2016年12月15日

日露交渉が上手くいかないワケ

【日露首脳会談、共同声明の発表予定なし…露高官】
 ロシア外務省高官は15日のプーチン大統領の訪日を前に、読売新聞などの取材に対し、今回の安倍首相との首脳会談では、平和条約締結に向けた決意などを盛り込んだ共同声明を発表する予定はないと明らかにした。この高官は、2013年4月の安倍首相の訪露のさいに共同声明を発表したものの、その後、日本がウクライナ情勢をめぐり対露経済制裁を導入し、日露間の対話が凍結したことで「履行されていない状態にある」と指摘。その上で、「履行されていない以上、新しい共同声明を採択するのは理屈に合わない」と述べ、新たな共同声明を出す必要はないとの考えを強調した。
(12月14日、読売新聞)

日露交渉を急ぐワケ」とかぶる部分が多いが容赦されたい。
共同声明が見送られたということは、発表できるだけの成果が無いことを意味する。日本のマスゴミは、「トランプ氏が当選してロシアが態度を変えた」などという外務省発のプロパガンダを垂れ流しているが、そのような事実は見受けられない。
実際、私は本ブログ9月7日付けの記事で以下のように書いている。
(日露交渉に関する)情報が少ない理由は、「情報自体が存在しない」と考える方が妥当だ。つまり、日ロ間で従来の交渉内容を覆すような特別な交渉は行われておらず、ただ経済協力をめぐる交渉のみが進んでいる、という認識である。
(領土交渉はネタでしょ?) 

日本のマスゴミは、やたらとプーチン大統領にインタビューしたり、ロシア外務省の高官や大使館員に話を聞きに行って、そればかり報じている。が、実は日本人にとってより重要なのは、日本政府・安倍政権が「どのようなスタンスで日露交渉に臨み、何を獲得目標にするのか」だったはずだが、それについてはロクに報道されていない。つまり、マスゴミは官邸や霞ヶ関が恐くて聞きに行けないため、公式発表を垂れ流しているだけになっている。

日露交渉が上手くいかないのは、その大半が日本側に原因が求められる。
ロシア側は日露交渉の価値を、

@ 安全保障
A 経済協力
B エネルギー提携


に求めており、それは「領土交渉はネタでしょ?」と「日露交渉を急ぐワケ」ですでに説明している。

これに対し、日本側の交渉方針は、

主:領土交渉
従:経済協力


であり、その経済協力もどちらかと言えば「領土交渉で妥協を引き出すため」という側面が強い。これでは、話がかみ合わないのは当然だろう。
本来であれば、ロシアが持ちかけている交渉内容は、どれも日本と利害を共有できるものだった。

安全保障で言えば、「日米安保後」を見据えた「日露枢軸」は中国の脅威から独立を維持する上で不可欠のものだ。
経済協力は、アベノミクスの無制限金融緩和で銀行や企業に溢れかえってしまっている資本の投下先として有望なものと言える。
エネルギー提携は、化石燃料の中東依存からの脱却、あるいは原子力政策を進める上で不可欠の要素となる。

常識的な国家であれば、これらの要素と領土問題の重要性や得失を計算して、前者が勝れば後者は捨てるなり凍結するなりするはずだ。日本側は殆ど報じていないが、プーチン大統領は「必要ならミサイル技術の供与もやぶさかではない」とまで述べており、日本側報道とは真逆にやる気満々にしか見えない。しかし、日本の外交は現実的利益よりも観念を先行させる伝統があり、今回も「領土交渉を前提とした経済協力」に固執したあまり、何の成果も挙げられなかったものと推測される。

ロシア・ソ連学徒の視点で言えば、順序として上の3つの要素で日露が強い協力体制を築き上げ、「日露枢軸」を構築できれば、領土問題は自然と良い方向での解決に向かうものと見られるが、日本は入口でそれを拒否してしまっているのだ。

過去にも、日本は満韓交換論を前提として日露協商を自ら否定して宣戦布告したり、日独伊三国同盟に替わる日ソ不可侵条約(日ソ同盟)を自ら取り下げて日ソ中立条約にしたりと、ことごとく(我々的には)「何故そっち?」という選択肢を採ってきたが、今回も日本は大きな魚を逃すことになりそうだ。

【参考】
日露開戦の代償 
posted by ケン at 12:42| Comment(4) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする