2017年11月14日

要返還の教育無償化?

【大学在学中は授業料無償化 自民が検討案まとめる】
 自民党の教育再生実行本部は、大学などに在学中は授業料を支払わず、卒業後に一定の年収を超えた場合、所得に応じて国に納付する新たな制度の導入に向けた検討案をまとめました。この中では、納付の対象となる一定の年収について、「250万円以上」など複数の案を例示していて、今後検討を進めるとしています。
自民党が憲法改正の検討項目としている、高等教育を含めた教育の無償化をめぐって、党の教育再生実行本部は、大学などに在学中は授業料を支払わず、卒業後に一定の年収を超えた場合、収入に応じて国に納付する新たな制度を導入すべきだとしていて、このほど制度設計の検討案をまとめました。
 この中では、在学中に支払いを免除するのは「国立大学の授業料に相当する年間およそ54万円と、入学金およそ28万円を基本とする」としたうえで、私立大学などでこれを上回る差額分については、無利子の奨学金などでの対応を検討するとしています。
 そのうえで、納付の対象となる一定の年収については「初任給の平均値にあたる250万円以上」や、「300万円以上」など複数の案を例示して、今後検討を進めるとしているほか、納付額は正規雇用の標準的な収入の人でおよそ20年で支払いが完了する程度に設定するなどとしています。教育再生実行本部は、今後、この検討案を基にさらに具体的な制度設計の議論を進めることにしています。
(11月2日、NHK)

突っ込みどころが満載過ぎて、どこから手を付けたら良いものか。
まず日本放送協会ともあろうものが、言葉の使い方から間違っている。独自の定義づけでもしたのだろうか。
そもそも卒業後に返還の義務がある学費が「無償」であるはずがない。これは奨学金ですらなく、ただの公的教育ローンである。せいぜいのところ「学費の後日払い(出世払い)」であろう。これが認められれば、全ての頭金無しローンは「無償」ということになってしまう(爆)
「私立大学で上限額を上回る場合は無利子奨学金」とか、学費後日払いの上乗せでしかない。一体NHKは何が言いたいのか。自民党のプロパガンダ機関に成り下がったのか。

学費の設定は444万円で、無利子で20年で完済を想定した場合、返済額は年間22万円になるが、年収250万円や300万円の人にとっては大きな負担である。月で考えると、月給与が20万円以下のところで約1万8500円を返すとなれば、よほど切り詰めなければならない。給与所得控除の削減(実質増税)が実現すれば、物理的に不可能になるケースが続出しそうだ。
また、大卒新入社員の3年以内離職率が30%を超える中、失職した場合や非正規雇用に転じた場合はどうなるのか。

「こども保険」といい、自民党は選挙目当てに気前の良いことを公約するが、結局のところ財源が無く、詐欺まがいの政策でいかに誤魔化すかに注力しているようだ。もっとも、この点は「高速道路無料化」などを主張した民主党も同じで、挙げ句の果てに公約を撤回して増税を掲げ、決定的な不信を買ってしまい、今日の低迷に至っている。その意味では、自民党の方が「マシ」なのかもしれないが、詐欺の手口が巧妙化しているだけで、誰も幸せにしないことには変わらない。

なお、国際人権規約A規約第13条Cは「高等教育は、すべての適当な方法により、特に無償化の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」としている。日本政府はこれを長年保留してきたが、民主党政権下で留保を撤回している。つまり、高等教育の無償化は国際的義務であると自身に課しているわけだが、そのハードルは相当に高そうだ。

その一方で、高等教育のインフラが瓦解しつつある中で、無償化だけ進めた場合、医療基盤の脆弱な地方で小児医療を無償化して小児科医が居なくなってしまったケースと同様のことが起きるだろう。その構造については別稿にて説明したい。
posted by ケン at 12:24| Comment(0) | 教育、法務、司法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする