2017年11月16日

質問時間配分の妥当性について

【野党の質問時間削減「反対」55% 朝日新聞世論調査】
 朝日新聞社が実施した11、12両日の全国世論調査(電話)によると、国会での野党の質問時間を減らす自民党の提案に「反対」は55%で、「賛成」の29%を上回った。6日にあった日米首脳会談については59%が「評価する」とした一方、日米が一致して北朝鮮への圧力を高めていくことには、「不安の方が大きい」56%が「期待の方が大きい」35%を上回った。
 今回の日米首脳会談を「評価する」とした層でも、北朝鮮に圧力を高めていくことには「期待」48%、「不安」45%と拮抗(きっこう)。トランプ大統領を同盟国のリーダーとしてどの程度信頼できるか聞くと、「あまり」と「まったく」を合わせた「信頼できない」は61%に上り、「大いに」と「ある程度」を合わせた「信頼できる」の37%を大きく上回った。
 野党の質問時間削減案については、自民支持層では「賛成」48%、「反対」37%。これが無党派層では逆転し、「賛成」が18%、「反対」は59%に上った。
(11月14日、朝日新聞)

12月9日までの会期となった特別国会だが、冒頭から質問時間の配分をめぐって与野党が衝突、停滞している。
従来慣例的に質疑時間は「与党2対野党8」で配分されてきたが、今回自民党内から議席比で「与党7対野党3にせよ」との主張がなされ、森山国会対策委員長は「与党5・野党5」を主張、野党が全面的に反対、徹底抗戦している状態だ。「慣例」とは、国会法などに既定が無いことを意味する。

日本は議院内閣制で、閣僚は政権党の議員と総理大臣の指名した民間人から構成される。政府が提出する法案は、事前に政権党に提示され、政府と政権党間で調整がなされ、政権党の了承がなければ提出されない。つまり、与党議員は政府法案を事前審査しているのだから、議会で質問する必要は無い。
また、「野党の質問時間が長すぎる」という場合でも、質問に対する答弁は、基本的に政権党の閣僚や副大臣が行うため、適切な答弁がなされれば、むしろ法案の正当性を高めることになる。自民党が野党の質問を恐れるとしたら、単に問題を抱えた法案であるか、あるいは「疑問に答えられない」「問題に対応する術が無い」など答弁者である与党議員の能力が不足しているかのいずれかであるためだ。

今回の背景には、自民党内で「選挙に際して野党候補から質問していないことを責められた」との声が上げられたとも言われるが、それは与野党の役割の違いでしかなく、そこは紳士協定で「質問時間の過多で相手候補を攻撃するのは自粛する」とすれば良い話だろう。
実態としては、国会議員や官僚の質的低下により、野党の質問に耐えられなくなって、質問時間自体を削減しようという動きになっているものと思われる。

仮に野党の質問時間が減らされた場合、与党議員は事前審査と議会質問で二度権力を行使できるのに対し、野党議員は唯一の機会をも奪われるわけで、そのストレスは院外活動に向けられる可能性が高く、自民党も霞ヶ関もうれしくないはずだ。
また、与党の質問時間が増えても、「総理の決意をお示しください」「大臣のお気持ちをお聞かせください」など、身内の自慢話の応酬が増えるばかりで、国会中継も恐ろしくつまらないものになるだろう。

さらに指摘するなら、衆議院の場合、国会議員の質問時間は答弁時間も含まれる。そのため、「質問時間30分」としても、実態としては「議員の質問が15分、閣僚答弁が15分」などの割り振りになっている。しかも、第二次安倍政権以降、閣僚が質問とは無関係の話を延々と続けるという「答弁」が急増、例えば質問5分に対して、大臣答弁が15分にも及ぶといった問題が生じている。これは言うなれば、政府によるルールの悪用・議会サボタージュであり、質問権の侵害に相当する。原理的には、野党議員の質問に対し、閣僚が延々と関係の無い答弁を行って、時間切れを狙うことも可能だからだ。

これに対し、参議院は「片道方式」と呼ばれるルールで、質問時間は質問者が話す時間を指し、答弁時間は含まれない。そのため、答弁者はできるだけ簡潔に要点を述べようと努める傾向がある。

近代議会制度はもともと国王大権を抑制し、暴走を止めるために機能を拡大、発展していった歴史がある。立憲君主制となって、国王大権の多くが失われると、行政権は政府が担うところとなり、議院内閣制下では首相・閣僚は政権党から選出される。つまり、行政権を抑制・監督する権能は、現代では野党が担っていることを意味する。その野党の権限を縮小しようというのが自民党の要求であると考えれば、その狙いは自然、議会の形骸化であることは容易に推察できるだろう。

【追記、11/17】
もっとも、予算委員会などにおける総理大臣の拘束が多いとか、大臣答弁が多すぎるという自民党の指摘は首肯できる部分もあり、政務官の答弁でも大臣並みの重みを持たせ、虚偽答弁は過去に遡って訴追できるようにするなどの条件をもって大臣の負担を減らすことを検討すべきだろう。
posted by ケン at 13:33| Comment(2) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする