2017年11月09日

トランプ米大統領訪日の実態と実相

トランプ米大統領が11月5〜7日に来日、日米首脳の親密さを演出する様々なイベントが準備され、政府とメディアは大成果を喧伝している。だが、メディアはゴルフや会食やコイの餌やりの話を伝えるばかりで、実態はよく分からない。では、安倍総理はトランプ大統領とどれだけ話ができたのか、見てみよう。
【11月5日】
ハンバーガー・ランチを済ませた後、ゴルフ(計約3時間半)。
米大統領と安倍首相が夫妻でディナー(約1時間半)。

【11月5日】
日米主要幹部でランチ(約1時間)。
ランチ後、日米首脳会談(約30分)。
迎賓館で晩餐会(約2時間)。

要はまともに話をしたのは30分だけで、残りは会食とイベントだった。安倍氏は英語が話せず、100%通訳を介すため、実質的には15分であり、双方が話すのだから、安倍総理が自らの意思を伝えられたのは10分も無かったことを示している。だが、外務省などの発表ではこの30分間の中で「地域・国際情勢について議論されるとともに、経済についても議論されました」とある。恐らくは、官僚の作文を読んだだけのものだったのだろう。

ここで他国の首脳会談を見てみよう。本年5月にドイツのメルケル首相が訪露、ソチを訪れた際には、プーチン大統領と2時間半の会談を行っている。ましてメルケル氏はロシア語を、プーチン氏はドイツ語を理解する間柄である。
また、今年6月、中国の習近平主席が同じくロシアのプーチン大統領とカザフスタンのアスタナで会談した際には、1時間半の予定が3時間半にも延長されている。

以上から想像されるのは、訪日スケジュールが設定された段階で、「日米首脳間で詰めて話すような問題は無いから親密さを演出しよう」と考えられたか、「二人でまともに話をさせると、どんなボロが出るか分からないから、会談は最小限にしよう」とされたのかのいずれかだろう、ということだ。
ただ、「長時間の首脳会談を実現した場合、貿易・為替問題でトランプ大統領から強い要求がなされ、安倍総理が応じざるを得なくなる」という日本側の懸念は、状況証拠的にはありそうな話だ。結果、日本の外務省的には「トランプ・安倍の個人的親密を内外に喧伝できれば十分(不満は無い)」という判断だったと見られる。

では、内容的にはどうだろうか。外務省の発表(HP)を見てみよう。
まず、首脳会談の総論として次の合意がなされたとある。
両首脳は,日米両国が北朝鮮問題に関し100パーセント共にあること,日米同盟に基づくプレゼンスを基盤とする地域への米国のコミットメントは揺らぎないことを確認するとともに,核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を通じた日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて確認しました。

要は「北朝鮮は日米共通の脅威」「アメリカは極東から手を引かない」「日本はアメリカの核の傘の下にある」ということである。
ところが、会談後に行われた記者会見では、トランプ氏は北朝鮮問題には触れているものの、より多くの時間を日米貿易不均衡と軍需産品の売り込みに費やしている。
ここから推察されるのは、日米安保を維持する代償として、日本がより多くの経済的、軍事的な対米貢献を求められているということだ。それは、日本のさらなる重武装化を意味する。

各論で日本側(外務省)が最も強調しているのは、「対北圧力強化」と「自由で開かれたインド太平洋戦略」である。
「対北圧力強化」は、北朝鮮を暴発させて先制攻撃をさせることで、アメリカの軍事介入を実現させ、朝鮮半島に統一した親米政権を樹立することを目的としている。これは安倍氏の首相官邸では既定方針とされているようだ。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国の「一帯一路」(Land power)政策に対する、日本側のアンチテーゼ(Sea power)で太平洋地域からインド洋までの海上路をもって、中国の影響力を封じ込めようとする伝統的なタカ派の「力による大陸封鎖」路線である。
ところが、首脳会談後の記者会見でトランプ大統領はこの点に触れず、日本の記者も質問しないことに業を煮やしたNYタイムズ紙のランドラー記者は、
「この2日間で、大統領は日米同盟を再確認し、自由で開かれたインド太平洋地域の構想を描き始めました。しかし2日後には、自由でもなければ開かれてもいない中国を訪問します。そこで私が伺いたいのは、不可避とも思われる中国との紛争をせずに、いかに米国はこの地域で自由と開放を推進していくつもりでしょうか。」

と大統領に質問、ト氏は「私と習近平国家主席との関係もまた良好」としつつ、貿易摩擦と通商問題を触れるに止め、肝心の質問には何も答えなかった。つまり、実際には「日本側の希望は聞いてやった(だけ)」という感じだったことが想像される。
つまり、日本人は「先生、(中国さんを)やっちゃってください!」とトランプ氏の背中を必死に押そうとしているのだが、あまりにも意図がミエミエで、米国側としては「乗せられてたまるか、でも乗ったフリだけはしておこう」というところなのだろう。

本稿ではこれ以上の評価はしない。
posted by ケン at 12:15| Comment(5) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする