2019年01月19日

朝日の論説がテキトーなこと言ってる件

ソ連は日本の無条件降伏後も侵攻を続けて北方四島を占領。だからラブロフ外相はいつも国連憲章第 107条(旧敵国条項)を持ち出す。「連合国が過渡的期間にやったことは認められる」という理屈。ただ91年の日ソ共同声明は旧敵国条項について「もはや意味を失っている」と確認。
(1月18日、朝日新聞某論説委員のツイート)

 ロシアのラブロフ外相は16日、恒例の年頭記者会見を開いた。対ロシア制裁に加わる日本はロシアにとって「パートナーには程遠い」と述べ、日本の外交姿勢に不信感を示した上で、反ロシア陣営に回らないようくぎを刺した。日本の北方領土返還要求については「国連憲章上の義務に明白に違反している」と批判した。
 22日に予定される安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談を前に、平和条約締結交渉に関して日本をあらためてけん制した形。ブロフ氏は、日本はG20首脳会合の議長国として合意形成に努めるべきだとし、ロシアに厳しいG7の路線とは一線を画すよう注文を付けた。
(1月16日、共同通信)

朝日の論説がテキトーなことを言ってるので、一言言っておきたい。

一般には日本の降伏は1945年8月15日と信じられているが、これは正しくない。
経緯を説明すると、9日の長崎への原爆投下を受けて、「国体(天皇制)の護持」を条件としつつポツダム宣言受諾の意思を連合国側に通知したのは、8月10日だった。
その後、若干のやり取りがあった上で、最終的な再通知を行ったのは、8月14日。
「8月15日」というのは、日本国民に降伏を発表した日に過ぎない。
しかし、国際法的には、まだ戦争が終わったわけではない。
この段階では、日本が一方的に「降伏します」「投了します」と宣言しただけに過ぎなかった。
米国などは、日本の降伏の意思を尊重し、戦闘停止命令を出したものの、ソ連は日本の一方的な「ゲーム終了宣言」を認めずに攻撃を続けた。
国際法上、降伏と戦闘停止が認められるのは、日本が降伏文書に調印し、戦闘停止の協定を締結した9月2日のことだった。
これは私の個人的意見ではなく、日本以外の連合国(国連加盟国)の共通見解である。象徴的なところでは、Wikipediaの英語版では太平洋戦争も第二次世界大戦も終結は1945年9月2日になっており、それは米国や英国などの歴史教科書でも変わりはない。終戦日を8月15日と言い張る日本人は、ロシア人よりも先にアメリカ人やイギリス人に対して抗議すべきではないか。

従って、8月14日以降も、少なくとも国際法上(ルール上)は戦争は継続状態にあり、日本がソ連の戦闘継続を非難できるのは、あくまでも倫理的な理由からでしかない。
つまり、日本人(外務省)が言っているのは、「オレはもう手を挙げているのに攻撃を続けるなんて卑怯じゃないか!」ということであり、ロシア人からすれば「降伏文書にサインしてないくせに何を言うか!どうせ後ろに手榴弾でも隠してるんだろう」ということになる。
これは明らかに降伏文書の調印を急がなかった日本側の大失態であり、日本の政治家や軍人がいかに敗戦処理の難しさについて無知であったかを示している。にもかかわらず、その反省は今日においてもほとんど聞かれることはない。

少し分かりやすくゲーム的に考えてみよう。
例えば、ゲームをしていて、一方のプレイヤーが「負けました」「投了します」と言ったとしよう。
ところが、相手プレイヤーが投了に合意しなかった場合、この投了は成立しない。
この場合、敗北を宣言したプレイヤーはゲームを放棄したとしても、相手プレイヤーは一方的にコマを動かしてゲームを進め、ゲームを無理矢理継続させるかもしれない。
この状態こそが、まさに「8月15日から9月2日までのソ連」なのだ。

北方領土関連についてのみ触れると、
ソ連軍は8月28日に択捉島に上陸、続く9月1日に国後島に上陸し、これを占領している。
各守備隊の降伏を受け入れているので戦闘は起こっていない。
ここで問題となるのが色丹島と歯舞諸島で、日本の降伏文書調印後の9月3日〜5日にかけて占領されている。
日ソ共同宣言において、ソ連が二島の引き渡しに合意したのは、さすがのロシア人でも降伏文書調印後の軍事占領については違法性を認めざるを得なかったことが大きいと考えられる。

ポツダム宣言の第7条は、
「日本の戦争遂行能力が失われ、侵略や戦争遂行の意思を有する勢力を排除するまでは日本の一部を占領するものとする」

というもの。
日本は「国体の護持」という条件で、連合国は「日本民族の選択に委ねるが、それまでは連合軍最高司令部に隷属するものとする」という返答をもって、ポツダム宣言を受諾している。
従って、ソ連軍が日本領土の一部を占領するには十分な根拠があり、少なくとも9月2日に日本が降伏文書に調印するまでの期間に占領した部分については、ソ連軍の進攻を「不法」とは言い難く、日本以外にそれを非難する国は(少なくとも私には)見受けられない。
逆を言えば、8月15日から9月2日までの占領を「不法」と言うならば、沖縄などを除く、米軍による日本本土上陸も連合国による日本占領も、すべて「不法占拠だった」ということになってしまう。このことは即ち、今度は日本がポツダム宣言の履行を拒否することを意味する。
また、サンフランシスコ講和条約で日本は独立し、占領を解除されたわけだが、ソ連は同条約を調印しておらず、従ってソ連(ロシア)は平和条約が結ばれるまでポツダム宣言(第7条)を解除する必要がない、と考えるのが国際法的に自然であろう。1956年の日ソ共同宣言で戦争状態の終結については合意されているが、これがポツダム宣言の解除に該当するかどうかについては、二国間で話し合われるべき課題であり、ロシア側はそれを指摘しているのだ。

付記すると、右翼などがよく「日ソ中立条約の破棄は違法」などという主張を述べているが、これもまた思いこみに起因したもので、自らの不勉強をさらけ出すものに過ぎない。
ソ連による対日宣戦布告は、東京裁判で「合法」の判決が出されており、日ソ中立条約は「ハナから日本がソ連に対する侵略を企図して締結したものだった(従って無効)」という主旨の結論になっている。
日本はサンフランシスコ講和条約に調印しており、そこには「東京裁判の受諾」の一項が入っており、東京裁判を否定することは、講和条約違反を意味し、連合国(全国連加盟国)との再戦に直結する。同時に敗戦国による国境線の現状変更要求は国際紛争の原因にしかならず、危険極まりない。それを理解していない国会議員に国政を担う資格はないし、歴史をロクに知らない報道関係者が軽々に口にするのは百害あって一利なしである。
そもそもポツダム宣言も東京裁判の記録も日ソ共同宣言も読まないで、何か言っている人間が多すぎるのだ。

なお、1991年の日ソ共同宣言はゴルバチョフ大統領と海部首相による政府間合意に過ぎず、他方、1956年の日ソ共同宣言は議会の批准を必要とする条約であって、全く強制力が異なる。現行のロシア政府が、実権と実態を失っていたゴルバチョフ大統領による合意を認めないとしても、そこは倫理的な非難しかできないだろう。

やはり朝日は廃刊で良いのではないか。
posted by ケン at 00:00| Comment(6) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする