2018年03月26日

困難増す今国会での改憲発議

【審議遅れ…今国会での改憲発議は困難に】
 自民党憲法改正推進本部は「改憲4項目」の意見集約を急いでいるが、想定した25日の党大会での条文案発表は困難な見通しだ。国会発議に向けた今後のスケジュールが焦点になるが、財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題で国会審議が遅滞し、衆参両院の憲法審査会で集中的に議論する道筋も描けない。6月20日に会期末を迎える今国会での改憲発議は厳しい状況となっている。
 推進本部は(1)教育の充実(2)参院選「合区」解消(3)大災害時などの緊急事態条項(4)憲法9条への自衛隊明記−の改憲4項目を議論してきた。このうち緊急事態条項では、執行部が当初、公明党や野党との意見調整も見据え、国会議員の任期延長に絞る案を模索した。しかし大災害時に政府へ権限を集中する案などを盛り込むべきだとの声が強まり、結論は細田氏に一任したまま先送りされた。
 自民党は平成30年度予算案が成立する今月末以降、衆参憲法審査会を集中的に開き、公明党とも与党協議を進める考えだった。また9月の党総裁選後に開かれる秋の臨時国会で発議し、年内から来年早々に国民投票にかける案も想定していた。だが、文書改竄問題で安倍晋三政権が揺れており、今後のスケジュールはなかなか見通せない。安倍首相(自民党総裁)は15日夜、当選1回の党参院議員十数人と公邸で会食した際、推進本部で議論している憲法改正に関し「国会議員として真剣に考えてほしい」と呼び掛けた。
(3月16日、産経新聞)

安倍総理は「2020年に新憲法を(新天皇の下で)施行したい」と述べているが、そのためには今年中に改憲案を国会に上程し、来2019年の通常国会で審議、成立させ、夏か秋には国民投票にかける必要がある。ところが、自民党内ですら改憲案がまとまらない現状では、なかなかにハードルの高い日程となっている。
(自民党内ですら難航する改憲)

改憲議論は、おおむねケン先生の見込み通りに推移している。先日、上海で日本研究者向けに講演し、この点にも触れたが、何とか面目を保てている。

安倍総理的には、「衆参両院で3分の2を確保し、2019年夏の参院選まで時間を確保したから、この機会がほぼ唯一の改憲チャンスとなる」と考えていたと思われるが、「満を持し」た結果、権力集中と権力行使による腐敗も「満を持し」てしまったところが、想定外だったのだろう。

日本は憲法改正に非常に高いハードルを設けている。これは、戦後デモクラシーが、日本国民・人民の力と運動によって実現したものではなく、アジア太平洋戦争の休戦条約の条件として導入されたものであるため、明治帝政への回帰を防止するシステムが必要だったためだ。実際、この高いハードルが無かったら、1950年代には改憲がなされ、再軍備と権威主義の復興が実現していた可能性は十二分にあった。だが、1960年代以降の高度成長によって、改憲を求める声は保守派内でも萎んでいった。

しかし、1990年代以降、日本をめぐる安全保障環境は大きく変化し、憲法九条の前提条件である「国連軍に替わるアメリカ軍の常時駐留」が困難になりつつある。特に昨今は日米両国の財政難により、アメリカは日本にさらなる負担を求め、日本は増税と負担増で対応するところとなり、現状維持はさらに困難を増している。それだけに、憲法を改正して、自前の軍事力で国土防衛をなし、米軍の常時駐留を解除する方向性は不可避の情勢となっている。ただ、その後も日米同盟関係を維持するか、中国を中心とする集団安全保障体制を構築するか、については議論の分かれるところだ。
この点、「在日米軍+憲法九条」あるいは「憲法九条+米軍撤退」を謳う旧式左翼・リベラル派の主張は「対案なき理想主義」になってしまっている。

憲法改正は非常に大きな政治的リソースを必要とする上、条件が非常に高く設定されているため、自民党の一部で言われているような、「今回は小さな改正に止めておけば、次回以降は改正しやすくなるはず」などという意見は現実離れしている。今後は、さらに経済環境や国民生活が悪化、社会保障の切り下げも進められるだけに、今回のように政権党が衆参両院で絶対多数を保持し、総理が強大な権力を有する機会は二度と訪れない可能性すらある。

日本の不幸は、国際環境の変化に伴う九条改正が求められる現状にあって、それを推進するのが、帝政と侵略戦争を美化し、東京裁判の無効を訴える極右勢力である点にある。同時に、ケン先生が主張する「天皇制を廃止、共和制を実現した上で、再軍備・国民皆兵制をなす」ような、近代的共和主義者が殆ど皆無であり、左翼・リベラル層は「軍備なき天皇制」という理想主義的君主制論者で占められてしまっている点に、どこまでも救いが無い原因が求められる。

どうにも一度完全にひっくり返らない限り、ケン先生の政治的居場所は無いようだ。
posted by ケン at 12:31| Comment(0) | 憲法、政治思想、理念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする