2018年02月23日

自民党内ですら難航する改憲

【石破氏、首相の政治姿勢を批判 「党内の積み上げ無視」】
 自民党の石破茂元幹事長は18日のラジオ日本の番組で、「憲法もそうだが、党内で積み上げたものを無視した形で、『自分はこうなんだ』とやるのが時々ある」と述べ、安倍晋三首相の政治姿勢を批判した。
憲法9条改正をめぐり、1、2項を維持した上での自衛隊明記案を掲げる安倍首相に対し、石破氏は2012年の党改憲草案に沿って、交戦権を否認する2項の削除を主張。党内論議を積み重ねた草案を重視する姿勢を打ち出しており、改めて首相の政治手法に疑義を呈した形だ。
 昨年の衆院選で、安倍首相が消費増税の税収増を使った教育無償化を打ち出したことについても、石破氏は「車のラジオで聞いて、ひっくり返って驚いた。そんな話は聞いたこともない」と、安倍首相の政治手法に首をかしげた。番組は6日に収録された。
(2月18日、朝日新聞)

安倍総理の「最もやりたいこと」であるはずの「自主憲法制定」だが、衆参ともに自公で絶対多数を確保しながら、肝心の改憲に向けた議論や案文づくりは遅々として進んでいない。
もともと2017年秋の臨時国会で改憲案を提示、または提案する予定だったものが、昨年の通常国会では憲法調査会が開かれたのはわずかで、自民党内ですら改憲案をまとめられず、ついには臨時国会すら開かれずに解散・総選挙となってしまった。安倍総理は、通常国会中に自民党案をまとめ、秋の臨時国会で提案、発議できるように指示しているようだが、党内は「笛吹けど踊らず」状態にあり、若手議員との懇親会の場で議論を進めるようにお願いする始末になっている。

上記の石破氏の主張は正論だが、自民党案ではKM党が合意しない可能性が高く、仮に合意した場合でも、憲法改正案を自公で強行採決したところで、国民投票で否決されればムダになってしまうだけに、可能な限り野党の合意を得られる改正案に止めたいというのが、安倍氏の本音なのだろう。
その意味で、石破氏の主張は正論ではあるが現実的ではなく、「総裁選を見据えての政局狙い」と陰口を叩かれている。

だがその一方で、安倍総理が主張する「3項を設けて自衛隊を認める条文を加える」案は、現状を追認するだけの話で、「であれば、そこまで大きな政治的リソースをつぎ込んで、国民投票のリスクを冒す必要は無いだろう」という判断はむしろ合理的なものになってしまっている。
自民党内で改憲議論が盛り上がらないのは、「別にいま無理してやらなくても」「他にやることあるじゃん」という感覚が広がっているからだと推察される。

少なくとも法理論上は、9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を削除するからこそ、憲法を改正する意義があり、軍事力の保有が合法化される。この2項を残したまま、「自衛のための最小限度の実力組織の設置は法律によって認められる」旨を加えたところで、「戦力には該当しない実力組織とは何か」という神学論争が延々と続くことになるからだ。この点で、石破氏の主張はどこまでも正論である。

また、2015年に安保法制が成立して集団的自衛権の行使が容認された以上、憲法9条はすでに実質を失って形骸化しており、この点でも「今さら憲法を改正する必要ないじゃん」という話になっている。下手に3項を付け加えて、例えば「前二項の規定は、外国からの武力攻撃を受けたときに、これを排除するための必要最小限度の実力行使を妨げるものではない」「そのための必要最小限度の実力は、前項の戦力とは認識しない」などとした場合、今度は政府が想定する、日本が直接武力攻撃を受けていない「存立危機事態」に際し、集団的自衛権を行使して武力行使することが許されなくなってしまう。
法律を先行させて集団的自衛権を解禁してしまった以上、本来的には憲法を改正して「どこまではOKなのか」を明示しないと、今後関東軍のように暴走してしまう恐れがあるわけだが、法律を先行させてしまったが故に改憲のための条文の設定が困難になり、「形式を整えるだけの改憲にそんなリソースをつぎ込まなくてもいいじゃん」と反論されてしまうのだ。

安倍総理は「2020年に新憲法を(新天皇の下で)施行したい」と述べているが、そのためには今年中に改憲案を国会に上程し、来2019年の通常国会で審議、成立させ、夏か秋には国民投票にかける必要がある。ところが、自民党内ですら改憲案がまとまらない現状では、なかなかにハードルの高い日程となっている。

【参考】
安保法制反対の論理的脆弱性について
posted by ケン at 13:47| Comment(0) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする