2017年04月12日

保育所の需要が満たせないワケ

【保育所落選5万3000人…1次選考の28%】
 今年4月からの認可保育施設への入所を決める1次選考で、東京23区と全国20の政令市で少なくとも5万3000人が「落選通知」を受け取り、「落選率」は28・1%に上ることが、読売新聞社の調査でわかった。
 特に保育所の利用希望が多い東京23区のうち9区で、40%を超えた。2次選考を行う自治体も多く、全員が待機児童になるわけではないが、職場復帰できるかどうかわからないまま、保護者が保育所探し(保活)に苦労している実態が浮かび上がった。調査は3月末にアンケート形式で実施し、全自治体から回答を得た。
 未集計の3自治体を除く40自治体で、約19万人の申し込みに対し5万3346人に落選を通知した。落選率が最も高かったのは東京都台東区の51・9%。
(4月5日、読売新聞)

保育所は基本的に社会主義思想に基づいて設計されている。そのため、全て政府(自治体)が価格を決め、官主導で設置される。昨今では運営は民間に委託される傾向が強いものの、官が需給と価格を決定する仕組みに変わりは無い。結果、保育サービスは実際の市場価格よりもはるかに安い公定価格で提供される一方、サービスを受ける市民は子どもを廉価で預けて働けるため、「預け得」になっている。
こうした傾向は、医療や介護などの福祉サービスも同じで、ただでさえ安価に設定された公定価格である上に、窓口で自分が支払うのは公定価格の数分の1で済んでしまうため、「受診し得」になり、病院や診療所に大行列ができる有様になっている。薬局で受領する薬の3分の1以上が服用されずに廃棄されていることも、「前日のパンを捨てて毎日買い換えていた」という東側の実態に通じるものがある。子ども医療の無償化など、自分の首に縄を巻いているような話だが、小児科医以外、誰も気づいていない。
大行列は、別に1980年代末のソ連、東欧だけに見られる現象ではなく、原理的には平素日本の病院などで起きていることも全く同じなのだが、それを指摘する者はケン先生以外にいないという特異な状況にある。やはり日本人はすべからくソ連に留学すべきだったのだろう(爆)だからこそ「ソ連・東欧学を学ぼう」と呼びかけているのだが、残念ながら低調だ。

話を戻そう。上記の28%という数字には、当然ながら「どうせ通らないから」と申請していない層は含まれていないので、潜在需要を含めれば相当な数字になると思われる。保育所をつくればつくるほど財政赤字が増えるのに、増設すると需要も一緒に増えてしまうのだから、本質的に需要を満たせない構造になっている。
自治体からすれば、保育所を増設すればするほど財政赤字が増えるのだから、二の足を踏むのは当然だろう。安価に設置しようとすると、例えば交通の便の悪い場所につくることになるが、この場合、希望者がいなくなってしまうので意味が無い。
また、保育士からすると、子どもが増えれば増えるほど労働環境が悪化する。70万人からの有資格者が保育士に就いていない事実もまた、「公定価格=計画経済の無理」を物語っている。結果、建物だけ建てても保育士が確保できず、開業できないことになる。だが、保育士の給与を上げると、さらに赤字が増えてしまう。ゴルバチョフの苦悩が察せられる。


これを解決するためには、社会主義を止めて自由化するか、「社会保障であること」を止めるかの二択しかない。
前者の場合、保育サービスは市場原理に基づいた市場価格で提供されるため、サービスを希望するのは子どもを預けて働きに出ることで得られる賃金が、保育サービス料を上回るケースに限られる。そのため、中低所得層はそもそも希望しなくなり、需要そのものが低下、需給バランスが取られる。この場合、多数が自宅保育に切り替えると考えられ、労働力は失われる。同時に、「安かろう悪かろう」のサービスも増えると考えられるだけに、やはり完全な自由化は難しいだろう。

後者の場合、具体的には4〜5歳児の義務教育化(就学年齢の前倒し)が考えられる。この場合、保育所は基本的には2〜3歳児のみを引き受けることになり、大きく負担を減らせるだろう。しかし、自民党では幼稚園経営層が、民進党では日教組が大反対するので、どちらも政策化できないし、霞ヶ関は厚労省が抵抗するので実現できない。ちなみに自分の場合、4歳時点でまともに言葉を話せなかったので、入学は無理だろうと思われる。
就学年齢の前倒しは欧州では基本だが、残業無し、時短勤務ありというライフワークバランスも十分確保されているので、やはり日本とは前提が異なる。日本でそれを行う場合、放課後の居場所も確保する必要があり、ラーゲリ(本来の意味の)を新設して児童を保護する施策が不可欠になるので、どうしても課題が残る。
posted by ケン at 12:24| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする