2017年02月15日

ルペン氏が快進撃中

【極右政党ルペン氏が図るフランス革命、ユーロ離脱と「新フラン」発行】
フランス極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首は、大統領選で当選すればユーロの通貨同盟を離脱し、金融政策を国家の手に取り戻して新たな通貨を発行する計画だ。同氏の主任経済顧問が明らかにした。
 アドバイザーのベルナール・モノ氏は4日にリヨンで開かれた集会に際して、ルペン氏の政策を説明。米国でドナルド・トランプ氏を勝利に導いた大衆迎合主義にならい、「金融の主権を取り戻す」ことがルペン氏の政策の重要な柱だと述べた。4月23日に行われる第1回投票についての世論調査では、ルペン氏が支持率首位を保っているが、決選投票での勝利を示唆する調査結果はない。
 ルペン氏は当選した場合、直ちに欧州連合(EU)首脳と欧州中央銀行(ECB)の会議を招集し、かつての欧州通貨単位(ECU)のような各国通貨のバスケットを採用してユーロに代えるよう要請する考えだという。フランスの通貨は恐らく「新フランス・フラン」という名称になり、当初はユーロと等価に設定され、その後はEU通貨バスケットに対する変動幅を20%までに制限すると、モノ氏は述べた。
(2月7日、ブルームバーグ)

フランス大統領選は、極右と強硬右派の二択になりそうだったが、フィヨン氏がスキャンダルで脱落しそうな状況にあり、「中間派」と言われるマクロン氏が浮上してきたが、「社会党の新自由主義者」との批判もあって有力候補と見なされるには至っていないし、スキャンダルも出ているようだ。現状では、決選投票になってもルペン氏が有利な状況にあり、よほど「反ルペン」が結集して大運動化しない限り、ルペン氏が集票を強める流れにある。なお、政権与党である社会党を中心とする左翼連合は、社会党のアモン氏を大統領候補に選出したが、その支持率は10%強でしかなく、「選挙に出るだけ」の状態にある。
とはいえ、トップのルペン氏にしても、現状の支持率は25〜30%でしかなく、決選投票になると厳しい闘いになるのは間違いない。だが、フランスでは、既存政党や既存政治家に対する不信と不満が蔓延しており、アメリカの「トランプ現象」と同様の空気が社会を覆っており、「共和国の理念を信じるフランス人がルペンに投票する訳が無い」などという発想は、「クリントン圧勝」神話と同じ過ちに直結する。

今回の大統領選挙で25%以上の支持率を有し、2014年の欧州議会議員選挙では25%の得票で74議席中24議席を獲得した国民戦線(FN)だが、国民議会における議席はわずか5でしかない。これは、選挙制度によるもので、フランス国民議会は小選挙区制を採用、ただし一回目の投票で過半数を獲得した候補がいない場合、決戦投票が行われる仕組みになっているため、日本のように相対多数で勝利できない。結果、FNの候補者は、一回目の投票でトップに立っても決選投票で落選してしまうケースが多い。2015年に行われた州議会選挙(地方圏選挙)も、似た仕組みが採用されており、FNは一回目の投票で全国平均28%以上の得票をしたにもかかわらず、「敗退」を強いられている。この際、ルペン党首は、「国民戦線を排除するために主要政党が協力し合ったせいだ」「自分たちは嘘と情報操作による実に不当な形で与えられるべき地位を奪われた」と非難声明を出している。

これが示しているのは、「急進主義、過激派を抑えるため」に設置されたシステムが正常に作動した結果、相対多数の民意を反映させられなくなっているという、デモクラシーにとって「不都合な事実」である。より正確さを期すならば、「急進主義、過激派を抑える」というリベラリズムの原理が、「民意を正確に反映する」というデモクラシーの原理を阻害しているのだ。このシステムは、自国でナポレオンを輩出し、隣国で選出されたヒトラーに蹂躙されたことに対する強い反省から生まれたものだが、「自由と民主主義が相反する」事態までは想定していなかったのだろう。
だが現実には、フランス市民の3割もが「自らの主権が政治に全く反映されない」状態に置かれ、しかもその3割が相対多数を形勢している点にこそ重大な問題がある。ルペン氏の主張が「正しい」かどうかは別にして、デモクラシーの原理に反して主権者が疎外されていることは確かなのだ。そして、リベラリストはこの点について口を閉ざしたまま、極右勢力を声高に非難し続けるため、彼らの「リベラル嫌い」を加速させた上、デモクラシー不信を強めてしまっている。つまり、リベラリストが、自由と民主主義を転覆させる意志、あるいは暴力主義の根を育てている側面があるわけだが、自由主義者はそれを認めないがために事態を悪化させている。
あとは補足。

西側諸国では、長いこと「自由と民主主義こそが豊かさの源泉である」と喧伝されてきた。ところが、ソ連・東欧ブロックが瓦解し、世界の半分が「市場開放」された結果、経済のグローバル化が進むと同時に労働賃金のフラット化が進んだ。
具体的には、ヨーロッパでは工場が東欧に移転し、日本では中国に移転した。同時に、賃金の相対化が進み、非正規雇用や移民労働者の増加によって、雇用環境の悪化や賃金の低下が進んだ。また、高齢化に伴い、社会保障費が急騰して国家財政を圧迫、同時期に東側陣営が崩壊したことも相まって、社会保障の切り下げが始まった。「狡兎死して走狗烹らる」である。
こうして後に残されたのは、「収奪する自由」と「収奪される自由」だった。本来のリベラリズムは、機会均等を実現するために国家による再分配を肯定するが、今日では「経済成長のため」と称して真っ先に再分配機能が削られている。
具体例を挙げるなら、無能な正社員と有能な非正規社員がいるとして、リベラリズムは、正社員のクビをきって他方を正社員に据える「自由」と、正社員から多額の税を取って他方に再分配する「公正」の2つの選択肢を容認する。だが、現実の自由主義国家では、双方とも機能せず、有能な非正規社員はひたすら収奪される存在となっている。
そこで疎外された者たちが自由を怨嗟しているのに、それに対してリベラリストが「自由こそ至上の価値」と高説してみたところで、逆ギレされるのがオチだろう。そして、それがヘイトの原動力となっているのだが、リベラル派は全く自覚が無い。
敵はリベラルにあり・補) 

彼らの不満を解消するには、リベラリズムを否定し、引いては自由貿易を止めて保護貿易に転じ、国内の産業育成に努めると同時に雇用を確保、さらに移民を排斥するか同化を強制して、国民に一定の労働賃金と待遇を保証する必要がある。
「差別はイカン」というのは倫理的には正しいが、自由主義の下で移民が大量に呼び込まれ、賃金の低下に拍車がかかって、国民の生活水準が激しく劣化してしまった以上、それを放置して倫理や道徳を訴えてみたところで、何の力にもならない。彼らは、商店にパンも肉も無いのに、社会主義の「可能性」ばかり訴え続けた東欧の共産党と同じ過ちを犯しているのだ。
敵はリベラルにあり?)
posted by ケン at 12:05| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする