2019年04月05日

日本政治の求心力と遠心力

【3割、国会役立っていない 若者調査、関心の低さも】
 日本財団(東京)が「国会改革」をテーマに、17〜19歳対象の意識調査を実施したところ、「国会は国民生活の向上に役立っていない」との回答が30.0%で、「役立っている」の20.9%を上回った。一方で「分からない」との回答が49.1%を占めており、日本財団は「若年層の国政への関心の低さを表している」としている。調査は2月、全国の17〜19歳の男女800人を対象に、インターネットで実施した。国会が有意義な政策論議の場になっているかどうか聞いたところ、「思う」はわずか5.0%で、「思わない」が54.8%と半数を超えた。
(4月3日、共同通信)

ちょうど日本政治についての講演を持たせていただいて、結論部で「日本政治の求心力と遠心力」について話をしただけに、記事を見て「俺がしゃべったことじゃん」と驚いた次第。

その部分をかいつまんで言うと、
日本では1990年代以降、政官業の癒着と「決められない政治」を「改革」するとして、政治改革と行政改革が行われた。それは、どちらも総理大臣や政党代表に権限を集中させる方向に働いた。
政治改革では、政治資金規正法の導入で派閥の権力が弱められる一方で、小選挙区制の導入で公認権を有する党代表や幹事長への権限集中が進んだ。行政改革では、国務大臣とりわけ総理大臣と内閣官房の権限強化が図られ、民主党政権の迷走を経て、2014年には内閣人事局が設置されて、霞が関官僚の管理職人事は内閣官房にほぼ全権集約されるところとなり、政権党、特に内閣に反抗的な官僚は昇進できない構造になった。
自民党の政党支持率は3割に満たないにもかかわらず、安倍内閣の支持率が5割前後で推移しているのは、「とにかく何でもいいから決めてくれる」ことに対する支持が大きいだろうと考えられる。
これが「求心力」である。

だが、他方で政党支持では6割以上が「支持政党無し」という状態が続いている。特に若年層では、国政選挙ですら投票率が3割を切る有様にあり、自治体選挙になるとさらに下がる。どの政党でも、若年層が圧倒的に薄く、活動に支障が生じている。自民党ですら、支部レベルでは「青年部」が50歳代で構成され、若い人ほど入党勧誘を拒否する傾向が強いという。NK党も必死に若年層を勧誘しているが、地域の活動家は圧倒的に60代以上であり、60代ならむしろ若手くらいになっている。

さらに深刻なのは、エリート層の離脱である。1990年代、国家公務員第一種試験合格者は3割以上(大体35%程度)が東大出身者だったが、その後急速に低下、今では15%を切るところまで来ている。90年代以降の総理大臣を見ても、東大卒は宮沢首相と鳩山首相の二人きりで、東大閥はすっかり影を潜めている。
大臣レベルでは東大卒は散見されるものの、主観ではあるが、「こんなのが東大卒?」というレベルのものが多い。
東大卒の若い人に言わせると、「今時、まともにものを考える人間は官僚になぞならない」「民間の方が自由で、自分の能力を発揮できる」「役人なんてテストさえできれば誰でもなれる」ということらしい。
その東大卒や高級官僚も、かつては政界に転身するものが少なくなかったが(わが大伯父を含めて)、今ではせいぜい地方の首長になるものがいる程度で、政界に転身するのは専ら「霞ヶ関では目が出そうにない」と判断したものばかりとなっている。

ケン先生自身、母親を筆頭に周囲に東大卒が結構いるので実感が強いのだが、東大卒は明確に頭脳の出来(回転数と知識)が段違いなのだ。もちろん例外はいるのだが、その標準はやはり早慶などとはレベルが違うと言って良い。
こうしたエリート層が「官僚や政治家になるヤツはバカ」という認識に立つというのは、統治機構を担う人材の水準が急低下していることを示している。
私が永田町を辞して海外に飛んだことも含め、日本社会では急速に遠心力が働きつつある。

こうした流れを戦前の昭和前期から軍部ファッショに至る流れに喩える言説も少なくないが、私は必ずしもこれに与さない。
戦前期日本の場合、「弱い首相と内閣」「独立性の高い軍部」「衆議院と貴族院」「政党政治の未熟」などの要素が「決められない政治」を引き起こし、民意の暴発と官僚の暴走を抑止することができなかった側面が強い。これは、近衛が大政翼賛会を組織し、東条が陸海軍部を完全に抑えたにもかかわらず、どちらも国政を制御できなかったことから説明できる。
だが、現代日本の場合、「強い首相と内閣」「圧倒的議席を擁する政権党」「弱い軍部」などがすでに成立しており、昭和期よりもむしろファッショ要素が成立してしまっている。

リベラリズムやデモクラシーの伝統を持つ欧米では、いまだ求心力が働くには至っておらず、それ故に一方的に遠心力が加速している現状がある。一方、東欧(中欧)ではすでに求心力が進んで、権威主義政権が続々と成立している。

今回はあくまで現状認識にとどめるが、こうした認識が無いと、改元騒動一つとっても(全く興味ないが)まともな解説はできないであろう。
posted by ケン at 00:00| Comment(2) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする