2017年01月23日

米国が入国者にSNSアカウントの登録を要求

【アメリカ政府が日本人旅行者に「FacebookやTwitterの報告要求」を開始 / ESTAで個人SNSを登録】
 アメリカ国土安全保障省は、日本人を含むESTA(電子渡航認証システム)登録が必要な外国人旅行者に対し、FacebookやTwitter、YouTubeなどの個人SNSの報告要求を開始した。ESTAとは、アメリカ国内に渡航する際、一般の日本人は必ず事前登録しなくてはならない渡航登録システムだ。いままでは名前や住所、国籍などの個人情報を登録すればよかったが、それに追加してFacebookやTwitterなどのSNSのアカウント報告を求められるようになったのだ。ESTAのプルダウンメニューで選択可能なSNSサービスは以下のとおり(引用者により略)。SNSサービスが選択肢にない場合は「Other」を選択してタイピングで記入する。
「オンラインサービスを利用する際、どのプラットフォーム、アプリケーション、ウェブサイトを使用して協働、情報の共有、他者との交流を行っているか、またその際使用しているアカウントのユーザーネームを入力してください」
SNSの報告は、犯罪にかかわる人物や、テロリストと関連の可能性がある人物を特定(またはターゲッティング)するためと考えられている。この案が浮上した際は、消費者保護派から強い反発があったものの、2016年12月、ESTAにSNSの報告プルダウンメニューが実装されるに至った。このSNSの報告要求は強制的ではなく、無視してESTA登録を進めることができる。よってFacebookやTwitterアカウントがあることを隠すこともできるが、その場合は「しっかりSNS登録した旅行者」よりも入国時に念入りに調べられる可能性(リスク)があるので、「SNSを教えるなんて嫌!」という人は、そのあたりのリスクを考える必要がありそうだ。
(1月6日、Buzz Plus News)

以前から可能性が指摘されていたことだが、いよいよ実現したようだ。記事にあるように登録は義務では無いものの、登録しなかったことで不審者と見なされる恐れがある以上、「任意の形式を取った強制」になっている。日本の警察が、「黙秘するのはいいけど、何度でも再逮捕して永遠に拘束するから」と言うのに近い。まぁ入国者に限った話なので、アメリカに行かなければ良い話だが、今後はこの手の「強制登録」が拡散・普及してゆく可能性が高い。

米国はすでに全世界のSNSを監視するシステムを導入しているはずだが、わざわざ入国者に登録を求めるのは、後から「登録していなかった」と責める根拠にすると同時に、登録者の交友関係を探ることでテロ組織や反政府組織との繋がりを予め把握したいがためと考えられる。いまや「SNS監視システム」は、「協力者不要のシュタージ」と化している。
これは、日本政府にとっても有益であり、公安関係者からすれば心の底から欲するものであるだけに、「マイナンバーの登録」と同様に、何らかの手段で登録を促し、収集し始めるものと見られる。対テロ戦争の主役であるアメリカと異なり、日本はジハーディストと直接敵対しているわけではなく、その監視対象は自然、国内の不満分子に向けられる。

今後は当局の監視を免れる「地下ネット」の需要が高まりそうだ。特に、量子通信による秘匿性の高いネットワークをめぐって、個人の自由と交響の治安を優先する当局の争いが本格化するだろう。まさにSFの世界である。
posted by ケン at 12:33| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月21日

平田弘史展

山岸凉子展に続き弥生美術館で開催されている平田弘史展に行く。やはり原画や原書のパワーは強力なものがあり、しばらく頭にこびりついて離れなさそうだ。

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白土三平(カムイ伝)、小島剛夕(子連れ狼)に並ぶ時代劇画の雄なのだが、2人に比べると知名度は低い。主な作品は『薩摩義士伝』『黒田三十六計』。書家としても一部では絶大な人気があり、例えば大友克洋『AKIRA』、山口貴由『シグルイ』、西尾維新『刀語』の題字がある。
知名度が低めなのは、読者を選ぶ独自路線でとうてい万人に勧められるものではないからだが、逆にそれ故にマニアックな人気を博している。また、漫画作品として見た場合、情念が深すぎてストーリー的に分かりづらかったり、下手すると破綻しているので、とにかく読みづらいのだが、それを上回る画力とパワーが読者を魅了している。
例えば『薩摩義士伝』などは、冒頭の第一話からして、東西二軍に分かれた武士群が死罪人の生肝を血だるまになって奪い合う「ひえもんとり」から入るわけだが、一般の読者は97%くらいの人が第一話を読み終えること無く、本を閉じるだろう。だが、残りの3%の人は熱烈なファンになってしまう。『駿河城御前試合』(原作は南条先生)や『日本凄絶史』もその類いだ。
『首斬り朝』や『子連れ狼』を人に勧めまくった私も、平田弘史先生は勧めづらいものがある。

そして、先生は天才である。
劇画も書も独学で、全て「見よう見まね」でしかなく、伝説では「三年働くと、電池切れして三年休み、困窮を極めるとまた再開する」と言われていたが、「当たらずとも遠からず」よりは当たっていたことが判明。さらに、他人に先駆けて1990年代にPCを導入して作画のフルデジタル化を実現するも、「俺には合わん!」と言って元のペン画に戻してしまっている。

現代の時代劇は映画でもドラマでも、中世の蛮性がそぎ落とされて美麗に取り繕われており、武家出身の私からすると、まったくリアリティが無いだけに、平田先生の作品と画は貴重すぎるものがある。
本ブログでも「リアルな時代劇を求めて〜薩摩健児残酷物語」や「薩摩の蛮性」で中世の蛮性を記してきたが、やはり絵があるのと無いのとでは理解が異なるだろう。
武士や戦国に関心のあるものなら、作品を一読して本展に足を運ぶべきだ。

【追記】
個人的にはリアルな「足軽物語」が一本欲しいと思っている。食い詰めた小作人が足軽になって、「戦場働き」をするが、戦もそこそこに田畑には入って米や麦を勝手に刈り取り焼き払い、民家を襲っては掠奪して主を誘拐し、後日駐屯所に立った「人質市場」で奴隷商人と価格バトルを繰り広げ、提示された値段が気に入らないと斬り殺して遁走、また別の武将に仕え、延々と繰り返してゆく話である。やはり世の中に必要なのはリアリズムである。

【追記2】
「観光」「明治百五十年」「死刑」のキーワードを組み合わせると、自然「ひえもんとり」しか出てこないだろう。いま鹿児島でやれば全世界から観光客が何十万人と集まると思うので、ぜひ官邸か観光庁に進言したい。読者の皆さんもぜひこの機会に、海音寺潮五郎「西南戦争遺聞」、里見ク「ひえもんとり」、平田弘史『薩摩義士伝』を読んで欲しい。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月20日

ロシア人とマブダチになるために

【<首相>今年前半の訪露に意欲】
 安倍晋三首相は8日、山口県下関市での地元後援会の会合で、北方領土問題を含む平和条約締結交渉に関連し「今年前半にロシアを訪問したい」と述べ、プーチン大統領との再会談に改めて意欲を見せた。首相は昨年12月の日露首脳会談直後に「来年(2017年)の早い時期にロシアを訪問したい」と語っていた。 首相は日露会談が行われた同県長門市の温泉旅館での後援会会合でもあいさつし、「『平和条約問題を解決する自らの真摯(しんし)な決意を(両首脳が)表明』と(プレス向け)声明に盛り込めた。70年間1ミリも動かなかった交渉に大きな一歩をしるせた」と意義を強調した。首相は昭恵夫人や母の洋子さんと共に、同市内にある父・晋太郎元外相の墓参りもした。その後、記者団に「私の世代で、父の悲願だった平和条約締結に終止符を打ち成果を出したい。この思いを報告した」と語った。首相は7日から3日間の日程で地元の山口県を訪れている。
(1月8日、毎日新聞)

本気でロシア人とトモダチになりたかったら自らのマチスモを示すほか無い。
例えば真冬のロシアに行って、マイナス20度の中、「今日はそんなに寒くないから」(本当の寒さは−30℃から)とプーチン氏と猟銃持って狩りに出て何時間も待って鹿を撃ち、家に戻ってグリルしながら、サウナ(バーニャ)に入って白樺の枝で互いの体を赤くなるまで叩きまくり、熱くなったら裸のまま外に出て雪中に飛び込んで、またサウナに戻り、ウオッカを飲みながら硬い鹿肉を平らげる、ということをすれば、ロシア人は初めて「Наш человек」(死語でマブダチ)と認めてくれる。
まぁアイヌ以外、99.9%の日本人はムリ。
私も仮に自分が総理大臣で日露協商が不可欠となれば仕方ないと思うが、それ以外は謹んでご辞退申し上げる。
posted by ケン at 12:04| Comment(3) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月19日

言い間違いでは無いかと

【「今年」と「今月」間違えた?…解散否定の首相】
 安倍首相は5日、都内の会合で、2005年や1993年の酉(とり)年に衆院選があったことに言及した上で、「今年は全く考えていない」と語った。首相は政局の影響で改憲論議が停滞するのを避けるため、「憲法改正を争点に衆院を解散することはない」(自民党幹部)との見方がもっぱらだ。ただ、政府高官は会合後、「『今月は考えていない、の間違いだ』と首相は言っていた」と説明し、年内の解散見送りは否定した。
(1月6日、読売新聞)

これは「言い間違い」というよりは「つい本音が出た」と解釈すべきだろう。
安倍総理がこの年末年始に解散総選挙を考えていたのは、「日露会談の成果で選挙に勝てる」「景気が悪化する前に、あるいは区割り変更する前に選挙をやりたい」と考えていたからだった。ところが、日露会談が想定していたような成果が上がらず、自民党内の事前調査でも芳しくない結果が出たため、解散を断念したと伝えられている。
そこで「次は区割り変更後の今年秋か冬」と騒がれ始めているわけだが、その判断は早計だ。

最大の好機を見送った安倍氏的には、「現状の両院3分の2議席をどこまで上手く使うか」を優先的に考えるのが合理的であり、「改憲を先行させよう」と判断するのは至極自然の流れだと考えられる。すでに安倍氏の言葉の端々にそれが表れている。
この場合、来年の通常国会が山場になるため、「3分の2が崩れる」リスクを侵すような解散総選挙に出ることは、ほぼあり得ない。例えば、よほど景気が好転して「3分の2の維持は間違いない」と判断するような状況が生まれれば別だが、その可能性は低いだろう。
この通常国会では、またぞろ「共謀罪」のような国民弾圧法が上程することもあり、ますます解散するメリットが無い。
つまり、今年中に安倍総理が解散に打って出る可能性は低く、今のところ20%程度ではないか。
posted by ケン at 12:25| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月18日

インフルエンザにつき病休

昨日の午後、突然高熱が発生し、気分が悪くなって、座っていることも辛くなり早退。その後、全身が痛みに襲われ、インフルエンザと自己診断。本日休業しました。
予防接種のせいか、酷くはならず、すでに快復傾向にあり、明日は出勤できるかと。
避けられるものではありませんが、皆さんもお気をつけください。
posted by ケン at 21:17| Comment(7) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

ヒトラーの忘れもの

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ヒトラーの忘れもの』 マーチン・サントフリート監督 独・デンマーク(2015)




終戦後、デンマーク・ユトランド半島に埋設された250万個の地雷処理を強制されたドイツ軍少年兵の物語。背景事情は史実に基づいており、実際に多くの少年兵が地雷撤去作業を強制され、全体で2千人以上が動員され、約半数が死亡、あるいは重傷を負い身体に障害を残したとされる。
第二次世界大戦の最末期、ドイツでは13、4歳の少年も戦時動員された。上は65歳くらいまで動員されたという。「僕、ドイツに帰ったら兄さんと会社興して国の復興の手助けするんだ」などという死亡フラグが次々と立つのだが、自分も子どもがいれば中高生くらいかもしれないだけに、精神ダメージがハンパない。仮に自分が軍人だったとして、自軍が埋設した地雷の撤去を強制されるのは諦めもつくが、自分の子どもにそれをさせるのは、さすがにキツ過ぎるだろう。ドイツでは、下手すると祖父、父、子の三代が戦時動員され、相当の確率で戦死しているからシャレにならない。

本編では説明されていないが、これはジュネーブ条約が適用される「戦時捕虜」ではなく、適用外の「降伏元軍人(Surrendered Personnel)」として扱われ、強制労働が可能という理解がなされた結果の出来事だった。
似たようなことは、例えば英軍がビルマで降伏した日本兵に対し行っており、強制労働と捕虜虐待により1600人から死亡している。会田雄次先生の『アーロン収容所』では、日本兵の収容所がわざわざ糞尿処理場の隣に建てられており、虐待され続けた先生は「もう一度イギリスと戦争するなら、英国人は女子どもまで皆殺し」とまでおっしゃっていたと言われる。

話がそれ続けるが、日本でも沖縄では14歳から動員招集がなされた。例えば、吉村昭『殉国』の冒頭、主人公は沖縄県立第一中学校の3年生(14歳)として3月末に招集されるが、その背後では召集令が出なかった1、2年生たちが「自分たちも兵隊にしてくれ」と涙して懇願し、教員は「先に志願しなかったお前たちが悪い!」と一喝、それを見た主人公は優越感に浸ってしまうのである。これは、12歳、13歳の子どもでも志願し(親の承諾付)ていれば、軍に配属されていたことを意味する。さらに上級生からは「一中健児は全員死ね!」と励まされてしまう。県立工業学校で動員された生徒の死亡率は90%を超えた(死傷率ではない)。

本作でも、デンマーク人はドイツ人に対して容赦ない憎悪を浴びせかけ、それは少年兵に対しても例外では無く、そこが一層映画のリアリティを引き立てている。「ジェネレーション・ウォー」に続く、リアルなキツい戦争ドラマだが、我々は目を背けるべきでは無い。確かに本作を見ると、『この世界の片隅に』が「なんだか戦争が災厄みたいに描かれている」という批判がなされるのも頷けるだろう。
相変わらず邦題は微妙すぎるが(原題は「Under sandet(砂の下)」)。
posted by ケン at 13:53| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月16日

いつぞやの手口で楽しく弾圧

【共謀罪「一般人は対象外」=菅官房長官】
 菅義偉官房長官は6日の記者会見で、いわゆる「共謀罪」を創設するための組織犯罪処罰法改正案を20日召集の通常国会に提出することについて「政府が検討しているのはテロ等準備罪であり、従前の共謀罪とは別物だ。犯罪の主体を限定するなど(要件を絞っているため)一般の方々が対象になることはあり得ない」と述べ、理解を求めた。 
(1月6日、時事通信)

霞ヶ関官僚というのは結局のところ同じところに行き着くらしい。入口を小さくして、国民が飲み込みやすいサイズにしておいて、後で際限なく拡大して一網打尽にしようという魂胆である。これまでも共謀罪や秘密保護法の問題点は取り上げてきたが、繰り返したい。

戦前期に植民地を合わせれば10万人以上が逮捕され、共産党の試算では1500人の獄死者と200人の拷問死を出したのが、治安維持法だった。ナチス・ドイツを上回る監視国家となる根拠にもなった。
だが、同法は最初から国民弾圧を目的としたものではなかった。

1925年に日ソ間の国交が樹立したことを受けて、日本国内においてコミンテルンの活動が活発化し、共産主義・反天皇制運動の拡大が真剣に危惧されていた。同時期に普通選挙法が施行されて、25歳以上の男子のほぼ全員に選挙権が付与されて有権者が飛躍的に拡大、共産党が労働者や小作人層から支持されるのではないかという懸念があった。現実には、それらは殆ど杞憂だったのだが、当時の官僚や政党人にとっては現実的な懸念だった。従って、当時にあっても「治安立法自体は致し方ないが、政府原案では国民全員が取り締まり対象になってしまう」といった批判が最も多かったらしい。

ところが、治安維持法が実際に施行されてみると、「実際の運用(適用)が難しい」などの理由から改正が要望され、戦時体制への移行も相まって、適用範囲が段階的に拡大、厳罰化も図られた。その結果、1928年の3・15事件で共産党が一掃された後にも、1937年に人民戦線事件で合法左翼(労農派)が一斉検挙され、さらに労働運動家や反戦思想家、自由主義者や宗教団体にまで適用されるに至り、「天下の悪法」の名をほしいままにしたのである。

共謀罪の恐ろしさは、ソ連やナチス・ドイツのケースを挙げるまでも無く、日本の戦前に見ることができる。1910年の大逆事件では、明治天皇暗殺計画が発覚し、宮下太吉ら5人によるものであったにもかかわらず、幸徳秋水を始めとする24人が死刑に処せられた。当局は当初から5人の計画であったことを知っていたが、大逆罪を拡大適用した。事実が判明したのは戦後のことだった。なお、幸徳が死刑になったのは、公判で「いまの天子は、南朝の天子を暗殺して三種の神器をうばいとった北朝の天子ではないか」と述べたことによるとされている。

1923年の朴烈事件では、関東大震災直後に治安警察法による予防拘束(まだ事件を起こしてもいないし、計画も発覚していない段階での検束)を受けた朴烈が、拷問を受けて、愛人の金子某との「皇太子襲撃計画」について、特高の誘導尋問に同意したと見なされ(自白すらしてない)、大逆罪が適用され、死刑宣告された。後に恩赦で無期懲役になったものの、戦後の1945年10月末(8月15日でも9月3日でも無い)まで刑務所に収容されていた。

戦時中に起きた横浜事件では、出版社の温泉旅行を共産党再建のための謀議と見なした特高によって治安維持法違反で60人以上を逮捕、拷問で4人が獄中死した。後に起訴されて、ポツダム宣言受諾後に「駆け込み判決」が下されて、30人余が執行猶予付き有罪となった。恐ろしいことに、この公判の記録は、戦争犯罪追及を恐れた政府・裁判所によって焼却処分されている。なお、裁判で検察が証拠として提出した写真は、全く別の機会に撮影されたものだったことが判明している。そもそも、戦時下で共産党再建の謀議を行っている者たちが、記念撮影をするとは考えがたい。

治安維持法が最初に審議された際、当時の若槻禮次郎首相は、
「世聞にはこの法律案が労働運動を禁止するがためにできるやうに誤解しておる者があるやうであります。此法律が制定されますと、労働者が労働運動をするについて、何等かの拘束を受けると云ふやうに信じて居る者があるようであります。斯の如きは甚だしき誤解であります。」

と答弁、川崎卓内務省警保局長は、「乱用など云ふことは絶対にない」と断言している。

現行の日本政府は、治安維持法を施行し国民弾圧をほしいままにした帝国政府の後継であり、安倍内閣は「明治の日」に象徴されるように戦前の帝政を称賛しているだけに、菅官房長官の言は全く信用に値しない。「一般の方々が対象になることはあり得ない」というのは原案の話であり、数年後には改悪されて「合法左翼」や「合法リベラル」が対象にされるのは明白だろう。本ブログが閉鎖される日も遠くないかもしれない。

そもそも期間が一カ月もない程度のオリンピックを開催するために、時限立法ならともかく恒久法で市民を「一網打尽」にできる法律が必要であると主張している時点で、政府の本音がどこにあるか分かるだろう。そもそも東京都と政府は、「東京は世界で最も安全な街」を最大のセールスポイントにしていたはずだ。
確かに米国でも9・11連続テロ事件の後に、悪名高い「愛国法」が成立したものの、あくまでも時限立法であり、一回延長されたのみで2015年に廃止されている。行政と議会と裁判所という権力の分立が相応に機能している米国と異なり、日本では行政が圧倒的に強い上に、議会は自民党の一党優位体制が50年も続いて行政と一体化しており、さらに裁判所は行政の従属下にあるという環境にあり、権力の分立が機能していない以上、当局に「誰でも逮捕できる」権限を付与することは恐怖政治の根源にしかならない。

日本の現政府は、骨格を明治帝政から継承し、連合国との戦争に敗れて休戦条約の条件として渋々「民主化」しただけの存在であるため、根源的に自由主義や民主主義を否定し、権威主義に傾く傾向を有している。その政府に共謀罪やら通信傍受やらを許せば、容易に戦前のおぞましい暴力支配を復活させるであろう。その手始めは、沖縄の反基地運動家となりそうだ。権威主義者に際限なき権力を与えることは、「狂人に刃物」であり、その刃先は近い将来、一般市民に向けられること間違いない。誰が「一般」であるかを決めるのは常に権力側なのだから。
真の民主化を実現しなければならないのは、中東などでは無く、この日本である。

【追記】
それにしてもどこかで聞いたことがあると思ったら、偉大なる水木しげる先生の『劇画ヒットラー』だった。全権委任法案の提案演説に際して。
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posted by ケン at 12:46| Comment(2) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする