2019年02月06日

報道に見る知的劣化

NHKスペシャル「朝鮮戦争 秘録〜知られざる権力者の攻防〜」を見る。
全体の出来は悪くないし、興味深い映像が多く、「さすがNHK」とは思ったのだが、決定的な問題もあった。
肝心の戦争勃発について、非常に説明が少なく、殆ど「北朝鮮が突然攻めてきた」みたいな話になっている。

現実には、当初朝鮮半島の処遇は、米ソ協議などを経て信託統治を経て統一選挙を行う予定だったが、まずアメリカが反共に転じたことや李承晩らの要求もあって約束を反故にし、結果南北ともに分離独立から武力統一路線に突き進み、最終的に北が戦端を開いている。これは現在ではほぼ定説になっているが、NHKは最後の部分だけ抜き出して「北朝鮮が攻めかかってきた」としてしまっているが、かなり恣意的な歴史解釈と言わざるを得ない。
さらに言えば、米側の最終責任者だったマッカーサーは戦争が始まるまでに一度しか朝鮮に行っていないことや、中国側では毛沢東を除いてほぼ全員が参戦に反対していたことについても、叙述が無いと相当に偏った歴史解釈を強いることになる。

【参考】
『朝鮮戦争全史』 和田春樹 岩波書店(2002)
『毛沢東の朝鮮戦争―中国が鴨緑江を渡るまで』 朱建榮 岩波現代文庫(2004)

こうした恣意的あるいは認識不足に基づいた歴史解釈は、報道機関のあらゆるところに蔓延している。
最近では朝日新聞が、外務省の見解を丸呑みして北方領土問題を解説しているが、記者は日ソ共同宣言もロクに読んでおらず、ソ連側資料や日本の交渉当事者(例えば松本や重光など)の回顧録、あるいは日本の国会会議録など全く読まずに記事を書いており、60年代以降のプロパガンダを踏襲してしまっている。
NHKはNHKで、近年日露戦争もののドラマを制作したにもかかわらず、相変わらず1970年代水準の「ロシアの南下政策を食い止めるために、やむを得ず日本は立ち上がった」式の歴史解釈を披露している。
この連中の頭は「鎖国は日本古来の伝統的政策」と思い込んでいた幕末の勤王志士と同レベルである。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする