2017年01月17日

ヒトラーの忘れもの

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ヒトラーの忘れもの』 マーチン・サントフリート監督 独・デンマーク(2015)




終戦後、デンマーク・ユトランド半島に埋設された250万個の地雷処理を強制されたドイツ軍少年兵の物語。背景事情は史実に基づいており、実際に多くの少年兵が地雷撤去作業を強制され、全体で2千人以上が動員され、約半数が死亡、あるいは重傷を負い身体に障害を残したとされる。
第二次世界大戦の最末期、ドイツでは13、4歳の少年も戦時動員された。上は65歳くらいまで動員されたという。「僕、ドイツに帰ったら兄さんと会社興して国の復興の手助けするんだ」などという死亡フラグが次々と立つのだが、自分も子どもがいれば中高生くらいかもしれないだけに、精神ダメージがハンパない。仮に自分が軍人だったとして、自軍が埋設した地雷の撤去を強制されるのは諦めもつくが、自分の子どもにそれをさせるのは、さすがにキツ過ぎるだろう。ドイツでは、下手すると祖父、父、子の三代が戦時動員され、相当の確率で戦死しているからシャレにならない。

本編では説明されていないが、これはジュネーブ条約が適用される「戦時捕虜」ではなく、適用外の「降伏元軍人(Surrendered Personnel)」として扱われ、強制労働が可能という理解がなされた結果の出来事だった。
似たようなことは、例えば英軍がビルマで降伏した日本兵に対し行っており、強制労働と捕虜虐待により1600人から死亡している。会田雄次先生の『アーロン収容所』では、日本兵の収容所がわざわざ糞尿処理場の隣に建てられており、虐待され続けた先生は「もう一度イギリスと戦争するなら、英国人は女子どもまで皆殺し」とまでおっしゃっていたと言われる。

話がそれ続けるが、日本でも沖縄では14歳から動員招集がなされた。例えば、吉村昭『殉国』の冒頭、主人公は沖縄県立第一中学校の3年生(14歳)として3月末に招集されるが、その背後では召集令が出なかった1、2年生たちが「自分たちも兵隊にしてくれ」と涙して懇願し、教員は「先に志願しなかったお前たちが悪い!」と一喝、それを見た主人公は優越感に浸ってしまうのである。これは、12歳、13歳の子どもでも志願し(親の承諾付)ていれば、軍に配属されていたことを意味する。さらに上級生からは「一中健児は全員死ね!」と励まされてしまう。県立工業学校で動員された生徒の死亡率は90%を超えた(死傷率ではない)。

本作でも、デンマーク人はドイツ人に対して容赦ない憎悪を浴びせかけ、それは少年兵に対しても例外では無く、そこが一層映画のリアリティを引き立てている。「ジェネレーション・ウォー」に続く、リアルなキツい戦争ドラマだが、我々は目を背けるべきでは無い。確かに本作を見ると、『この世界の片隅に』が「なんだか戦争が災厄みたいに描かれている」という批判がなされるのも頷けるだろう。
相変わらず邦題は微妙すぎるが(原題は「Under sandet(砂の下)」)。
posted by ケン at 13:53| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする