2017年01月27日

150万円恐喝されてもイジメ認定されない社会

【同級生に150万円 「いじめ認定難しい」発言撤回を】
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で横浜市に自主避難してきた生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が同級生におよそ150万円を払わされていた行為について、市の教育長がいじめと認定するのは難しいという考えを示したことに対し、生徒側の弁護士が発言を撤回するよう申し入れました。この問題は、原発事故で横浜市に自主避難してきた現在、中学1年の男子生徒が、転校してきた小学校でいじめを受けていたもので、生徒側は同級生におよそ150万円を払わされていた行為については、いじめと認定されなかったことから市側に改めるよう求めています。これについて、横浜市教育委員会の岡田優子教育長が今月20日の市議会で、「同級生らが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは難しい」と述べたことに対し、23日、生徒側の弁護士が発言の撤回などを求める申し入れを行いました。申し入れでは「教育長の発言は、いじめ防止対策推進法の趣旨に反し、被害生徒を苦しめるものだ」などと非難しています。横浜市教育委員会の伊東裕子担当部長は「保護者や生徒の気持ちを確認しながら、こちらの発言の趣旨を伝えて今後の対応を決めたい」と述べました。
(1月23日、NHK)

先年から報道されていることだが、福島原発事故によって、福島県から横浜市に自主避難した中学生が同級生から総計150万円を恐喝されていたことについて、市教育委員会が「いじめ」との認定を避けた事例。
生徒の親は「150万円」と訴えたのに対し、学校側の調査では「8万円」の事実認定に終わり、市教育委員会下に設置された第三者委員会の報告書(2016.11)も、「金銭授受はいじめから逃れるためだった」としつつ、「おごりおごられる関係」として「いじめ」との判断を避けた。両親らが引き続き市に善処を求めていたところ、20日の市議会で教育長が、「同級生らが『おごってもらった』と言っていることなどから、いじめという結論を導くのは難しい」と答弁したため、ブチ切れた形になっている。

話の前提として、いじめ認定は、そもそも大きな困難が伴う。行為自体がインナーサークルで行われているため、物証が困難であることも相まって、事実確認が難しい。そして、事実確認を行う学校も、教育委員会も捜査機関ではないため、いかなる専門性も調査能力を有しておらず、よほど明確な事例が発見されない限り、逆を言えば当時者が口裏を合わせ、物証を隠滅してしまえば、まず立証できない。当然ながら、公的機関であるため、一定の中立性が求められるので、明確な証拠も無いのに犯行を認定することはできず、どうしても玉虫色の結論に偏ってしまう。

ただし、イジメ自体は実は法律で定義付けされている。2013年に成立した「いじめ防止対策推進法」がそれで、以下のようにある。
児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校(小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校)に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの

さらに、認定基準について、
他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為」により「対象生徒が心身の苦痛を感じているもの

と規定している。この規定に従うならば、たとえ恐喝金額が「8万円」(中学生なら十分すぎる高額だろう)で、「金銭授受はいじめから逃れるため」と判断されたとしても、「いじめとは断定はできない」などという結論を出すのは難しかったはずだ。両親が怒るのも当然だろう。
そもそも「金銭授受はいじめから逃れるため」としながら「いじめと認めるのは難しい」という報告自体、官僚以外の人間には理解不可能だ。
このことは、たとえ法律で定義されたとしても、現場で厳密に適用するのは、様々な理由から難しいことを示している。だが、これでは行政への信頼が失われ、法治国家としての実態が霞んでいく一方だ。

とはいえ、イジメ認定を学校や教育委員会等の利害関係者に委ねるのも、そもそも公正性や中立性に疑義がある。彼らは、常に「イジメは存在しない方が良い」というインセンティブが働くため、どうしても認定に消極的にならざるを得ないからだ。
本質的には、イジメの疑いがある場合は、即座に証拠(写真や録画録音)を確保して、学校を通さずに問答無用で直に警察に被害届を出すよう教育してゆくのが、唯一の解決法なのだろう。
posted by ケン at 12:31| Comment(2) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする