2017年01月31日

東芝、原子力部門も大幅見直しへ

【東芝 米原発子会社の出資下げへ 事業見直し、道険しく「引き取り手いない」の声】
 東芝が米国の原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)への出資を現在の87%から引き下げる方向で検討していることが分かった。米原子力事業で最大7000億円の損失が見込まれる事態となり、リスクへの抜本的な対策としてWHとの関係見直しを模索する。ただ、損失発覚後のWHの株式引き受け先を探すのは困難で、原発事業見直しの枠組みが固まるまでは曲折がありそうだ。
 東芝はWHが手がける米国での原発建設で工期の遅れなどにより建設コストが増大し、巨額損失につながった。海外を中心に原発事業を大幅に見直す方針で、来月14日に具体的な中身を公表する予定だ。原発事業は社内カンパニーから独立させ、社長直轄の組織とする。巨額損失の元凶となったWHへの統治強化を図るとともに、関係見直しにも着手する。東芝幹部は「株式売却は当然の選択肢」と語る。すべて手放すことも含め検討すべきだとの声もあるという。
 だが、現実的にはリスクの高さが浮き彫りになった原発企業の「引き取り手はいない」(アナリスト)との見方が大勢だ。原発を推進する中国やロシアの企業が浮上する可能性もあるが、安全保障上の懸念があり困難な見通しだ。
 東芝は原発事業の見直しについて、海外で原発建設工事の新規受注をやめ、設計や原子炉の製造などの分野に専念するほか、海外での原発の受注計画も見直す方向で検討中。経営の自立などを見据え、事業の分社も視野に入れる。
(1月31日、SankeiBiz)

東芝は先の臨時株主総会で、半導体部門の分社化を決めたが、原子力部門も大幅見直しの方向を示している。すでに白物家電は美的集団に、メディカルシステムはキヤノンに売却しており、半導体の分社化や海外原子力事業の切り離しなどによって、残るのは社会インフラ、エネルギー事業(海外原発以外)、パソコン、IoTサービスだけになっているが、これも「時間の問題」のように思われる。そもそも債務超過となる恐れが高く、現状でも「かろうじて戦線を維持しているだけ」で、いかなる展望も無い状態にある。

笑えるのは、東芝は昨年3月に半導体メモリーと原子力を経営の柱に据える方針を発表、当時の室町社長は「新生東芝の第一歩を刻みたい」と語っており、それから1年と保たなかったことを示している。末期戦とはそういうものかもしれない。

東芝の原子力事業の失敗は、そもそもウェスチングハウスを相場の2倍とも言われる高額で買収した上、同社と同じく東芝が買収した米ストーン&ウェブスター社による米国内での原発事業が実は超放漫経営だったことが判明、安全基準強化に伴うコスト超過と納期遅延が悪化の一途を辿っている。さらに円安で赤字分が肥大化してしまっている。
東芝の粉飾決算体質は、自らが買収した企業でも常態化しており、傷口を広げてしまっている。

世界最大級の核事故が起きた日本で原発再稼働が進んでいるのは、政府が安全基準を強化せず、国内の電力、原子力事業者にコスト負担を求める代わりに、国民負担を増すことで対応しているため、欧米のような事態(採算割れによる事業者の撤退)は起きていない。
このことは、原子力発電が権威主義と統制経済によってのみ成立しうるものであることを傍証している。
posted by ケン at 12:11| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

自由主義外交を放棄する日本

【対中国「もっと強硬に」55% 本社世論調査】
 日本経済新聞社の世論調査で、中国やロシアとの首脳会談を控える安倍晋三首相の外交姿勢について聞いた。中国公船の相次ぐ領海侵入を踏まえ、中国に「もっと強い姿勢で臨むべきだ」が55%に上った。韓国ソウルの日本大使館前の少女像移転が進まない中、元慰安婦支援を決めたことには異論がくすぶる。秋の安倍外交は国内世論をにらみながらのかじ取りになる。
(2016/8/28 日本経済新聞抜粋)

韓国釜山領事館前の少女像設置に対する駐韓日本大使の本国召還に対する支持は74%に及ぶという。
フィリピンでは、麻薬マフィアや反政府運動家(テロリスト)に対する無法な殺害が続いているが、そのフィリピンに対し、安倍政権はミサイルの供与や旧式武器の無償提供
を申し出ている。
また、国内で様々な人権問題が取り沙汰されているトルコとは原子力協定を結び、同じく国内外の行動で人道上の疑義が呈せられているロシアにも超接近を試みている。

これらは中国、朝鮮、韓国を一つのブロックと考え、これを包囲して封じ込めようとする冷戦期に似た思考、戦略に基づいているが、冷戦期と異なるのは、封じ込め戦略が優先されるため、自由や民主主義といったイデオロギーの前提を排除することを躊躇しないスタンスにある。
例えばトルコは、一時期は議院内閣制で政治体制的にモデル国とすら言えたものが、自ら首相位を廃し、象徴でしか無かった大統領に全権を委任しつつある。先のクーデター未遂事件に起因する粛清では、法律に基づかない捜査や裁きが横行しているとされる。

「理想よりも実利」と言えば聞こえが良いが、現実には日本自身が民主主義から距離を置き、権威主義に傾きつつある。
安倍政権は、中国ブロックと全面対峙し、権威主義国と連携強化を図りつつ、自国軍事権の拡大(海外展開のフリーハンド化)に努めている。国内政策では、秘密保護法、盗聴・監視の大幅強化、教育(思想)の中央統制、メディア統制、犯罪を検討しただけで検挙できる予備(共謀)罪の創設が進められている。
列挙してみると、昭和初期の日本と大差ないレベルでリベラリズムの放棄が進んでいることが分かる。にもかかわらず、国内の支持率は7割に達しようというレベルにある。

あとは一度傾き始めた傾斜がどこまで行くのかという話で、どこかのタイミングで戦争や大規模テロが起きた場合、それを理由にして戦時体制に移行、自由や民主主義など跡形も無く消去されるかもしれない。日本にしてもドイツにしても、1930年の段階で数年後に自国がファッショとミリタリズムに染まると考えていたものなど殆どいなかったのだから。
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2017年01月29日

GJ 謀略級三国志

諸般の事情によりプレイ予定だったゲームが変わり、これに落ち着いた。
北条投了氏のデザインで、マニアックな評価はあるものの、一般ウケはしなかった模様。要は「超人ロックで三国志」という、どっちも分からない人にはどうしようもないゲームだからだろう。だが、どちらも知る人ならそれなりに楽しめる作りになっており、私は嫌いでは無い。ルールも簡単だし。

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プレイヤーは16人有る軍師のうちランダムで一人を担当するが、それが誰であるか正体は伏せてゲームに参加する。軍師は各々勝利条件があり、魏、呉、蜀などの国を発展させることで勝利宣言することができる。だが、必ずしもその国に仕官して支援する必要は無く、勝たせたい国に敵対する国に仕官して敢えて弱体化させることもでき、往々にしてその方が効果的だったりする。
プレイヤー同士は、自分のキャラ以外「誰」か分からないため、他人の勝利条件を推測しながら、それを邪魔しつつ、自分の勝利条件を達成する必要がある。また、個々の軍師には「戦闘力+1」とか「山道使用可」とか「水路で退却可」などの特殊能力があるが、これを使うことで正体が露見しやすくなってしまうので、この使いどころも難しい。

5〜6人程度でプレイするのが丁度良さそうなのだが、この日は4人でプレイ。初回は私が「程イク」となるが、敢えて魏に仕官せず、劉備や袁紹などに仕えて自分の君主を滅亡させる挙に出る。劉備(蜀)は勢力が大きいので、一旦滅亡させた上で、遠方の地で旗揚げさせるという手間まで掛けたのが功を奏したのか、単にプレイヤー2人が初めてだったからか、無難に魏が版図を広げ、最後は魏に仕官し、勝利宣言することができた。

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二回目は、「軍師カードを二枚引いて好きな方を選ぶ」ことに。私は「賈ク」と「陸遜」を引き、敢えて前者を選ぶ。「勝ちやすさ」なら陸遜なのだが、「呉」限定で楽しくないから。個人的に「賈ク」が好きなのもある。
序盤から呂布に仕え、呂布に武具を持たせ、陳宮と自分の特殊能力を合わせて「武力6+」を宣言する。本ゲームでは、武将の武力に参謀と軍師の戦闘力を足した数値にダイス一個を足して戦闘力を出し、小さかった方が1ダメージ入るというシステムであるため、3も差が付くとどれだけ戦力差があっても手も足も出なくなってしまう。その呂布を使って、長安と洛陽を落とし、後は許昌とどこか一箇所を占領すれば勝利宣言できるところまで、あっという間にこぎ着けたものの、さすがに他の3人のプレイヤーから「とにかく、この中原のハイスタックを何とかしよう」と言われ、謀略カードを出されまくって、あえなく敗退、呂布は敗死してしまう。どこか史実を見る思いだ(自分的にはもう満足した)。
だが、本ゲームではプレイヤーキャラは何が起きても死なないので、気を取り直して今度は曹操の支援に取りかかるが、いきなりやるとバレバレなので、しばらく他の君主に仕えてお茶を濁す。4人プレイなので目標得点が非常に高くなっており、誰も勝利宣言できないまま、魏と蜀(呉の地域をぶんどった)が延々と叩き合う展開に。
最終的には、私の「賈ク」が領土を広げた魏に仕官して勝利宣言するのだが、先に仕えていた荀イクは「曹操が死んでいるとVPマイナス2点」なのに対し、賈クは「曹操が死んでいればVPプラス2点」であることが決定打となった。

相変わらず勝ちパターンの見えないゲームだし、やはり5〜6人でやる方が面白いのだろうが、手軽にプレイできて笑えるのは間違いない。同人で改訂版が出ているらしいが、気になるところである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

150万円恐喝されてもイジメ認定されない社会

【同級生に150万円 「いじめ認定難しい」発言撤回を】
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で横浜市に自主避難してきた生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が同級生におよそ150万円を払わされていた行為について、市の教育長がいじめと認定するのは難しいという考えを示したことに対し、生徒側の弁護士が発言を撤回するよう申し入れました。この問題は、原発事故で横浜市に自主避難してきた現在、中学1年の男子生徒が、転校してきた小学校でいじめを受けていたもので、生徒側は同級生におよそ150万円を払わされていた行為については、いじめと認定されなかったことから市側に改めるよう求めています。これについて、横浜市教育委員会の岡田優子教育長が今月20日の市議会で、「同級生らが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは難しい」と述べたことに対し、23日、生徒側の弁護士が発言の撤回などを求める申し入れを行いました。申し入れでは「教育長の発言は、いじめ防止対策推進法の趣旨に反し、被害生徒を苦しめるものだ」などと非難しています。横浜市教育委員会の伊東裕子担当部長は「保護者や生徒の気持ちを確認しながら、こちらの発言の趣旨を伝えて今後の対応を決めたい」と述べました。
(1月23日、NHK)

先年から報道されていることだが、福島原発事故によって、福島県から横浜市に自主避難した中学生が同級生から総計150万円を恐喝されていたことについて、市教育委員会が「いじめ」との認定を避けた事例。
生徒の親は「150万円」と訴えたのに対し、学校側の調査では「8万円」の事実認定に終わり、市教育委員会下に設置された第三者委員会の報告書(2016.11)も、「金銭授受はいじめから逃れるためだった」としつつ、「おごりおごられる関係」として「いじめ」との判断を避けた。両親らが引き続き市に善処を求めていたところ、20日の市議会で教育長が、「同級生らが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは難しい」と答弁したため、ブチ切れた形になっている。

話の前提として、いじめ認定は、そもそも大きな困難が伴う。行為自体がインナーサークルで行われているため、物証が困難であることも相まって、事実確認が難しい。そして、事実確認を行う学校も、教育委員会も捜査機関ではないため、いかなる専門性も調査能力を有しておらず、よほど明確な事例が発見されない限り、逆を言えば当時者が口裏を合わせ、物証を隠滅してしまえば、まず立証できない。当然ながら、公的機関であるため、一定の中立性が求められるので、明確な証拠も無いのに犯行を認定することはできず、どうしても玉虫色の結論に偏ってしまう。

ただし、イジメ自体は実は法律で定義付けされている。2013年に成立した「いじめ防止対策推進法」がそれで、以下のようにある。
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの

さらに、認定基準について、
他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為」により「対象生徒が心身の苦痛を感じているもの

と規定している。この規定に従うならば、たとえ恐喝金額が「8万円」(中学生なら十分すぎる高額だろう)で、「金銭授受はいじめから逃れるため」と判断されたとしても、「いじめとは断定はできない」などという結論を出すのは難しかったはずだ。両親が怒るのも当然だろう。
そもそも「金銭授受はいじめから逃れるため」としながら「いじめと認めるのは難しい」という報告自体、官僚以外の人間には理解不可能だ。
このことは、たとえ法律で定義されたとしても、現場で厳密に適用するのは、様々な理由から難しいことを示している。だが、これでは行政への信頼が失われ、法治国家としての実態が霞んでいく一方だ。

とはいえ、イジメ認定を学校や教育委員会等の利害関係者に委ねるのも、そもそも公正性や中立性に疑義がある。彼らは、常に「イジメは存在しない方が良い」というインセンティブが働くため、どうしても認定に消極的にならざるを得ないからだ。
本質的には、イジメの疑いがある場合は、即座に証拠(写真や録画録音)を確保して、学校を通さずに問答無用で直に警察に被害届を出すよう教育してゆくのが、唯一の解決法なのだろう。
posted by ケン at 12:31| Comment(2) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月26日

ゲームをプチ大人買い

年末年始にゲームを大人買いしてみた。

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S&T “Modern War, Issue #26:Invasion Afghanistan: The Soviet-Afghan War”
ソ連によるアフガニスタン介入(1979-89)をシミュレートした作品。12月頭に発売されたものが下旬には和訳が付いて日本で発売されているのだからビックリ。ついテーマで衝動買いしてしまったが、良く見てみたらソリティア(ソロプレイ用)だった。ただでさえ鬱々しそうな対ゲリラ戦争をソロプレイでやるとか、殆ど「パットンズ・ベスト」の世界だな。ただ、シミュレーションという意味で、アフガン戦争がどう再現されているかには興味があるので、誰か誘って付き合ってもらうことにしたい。

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GMT “Triumph & Tragedy”
枢軸、西側諸国、ソ連の3人で第二次世界大戦をシミュレートする超戦略級の積み木ゲーム。これまでも同様のコンセプトのゲームはあったが、本作はかなり評判が良く、特に「1日でプレイできる」プレイ・アビリティの高さが指摘されており、私も重い腰を上げてみた。この手のゲームは買えるときに買っておかないと、すぐヤフオクで凄い値段になってしまうのだ。本作の楽しそうなところは、自由度の高さにもある。ソ連がトルコに侵攻したり、開戦前に南欧に共産政権を樹立することもできれば、ドイツが「そもそも開戦しない」という選択肢もあるし、イギリスがソ連に宣戦布告することも可能なのだ。こう言うと「トンデモ」なゲームに聞こえるが、意外と「アリ」だというので、一日も早くプレイしてみたい。

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GMT “A Distant Plain”
長いこと4人集めるのも難しい状況が続いていたため敬遠してきたが、最近若干改善されつつあるため、COINゲームを購入することにした。だが、第一候補の「Fire in the Lake」はすでに売り切れだったため、第二候補の「A Distant Plain」にした。ここで言うCOINとはCounter insurgency=対ゲリラ・パルチザン戦、旧軍で言うところの治安戦を指す。本作の場合、2001年以降のアフガニスタンを舞台とした、多国籍軍、カブール政権、タリバン、北部軍閥の四者に分かれて覇権を争うわけだが、従来のゲームと異なるのは、四者共に勝利条件が異なるため、単純な殴り合いや場所取りゲームからは縁遠いシステムにある。例えば、タリバンなら「国内に政府不支持を広げる」、多国籍軍は「戦死者を出さずに、政府支持を広げる」、カブール政権は「支配地を広げ、私腹を肥やす」、軍閥は「中立地帯を増やし、金を稼ぐ」という具合なのだが、突っ込みどころ満載だ。大まかには「多国籍軍+政府軍vs. タリバン&軍閥」なのだが、最終的には四者とも異なるところが絶妙だという。ブラックすぎるのは、政府軍が麻薬撲滅活動を行うと「政府不支持」が広がった上、「私服ポイント」が上がってしまう点に象徴される(事実なのだろうが)。ちなみにベトナム戦争をテーマにした「Fire in the Lake」では、北ベトナム軍、南ベトナム解放戦線、米軍、南ベトナム政府軍の四つどもえとなる。本作もルール把握に苦労しそうだが、早くプレイしたい。
posted by ケン at 12:29| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月25日

「オレ正義」なる私制服を着る公務員

【「これまで以上誠実に」「保護なめんな」ジャンパーで小田原市長】
 生活保護業務を担当する小田原市生活支援課の職員が不適切な表現をプリントしたジャンパーを作成し、勤務中に着用していた問題で、加藤憲一市長は19日、該当部門の職員らに対し、「これまで以上に市民に誠実に対応し、任務を執行してほしい」と訓示した。
 市によると、福祉健康部長をはじめ管理職や課員約30人を前に、市長は、ローマ字で書かれた「保護なめんな」などの表現について「不正受給の可能性が全ての受給者にあるかのような認識が表れており、生活保護制度への不寛容の表れと指摘されても仕方がない」と指摘。「小田原が生活保護に不寛容であるかの印象を、図らずも全国に発信してしまった。実際がそうでないだけに悔しい思い」と心情を吐露した上で、「日々の仕事で汚名をそそがねばならない」と職務を進化させる契機とするよう呼び掛けた。
 その後に開いた臨時部長会でも、部長級約30人に対し、全庁を挙げて市民の落胆と職員への不信の払拭に取り組むよう訴えた。市生活支援課によると、同課には18日までの2日間に、電話は563件、メールで513件の意見が寄せられた。主に苦情や抗議という。
(1月20日、神奈川新聞)

神奈川というのは凄いところらしい。相模原では障害者に対する大量殺戮が行われ、横浜では災害避難者の子どもが150万円恐喝されてもイジメと認定されず、小田原では公務員が「オレ様が正義」と書かれた私製制服を着用して街を闊歩していたのだから、話だけ聞けば破綻国家である。介護老人施設での殺人、虐待は山ほどあるという。

実はこれらは無関係とは言えない。横浜の事件は、行政の機能不全を意味し、行政能力の低下が犯罪を誘発、社会秩序の悪化が公務員の私的団結や制裁に向かわせている、と解釈される。もちろん、上記の事件はそれぞれ別個の事件だが、大きいところで連関があるという意味で、スタンド・アローン・コンプレックスの関係にある。

このジャンパーが作成された経緯も、ある生活保護受給者が住所不定となり、色々手を尽くしたにもかかわらず連絡がとれなくなり、受給停止の措置を行ったところ、その者が市役所にやって来てカッターナイフを手に大暴れした事件に端を発しているという。これ自体は、被害者に同情されて良いところだが、この後、担当課長が「自分たちの自尊心を高揚させ、疲労感や閉塞感を打破するため」として、ジャンパー作成を提案、職員が自費で購入し着用するに至っている。この点、本当に課長個人の発案で、説明のような理由だったのか、課内で生活保護者弾圧の共同謀議はなされなかったのか、職員は本当に私費で購入していたのか、公的扶助は無かったのか、着用は強制されていなかったのか、疑問は山ほどある。
そして、この発想はまさに「Zガンダム」におけるティターンズそのものだ。もっとも、ジャンパーに記載された文言を見る限り、実際の作成者はギレン好きだったように思われるが。

問題は、不正受給がどこまで「現実的」なのかという話にある。例えば、日弁連の調査では、全国の生活保護受給額に対し、不正受給とされた額はわずか0.28%に過ぎず、単純計算すれば生活保護受給者300人に1人もいないというのが実情だ。1990年代以降、生活保護の受給者は増加傾向にあり、それは小田原市でも変わらない。

小田原市の人口はほぼ20万人で、生活保護受給者は2003年度に1563人だったものが、2011年度には2646人になっている。世帯数だと現状で2320ほどだという。これに対し、ケースワーカーは定数で29、実働25人、つまり1人で100人以上の受給者をサポートしている計算になる。不正受給者数については不明だが、平均値で考えると10人に満たないはずであり、課員全員が私製制服を着用して「不正受給者に正義の鉄槌を!」と血眼になるのは常軌を逸しているとしか言いようが無い。言うまでも無いことだが、ケースワーカーは生活困窮者に寄り添う良き相談者となり、自立を支援するものであり、「貴様、国民の血税をちょろまかしてはおらんだろうな!」と凄んで回る権力の走狗ではない。
そして、データを見る限り、問題はケースワーカーの少なさに起因する超過密勤務にあるように推測される。
もっとも、小田原市は「生活保護受給抑制運動の先進市」という評価も一部であるようなので、公務員組合(自治労)が存在しないことも含めて、単に社会的弱者に対する疎外と排撃の一大メッカだった可能性もある。

不正受給が全国の額面で0.3%でしかないのに、それをスケープゴートにして、本来保護が必要な人に対し受給できている割合である「捕捉率」が2割に満たないという現実を矮小化、憲法25条違反を常態化させている点にある。そして、それは25条の改悪、廃止の主張に繋がるものなのだ。
同条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」は、もともとGHQ案等になかった条文を、森戸辰男大先輩が「帝国憲法改正案委員小委員会(芦田小委員会)」において強く主張することで挿入された経緯があり、現行憲法における数少ない社会主義精神の発露である。

【追記】
小田原市長の「これまで以上誠実に」は何を指すのか。「誠実に抑制策を進める」のか「誠実に社会保障に取り組む」のか、常識的に読めば「これまで以上」とあるからには前者なのであり、反憲法的主張である。
posted by ケン at 12:29| Comment(4) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月24日

そもそも島嶼は適用外デス

【尖閣へ安保条約適用、継承を=菅官房長官】
 菅義偉官房長官は12日午前の記者会見で、次期米国務長官に指名されたティラーソン氏が上院外交委員会公聴会で、沖縄県・尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象との認識を示したことに関し、「米国とは累次の機会に尖閣諸島はわが国の施政下にあり、日米安保条約5条が適用されることを確認している。次期国務長官にもこうした立場を取ってほしいとの思いだ」と述べた。 
(1月12日、時事通信)

相変わらず役にも立たないことを言っているが、まぁ国内向けのプロパガンダなのだろう。こんなものを垂れ流すマスコミだから「マスゴミ」呼ばわりされるのだ。米国側が「尖閣は安保の適用内」と言おうが言うまいが、全く意味が無い。一応説明しておこう。
まず日米防衛ガイドラインから。
2.日本に対する武力攻撃が発生した場合
b.作戦構想
C.陸上攻撃に対処するための作戦

自衛隊及び米軍は、日本に対する陸上攻撃に対処するため、陸、海、空又は水陸両用部隊を用いて、共同作戦を実施する。

自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。このため、自衛隊は、着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦、水陸両用作戦及び迅速な部隊展開を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

自衛隊はまた、関係機関と協力しつつ、潜入を伴うものを含め、日本における特殊作戦部隊による攻撃等の不正規型の攻撃を主体的に撃破する。

米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

つまり、島嶼防衛についてはあくまでも自衛隊が担うものであり、米軍は自衛隊の作戦を「支援」するだけでしかないことが明確に規定されている。
そして、日米安保第5条。
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

このキモは「日本の施政権下にある領域」にある。北方四島に対して日米安保が適用されないのは、「施政権下に無い」からで、このことは従来政府も認めている。
問題は、島嶼の場合、敵国が占領してしまった場合、一時的であれ日本は施政権を失ってしまうため、「施政権下にある領域」でなくなってしまう点にある。少なくとも、米国側はそういう主張ができるので、仮に尖閣が他国に占領された場合、米政府が手のひらを返して「もうそこは日本の施政権下に無いから安保の適用外」と主張を一変させたところで、日本政府としては返す言葉も無い。

いずれにせよアメリカがアジアから手を引くのは時間の問題ではあるものの、当面は日本人をあやしてなだめすかして時間を稼ぐために「尖閣は安保の適用対象」と言っておく可能性が高いものの、あくまでもリップサービスであり、中身的には意味が無い。
posted by ケン at 12:46| Comment(10) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする