2017年04月03日

こども保険の無理筋

【自民・小泉進次郎衆院議員ら「こども保険」創設、幼児教育無償化の財源確保提言】
 小泉進次郎衆院議員ら自民党若手議員でつくる「2020年以降の経済財政構想小委員会」は29日、新たに社会保険料を上乗せして徴収し、幼児教育無償化の財源を生み出す「こども保険」の創設を柱とする提言を発表した。30日に党「財政再建に関する特命委員会」に報告し、次期衆院選の公約への反映を目指す。こども保険は厚生年金の場合、平成29年度で15・275%の社会保険料について個人、事業者とも当面0・1%分を上乗せして徴収し、約3400億円の財源を捻出。将来的に0・5%分まで引き上げて約1・7兆円を確保し、幼児教育と保育を実質無償化する。小泉氏は記者会見で「世代間公平の観点からも、こども保険の導入は画期的なことだ」と語った。党内には教育無償化の財源として「教育国債」を発行する案もあるが、小泉氏は「未来への付け回しになるのではないか」と批判した。
(3月29日、産経新聞)

先進国の中で子育て費、教育費の私的負担率が際だって高い日本にあって、「教育無償化」が与野党問わず叫ばれている。経済格差、貧困が広がり、政府内の汚職も顕在化する中にあって、自民党といえども有権者の歓心を買わないと権力が維持できないという判断に傾きつつある証左なのかもしれない。
とはいえ、現実には財政赤字がますます深刻化している中にあって、新規財源の確保が大前提となるが、その選択肢としては増税か国債しか無かった。だが、増税では選挙が戦えず、国債は借金を増やすばかりということで、トリッキーな解答として出てきたのが「保険」だった。「社会保険なら増税よりは受け入れられるだろう」との判断だったようだが、原則を逸脱した選択肢が支持されるかは微妙だ。

まず社会保険の目的は、万人が共有するリスクを分担し、支え合うことにある。ところが、育児や教育はリスクではなく、共産主義国家でも無い限り「共有財産」でもないため、少なくとも自由主義国家では「支え合う」対象たり得ない。
また、保険料の納付者の負担と、保育や教育の対象となる子どもや保護者の利益が一致しないことも、「保険」としては成立しがたい。人が健康保険に加入するのは、自身の健康を害した時のリスク管理のためであるし、私的なガン保険などに加入するのはガンのリスクを考慮しての判断であり、年金にしても自身の老齢リスクに備えてのものだ。そのリスクの対象はあくまでも自分であり、せいぜいのところパートナーや子どもにまでしか拡大されない。他人の子どものために保険料の納付を要求、しかも年金保険料に上積みしての納付が強要されるというのは、保険の原理原則に反しており、本来成立し得ない。言うなれば、自動車を保有しない人に自動車保険の納付を強制するような話だ。

育児、教育費の公的負担を拡大するならば、やはり税で賄うのが原則となる。保育と就学前教育だけならば、本来であれば消費税1%分で済む話なので不可能なものではない。だが、保険料で賄えきれない社会保障分の税による立て替え負担が急増しており、その額は10年前に年5千億円を超え、今では1兆円を超えてさらに増える見込みになっている。社会保障制度の底に大穴が開いて、税金で補填しているものの、全く間に合わず、逐次投入している状態にある。国家予算一般歳出における社会保障費を除く政策経費は、2008年の25.5兆円に対し、3%の消費増税を経ても、同17年で26兆円にしかなっていない。つまり、ここでさらに増税をしてみたところで、社会保障制度の穴を埋めない限り、継続的に育児、教育費分を確保するのは難しいのだ。

その社会保障の赤字を減らすためには、現役層が納める保険料を上げるか、高齢層の受給費を減らす他ない。だが、少子高齢化によって年齢構成が逆ピラミッド型になっていることで、高齢層の需要を賄うためには現役層の負担を急増するしかないが、それは納付率の低下や所得減による消費低迷を招くことになる。その一方で、高齢層の受給費を減らす、具体的には年金支給額の引き下げや医療費窓口負担増、あるいは還付制の導入は、高齢者層を敵に回し、選挙で大敗することが確実なだけに、政治的に「無理」になってしまっている。この意味で、日本は「民主主義であるが故に」財政破綻が必至の状態にある。

個人的には、社会保障費の給付を抑制しつつ、税と国債を半々程度で賄うのが良いと考える。国債については、教育制度の無償化による市場効果や受益が将来反映されることを考慮すれば、原理的には許されるが、償還のメドが立たない現状では大規模に発行することが良いのかどうか、判断が難しい。まぁヒトラーやルーズベルトのように「ガンガンいこうぜ!」を選択するなら、それでも良いし、強く反対はしないが、あまりお勧めできない。
posted by ケン at 12:38| Comment(2) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする