2018年02月20日

子どもを大学に行かせて一家破産する国

【奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる】
 国の奨学金を返せず自己破産するケースが、借りた本人だけでなく親族にも広がっている。過去5年間の自己破産は延べ1万5千人で、半分近くが親や親戚ら保証人だった。奨学金制度を担う日本学生支援機構などが初めて朝日新聞に明らかにした。無担保・無審査で借りた奨学金が重荷となり、破産の連鎖を招いている。
機構は2004年度に日本育英会から改組した独立行政法人で、大学などへの進学時に奨学金を貸与する。担保や審査はなく、卒業から20年以内に分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か、保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ。機関保証の場合、保証料が奨学金から差し引かれる。16年度末現在、410万人が返している。
 機構などによると、奨学金にからむ自己破産は16年度までの5年間で延べ1万5338人。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人だった。国内の自己破産が減る中、奨学金関連は3千人前後が続いており、16年度は最多の3451人と5年前より13%増えた。
 ただ、機構は、1人で大学と大学院で借りた場合などに「2人」と数えている。機構は「システム上、重複を除いた実人数は出せないが、8割ほどではないか」とみている。破産理由は「立ち入って調査できず分からない」という。
 自己破産は、借金を返せる見込みがないと裁判所に認められれば返済を免れる手続き。その代わりに財産を処分され、住所・氏名が官報に載る。一定期間の借り入れが制限されるなどの不利益もある。
 奨学金にからむ自己破産の背景には、学費の値上がりや非正規雇用の広がりに加え、機構が回収を強めた影響もある。本人らに返還を促すよう裁判所に申し立てた件数は、この5年間で約4万5千件。16年度は9106件と機構が発足した04年度の44倍になった。給与の差し押さえなど強制執行に至ったのは16年度に387件。04年度は1件だった。
 奨学金をめぐっては、返還に苦しむ若者が続出したため、機構は14年度、延滞金の利率を10%から5%に下げる▽年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばす、などの対策を採った。だが、その後も自己破産は後を絶たない。
 猶予制度の利用者は16年度末で延べ10万人。その期限が切れ始める19年春以降、返還に困る人が続出する可能性がある。
(2月12日、朝日新聞)

子どもを大学に行かせて一家破産か。住宅ローン破産も増えそうだし、いよいよって感じ。
「返せないのに借りるなよ」というのは全く正論なのだが、学習権は基本的人権の一つと考えるのが世界の潮流であり、貧困が理由で学校に通えないというのは、経済的貧困と同時に政治の貧困が原因と見なされる。
特に日本の場合、高校を卒業して社会で働いて学費を稼いでから大学に入学し直すということが難しいため(一度会社を辞めると正社員になれない)、無理をしてでも現役での進学が志向される。それだけに「借金して大学とかバカじゃね」というのは厳しいものがある。

ただ経済環境的に高齢者は失業や賃金低下のリスクが高まっている上、若年層でも低賃金や生活コストの上昇などが蔓延しており、高度成長期の感覚で借金するのは危険すぎる。
大学進学自体、かつての「大学を出て企業に勤めれば一生安泰」神話が瓦解しており、担保がない以上、進学のために投入するリソースと将来的に見込まれるリターンについて、個々人が検討しなければならなくなっている。少なくとも18歳の青年に選択責任を負わせるには重すぎる課題だろう。
また、金利で考えても、住宅ローンが金利平均0.5%〜0.8%に対して、奨学金は0.4%〜1.0%、教育ローンだと1.7%〜2.0%くらいで、低金利時代に銀行に市場を提供するために教育が利用されている側面もある。

ちなみに500万円を金利1%で借りると、20年返済で利息は50万円超となり、月返済額は約2.3万円となる。初任給18万円あたりだと相当に厳しいことが分かる。20代の貯蓄ゼロ率が6割を超え、結婚できない層が増えるのは当たり前なのだ。
この点からも、日本は縮小再生産が続くことになりそうだ。
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2018年02月19日

『フランス現代史 隠された記憶』

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『フランス現代史 隠された記憶−戦争のタブーを追跡する』 宮川裕章 ちくま新書(2017)

第1部 第一次世界大戦(撃ち込まれた一四億発―不発弾処理
永田丸の記憶―同盟国だった日本とフランス
反戦の英雄―理想となったジャン・ジョレス)

第2部 第二次世界大戦(ユダヤ人移送の十字架―背負い続ける罪
「ヴィシー政権」―対独協力の記憶
悲劇からの出発―オラドゥール村の葛藤
レジスタンスとフランス―心の拠り所
ドゴール・フランス・アルジェリア―残った遺恨)

毎日新聞のパリ特派員によるルポルタージュだが、着眼点が良い。
二つの大戦でともに(最後は)戦勝国となったフランスだが、戦勝国といえども深いトラウマを負っていることが分かる。一次大戦において独仏両軍がフランス国内で放った砲弾の数は14億発に達し、その一割が不発弾として地中に埋まり、100年を経た現在も処理が進められているが、今のペースのままだと全てを処理するのに700年かかるという。

1940年のフランス戦役でフランス軍は大敗を喫し、北部はナチス・ドイツに占領され、南部では第三共和政の後継となったペタン政権が成立した。独立を維持するためにはナチスに協力するより他なく、ユダヤ人絶滅政策に荷担、国内に密告制度が設けられ、摘発が進められた。戦争前にフランス国内には40万人からのユダヤ人がいたが、そのうち7万6千人が連行され、生還したのは2千人強でしかなかった。ペタン政権は国父ペタン元帥を仰ぐ権威主義国家となり、フランス革命以来の「自由、平等、博愛」は否定されたが、当時国内での支持率は非常に高かった。
だが、1944年6月に連合軍がノルマンディに上陸すると、ペタン政権は瓦解、その正統性は全て否定され、ナチスへの協力は悪夢として封印(無かったことに)され、今度は(少数の)レジスタンスと(新国父)ドゴールの神話が生まれ、今日まで引きずる形となっている。

1954年に始まるアルジェリア独立戦争は、8年間続き、最終的にフランス軍が撤退する。だが、フランス側に協力した民兵を始めとする協力者は置き去りにされ、「自力でフランスまで辿り着いたもの」のみがフランスに受け入れられる。それもフランス国内では否定的な目で見られ、差別と遺恨が続いている。この際、植民地からの撤退を決めたのは、保守派のドゴール大統領であり、社会党と共産党は最後まで反対した。

日本では華やかなモードと理想主義的な共和国のイメージが先行するフランスだが、外側から見えない、あるいはフランス人自身が触れたがらない歴史の暗部を精力的な取材で克明にしている。一日で読める分量だが、非常に示唆に富んでおり、現代日本の歴史修正主義と向き合う上でも参考になるだろう。
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2018年02月18日

カジノは週3回までなる規制

【カジノ入場は週3回まで 政府が規制案を与党に提示】
 政府は15日、統合型リゾート施設(IR)内のカジノに関し、日本人の入場回数の上限を週3回、月10回までとする規制案を自民、公明両党の関係部会にそれぞれ示した。自民党からは「規制が厳し過ぎる」という批判も出た。公明党では週3回など入場回数制限の根拠を示すよう求める意見が相次いだ。政府は規制案を盛り込んだIR実施法案を3月中に国会提出したい考えだが、調整は難航しそうだ。
 規制案では、日本人や国内に在住する外国人を対象に、カジノの入場回数の上限を「連続する7日間に3回」か「連続する28日間で10回」とする。入場履歴はICチップ付きのマイナンバーカードを使って確認。訪日外国人旅行者には適用しない。スロットマシンやルーレット台などを設置する主要部分の面積は1万5千平方メートルまでに抑え、IR全体の3%以下とする。
 自民党の部会では、規制の必要性に賛同する意見がある一方、「採算性からみて面積制限が厳し過ぎる」という批判や、普及率が10%程度のマイナンバーカードを本人確認に使用することへの疑問が出た。このため、政府が修正案を検討することになった。
 一方、公明党は支持母体の創価学会などにカジノ解禁への慎重論が根強く、ギャンブル依存症対策基本法案が成立しない限りIR実施法案の国会提出を認めない構えだ。
(2月15日、産経新聞)

何というか、あるドラッグを解禁するけど、服用は週三回までとする、みたいな話。ヤバいと分かっているなら解禁するなよと。一体何のための国家だよ。個々人での自己規制・抑制が難しく、危険な影響があるものを一律で規制するのは、国家の正当な役割であり、それを放棄するのは自己否定に他ならない。

何度も言っているが、刑法が賭博を禁じているのに、例外に例外を重ね、ついには「形式上は政府・自治体が統括するけど、実際の運営は民間が行う」という、完全に骨抜きにしてしまったのが、今回のカジノ法である。

刑法に例外規定を重ねて骨抜きし、その上で入場規制することで「依存症対策」などと嘯くのは、いかにも腐敗政府の言いぐさであろう。
しかも自民党からは「経済に悪影響」などと批判が上がっているという。現状でも貯蓄ゼロ世帯が3割以上に上り、上昇に歯止めがかからなくなっているというのに、さらなる収奪の場を設けようという政府・自民党の暴虐ぶりを露呈している。
連中は、自らの手足を食っているだけに過ぎない。
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2018年02月16日

2018 日露関係の今後は?

【安倍首相、日ロ平和条約締結の意欲強調】
 安倍首相は7日、北方領土の返還を求める会合で、あいさつし、日ロ平和条約の締結に向けた意欲を、あらためて示した。安倍首相は「戦後72年が経過してもなお、日本とロシアの間には平和条約がないのは、異常な状態。何とか、この状況を打開しなければならない。戦後、ずっと残されてきたこの課題に、私とプーチン大統領が終止符を打つ」と述べたうえで、5月にロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談に臨む決意を表明した。さらに安倍首相は、両国が2016年に合意した、北方四島での「共同経済活動」の実現に向けて、「今後、プロジェクトを具体化するための作業を加速させる」と強調した。
(2月7日、フジテレビ系)

【北方領土「第2次大戦の結果」=平和条約締結を希望―ロ外相】
 ロシアのラブロフ外相は国営テレビのインタビューで、北方領土問題について「第2次大戦の結果」であり、日本がこれを認める必要があるとする見解を改めて示した。 ロシア外務省が11日、インタビュー内容を公表した。ラブロフ氏は平和条約締結後に北方領土の色丹島と歯舞群島の引き渡しをうたった1956年の日ソ共同宣言に触れ、「われわれは平和条約の締結を望んでいる」と発言した。また日ロ首脳が合意した北方四島での共同経済活動の議論が両国間で進んでいると説明した。一方で、平和条約締結交渉では「日米関係が意味を持つ」と指摘。日米安保条約によって「米国は日本の任意の地域に基地を置く権利を持つ」と警戒し、この問題が交渉の焦点となっているとの認識を示した。 
(2月12日、時事通信)

ナショナリストたちが「安倍はプーチンに北方領土をくれてやるのか!」と激高している。日本では、ロシア研究者の絶対数が少ない上に、地位が低く、さらには権力側に都合の良い研究者しか表に出てこないので、まともな分析が主要メディアに載ることはない。それなりの歴史研究者でも、まともに日ソ共同宣言すら読まずに発言しているケースが散見される。

北方領土問題は非常に多くの論者が論じているが、そもそも領土返還要求は日ソ共同宣言で禁止されており、その一点で成立し得ない。

6.ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

但し、例外的に歯舞、色丹が規定されている。
9.日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

日本は日ソ共同宣言をもって対ソ講和をなした上、国連加盟が認められたため、これを破棄することはできない。にもかかわらず、択捉、国後の領土要求を行っていることは、本来的には講和条約違反に当たる。これは、日ソ間に平和条約が締結されることを望まないアメリカ側の意向が作用したためで、それ以降、日本政府は北方領土返還要求を行うことで、日ソ・日露と平和条約が締結されないよう、距離を置く外交を続けてきた。
だが、2000年以降、中国の国力が膨張し、ついには日本を上回り、同時にアメリカの覇権に陰りが生じ、アジアからの撤退が検討されるに至り、日本は中国を最大の脅威と見なして対露宥和に転じる。これが、今日の日露外交の基本条件となっているが、国内で反ソ・反露・北方領土返還運動を煽りすぎたせいで、日露関係の改善が難しくなっている。NK党が千島全島の返還を要求する様は、ヴェトナムやアルジェリアからの撤退に反対するフランス共産党を彷彿させる。
なお、「国後、択捉島は千島列島ではなく、北海道の一部」とする現政府の主張の欺瞞性については、こちらを参照されたい。

【参考】官製絵はがきに見る政府の欺瞞

ロシアは3月に大統領選を、日本は9月に自民党大会・総裁選を控え、それぞれ再選が確実視されているとはいえ、慎重になる時期だ。だが、両者が再選されれば、自民党総裁の任期である2021年9月まで安定した交渉期間が確保できることになる。また、2016年12月にプーチン大統領が来日した際に、安倍首相と「2018年を日露文化年とする」と取り決めたので、文化交流が進むだろう。

安倍総理が言う「私とプーチン大統領が終止符を打つ」というのは、「2021年9月までに」と捉えるべきだろう。実際、ロシアで圧倒的なリーダーシップを持つプーチン大統領と、極右派に属しながら衆参両院で絶対多数を握り、政権党内に反対者を持たない安倍総理の二人で解決できなければ、平和的な解決は不可能と判断せざるを得ない。その意味で、安倍氏の判断は正鵠を射ている。

日露関係が期待されるほど進展しないのは、ロシア側がNATOを主敵とし、「欧米日による挟撃」という永年の悪夢を回避するために日露関係の改善を望むのに対し、日本側は中国を最大の脅威と認識し、「対中包囲網」を構築すべく、中露の離間を謀るという非対称要素に主因がある。また、日本は常にホワイトハウスの顔色を伺いながら、「怒られない範囲で」のみ日露交渉に臨めるという限界がある一方、ロシアとしては日米同盟の制限下でしか外交できない日本に対する不信がぬぐえないところがある。例えば、オホーツク海の防衛を重視するロシアにとって、仮に引き渡した北方四島に米軍基地が建設されるとなれば、悪夢でしかないだろう。
プーチン大統領は、たびたび「中露の国境問題の解決には40年を要した」旨を述べているが、要は中露に匹敵する信頼・協力関係はいまだ日露間には無いということなのだ。それだけに、安倍総理の抱えている課題はかなりハードルが高いが、中国に対抗するためには、対露関係の改善は不可欠であり、平和条約は最低条件となる。

現実的には、日本がロシアに提示できる好条件はあまりなく、択捉、国後島の共同開発と、両島の非武装化あたりで手を打つのが関の山だと思われる。この辺については、改めて考えてみたい。
posted by ケン at 12:10| Comment(2) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月15日

さらなる労働地獄へ2

【契約社員も裁量労働に−「適用可能」と政府答弁書】
 政府は6日の閣議で、今国会に提出予定の働き方改革関連法案に盛り込まれる裁量労働制について、雇用形態や年収に関する要件はなく「契約社員や最低賃金で働く労働者にも適用が可能だ」とする答弁書を決定した。
 裁量労働制は実際に働いた時間にかかわらず、事前に労使で取り決めた分だけ働いたと見なす。指示を受けずに仕事の進め方を決めることができる人を対象としているが、長時間労働を助長するとの批判もある。実際に裁量がない人にも拡大される恐れがあるとして、野党は反発している。
 政府はこの制度のうち、事業運営の企画などを担う「企画業務型」の対象業種拡大を法案に明記する考えだ。
(2月6日、共同通信)

これは政府的には冷静に現状認識を述べただけで特段の意図があるわけではないのだろう。現状でも、条件さえ適合すれば、契約社員などに裁量労働を適用することは可能であり、今回の「働き方改革」では裁量労働の適用範囲が超拡大されるという話に過ぎない。

ただ、現実問題として契約社員や超低賃金で働かされている正社員が、職務上の裁量を持ち得ているのかという話はある。だが、今回の改革で雇用形態や職務にかかわらず適用可能となるため、際限なく適用される恐れが強まっている。準備されている案では、「労使合意」が必要とあるが、現状の三六協定が全く労働時間規制に寄与していないことを考えれば、何の担保にもならないことは明白だ。まして、日本の労働組合は単なる大企業正社員の互助会に過ぎず、契約社員などの非正規社員のために機能することは殆ど無い。

日本の労働地獄はさらに過酷になって行きそうだ。マルクス主義が再評価される日は遠くないかもしれない。
posted by ケン at 12:25| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月14日

ルーリー、スリーパーセル論で炎上

国際政治学者を自称している三浦女史がテレビの発言で炎上しているらしい。2月11日に放送された『ワイドナショー』なる番組で、北朝鮮の暗殺部隊が、日本の大都市部、特に大阪に潜伏し、日朝開戦に備えているという話だ。
実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルといわれて、もう指導者が死んだ、っていうのが分かったら、一切外部との連絡を絶って、都市で動き始める、スリーパーセルというのが活動される、活動すると言われている。
(略)
テロリスト分子がいるわけです。それがソウルでも、東京でも、勿論大阪でも。いま結構大阪がヤバいって言われていて。
(略)
潜んでます。というのは、あの、いざというときにその最後のバックアップですよ。そうしたら首都を攻撃するよりかは、正直他の大都市が狙われる可能性もあるので。東京じゃないからという風に安心はできない。というのがあるので、正直我々としては核だろうがなんだろうが戦争して欲しくないですよ、アメリカと。

GMT「ラビリンス」のプレイヤーとしては、確かにセルを潜伏状態のままアメリカに送り込んで大量破壊兵器を起動させるのが、ジハーディスト側の勝利条件(の一つ)であるだけに100%否定することは難しいし、現実に911テロは、アルカイダの潜伏工作員によって行われたとされている(ただ裁判ではまともな証拠は上がっていない)。

もう一つ思い出す。慶応3年10月、討幕の密勅が薩長に下されると、西郷隆盛は江戸在住の薩摩隠密「スリーパーセル」に対して後方破壊活動を命じた。彼らは尊皇攘夷主義者を煽動しつつ、府内で放火、略奪、破壊活動を行い、これが幕府司直による薩摩藩邸焼き討ちに発展。戊辰戦争に直結した。今回のNHK大河ドラマは、「スリーパーセルの元締め」としての西郷を描いてくれるに違いない。

江戸から薩摩に送られる密偵「薩摩飛脚」は、「生還率一割以下」と言われたが、潜入できたものは在薩「スリーパーセル」として市民生活を続けた。その薩摩飛脚は、特段の裁判も経ずに問答無用で殺害されるのが常だったという。この辺もNHKにはリアルに再現してもらいたい。

工作員とは異なるが、ソ連学徒的に思い出されるネタもある。
1936年秋、パリの地元紙が日独防共協定をすっぱ抜いて記事にしたのを、佐藤尚武大使が目にして、わざわざ大使名で本省に問い合わせ、「そんな交渉はしてないし、あり得ない」旨の回答を得たので、記事を書いた女性記者に抗議したところ、「きちんとファクト・チェックされたらいかがですか?」と鼻で笑われたという。その記者は、ゾルゲ・クリヴィツキーのソ連ルートから日本陸軍の情報を得ていた。その日本側協力者だった「エコノミスト」は今日まで正体が判明していない。

なお、ベルリンの壁崩壊時に西ドイツに潜伏していた東独シュタージの工作員は200人ほどだったとされるので、韓国ならいざしらず、北朝鮮の工作員が日本にどれほどいるかというのは相当に疑問だろう。

ただ、ルーリーの言い様は劇薬である。かつてヒトラーとナチスは、「第一次世界大戦でドイツが負けたのは、後方でユダヤ人が破壊工作を行い、降伏を先導したためだ」という主張を掲げ、ユダヤ人差別を煽動した。
ソ連のスターリン期の大粛清は、「潜在的な反革命を排除する」として行われた。
アメリカですら、「潜在的な共産主義者を排除する」としてマッカーシズム「赤狩り」旋風が吹き荒れた。
日本では関東大震災で同じことが起きている。
その意味で、ルーリーは立派に煽動者としての役割を果たしているのである。こうした言動が公共空間で認められていることを鑑みても、日本でマンハントが始まる日はそう遠くないかもしれない。
まともな人間は、「まとも」であるが故に早く日本から離れるべきなのだろう。
posted by ケン at 12:42| Comment(2) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月13日

核肯定に転じた河野太郎

【<衆院予算委>河野外相「評価しない理由ない」 米核見直し】
 河野太郎外相は5日午前の衆院予算委員会で、米国の核戦略指針「核態勢見直し(NPR)」について「北朝鮮の核・ミサイルの脅威を現実のものと受け止めており、高く評価しない理由はない」と述べた。立憲民主党の逢坂誠二氏が、河野氏の3日の談話を「問題が多い」とただしたことに反論した。
 河野氏は「日本の領土を北朝鮮のミサイルが2度、飛び越えていった」と述べ、オバマ前政権が「核兵器のない世界」の実現を掲げたころより安全保障上の脅威は増したと指摘。「NPRは同盟国にも米国の抑止力はきちんとコミット(関与)すると明確にした。(日本は)核の抑止力を自ら用いることはできない」と評価の理由を説明した。
 逢坂氏は「NPRは米国による核兵器使用のハードルを下げ、核の先制使用の可能性も含む非常に危険な内容ではないか」と政府の対応を批判した。
 安倍晋三首相は、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて「子供たちの未来へ投資するため、恒久財源をしっかり得ていきたい。そういう状況をつくっていきたい」と述べ、増税を先送りしない考えを重ねて示した。立憲の青柳陽一郎氏の質問に答えた。
(2月5日、毎日新聞)

外相に就任するまで、河野太郎氏は、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)日本支部の代表だった。PNNDは、核軍縮をめざす国会議員の世界的ネットワークで、それなりの権威を持つ団体である。その河野氏をあえて外務大臣にすえ、ここまで言わしめるのは、自民党内の反核派・対米自立派を封じる狙いがあったとはいえ、安倍氏の人事力はなかなか侮れないものがある。やりにくい課題に対して、あえて反対派にやらせるというのは政治の世界ではよくあることで、その最たるものが村山富市氏だった。

今回の米国の核戦略転換は、世界覇権からの撤収と軍縮を前に、「使い勝手の良い核戦力」を充実させることで、全体の軍縮を進める前提条件を整えようという思惑があると見られる。今のところ情報がそろっていないので、この辺は推測に過ぎないが。

日本は戦後の東西冷戦の下で、日米安保を締結してアメリカの核の傘に入ることで、自国の軍事的負担を極小化、経済発展の原動力としてきた。1990年代以降、主敵だったソ連が消失して、アメリカの覇権に陰りが生じ、それに替わって中国が台頭してくる。だが、アメリカはソ連に対して採った直接対立に基づく対称的封じ込め政策を、中国に対しては採らず宥和政策と人権外交を中心とした非対称封じ込め政策を採用してきた。しかし、日本は対中宥和を採らず、対決政策を促進、東アジアの危機を煽ることで、日米安保体制を護持する方針を堅持してきた。

日米安保を維持してアメリカの核の傘を利用することで自国の安全保障を実現するならば、トランプ政権の方針に反対することなどできるはずもない。
本ブログでは何度も指摘してきたことだが、日本の選択肢は多くない。

1.アメリカの核を借用する日米安保体制
2.日中露を軸とした東アジア集団安保体制の構築
3.独自武装(中立)路線


私個人は「3」を理想とするが、その暴走した末路が1945年であったことを思えば、相当にハードルの高い政策で、あまり現実的とは言えない。すると、選択できるのは「1」か「2」かしかなく、「中露と仲良くとかあり得ない」となれば自然と対米従属を維持するしか無い。

とはいえ、日米安保と核抑止を信仰するのであれば、どうして外務大臣職を引き受けたのか。あるいは、それまでの核軍縮スタンスはあくまでもフェイクだったのか、疑問は残る。
我が国は、北朝鮮の核兵器の脅威にさらされています。極めて強い破壊力を持つ核兵器による攻撃を防ぐためには、核兵器による抑止が必要です。抑止のために、核兵器がもたらす破壊力と同等の脅威を通常兵器でもたらそうとすれば、莫大な量の通常兵器が必要になり、とても現実的ではありません。
また、日本は、専守防衛をうたい、非核三原則を堅持する方針を明確にしています。ですから日本は、北朝鮮の核への抑止を米国の核兵器に依存することが必要です。
(中略)
核兵器のない世界を目指すためには米国の核の傘に依存するべきではないという御意見もありますが、北朝鮮による核・ミサイル開発が進展している中で、非核三原則を堅持しながら国民の生命と平和な暮らしを守るためには、日米同盟と米国の抑止力の下で安全を確保していかなければなりません。
(「ごまめの歯ぎしり」 2018年2月5日号 米国の核戦略見直し)
posted by ケン at 12:56| Comment(3) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする