2018年06月10日

軍中楽園

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『軍中楽園』 鈕承澤 台湾(2014)



中国と台湾の緊張が続く1969年。台湾青年兵ルオ・バオタイは、大陸沿岸からわずかしか離れておらず砲弾が降り注ぐ最前線の島のエリート部隊に配属される。しかし泳げないことがわかり、軍中楽園と呼ばれる娼館・特約茶室を管理する831部隊に回されることに。ここには、様々な事情を抱える女性たちがいた。小悪魔のように男たちに愛を囁くアジャオとの未来を夢見る大陸出身の老兵ラオジャン。過酷な現実に打ちのめされ、空虚な愛に逃げる若き兵士ホワシン。バオタイはどこか影のある女ニーニーと奇妙な友情を育んでいく。純潔を誓った婚約者から別れの手紙が届いたバオタイの悲しみを受け止めたのは、ニーニーだった。バオタイはやがてニーニーに惹かれていくが、彼女は許されざる罪を背負っていた……。

名作『モンガに散る』のニウ・チェンザー監督の新作。鈕氏は、古き良き昭和テイストとノスタルジーを見事に再現する希有な映画監督である。「台湾なのに昭和?」と思われるかもしれないが、こればかりは実際に観てみないと実感できないだろう。

その鈕監督が、軍娼・軍営娼館という台湾の黒歴史(廃止は1992年)に焦点をあて、国共内戦の最前線である金門島を舞台に様々な人間模様を描いている。ある意味、タブーだらけの作品で、台湾で完成、公開できただけでも大したものだったが、観客動員はあまり芳しくなかったらしい。

全体的には、暗く厭世的になりがちなテーマを、政治的な描写を避けつつ、兵士と娼婦の日常と人生を情緒的に描いている。いささか美しく、情緒的に描きすぎているところが、気になる人はいそうだが、ケン先生的にはこれで丁度良いくらいに思えた。2時間以上の長尺で、ストーリーに起伏があるわけでもないが、微細な笑いと哀しみが見事に混ざり合って、映像美から目が離せない。敢えて陰惨な描写を避けることで、エンターテインメントと歴史ドラマを両立させている、希有な作品と言える。
ヒロインを演じた万茜女史や下士官長役を演じた陳建斌氏の演技はプロフェッショナルのそれであり、演技としても一見の価値がある。

韓国と台湾を冷戦の最前線にしたことで高度成長を果たした日本人としては、慰安婦問題も含めて、正面から向かい合うべき課題を秘めているだけに、是非とも観ておくことを薦めたい。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする