これも「お釣り」が来てしまう。対外リスクを全く考慮しなければ、実は核武装は費用対効果が高い。
現状、日本は「2千億円の思いやり予算」で、固定経費8千億円分の米軍を駐留させることで、自国の軍事費を大幅に低減させ、その分を自国経済に投じている。歳出の1%強を防衛費増額に充てれば(現状の5%を6%にする)、米側が負担している在日米軍駐留費の6千億円などすぐに手当できるにもかかわらず、それを拒否して「横暴、暴論」と騒いでいる。客観的に見て霞ヶ関や自民党議員らの主張は全く妥当性を欠いている。
もっとも、対GDP比2%を実現するとなると、税収が55兆円という現状では、防衛費5兆円の増額など夢の話に過ぎず、本気でやるなら大増税が必要となる。それが恐ろしいからこそ、自民党議員も霞ヶ関もトランプ氏を非難することしかできないのだろう。
米軍駐留費の妥当性について、2016.5.11)

この安保政策と併行して考慮されなければならないのが、原発政策である。世界最大級の原子力事故を起こした日本では、自民党政権ですら遅々としてしか再稼働を進められないでいる。また、核技術についても、第四世代原子炉の前提となる高速増殖炉の開発が頓挫し、原型炉である「もんじゅ」の再開は不可能になっている。政府としては、フランスと技術提携しつつ、原型炉の次の段階である実証炉の建設を決めている。核技術の進歩が止まった場合、原子力政策そのものを中止せざるを得なくなる。
核開発競争に失敗しているのに「次」のステップに進めること自体、相当な無理筋だが、それを強行するのは(利権もあるが)安保政策上の要求があるためだ。ところが、高速増殖炉の開発は、すでに米英独が放棄しており、西側陣営で残っているのはフランスだけだが、そのフランスの技術は非常に不安定で、連携してみたところで成果を挙げる見込みは低い。フランスも衰退著しく、その財政負担はすでに限界に来ている。

この分野で唯一成果を挙げ、技術的に先行しているのはロシアだ。ロシアは、チェルノブイリ事故とソ連崩壊を経たものの、巨大な国土を防衛する上で、通常軍備の負担を減らすためには核政策を取りやめるという選択肢を持たなかった。1920〜30年代に飢餓輸出して、工業化と軍備拡張を実現した経験を活かして、90年代以降も国民が飢える中で核開発を進めた。権威主義国家ならではだろう。
結果、ロシアでは高速増殖炉の最終段階である実証炉「BN-800」が今年商業運用に入っている。この実証炉の次は「商業炉」なので、実証炉の商業運転が順調に行けば、商業炉として量産体制に入る。この点、ロシアは「化石燃料後」と「安全保障」の2つの要求を同時に実現するという無理筋を通そうとしている。

ここまで説明すれば十分だろう。日本が自主防衛路線を採り、核政策を放棄しない以上、ロシアとの連携(実質的にはかなり従属)という選択肢は「一択」のものでしかない。ロシアと連携すれば、日本中の原発のプールに溢れかえって、再稼働すれば数年後には満タンになってしまう核廃棄物の最終処分先も、シベリアの永久凍土に求めることができるので、「一石二鳥」(失うものも大きいが)なのだ。

日本では、民主党鳩山政権が「東アジア共同体」路線を採り、同時に原子力政策をフェイドアウトする方向で検討していたが、鳩山政権が半年で潰え、親米・日米同盟路線の菅政権が成立、その後、福島原発事故が起こり、脱原発路線に舵を切った。ところが、日米安保はすでに賞味期限切れで、代替案として「親中」も「共同体」も採れない以上、「核抜きの自主防衛」という選択肢は不可能だった。2012年に自民党が政権に復帰し、原発再推進に舵を切ったのは「当然の流れ」だったのだ。

安倍政権の問題点は、「いま何故ロシアなのか」を全く説明せずに外交を進めていることにある。他方、民進党は安保・外交政策も核政策も明確な路線を打ち出さないで、ただ自公政権を非難するだけになっている。自民党が「親米、後に自主防衛、核武装」を考えている以上、野党としては「脱米後に親中ないし共同体、核抜き」を主張しない限り、対立軸にはなり得ないのである。

【追記】
こんなこと言ったら、またぞろ「あの人、本当に左翼なんですか?」と言われちゃうでしょ〜〜

【追記2、2016.12.14】
プーチン氏は「ミサイル技術の供与」を示唆していることからも、日本側の真意を見抜いているものと見られる。
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2016年12月12日

敵はリベラルにあり・補

敵はリベラルにあり」の補足。
日本を始め西側陣営の多くで、極右勢力が拡大する一方、社会民主主義派は退潮が著しく、自由主義者が「自由と民主主義が失われてしまう」と断末魔を上げている状況にある。
なぜこうなってしまったのだろうか。E・トッド先生の論理を援用して説明したい。

西側諸国では、長いこと「自由と民主主義こそが豊かさの源泉である」と喧伝されてきた。ところが、ソ連・東欧ブロックが瓦解し、世界の半分が「市場開放」された結果、経済のグローバル化が進むと同時に労働賃金のフラット化が進んだ。
具体的には、ヨーロッパでは工場が東欧に移転し、日本では中国に移転した。同時に、賃金の相対化が進み、非正規雇用や移民労働者の増加によって、雇用環境の悪化や賃金の低下が進んだ。また、高齢化に伴い、社会保障費が急騰して国家財政を圧迫、同時期に東側陣営が崩壊したことも相まって、社会保障の切り下げが始まった。「狡兎死して走狗烹らる」である。

こうして後に残されたのは、「収奪する自由」と「収奪される自由」だった。本来のリベラリズムは、機会均等を実現するために国家による再分配を肯定するが、今日では「経済成長のため」と称して真っ先に再分配機能が削られている。
具体例を挙げるなら、無能な正社員と有能な非正規社員がいるとして、リベラリズムは、正社員のクビをきって他方を正社員に据える「自由」と、正社員から多額の税を取って他方に再分配する「公正」の2つの選択肢を容認する。だが、現実の自由主義国家では、双方とも機能せず、有能な非正規社員はひたすら収奪される存在となっている。
そこで疎外された者たちが自由を怨嗟しているのに、それに対してリベラリストが「自由こそ至上の価値」と高説してみたところで、逆ギレされるのがオチだろう。そして、それがヘイトの原動力となっているのだが、リベラル派は全く自覚が無い。

米欧では、「グローバル化と自由主義が諸悪の根源である」として批判する極右勢力が拡大。具体的には、外国人・移民労働者の排斥が目立つようになる。これに対し、英仏の保守派は右転回することで一定の支持を保っているが、同国の社会民主主義派はグローバル化を否定せず、移民問題も人権視点から擁護に回っているため、不満を吸収できず、凋落の一途にある。アメリカでは、グローバリゼーションに否定的だったサンダース氏ではなく、これを肯定するリベラルの旗手であるクリントン氏が民主党候補に選出された結果、保護貿易と反自由のトランプ氏に敗れるところとなった。
大国では、唯一ドイツだけがリベラルの旗を掲げ、移民に宥和的な政策を採り続けてるが、これは欧州で唯一の経済的勝者であるためであり、それも時間の問題だと思われる。
欧州の社会民主主義政党が政策転換できないのは、戦後和解体制下における最大の利益享受者となったことで、政党人があまりにもエリート化(資本と同化)してしまい、大衆から遊離していることが大きい。冷戦期における「影の勝者」であることが、グローバリゼーションと自由の呪縛に囚われるところとなったのだ。具体的には、フランス社会党のオランド政権が労働法改悪を進めたことに象徴される。

大衆の不満は、経済的グローバリゼーションと移動の自由(移民・難民の受け入れ)に伴う中間層の没落と貧困に起因している。これに対する各派の対応は以下の通り。

極右主義者 「外国人を追い出せ、国境を閉ざせ」

保守主義者 「外国人は安く使え、国境は規制強化」

自由主義者等 「外国人の人権を守れ、国境をなくせ」


つまり、リベラル派の主張は現行の大衆的不満を助長させるものでしかなく、広い支持を得るのはそもそも困難なのだ。貧困が解決されない限り、大衆の不満の矛先は、いずれ自由主義者に向けられるだろう。
深刻なのは、本来であれば「適切な再分配による貧困の解決」こそが目標であるはずの社会主義者たちが、こぞってリベラリストに同調してしまっている点にある。上記で言えば、社会主義者の主張は、

「外国人は本邦人と同一賃金に、国境は規制強化せよ」

くらいが妥当だったはずだが、英労働党がEU離脱を主張できず、仏社会党が労働法改悪を進めていることに象徴されるように、社会民主主義政党が労働者では無く、資本と一体化してしまっている。日本では、連合がそのスタンスに近い。
マルクスは、自らの待遇を守るために、資本に同調して外国人労働者などの下層労働者の疎外に荷担する労働者を「哀れなプロレタリア」と呼んだが、西欧社会民主義政党や日本の連合はまさにこれに相当する。

戦前期の日本では、都市資本を代表するリベラルな民政党が、労働法制の制定に徹頭徹尾反対した結果、社会主義者や労働組合を軍部の側に追いやってしまい、社軍協同路線「広義国防」の道を歩ませてしまった。社会党関係者の中にも、斎藤隆夫の反軍演説を評価するものが少なくないが、斎藤が労働法制に反対した急先鋒であったことを知るものは殆どいない。
昭和の歴史は、貧困に無関心な政治エリートが大衆のファッショ化と好戦志向を助長してしまったことを示しているが、その歴史は殆ど学ばれていない。
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2016年12月10日

クラーナハ展―500年後の誘惑

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「クラーナハ展―500年後の誘惑」 国立西洋美術館 1/15まで

西洋美術館のクラーナハ展に行く。
クラーナハは、大学時代に澁澤龍彦にはまって以来のファンで、展示があれば見に行ったものだが、「個展」としては本邦初と聞き、驚いている。確かにマルティン・ルターの肖像画といえばクラーナハではあるものの、それ以外ではドイツかルネサンス、あるいは澁澤ファンでない限り、馴染みがあるとは言えないのかもしれない。

とはいえ、宗教以外のテーマで女性、それも裸婦を描いたり、大工房で作品を量産したりするなど、ルネサンスの「革新」を象徴する画家だった。また、単なる画家ではなく、大工房の経営者であり、宗教改革の支援者であり、貴族の顧問であり、市の評議員や市長でもあった。
この当時は、まだ板に直接描いている時代だが、先進的なカンバス画もあり驚かされる。
『ホロフェルネスの首を持つユディト』をはじめ、初来日の作品も多く、クラーナハに特化しているのは見応えがある。ただ、ウィーン美術史美術館から来た作品は、どれも完全に修復されピカピカになり過ぎて、まるで昨日今日描いたような仕上がりになっており、逆に「これマジで真作?」みたいになってしまっている。昨今の技術は凄まじいものがある。

また、クラーナハをモチーフにした現代作家の作品も展示されているが、面白いものもあれば、「何故これ?」というものもあり、評価の分かれるところだろう。だが、全体としてはバランスの良い展示になっており、何よりも「人が多くない」ため非常に見やすい展覧会であることが良い。印象派展などになると、行列して止まることも許されない話になってしまい、とても見に行く気になれないが、本展は土日でも普通に見られるところがお勧めだ。
posted by ケン at 13:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月09日

カジノ通過し、舛添を思ふ

【カジノ法案、衆院通過…公明自主投票・民進棄権】
 カジノやホテル、商業施設などの統合型リゾート(IR)を推進するための法案(カジノ解禁法案)は、6日の衆院本会議で自民党や日本維新の会などの賛成多数で可決された。公明党は採決に自主投票で臨み、賛否が分かれた。民進党などは退席して棄権した。自民党は今国会での法案成立を目指しており、参院送付後、7日の本会議で審議入りしたい考えだ。 法案は、自民党などが2015年4月に議員立法で衆院に提出した。IRを推進するための基本理念を定め、法施行後1年以内をめどに、カジノの入場規制や暴力団排除など、政府に必要な法制上の措置を取ることを求める内容だ。
(12月6日、読売新聞)

【「都民ファーストの観点から韓国人学校への都有地貸与を撤回」小池百合子知事が所信表明】
 東京都の小池百合子知事は1日の所信表明で、これまでの取り組みの成果の1つとして「都民ファーストの観点から、地域住民の声も反映し、韓国人学校への都有地貸与の撤回なども行ってきた」と語った。また、都政透明化に向けて「情報公開を徹底するために、口利きの記録化や黒塗り資料の積極的な公開も進めてきた」と強調した。
(12月1日、産経新聞)

臨海カジノ構想に反対し、五輪用の3箇所のアリーナ新設計画を潰して2千億円を削減し、韓国人学校を設置しようとし、首都大学を都立大学に戻そうとした舛添氏は超マトモだった。
ちなみに韓国人学校の件は右派ばかりが問題にしているが、もともとは韓国の日本人学校が移転した際にソウル市が土地などで大きな便宜を図ってくれたことへの対価・御礼であり、「都の税金を使うのか」という批判は「天ツバ」でしかない。

今から思えば、舛添氏は「だからこそ」後ろから刺されたのだろう。
ネッケルは国王に罷免されたが、舛添氏は大衆によって引きずり下ろされた。
ルイ16世の要請で財務長官に就任した銀行家のネッケルは、貴族への課税と宮廷費の削減を試みるも、上級貴族と王妃マリー・アントワネットの反対で挫折してしまった。
そこで、国王は三部会を招集して新規課税を諮るも、三部会は聖職者・貴族と平民の代表者数が同数であったことから、平民代表は議会構成の不公正を盾に審議を拒否し、もちろん聖職者・貴族は課税反対だったため、三部会は紛糾、王妃の圧力でネッケルが解任されるに至り、パリ市内は不穏に陥り、国王が軍を大動員し市中に配備したため、食料価格が暴騰したこともあって、革命を誘発してしまった。ルイ16世の立場であれば、王妃一派の暴慢を抑え、改革派貴族と連携して、三部会で貴族への新規課税を実現していれば、とりあえずは7月14日のバスティーユ襲撃は回避できたはずだった。
必要不可欠な改革を、一部の利害者の都合で実行しない国は滅びるのみである。ゴルバチョフのペレストロイカも同様だ。

民進党は退席し採決に加わらなかった。彼らの言い分は、「無法な国会運営の採決に同意することは、彼らの運営方針を認めることになる」というものだが、主権者には通じない論理であろう。たとえどのような形であれ、採決がなされる以上、きちんと賛否を表明しない限り、議事録にも載らず、後世の人は「民進党は賛否を表明しなかった」としか評価しないだろう。連中の視野の狭さは治りそうに無い。

また、「党内議論ガ〜〜」と騒いでいたKM党は、フタを開けてみれば議員の3分の2が賛成するという有様で、ごく一部の慎重派・良識派がかろうじて抵抗していただけだったことを露呈した。その本性は、自民党と同じ収奪者だったのである。
posted by ケン at 12:18| Comment(0) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月08日

十三時間勤務是正もとめてストライキ

【臨港バス36年ぶりにストライキ 4日始発から運休】
 川崎鶴見臨港バス(神奈川県川崎市)の労働組合は4日朝から、最長で24時間のストライキに入った。同組合のストは1980年4月以来、36年ぶり。川崎や横浜市内を走る全系統のうち1系統を除く40路線が始発から運休となった。同社によると、労働条件を巡る労使交渉が解決しなかったという。同組合は「朝と夜の通勤ラッシュ時間帯を同じ乗務員が担当し、長時間拘束される勤務が多い。週当たりの拘束時間を減らすダイヤや勤務体系を求めたが、理解を得られなかった」としている。
 終日続けば4148本が運休し、影響人員は約10万人。労使交渉は解決せず、ストは日没後も続いた。多くのバス路線の発着点が集中するJR川崎駅では早朝から、それぞれの乗り場の案内板に「当社組合がストライキを行っております」とのビラが張り出された。駅東西のロータリーには非組合員の管理職3人が乗客に頭を下げながら事情を説明して回った。
 川崎駅と水江町を結ぶ系統沿いに住む30代の男性は「夜勤明けで帰宅するところ。弱りましたね」。60代の会社員は「これから工場に出勤しなければいけないのに。タクシーに切り替えて行きます」と足早に去って行った。5日は始発から平常通り運行する予定。
(12月5日、神奈川新聞)

「公益」を重視するなら、マスコミは労働組合側の要求を正確に報じるべきである。
川崎鶴見臨港バスのストライキに際し、組合が要求したのは「13時間勤務の是正」「週3に及ぶ中休勤務の是正」だった。

中休勤務とは、一般的には「中抜け」などと呼ばれる勤務体系で、本数の多い早番と遅番のみを担当する。この場合、朝5時半に出勤し、11時まで乗車した後、休憩挟んで17時から22時まで勤務、23時頃に退社するというもので、実働は11時間半だが、身体拘束は17時間半に及ぶ。
この他に、朝6時から22時まで連続16時間の「通し勤務」や、午後12時から深夜1時まで連続13時間の「遅番」などがある。

中休勤務を週3として、上記の「通し」と「遅番」を一回ずつ入れ、休日を2日とした場合、実働時間は63.5時間となり、国交省の「1週間当たりの拘束時間は原則として65時間を限度とする」規定に適うが、「中抜け」を拘束時間に含めると81.5時間に達する。しかも、この場合、勤務日はまず子どもの顔を拝むこともできない。
「週3に及ぶ中休勤務の是正」とはこういうことを意味するのであり、それを報道しなければ、ストライキの意味は伝わらないだろう。

ストをやるということは、経営側が要求を拒否したことを意味する。1886年に米国で行われた第一回メーデーの要求が「14時間勤務の是正」であったことを思えば、凄まじい先祖返りを起こしていることが分かるだろう。
この意味でも戦後和解体制は瓦解しているのである。
posted by ケン at 12:34| Comment(0) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月07日

山岸凉子展

山岸凉子先生の初展覧会に行く。
本郷にある弥生美術館(文京区弥生町)は、東大の裏手にあるが、都心部ながらも閑静な住宅街であると同時に、東大の敷地に面している関係で大きな木も多く、散歩しても心地の良い空間だ。

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山岸凉子展 「光 −てらす−」 ―メタモルフォーゼの世界― 弥生美術館 12/25まで

「山岸凉子展」は激ヤバだった。印刷媒体では体感できない、原画が醸し出すパワーが圧倒的。カラー原画も、華やかな彩色と黒の静謐さの対照が見事で、思わず何度かガラスに額を付けてしまった(笑)展示の質も高く、色々見応えがあった。
来館者は私よりも年上の妙齢の婦人ばかりだった。1人で行くにはやや抵抗があったので、同行をお願いして正解だった。
気に入りすぎて展覧会オリジナルカレンダーも購入。

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同行していただいた方に「アラベスクとか日出処の天子とか読んだの?」と聞かれ、「その辺はあまり〜」と答えたところ、「信じられない!」と叱られた。いやいや、自分が生まれる前にデビューされてるんですから!
妹の「花とゆめ」とか「ASUKA」は読んだけど、小学生は「LaLa」読みませんから!
確かに自分は「テレプシコーラ」からの「にわか」ではあるのだけれど。
でも、アラベスクは貴重なソ連ネタだから読んでおくか・・・・・・
先生も来年古希か〜〜

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そして、次回はこれであります!解散はもうちょっと待って〜〜
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posted by ケン at 12:07| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする