2019年04月19日

全港湾スト報道に見るNHKの反動

【港湾労働組合 22年ぶり平日にスト コンテナ積み降ろしできず】
 全国の港で働く労働者の組合が最低賃金の引き上げなどを求めて、14日から48時間のストライキを行っています。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。ストライキを行っているのは、全国の港で荷揚げや荷降ろしなどをしている1万6000人の労働者で作る全国港湾労働組合連合会です。
 ことしの春闘で、業界団体の「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず、14日から48時間のストライキに入りました。全国の主要な港でコンテナの積み降ろしなどの作業ができなくなっていて、組合によりますと、港湾でのストライキが平日に一日続くのは22年ぶりだということです。港湾関係者によりますと、荷主がストライキに備えて事前に在庫を調整するなどしていたため大きな影響は出ていないということですが、今回のストライキが終わる16日の朝以降、港の混雑を懸念する声も出ています。組合側は、今月下旬からの10連休中のストライキの通告も示唆して交渉を続けていて、国土交通省は物流への影響が出ないか情報を収集しています。
 青森県八戸市の八戸港でも荷役作業が止まるなどの影響が出ています。このうち、八戸市に本社を置く「八戸港湾運送」は全従業員の8割にあたるおよそ200人が組合員で、14日から続くストライキのために、大型のクレーンなどを使ったコンテナの積み降ろしなどの作業が止まっています。八戸港湾運送は取材に対し、「取引先にストライキの事情を説明するなどして、影響をできるかぎり最小限に抑えたい」としています。
 この影響で、東北地方で唯一の国際拠点港湾である仙台市の仙台塩釜港の高砂コンテナターミナルでは、コンテナ船4隻が入港できない状態が続いています。このため、港は大型のクレーンは動いておらず、車の行き来もほとんどありません。港湾事務所によりますと、ストライキが終わる16日朝以降は一転して、港周辺の混雑が予想されるということです。
(4月15日、NHK)

この報道は色々な意味で象徴的であり、現NHKの階級反動性を示している。
まず、ストライキの理由は「「日本港運協会」と最低賃金の引き上げなどをめぐって続けてきた交渉がまとまらず」とわずか1行のみしか触れていないのに、その後の「ストによる影響」については延々とニュースの半分以上を使っている。
また、ストライキは14日から48時間であるにもかかわらず、報道がなされたのは最終盤の15日夜だった。
そして、運送会社や港湾事務所のコメントは入っているのに、肝心の労働者側のコメントはゼロである。

これらは、「公正中立」と言って全市民、全国民から強制的に視聴料を徴収しているNHKが、実際には100%資本側の立場から報道していることを示している。
戦後日本は、様々な経緯はあったものの、西欧諸国と同様に戦後和解体制を採った。それは、資本と労働が対等的な関係で強調し、政府が再分配を約束し、議会制民主主義が階級調整をなす政治体制だった。ただし、それは現実には第三世界からの収奪の上に成り立っていたのだが、今はそこは問わない。

仮にこの戦後和解体制を前提とするなら、少なくともNHKは再分配と階級調整の弁としての機能が求められ、実際に2000年頃まではそれが一定程度効力を発揮していた。
だが、小泉改革や第一次安倍政権の頃には戦後和解体制はほぼ瓦解し(象徴的には国鉄と日本社会党の解体)、今日に至っている。NHKも例外では無く、今では階級問題や政府に批判的な番組は皆無になっている。
NHKの不誠実は、戦後和解体制を否定しているにもかかわらず、相も変わらず中身の無い「公正中立」を標榜している点だ。だからこそケン先生はNHKの国営化を主張している。

さて、全港湾のことである。もちろんストライキは全面的に支持する。
NHKに限らず、どの報道機関もロクに報道していないこと自体、もはや現行体制にいかなる未練も感じさせない。
上記の報道は、まず「最低賃金をめぐる交渉」と述べているが、その最低賃金を見てみよう。
港湾では労働組合と業界団体が協定を結んでいます。
港湾産別協定(2007年協定)では、港の種類により2つに区分されています。

最低賃金 日額6、310円(7時間労働)、月額157、600円
〔適用港:東京港、横浜港〈川崎港含)、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港の場合 〕
〔適用職種:船内荷役作業、沿岸荷役作業、はしけ乗組員、いかだ運送作業員、
  港湾運送関連作業員(港湾倉庫作業は港湾運送関連作業に該当します)〕
全港湾HPより)

驚くべき低さだが、これを約16万4千円に上げよ、というのが、今回の労働側の要求だった。
しかし、資本側はこれを拒否したどころか、産別最低賃金の設定(交渉)すら拒否するという挙に出た。もっとも、これは2016年頃からのことで、今回のストライキは「もう我慢ならん!」という労働側の判断に基づいていた。
産別交渉が否定された場合、労働者は企業別に組合をつくって事業者と交渉に当たるわけだが、交渉力が弱まるのは避けられず、実際には資本の言いなりになる他ない。資本側の狙いは、労働者の団結を破壊し、その賃金交渉力を無力化して、最低賃金(あるいはそれ以下)まで下げるところにある。

本来ニュース報道はここまで書いてようやく労使間のバランスが取れて、「公正中立」を標榜できるはずだ。
この点を省いてしまえば、「無理な賃上げを要求する労働組合が市民に迷惑を掛けるストライキを勝手にやってる」という構図をプロパガンダすることになるし、実際それをやっているのがNHKなのだ。

象徴的なことに全港湾は1972年から2015年まで日本港運協会と団体交渉を行い、産別賃金を設定してきたが、この44年間こそがまさに戦後和解体制そのものだったのだ。そして、資本側が産別統一交渉や生活保護水準の最低賃金の引き上げを拒否するという事態は、戦後和解体制の全面瓦解を象徴している。

マルクスは、自らの待遇を守るために、資本に同調して外国人労働者などの下層労働者の疎外に荷担する労働者を「哀れなプロレタリア」と呼んだが、現行の資本や政府による暴虐に対してなすすべのない西欧社会民主義政党や日本の連合はまさにこれに相当する。
やはり戦後和解体制こそが例外的な体制であり、世界は再び資本と労働が血で血を洗う闘争を演じる時代に突入していくのかもしれない。

【追記】
全く残念ながら私自身は全港湾本部にお邪魔したことは無いのだが、ある同志によれば、委員長室には巨大な赤旗が掲げられ大きなレーニン像が鎮座まし、周恩来の書なども掛かっており、いささか時代錯誤(懐かしさ)を感じさせるところだという。
全港湾労働者の皆さんには、遠くの地より心より連帯の意を表明するものである。

【追記2】
マルクスを持ち出すまでも無く、労働者が団結して、資本の横暴に対抗し、労働者が唯一提供できる「労働力」を結集して提供拒否するストライキは、労働者にとって唯一の武器である。その武器をカードに交渉するのが労働組合の重要な役割となる。とはいえ、伝家の宝刀は抜いてしまえば「それきり」という側面があり、抜かずに済めばそれに越したことは無い。しかし、今回の一連の争議は「ストライキをやらない労働者は一方的に収奪される」というマルクスの指摘が正しかったことを示している。
1970年代以降、ストライキが減少したのは「戦後和解体制」が機能して、労使協調路線が成立したためだが、ソ連崩壊を経て同体制が解体されつつある中、労使の利害が一致しなくなっているわけだが、「平和」の時代が長かったため、労働組合は自らの役割を忘れ、戦力として機能しなくなっている。そして、全港湾がストライキを打てるのは、産業報国会の後進と言える連合の指導下に無いところが大きいと考えられる。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 労働、経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする