2017年05月05日

メランション候補が訴えたもの

4月23日に行われたフランス大統領選挙は、四候補が得票率19〜24%の中にひしめくという大混戦に終わり、マクロン候補とルペン候補の2者が決選投票に進出した。だが、決選に進んだ二候補が獲得したのは全票のうち45%に過ぎず、しかも両者とも議会に支持基盤を持たないという点で、何重にも危うい状態が続いている。
中でも興味深いのは、当初「泡沫」扱いだった「極左」とされるメランション候補が得票率19%、700万票を獲得した点にある。一位のマクロン候補の得票は865万票に過ぎないことを考えても、フランス人らしい「分かりにくさ」が垣間見える。

社会党のアモン候補は229万票、6.3%の得票に終わっている。これは、フランス社会党のエリート化と、政権慣れして行政官僚との一体化が進み、保守党派との違いが殆ど見いだせなくなったことに起因していると考えられる。
もっとも、その意味では社会党員ながら無所属で出馬したマクロン氏が、より親EUと新自由主義色を前面に打ち出しており、エリート層を中心にかつてのサルコジ支持層を取り込んで勝利を収めている。

フランス社会党の凋落は、新自由主義的要素を取り込んだ「第三の道」路線の限界を示すものと考えられるが、マクロン氏の勝利は、同時に新自由主義がいまだ色あせていないことを意味している。
これを日本に当てはめて考えた場合、民進党の「嘘くさい左派色」と「必死に隠す新自由主義色」はいかにも中途半端な主張で、エリート層からも労働者層からも嫌悪される原因になっているとの仮説が立てられる。そして、むしろ「新TPP」「徹底した規制緩和」「市場開放」などの新自由主義を打ち出すか、そうで無いなら徹底した左翼色を打ち出すのが、合理的な選択となるだろう。

日本の不幸は、小沢自由党や「みんなの党」のような新自由主義政党が必ず政権に擦り寄って自滅していること、そしてNK党や社民党が中途半端に「良い子」になってしまって、社会主義やマルクス色を隠してしまっている点にある。
そこで、一部から「極左ブログ」認定いただいているケン先生としては、メランション候補の政策・主張を参考にして、旧式左翼に替わる新型左翼のモデルを考えてみようと思う。まず、メ候補の主な主張から。

「所得再分配機能の強化=大きな政府」
「フランスの国家主権強化、必要ならEU離脱を厭わず」
「週4日労働=週32時間労働制」
「移民賛成」
「脱原発」
「超規模財政出動、公的部門強化と公共投資拡大」
「年金支給開始年齢の引き下げ」
「NATO離脱、対外戦争反対」
「大統領権限の縮小=第六共和政」


つまり、マルキシズムに親和的な一国社会主義だが、コスモポリタニズムと国際主義は護持するという路線と言える。日本では、旧式左翼が週40時間労働制すらまともに主張できず、連合は訳知り顔で「労働時間インターバル制度」などを唱えている始末で、全て「死なない程度に働けるようにしよう」くらいの主張しかしていない。旧式左翼や既存のナショナルセンターが支持されないのは、政府や資本に遜りすぎて、労働者の権利を十分に主張できていないことに起因していると見るべきだ。
その他、細かいところも抜き出してみてみよう。

「金融取引への課税強化」
「大手銀行の経営責任追及」
「経営陣や株主の法外な報酬の規制」
「時短の実現による350万人の新規雇用」
「GDPの1%を文化と創造(芸術)に」
「音楽、映画、文化コンテンツを合法的に提供するプラットフォームを有するオンライン公共図書館の設立」
「給食、通学費、教材、文具などの無償化」
「男女平等を尊重しない企業に対する罰金と刑事罰、公共調達のアクセス禁止」
「代表機関(政治、行政)における女男間パリティ制度」


確かにやり過ぎ感満載で左翼ポピュリズム的主張が羅列されているわけだが、変に「現実=資本」に妥協して労働者の権利を主張しなくなったことが、日本を含む欧米の旧式左翼が沈む原因になっていることは確かだろう。程度の問題はあれど、我々はメランション候補に象徴される欧米の非従来型左翼に学ばなければならない。

なお、メ候補は決選投票に際してマクロン氏もルペン氏もどちらも推薦しないことを明言している。これもまた従来型左翼には見られなかった現象であり、興味深い。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ロシア、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする