2017年11月28日

オランダのポピュリズム政治

勉強会にてオランダのポピュリズムについて報告を聞く。

オランダは、今年3月に行われた総選挙で小党分立が進んでしまい、連立交渉が難航、オランダ史上初の4党連立(自由民主、キリスト教民主勢力、民主66、キリスト教連合)で新政権が発足したのは先月のことだった。下院定数150に対し、第一党の自由民主人民党が33議席、第二党の自由党(日本では極右扱い)が20議席、第三党の民主66とキリスト教民主勢力が19議席ずつあり、第二党を除外しての連立交渉が難航するのは当然の帰結だった。しかも、4党連立でも議席数は76と、半数を一議席上回るだけで、造反者が2人も出れば何も成立しない綱渡り状態にある。

さらに言えば、第一党の自由民主は総選挙において、自由党票を取り込むため、主張を中道右派からさらに右転回させたが、そこに連立のためとはいえ、中道左派でリベラル色の濃い民主66を加えた結果、移民政策、海外派兵問題、安楽死、同性婚、麻薬使用の拡大など様々な価値観で大きな開きが生じている。

日本の報道では、欧州の右派新興政党を指して「極右政党」と呼ぶケースが多いが、「フランスにおける既存政党の難しさについて」でフランスの国民戦線の政策を見てみたことがあり、日本の自民党や維新と比較して「より右」とは言えないことが判明している。

・移民の制限(排斥では無く、フランスの価値を尊重する移住者は認める)
・フランス国内におけるモスク建設の規制
・死刑復活
・公務員の削減
・減税
・同性パートナーシップ制度の廃止
・国籍の血統主義化
・補助金制度の見直し
・農村社会の重視


主張を見ている限り、日本の自民党と維新を足して二で割ったようなイメージであり、これを極右としてしまうと、日本では極右政党が議会の3分の2以上を占めていることになる。ただし、重農主義を唱えている点で、国民戦線は自民党よりも「伝統重視」と言える。
フランスにおける既存政党の難しさについて

オランダの自由党も概ねこれに近い主張で、基本にあるのは「EU懐疑主義」と「反イスラム」の二つ。EU懐疑論は、EU官僚による経済・財政支配からオランダの自律性と独立性を取り戻すことを目的としており、中央統制に対する反発をもって極右とは言えない。また、「反イスラム」は、イスラム原理主義がオランダ伝統の自由と寛容を阻害し、既存のコミュニティと融和を破壊するものとして反対しているのであり、彼らの主観では「自由と寛容を守る」という意味での保守なのだ。これも単純に極右とは言えないだろう。

オランダの国の成り立ちを考えた場合、その原点は三十年戦争(1618〜1648)あるいはそれ以前において、カトリックによる信教の強要とカルヴァン派の弾圧から、信教の自由と多様性を認めるために、スペインと長い戦争を経て独立を勝ち取ったところに起因している。故に、長いことオランダは政治亡命者を率先して受け入れてきた。出版・印刷業が発展したのは、他国で出版できない内容の本でもオランダでは可能だったからだ。
それだけに、伝統的な「自由と寛容」を守るために、それに否定的なイスラム原理主義を排除するのは、「積極的自由主義」「闘う自由主義」とも言える。

翻って、日本における日本会議や安倍政権が主張する「保守」は、明治帝政に成り立ちの起源を求め、戦後民主主義を否定し、帝権による権威主義を追及するものであって、オランダの自由党やフランスの国民戦線が求める価値とは大きく異なる。

もっとも、オランダ自由党の場合、党首ウィルデルス一人に全権限が集中しており、そもそも党員が党首一人で、候補者は党首の面接で選別され、議員ですら「スタッフ」という括りで党員ですらないという。だが、興味深いことに、候補選定の際には極右思想や他党での活動歴のある者は排除されるともいう。確かに独裁政党ではあるのだが、どこか小池百合子氏に似たところがある。

選挙制度においてもオランダのデモクラシーは際立っている。政党名簿式比例代表制だが、立候補者を出す政党に求められるのは、150万円ほどの保証金と20ある選挙区毎に30人の同意人、計600人の署名だけだという。日本では候補者一人分の供託金にすら足りない。政党は予め順位を振った候補名簿を発表し、投票の二週間前には全有権者に候補者一覧の入った投票用紙が送られ、投票者は好きな候補者にチェックを入れて投票する。名簿順が下位でも得票が一定数以上あると優先的に当選枠に入れられるシステムで、拘束式と非拘束式の中間的なシステムになっている。

日本では、氏名を投票用紙に正確に記すことが求められるが、世界的には候補一覧を見て、投票したい候補の頭にチェックを入れるだけのシステムが圧倒的だ。これは各国の識字率の問題もあるが、高齢者や障がい者などの事情を考慮したものでもある。日本でも、90年代の政治制度改革に際して細川政権がマークシートの導入を決めたものの、自社さ政権下で自民党の主導で記名式に戻された経緯がある。
この点からも、街頭で10日間ほどワアワア騒いだだけで投票所で候補者の氏名を書かせるだけの現行制度が、いかに既存の知名度に依存した体制側に有利な制度であるか分かるだろう。
posted by ケン at 12:23| Comment(0) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする