2018年12月21日

F35導入決定が象徴するもの

【F35戦闘機、105機購入へ うち42機は「空母」向けのF35B】
 政府は航空自衛隊の主力戦闘機F15の非近代化機の後継に決めた米国製ステルス戦闘機F35を105機購入する方針を固めた。うち42機は新たに導入する短距離離陸・垂直着陸型F35Bとする。F35は既に購入を決めている42機と合わせて計147機体制となる。F35Bについては、18日の閣議決定を目指す来年度から5年間の防衛予算の大枠を示す新しい中期防衛力整備計画(中期防)に、42機のうち半数程度の購入を盛り込む。
 F35は戦闘機では最新鋭の「第5世代」とされ、レーダーで早期発見されにくい高いステルス性と、これまでの空自戦闘機にはない高性能センサーを搭載。早期警戒管制機やレーダー、艦艇などとの情報共有ができる。日本ではF4戦闘機の後継機として通常離着陸型のAタイプを運用している。大量購入には、中国、ロシア両軍の日本周辺海空域での活動活発化に対抗すると共に、トランプ米大統領による米国製装備品の購入拡大要求に応える狙いがある。
 政府は現在201機あるF15のうち、追加改修で最新機能を搭載できない非近代機99機の後継機としてF35を購入する方針を自民、公明両党に示し、了承を得ている。短距離離陸・垂直着陸型のBタイプは海上自衛隊の「いずも型」護衛艦を事実上「空母化」した改修艦での運用を想定している。ただ、F35は1機あたりAは100億円、Bはさらに高額な150億円とされており、計105機の購入で総額1兆2600億円以上となる見込みだ。
 政府は中期防の予算総額を27兆円台とする方向で最終調整している。一方、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、効率的な防衛装備品の調達で5年間で1兆円以上の節約をするよう求めており、実際の支出額は予算総額を下回る可能性がある。
(12月13日、毎日新聞)

またぞろリベラル人たちの金切り声が聞こえてきそうだが、海のこちら側までは届かないので安心もしている。
F15がどう見ても旧式化している以上、日本の独立性や外交上の地位を維持するためには、次世代機への移行は避けられない。
例えば、仮にラオスのように永世中立を標榜するなら、T34-85を現役のままにしておくようなこともできるかもしれないが、どう考えても現実的ではない。そのラオスも実質的には中国の冊封国のようになりつつある。まして、今現在アメリカに従属し、ロシアと中国に囲まれている日本が非武装化してしまうのは、逆に軍事的空白を作り、危険な状況を生み出す恐れもある。それはどの国にとっても望ましくないだろう。

アメリカの衛星国であること、財政上・運用上の問題を考えれば、まぁF35になるだろうとは考えていたのだが、これはこれで問題があることがわかりつつある。実はF35の稼働実績は50%前後に過ぎず、それを何とか7割に持って行こうというのが現在の課題だという。つまり、たとえ100機そろえたところで、飛べるのが50機そこそこというのでは、本土上空の一部しか守れないことになる。空母運用など夢のまた夢だろう。
この点、F15は一時期稼働率を90%近くまで上げたことがあるという信じられない実績があるものの、いまや部品不足などで7割程度まで下がっているとも聞く。この点でもF15は限界なのだが、しかしという話である。
思い出すのはアメリカ戦略爆撃調査団の報告で、太平洋戦争のある時期の日本海軍の航空機の作戦有効率は20%だったとしているが、これは生産された機体の5機のうち1機しか実戦で使えなかったことを意味する(USは80%)。

もう一つは、将来性の問題である。何度も言うようにアメリカの覇権は遠からずハワイまで退潮すると考えられる。そこで米中が手打ちして、太平洋を東西で分割した場合、アメリカは日本を見限り、兵器の供給を止める可能性が十分にある。そうなると、日本は独自に武装する手段を突然失って、路頭に迷い、中国の冊封を受けるほかなくなってしまうだろう。それを由とできるなら、それでも良いのだが。

本来、日本が中国と敵対せぬとも対峙しつつ、一定の独自性を保つためには、やはり勝てないまでも、「日本人はやべぇ」くらいに思わせておく程度の軍事力が不可欠だ。幸いにして、今のところ中国人の多くはまだ「日本は侮れない」と思っているし、理性的な人間は「中国の一人勝ちはよろしくない、日本と共闘関係にあるくらいがちょうど良い」と思っているので、この点でも弱みを見せるべきでは無い。

その意味で、現実的にあるいは将来性を考えるとロシアからスホーイを導入するのがベターな選択だった。ロシアにとって、現在は米欧が最大かつ喫緊の脅威であるが、潜在的には中国が最大の敵であり、中国と渡り合うには日本と共闘する以外の選択肢はないからだ。対中という意味で、日本とロシアは一蓮托生の関係にあり、だからこそプーチン氏も安倍氏も日露平和条約の締結を急いでいる。そして、中国の脅威が存在する限り、ロシアは日本に兵器を供給し続けるわけで、この点、むしろアメリカよりも将来性があると考えられる。

まぁ実際の政策判断は現状を起点にする他ない以上、ロシアということにはならないのだろうが、この時期にF35に決めたということそのものが、日本の衰退あるいは戦後日本の末路を象徴しているような気がしてならない。リベラル人の金切り声も含めての話である。

また、空母の運用が今の日本政府と自衛隊にできるのかという疑問もある。攻撃的兵器か防御的兵器かという神学論争はさておくとしても、空母は一隻のみでは趣味の世界でしかなく、せいぜい米軍の補助戦力にしかならない。では、日本が空母を何隻も保有できるかといえば、現状でも海上自衛隊は艦船の数に比して自衛官が不足する始末で、既存艦艇を大幅にリストラしなければ乗員がたりない。しかし、既存艦艇を削れば、空母を守護する艦艇が足りなくなる。この路線の行きつくところは大軍拡しかないが、急激な少子化の中で、必要な自衛官を確保するのはまず無理だろう。

しかも、空母というのは金食い虫もいいところで、ミサイル防衛と空母だけで巨大な予算が掛かってしまい、大幅な予算増が実現しない限り、既存の装備や人員を削る他なくなってしまう。本末転倒もいいところだろう。
政府・自民党は防衛予算を漸次増やしていくつもりなのだろうが、衰退の一途にある国力でどこまで実現できるか分からない。
結局のところ、この路線は財政を無視した軍拡で自滅する方向にあるとしか思えない。当面は国民からの収奪を強化して応じるのだろうが、その行きつくところは対外戦争(戦前の日本)か革命(ロシア型)かという話で、どちらも良い未来を思い描くことができない。

やはりしっかり外国に活動拠点を作るという私の大方針に間違いは無かったのだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(10) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする