2016年12月19日

オバマも老いては駑馬に劣る

【米、ロシアにサイバー報復も…大統領選介入問題】
 ロシアがサイバー攻撃で米大統領選に介入したとされる問題で、オバマ米大統領は15日、ロシア政府に対し、何らかの対抗措置をとると警告を発した。オバマ政権は、残り約1か月の任期中にこの問題に関する報告書をまとめる見通し。報告書を踏まえ、任期中に報復措置に踏み切ることを検討している模様だ。オバマ氏は15日、米公共ラジオのインタビューで、ロシアを念頭に「外国政府が我々の選挙の健全性に影響を与えようとする場合、行動をとる必要があることに疑いの余地はない。我々の選ぶ時期と場所において行動する」と述べた。
 ホワイトハウスのアーネスト報道官も15日の定例記者会見で、「米国は強力なサイバー能力を保持している」と述べ、ロシア政府への報復措置として、サイバー攻撃を仕掛ける可能性を示唆した。また、オバマ氏側近のベン・ローズ大統領副補佐官は15日、「(ロシア大統領の)プーチン氏の統治手法を考慮すれば、これほど重大なサイバー侵入は政府の最高レベルの関与を意味する」と述べ、プーチン氏自身の関与を指摘した。
(12月17日、朝日新聞抜粋)

「何を今さら」と「貴様が言うな!」が半分半分というところか。
大国が他国の政治に干渉するのは当たり前の話で、ロシアが例外なわけではない。イスラエルも中国も米国内に巨額の資金をバラ巻いてロビイスト・グループを形成している。かつて帝政ロシアは、日露講話交渉に際し米国内の新聞社を文字通り買い上げて自国に有利な世論形成を行った。この点、むしろ日本が他国内における親日派の形勢や親日世論の醸成に対し無頓着すぎるくらいなのだ。
古来、一方で欺瞞情報を流して敵方を攪乱し、他方でビジネスなどを通じて友好関係を築くのは常套手段である。現代では、IT技術を駆使して「偽ニュース」を発し、世論を操作して、可能ならば選挙にも介入するだけの話だ。それとも、米国はそれらの手段は一切採用していないというのだろうか。

日本で言えば、アメリカは歴代の自民党有力者を協力者としてきた。最も象徴的なのは岸信介で、米当局と取り引きして協力者となって巣鴨監獄を出獄し、総理大臣にまで上り詰めている。歴史文書の公開を積極的に進めているアメリカが、いまだ岸関係の文書を公表しないのはそのせいだろう。
公開された米国公文書によれば、緒方竹虎はCIAの「POCAPON」、賀屋興宣は「POSONNET-1」であったことが判明しており、左派では西尾末広が協力者だったことが分かっている。CIAは、社会党分裂から民社党が独立するのを支援し、その後も暫く資金を提供し続けている。

現代ロシアで言えば、アメリカはソ連崩壊期からずっと、最初はエリツィン一派を支援し、ソ連・ロシア内の生産インフラの買収を進めた。その全評価額はわずか50億ドルに過ぎず、これが現在の対欧米怨嗟の元凶となっている。その後、プーチン氏が国政の前面に登場する頃から、米国の支援先はエリツィン一派からリベラル派に移り、今日に至っている。だが、ヤブロコなどに代表される新欧米のリベラル派は国会に殆ど議席を持てないでいる。そもそも欧米資本の支援でつくられた調査機関による世論調査でも、数パーセントの支持しか得られておらず、米当局の工作は失敗し続けている。
この親欧米派に対する支援は、すべて欧米資本で設立された「デモクラシーの普及」を目的としたNGOなどを通じて行われていたため、プーチン氏はこれらのNGOの活動を大幅に規制したが、欧米諸国はこれを「デモクラシーの後退」として非難している。

つまり、何をどう見ても先に仕掛けたのはアメリカ側であり、これを「新冷戦」と呼ぶならば(私自身は適当では無いと考えている)、ロシアは反撃しているだけの話なのだ。自国に有利な世論を形成しようとするのは誰もが行うことだろう。

すでに何度も述べている通り、米国内には「世界の警察官を気取っている場合じゃねぇだろ!」という気運が蔓延しており、それをエリート層が払拭・否定しようと必死にあがいたのが、今回の米大統領選だった。
米国が抱えている問題は、予算の15%以上を占めている過大な軍事負担と、新旧自由主義に起因する国内産業の衰退と貧困にある。これに対し、保守派のクリントン氏は、従来の安保政策と自由貿易を堅持しているのに対し、改革派のトランプ氏は、孤立主義への転換による軍事負担の大幅軽減と保護貿易による産業保護を訴えている。
つまり、米国民がクリントン氏を選ぶということは、1985年3月の政治局会議で「ゴルバチョフを選ばない」という選択肢を採ることに等しいのだ。詳細は「ペレストロイカを再検証する」を読んで欲しいが、当時のソ連で「ペレストロイカを発動しない」という選択肢を採った場合、より緩やかながらも、より凄惨な経済破綻を迎えていたことは想像に難くない。
ここでトランプ氏が選ばれない場合、米国はより凄惨な事態となり、将来的にはトランプ氏をはるかに上回る危険人物が大統領となって猛威を振るうことになると思われる。
ゴルバチョフを選ばないソ連?、2016.11.09)

オバマ氏が何と言おうと、問題は米国内に山積しているのであって、自分で解決できない責任を他国の指導者に押しつけるのは「見苦しい」としか言いようが無い。
オバマ氏としては、トランプ政権に何としても反ロシア路線を継承させようと必死なのだろうが、恥の上塗りでしかない。そもそも大統領の器では無かったのだろう。

【参考】
・ソ連・東欧学のススメ〜米大統領選を受けて 
posted by ケン at 12:51| Comment(2) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする