2017年08月04日

議員年金は復活すべき

【自治体負担、200億円増も 自民の地方議員年金復活案】
 自民党のプロジェクトチーム(PT)は、2011年に廃止された地方議員の年金制度に代わり、議員が自治体と保険料を折半する形で厚生年金に加入できる法案の概要をまとめた。地方議員のなり手不足解消を図るという。25日の全国都道府県議会議長会総会でも実現を求める決議を可決。地ならしは進むが、自治体負担が200億円増えるとも試算されており、年金「復活」には批判もある。
かつての地方議員年金制度は議員が納める掛け金と自治体負担で運営され、「在職12年以上」という短期で受給資格を得られることが「特権的」とも批判されて廃止された。現在は、専業の地方議員は国民年金しか加入できない。自民PTは今回、地方公務員共済組合法と厚生年金保険法を改正し、地方議員を首長や職員と同様に自治体に「使用される者」とみなして、厚生年金に加入できる案をつくった。
(7月25日、朝日新聞)

老後不安を抱えた議員が腐敗と蓄財に走る現状とリスク、議員候補の質的劣化を考えれば、議会制度を維持するために必要な措置と考える。事業者負担分を自治体が負担するのか、本人が負担するのかという大きなハードルはあるものの、個人的には自治体負担で良いのでは無いかと思う。「平成の大合併」により、自治体も地方議員の数も6割程度まで減らされている上、議員報酬もカットされている自治体が多い。
また、厚生年金に加入することで、民間企業時代の経歴が加算されるようになれば、「在職12年以上」という特権問題も解消されるだろう。

逆に議員年金が廃止され、議員報酬もカットしすぎた結果、立候補者は金満事業主と「一発逆転」狙いの無産者ばかりになって、議員の質的劣化が凄まじいことになっている。もっとも、税収が上向きだった時代には、議員の質はさほど問われないが、デフレ&税収減となると、議員の能力が要求されるところとなり、問題が顕在化している面があるのは確かだ。

上記記事とは無関係だが、地方議員の任期も検討されて良いだろう。詳細は参照記事を読んでもらいたいが、例えば議員の任期を撤廃し、有権者に一票ずつ「解散権」を付与するシステムはどうだろうか。有権者はいつでも解散権を投じることができ、それが5割とか6割に達した瞬間に議会は自動解散、選挙になるという仕組みである。辞職や死亡によって欠員ができた時は、特別加算する仕組みを設けても良い。

自治体議会も同様で、大した問題も無いのに4年ごとに定期的に選挙が行われるため、有権者の関心が低くなり、固有の支持層を持つ政党が実力以上の議席を有することになる。任期を不定期にしておけば、自治政治に不満を持つ者たちがこぞって「解散権の行使」を求めて運動するため、議会と有権者に緊張が走る構図になる。自治体の選挙も10年に1度とかになれば、もっと投票率が上がるだろう。個人的には「4年に一度の選挙で投票率40%」よりも「10年に1度の選挙で投票率60%」の方がデモクラシーの原理に適っていると考える。

いずれにせよ、現状を放置すれば、ますます議会の信用は地に落ち、遠からずデモクラシーの危機を迎えるだろう。

【参考】
解散権を改革する 
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2017年08月03日

自殺しない程度に働かせようという話

【自殺対策、長時間労働や若者に重点 大綱を閣議決定】
 政府は25日、新たな自殺総合対策大綱を閣議決定した。かつて年3万人を超えた自殺者は減る傾向にあるが、2016年は2万1897人など依然として年2万人を超す状況に「非常事態はいまだ続いている」と宣言。長時間労働対策や若者対策に重点的に取り組み、人口10万人あたりの死亡者数を示す「自殺死亡率」を10年間で3割以上減らすことを目指す。大綱は自殺対策基本法に基づいて国や自治体などの役割を定めるもので、5年に1度見直している。長時間労働による自殺対策は、広告大手電通の過労自殺問題などを受けて初めて重点施策に加えた。労使が協定を結んでも時間外労働が年720時間を上回らないよう徹底することを掲げたほか、職場のメンタルヘルス対策の推進やパワハラ防止対策も盛り込んだ。全体の自殺者数が減る傾向にある中、未成年の自殺者数が横ばい状態のため若者対策も重視。特に多い夏休み明けに小中高校などの見守り活動を進める。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で自殺をほのめかす情報がないかも確認する。こうした取り組みで自殺死亡率を15年の18・5から26年までに13・0以下にし、フランスの15・1や米国の13・4など主要先進国の水準にするとした。
(7月25日、朝日新聞)

一方で労基法を改正して裁量労働制の適用拡大と労働時間規制の一部撤廃を導入しつつ、他方で「自殺対策」している。相変わらずアクセルとブレーキを同時に踏んでいる。その基本スタンスは、「労働者は生かさず殺さず」である。

いわゆる過労死ラインが「時間外労働年960時間」なのに、時間外労働を「年720時間」に設定するというのは、「勝手に自殺しないギリギリのライン」を探っているものと見て良い。

日本の自殺における最大の問題点は、30代以下の若年層における死因で自殺がトップに来ている点にある。実数で言うと、2013年で20歳代が3千人弱、30代が約3500人とある。数字自体は8千人以上いた1950年代に比べると少ないが、少子化の影響を考えると非常に深刻だ。特に2011年以降は経済的理由による自殺が急増している。これは、本人の雇用や労働環境も影響していようが、団塊世代前後の親が定年退職したり、要介護となったりして、若年層を圧迫していることも考えられる。
なお、2014年の調査によると、自損行為による救急車の出動は6万件を超えている。

従って、最良の自殺対策は、週35時間労働制や残業月上限20時間などを導入しつつ、若年層の賃上げを実現、さらに若年向けの公共住宅を増やして可処分所得を増やすようにすべきだ。しかし、現実には連合が「月100時間残業」に賛成する有様で、逆方向にしか進んでいない。
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2017年08月02日

青年座『旗を高く掲げよ』

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劇団青年座 第227回公演『旗を高く掲げよ』
作=古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出=黒岩亮
青年座劇場にて8月6日まで

『治天ノ君』の古川氏の脚本を青年座が上演。
ナチス期における一般的なドイツ家庭の有り様を描く。普通に暮らしていた市民が時流の中でナチ体制に組み込まれ、戦争と敗戦によって「自分たちの世界」そのものが崩壊してゆく。
1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻し第二次世界大戦は勃発した。
物語はその前年から始まる。

歴史教師のハロルドは善良なる市民。
妻レナーテ、娘リーザ、妻の父コントラートとベルリンに暮らすミュラー一家は、ごく一般的なドイツ人家庭。
1938年11月、ドイツ各地で起こったユダヤ人に対する組織的暴動事件(水晶の夜)直後、事件を受けて亡命を決意したユダヤ人の友人オットーが今後のドイツを憂える。
ナチス支持者の妻レナーテは、時流に乗らない夫に物足りなさを感じている。
夫、妻、義父、夫の友人、妻の友人、それぞれの立場からナチスドイツを語る。
その数日後、SS(ナチス親衛隊)の友人ペーターが、ハロルドに歴史の専門知識を活かした仕事をしてほしいとSSへの入隊を奨める。
乗り気のレナーテに対し、二の足を踏むハロルドだったが……、ついに入隊を決断する。
1940年7月フランスの降伏、1942年4月ホロコースト(ユダヤ人の組織的大量虐殺)開始、1944年9月ドイツ軍敗色濃厚、1945年4月ベルリン陥落寸前、そして……。

ドイツ崩壊が進むにつれ、反比例するかのようにナチスに傾倒していく家族。
ナチス独裁政権下のベルリンを舞台に、物語は時を移して転がっていく。

「旗を高く掲げよ」はナチス党歌で、「ホルスト・ヴェッセルの歌」名の方が知られている。
全体主義体制下で、「模範的な市民」であろうとすることが、いつの間にか「模範的なファシスト」になってしまう暗喩である。私などは政治を生業としているが、麻生先輩や浅沼先輩といった日本社会主義の偉大なる先人が軍国主義者、国家社会主義者となっていった前例に接しているだけに、いっそう感慨深いものがある。
もちろん、本作は二次大戦期のドイツを舞台にしているが、権威主義化、監視国家化が進み、外国人・障がい者などへの差別が蔓延、中国や朝鮮に対する敵意が煽られる現代日本をイメージさせるのは間違いない。登場人物たちの台詞の一つ一つに、思い当たる節があるはずだ。

舞台としても、さすがは青年座で演技も演出も完成度が高く、隙の無い仕上がりになっている。ただ、ラストに若干分かりにくい部分があることと、登場人物の造形がやや類型的であることは否めないが、「敢えて言えば」というレベルだろう。
ジェラテリー『ヒトラーを支持したドイツ国民』やTVドラマ『ジェネレーション・ウォー』に触れていると、さらに理解が深まるだろう。
posted by ケン at 12:29| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月01日

民進党代表選2017の初期情勢

【<民進代表選>動き活発化 江田氏に出馬促す声】
 蓮舫代表の辞意表明に伴う民進党代表選で、前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長は31日、それぞれ党重鎮と会って立候補への環境整備を進めるなど動きが活発化した。党内の一部には「第三の候補」を探る動きもあり、江田憲司代表代行に近い議員が「旧民主党のイメージ払拭(ふっしょく)が必要だ」として江田氏に出馬を促した。
 前原氏は31日、国会内で川端達夫衆院副議長と会談。枝野氏は野田佳彦幹事長と会ったほか、リベラル系議員で構成する赤松広隆元農相のグループが会合を開いた。
 「第三の候補」を巡り、江田氏ら約10人が同日、東京都内で会合して対応を協議した。一方、昨年9月の代表選に立候補した玉木雄一郎幹事長代理は同日、記者団に「幹事長や代表を支える立場だった自分が出るのは筋ではない。現時点では白紙だ」と述べるにとどめた。
 野田氏は同日の記者会見で、前原氏と枝野氏について「あえて厳しい局面でリーダーになろうとする方がいることに敬意を表する。働き盛りで素晴らしいリーダー候補だ」と語った。
 民進党は8月1日に常任幹事会を開き、代表選で党員・サポーター投票を実施するかや選挙日程を決める。ただ、党内では「代表選をやっている場合か」などの不満もあり、国会議員だけの投票による早期の新代表選出や、候補者一本化による無投票を求める声も出ている。
(8月1日、毎日新聞)

下っ端としては、毎年代表選挙をやるのは本当に勘弁して欲しい。去年の岡田氏にしても、今回の蓮舫氏にしても、やる気満々の姿勢を見せておきながら、突然意味不明な理由で辞任して他者に丸投げするとか、殆ど昭和前期の総理大臣である。
党代表の座が1年と務まらないのは、それだけ党の統制がままならず、何かと言えば下から足を引っ張る向きが強いことを示しており、同時に足を引っ張る者を抑えつけられない代表の弱さの表れでもある。つまり、岡田氏にしても蓮舫氏にしても、党内に強い基盤が無く、自前の戦力を持たないことが祟っている。言うなれば、関ヶ原戦役における石田三成で、当時三成が100万石、4万人の兵力を持って戦役に臨んでいたら、異なる結末もあっただろう。言い方を代えれば、小さい元手で賭博に臨むような話で、そもそも勝ち目が薄かった。カネを持っていない博打打ちは、ほぼほぼ負けるものなのだ。
民主党政権前の小沢・鳩山路線が安定していたのは、二大派閥が強い同盟関係にあったためだった。

今回の代表選挙は、現在のところ枝野氏と前原氏が出馬の意向を示し、第三勢力が候補擁立を模索しているが、20人の推薦人を集めるには至っていない。一部では、「推薦人20人はハードルが高すぎる」との批判があるが、仮に推薦人を10人しか集められなかったものが、選挙の妙で代表の座に就いたとしても、岡田氏や蓮舫氏と同様、党の統制に失敗する可能性が高い。推薦人は、いわば保証人のようなもので、20人の保証人も集められない者が、150人からの国会議員をまとめられるだろうか、という話である。

まだ2人が立候補意志を表明したばかりだが、党内の下馬評は「前原圧勝」である。上の喩えと同様、枝野氏はどこまでも一匹狼で、旧社会党系やリベラル派に依存しているが、前原氏は弱体化したとはいえ党内保守派の「顔」だからだ。しかも、党内の国会議員を始め、総支部長(議員候補)から自治体議員まで「もはや民進党のままでは戦えない」という認識が共有されつつあり、「前原代表の下で解党して小池新党に合流、保守新党の結成をめざそう」という流れが強まっている。
例えば、東京の場合、衆議院25選挙区の総支部長(空白あり)と参議院議員が2人いるが、このうち枝野氏に投票するのは5人いるかいないかだとされている。これは、先ごろ行われた都議選の大敗を受けて、「一刻も早く小池新党に合流すべき」という気運が高まっているためだ。また、愛知の場合、15人の総支部長と3人の参議院議員がいて、このうち枝野氏に投票するのは3、4人と見られている。こちらは、連合内の特に同盟系が強い選挙区で、連合が保守新党に舵を切ったことを受けての流れになっている。他も程度の差はあれど、似たようなものだろう。

結果、「前原圧勝」が明白であるため、前原支援の流れが加速する一方、リベラル派はすでに戦意を喪失、「何とか話し合いにして選挙は避けるべき」という不戦論(敗北主義)が蔓延している。下手をすると、枝野氏は20人の推薦人すら集められなくなるかもしれないほどだ。選挙をやる前から左派は自壊、選挙そのものが成立しない可能性もでてきている。

【追記】
一般論として「いま代表選をやっても党内に亀裂が残るだけ」というのは理解できるが、それはあくまでも身内にしか通用しない論理であり、公党である以上は、代表選挙を行うのが筋で、それを否定したらデモクラシーの正統性が揺らいでしまう。また、戦う意志すら見せないものに敵が妥協する必要もないわけで、民進党のリベラル派と言われる連中が政治家ではないことを示している。他方で毎年代表選挙が行われることで、党員・サポーターの士気や信頼は急低下しており、これも党崩壊への遠心力になっている。組織の統制という点では、蓮舫氏が辞任した場合、残りの任期は代表代行が代行すべきで、そうでなければ「代行」の意味が無い。民進党は組織としても非常に脆弱だと言える。

【追記2】
2人の主要候補については、一人はカク丸、もう一人はパソNA疑惑があり、暴露合戦に陥る恐れもある。
posted by ケン at 12:15| Comment(7) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする