2018年06月19日

人手不足で外国人は必要か

【「骨太」素案 外国人労働者拡大へ新資格 最長10年、在留可能に】
 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」の素案に、外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新たな在留資格の創設を盛り込んだ。新資格で平成37(2025)年ごろまでに50万人超が必要と想定する。人手不足の深刻化を受け、実質的に単純労働分野での就労を認める方針転換となるが、現行制度でも受け入れ後の生活保護受給者増や悪質な紹介業者の存在など解決すべき課題は山積しており、一筋縄ではいきそうにない。
 政府が検討する受け入れ策によると、農業、建設、宿泊、介護、造船の5分野を対象に、業界ごとに実施する技能と日本語の試験に合格すれば最長5年の新たな在留資格を取得できる。外国人技能実習制度(最長5年)の修了者は試験を免除。技能実習制度から移行した場合は計10年間の滞在が可能となる。
 骨太方針では、新制度を「移民政策とは異なる」と強調。「家族の帯同は基本的に認めない」とも明記したが、新資格で在留中に高度人材と認められれば専門的・技術的分野の資格へ移行でき、本人が希望する限り日本で働き続けられ、家族帯同も可能となる。ただ、日本語能力の不足などから生活保護を受けている外国人は28年度に過去最多を記録。高額な仲介料を徴収する紹介業者も横行している。
 骨太方針では「的確な在留管理・雇用管理を実施する」と掲げたが、なし崩し的な外国人労働者の受け入れ増とならないよう厳格な対応が求められる。
(6月6日、産経新聞)

コンビニと飲食店を見れば一目瞭然だが、需要減退が明白な状態で、安価な労働力を外部から入れて、過剰な供給力を維持しようという試みが、いかなる末路を迎えるかなど、ちょっと想像力を働かせば分かると思うのだが。

確かに現状、どの分野でも人手不足が深刻になってきているが、一方でデフレ傾向が改善されないということは、供給力が需要を上回っている状態が解消されていないことを示している。本来であれば、人手不足が賃金や流通コストなどを上げ、それに伴って物価も上昇、供給を低下させることで需要と供給の均衡が図られるはずだ。実際、パート・アルバイトの賃金は上昇傾向にあるし、物価も上昇傾向にあるものの、コンビニや飲食店などの店舗数については減少傾向にあるものの、大きな変化は認められない。正確には、飲食店数は、2005年の150万軒に対し、2014年で142万軒とやや減。コンビニは2005年の4万軒に対し、2015年で5万3千軒と大幅増。

日本の場合、労働基準法が形骸化しており、超長時間労働や残業代不払いなどのブラック労働が放置されているため、供給を抑制する仕組みが働きにくい。
仮に欧州標準の労働規制がある場合、コンビニや飲食店あるいは様々な分野のブラック企業は成立し得ず、低収益となって廃業あるいは倒産し、余剰労働力が生まれる構造になっているが、日本の場合、不採算の企業でも超長時間労働や残業代の不払いで延命できるため、生産性の低い企業が市場から淘汰されない仕組みになっている。
結果、低収益の企業が労働力も資本も握り続け、成長可能性のある新興企業が労働力の確保に難儀し、成長が抑制される構造に陥っている。これは、まさに1970年代以降のソ連や東欧で見られた現象である。

こうした状況を放置したまま超低賃金の外国人労働者(実質奴隷)だけ導入したのが、外国人技能実習制度だった。その結果、地方の低収益の既存企業が延命したという点では成功したかもしれないが、地場の雇用には何のプラスにも働かず、超低賃金であるために消費にも全く貢献せず、言うなればアナログのオートメーション工場が地方にできただけの話に過ぎなかった。それでも高収益であるならば、自治体に納税することで一定のプラス効果もあったかもしれないが、そもそも外国人奴隷の導入を必要とする企業は、超低賃金の労働力無しでは成立し得ない超低収益構造にあり、納税に期待などできないのが常だった。

今回の政府の新方針は、外国人技能実習制度を全国規模で大々的に拡充しようというものだが、外国人技能実習制度の総括をせぬまま、規模だけ拡大しようというものに過ぎない。これは、誤った認識に基づいて誤った戦略を展開する典型例であり、全国規模で低収益企業の延命を図る上、より大々的に国家規模で人権侵害を行うことになるだろう。
この政府に労働、経済政策を担わせ続けるのは、いかにも不安である。
posted by ケン at 12:19| Comment(2) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする