2019年05月31日

日本に配慮?んなわけねぇよ!!

【ロシア、対日戦勝記念日を認めず 政府委、日本に配慮か】
 28日のタス通信によると、ロシア政府の立法委員会は、日本が1945年に第2次大戦の降伏文書に調印した9月2日を「対日戦勝記念日」に制定するよう求めた議員立法案を支持しないと決めた。日本に配慮した可能性がある。
 ロシアで9月2日は「第2次大戦終結の日」と定められている。政権側は過去にも「対日勝利の日」に変更するよう求める愛国勢力の要求を拒んでいた。今回の法案は極右の自由民主党の下院議員が提出し、軍事パレードなど祝賀行事を行うよう求めていた。
(5月28日、共同通信)

またぞろマスゴミが希望的観測を垂れ流している。
そもそも日本のマスゴミは、ロシアの5月9日を「対独戦勝記念日」と報じているが、これが間違いで、ロシア語では「День Победы」、単に「勝利記念日」でしかない。
これに対して、ロシア自民党が「第2次大戦終結の日」としている9月2日(祝日ではない)の名称変更を求めているわけだが、それは「День безоговорочной капитуляции Японской империи」、つまり「大日本帝国無条件降伏記念日」にしようというもの。
こんなものが成立すれば、今度は5月9日の名称変更が必要になってしまうだろう。

要は法律の立て付けと休日の名称に齟齬が生じるため、正常な感覚を持つ法律家なら普通は反対する話であり、「日本に対する政治的配慮」が入り込む余地など無い。
こんなロシア語が分かるものがちょっと調べればすぐ分かるようなデマを報じるのは、マジで勘弁して欲しい。
共同通信にはロシア語ができる者がいないのではないか。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月30日

中国製品排除は成功するか

【中国排除、もろ刃の剣=米先端産業に影−ファーウェイ問題】
 先端技術分野で中国排除を狙うトランプ政権の姿勢は米企業にも影を落としている。
 華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置は、同社との取引額が大きい企業の業績を直撃。資金調達や技術者確保にも影響が及んでおり、米国にとって「もろ刃の剣」でもある。
 スマートフォン用部品を手掛けるルメンタム・ホールディングスとコルボは、ファーウェイへの禁輸措置を受けて、それぞれ業績予想を下方修正。両社ともファーウェイ向けの出荷が直近で売上高の15%程度に上り、「いつ再開できるか予測できない」と口をそろえる。
 文書を高速スキャンして保存する技術を持つベンチャー企業リップコードは、米政府が対米投資審査を厳格化したことを受けて外国からの出資割合を制限した。フィールディング最高経営責任者(CEO)は「何倍ものペナルティーとして跳ね返ってくるリスクがある」と語る。
 同社は既に百度(バイドゥ)など中国企業から出資を受けている。ただ、どの投資家であれば問題がないか事前に知るすべはなく、「とても恐ろしい」と警戒する。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、輸出規制の対象となる技術を扱う職に外国人を雇う際に必要な米当局の許可について、中国人への承認が停滞していると報じた。「高度技術職の人材層が薄い半導体業界には特に痛手」とする業界関係者の声を伝えている。
(5月26日、時事通信) 

どのマスゴミも「ファーウェイ製品に重大な疑義」などと報じているが、何が問題なのかについては何も報じていない。アメリカの「ロシア疑惑」についてもいまだに決定的な証拠が提示されておらず、「永遠の疑義」となってしまっている。つまり疑義を生じさせること自体が目的で、実態や真実は重要ではないという話だ。

これは戦前期における合法左派の弾圧に際して使われた手口だった。
例えば、1937年に起きた人民戦線事件では、本来共産党と同党員をターゲットにしてきたはずの治安維持法によって、社会民主主義者、労働運動家、マルクス経済学者などが一斉検挙され、一次、二次含めて480名以上が逮捕された。ところが、法廷で有罪判決が下されたのはわずか数人に過ぎず、圧倒的多数は無罪に終わった。数件の有罪判決についても、判決が出る前に容疑者は保釈され、かつ控訴審は延期され続けたまま終戦を迎え、結審に至らずに終わった。このことは、当局(特高=秘密警察)が対象を必ずしも有罪にしなくとも、強制捜査や検挙、拘束することだけで、対象の動き(運動)を抑止することが可能であることを示している。

逆に中国では、欧米日における中国製品排除運動を受けて、再びナショナリズムが加熱しつつある。
また、一党独裁や権力集中の正当性が強調され、支持が強まっている。
これはアメリカにとっては「どうでもいい」ことかもしれないが、隣国である日本にとっては脅威でしか無い。

現状でも日本の技術者の多くが中国企業や大学に流れているが、中国の研究開発費はいまやアメリカと同レベルで、日本の3倍近くに達している。量子分野における中国の優位が確立した場合、技術力バランスは一気に傾いてしまうかもしれない。

マーケットの点でもいまや中国とインドで世界人口の3分の1を占めており、内需拡大に成功すれば、米欧の市場などすぐに取るに足らないものになるだろう。実際、中国の大都市部の生活水準は日本のそれと殆ど変わらないし、私が教えている学生の中には「日本の学生より金持ちだろう」と思える者が少なからずいる。

ファーウェイ排除はしょせん応急処置的な効果しか無く、そこを盲信して対中関係を悪化させることは避けるべきだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月29日

想像以上に多忙な外国人教員

後期もあと一ヶ月を残すところとなったが、今期は(も)想像していた以上に多忙だった、いや、である。
二月末に中国に戻って、まず後期の授業計画書を作成。

これが終わるかどうかくらいの頃に、学外の研究機関から、以前私が講演の中で触れた「在日米軍が撤退する可能性」についてレポートを書いて欲しいとの依頼があり、三月後半はその執筆にあてた。だが、日本人に対しては説明不要のことでも、読者が中国人となると勝手が異なり、「説明が足りない」との指摘を受けて、加筆したところ二倍近い分量になってしまった。すると、今度は翻訳が進まず、いまだに翻訳作業が終わらない事態に。そこは自分の責任ではないのだが、ちゃんと掲載されるのか心配になってくる。中国はいろいろ(良くも悪くも)ルーズだ。

四月の前半は少し余裕があったが、後半になるともう期末試験の作成である。
前期よりは効率的に作成できたが、新しい科目もあるので、やはり時間が掛かる。
そもそも、最初から追試用の問題も作らないとならず、二倍の手間がかかるのだ。

さらに四月には、自分が所属する学内研究機関の紀要に載せる長文の報告書の執筆を依頼され、資料集めに入った。しかも、そのテーマは「日本の貿易政策の形成について」という、自分の専門分野とは全くかけ離れた無茶振り。いい加減すぎるだろう。
冬に日本に帰る前に言ってくれれば、資料集めも容易だったのだが、おかげで日本から取り寄せるものが増え、関係各位に迷惑を掛けてしまった。そして、労働節の頃から資料の読み込みに入った。

この頃、現地の日本語教師会から六月に開催される研究会で口頭報告を行って欲しいとの依頼を受ける。
こちらは断ることもできたのだが、最初断ってしまうと、この後が厳しくなるかもしれないと判断し、苦渋の受諾。同時並行でまずテーマとアウトラインを作成した。

五月も後半に入った頃、研究所長から「レポート書けた?」のメール(微信)が。

「締切は6月末でしたよね?」
「いや、5月末ですよ」

こら!だから論文執筆は書面かメールで依頼してくれと言ったのに!
幸いにして資料は読み進めており、アウトラインもできていたので、「あとは書くだけ」の直前くらいの状況ではあったが、

「6月3日までには何とか書きます」

と返信して、昼夜兼行とまではいかないが、突貫工事中というのが現在のケン先生である。
もちろん上記の仕事は、通常の授業準備以外のものであり、平日は授業準備と宿題の添削に追われ、土日に上記の作業に当たっているといった感じだ。

一応給与所得者ではあるのだが、実質的に個人事業主であり、作業管理に苦労している。
二年目は授業準備の負担が半分以下になるはずなので、あと少しの辛抱だとは思うのだが・・・・・・
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 教育日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

「長津湖戦」をテスト

カフェに良く来ている方が制作中の「長津湖戦」をテストした。
日本では朝鮮戦争ネタはさほど馴染みがなく、私もアメリカのドキュメンタリーで見た程度の知識しか無い。
長津湖の戦いは、朝鮮戦争に介入した中国人民義勇軍が米海兵第一師団を中心とする国連軍と初めての交戦となり、中国軍による大規模夜間奇襲と国連軍の潰走によって世界に衝撃を与えた戦闘である。
とはいえ、中国側の損害(戦死傷)が5万人に及んだのに対して、国連軍の損害は1〜2万人程度で、中国側の人海戦術を物語る結果を示している。

ゲームの規模は戦術級で、ユニットは大隊・中隊。
歩兵は行軍時は大隊で、戦闘時には細胞分裂して3個中隊に分かれる。
各軍は大隊ごとにユニットを動かし、大隊ごとに3回の戦闘が行える。
戦闘結果表は戦闘比ではなく、戦力差で見るという、全体的に中世ものの感じ。

WeChat Image_20190525085901.jpg

中国側は「万歳突撃」を選択すると、自軍の戦力が一時的に二倍になるが、自軍の損害も二倍になる。
また、国連軍は昼間は航空支援があり、かなりの火力で中国軍にダメージを与える。
かなりブラッディな作品で、海兵隊は見る見るうちに打ち減らされていくが、中国側は攻撃するたびにボロボロになってゆく。それなりの戦力差があっても攻撃側にダメージが入るし、昼間の砲爆撃でも損害を出すからだ。

総評としては雰囲気は出ているのだが、戦闘ごとに一々細胞分裂したり、一度の手番で3回も攻撃したり、砲撃の割り当てとダミーマーカーがあったりと、盛り込みすぎもいいところで、プレイアビリティが壊滅的に悪い。「高平南之戦」をモデルにしている模様だが、やはり現代ゲームはプレイアビリティを重要視すべきだ。
例えば分隊規模ではあるが、GMT「Combat Commander」は手軽さと再現性が見事なバランスを保っている。
もっとも「CC」は中国では不人気でボロボロの評価だったらしい。日本でもさほどプレイされていないようだが、米欧では根強い人気でGMT社は四版を出すことになっている。なぜ東洋では不人気なのだろうか。

処理が重いのは、デザイナーが「これで良い」と思っているか(信念)、重要度の序列が付けられず、不要なルールやシステムがたくさん残っているか(デヴェロップ不足)のどちらかであるわけだが、話を聞く限り前者のようで、ちょっと先行き怪しい感じ。
中国の場合、若いプレイヤーがこぞって同人ゲームを作っており、微笑ましい限りなのだが、若いが故にこうした「重い」ゲームを作ってきてしまう。
まぁ今後も年寄り目線で厳しく指摘いたします(笑)

WeChat Image_20190502222444.jpg
相変わらず「国防軍の夜2」で自虐プレイする中国のゲーマー
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月27日

引くも進むも地獄の立民

【立憲、内閣不信任案めぐり苦悩=他党からは突き上げ】
 内閣不信任決議案提出をめぐり、立憲民主党が苦悩している。政治決戦となる夏の参院選に向けて提出したいところだが、衆院選の準備が進まない中、衆院解散・総選挙の引き金になりかねないとのジレンマがある。他の野党からは突き上げる声も上がるが、勝算があるわけではない。
 立憲の枝野幸男代表は23日に開かれた党会合の冒頭のあいさつで「どんな状況になっても有権者の期待、負託に応えられるよう頑張っていきたい」と述べ、衆院選候補者の擁立を急ぐ考えを強調した。ただ、不信任案には言及しなかった。
 先の10連休前まで、立憲は不信任案提出を「既定路線」(幹部)と位置付けていた。姿勢に変化が表れたのは今月中旬。菅義偉官房長官が17日の記者会見で、不信任案提出が「解散の大義」になり得るとの認識を示すなど、政府・自民党内で解散風が吹き始めたからだ。
 立憲の福山哲郎幹事長は21日の会見で、不信任案を提出するかについて問われると「解散を誘発する可能性がある。今、言うのは適切ではない」と明言を避けた。辻元清美国対委員長も22日の党会合で「参院選で信を問えばいい」と語り、衆院選は避けたいとの考えをにじませた。
 野党の衆院選準備は満足に進んでいない。立憲の候補は新人・元職約20人、現職55人の計約75人。国民民主党の約60人と合わせても約135人だ。衆院小選挙区289の半分にも満たない。
 立憲幹部の一人は「不信任案を出さなければ腰砕けと批判される」と懸念。他の野党からも「出さないと参院選は戦えない」(閣僚経験者)との声が出ている。ただ、安倍政権を迎え撃つ態勢が整っているとは言い難く、立憲中堅は「今、解散を打たれたら壊滅する」と本音を漏らす。
(5月24日、時事通信) 

弱小野党第一党の辛いところ。
不信任案を出したところで通らず、否決されて同時に解散を打たれた場合(憲法上の疑義はさておき)、
野党の衆院選準備は満足に進んでいない。立憲の候補は新人・元職約20人、現職55人の計約75人。国民民主党の約60人と合わせても約135人だ。衆院小選挙区289の半分にも満たない。

全く準備できておらず、現状維持が関の山。下手すると、衆参同日選の場合、現状すら維持できないかもしれない。

野党を見た場合、候補が足りず、資金もなく、共闘も不十分、統一的なリーダーもいない、同日選で労組の支援は大半が参院選に行ってしまい、自治体議員は自分の選挙が終わったばかりでグッタリ、真夏の選挙で投票率も低い。しかも総じて支持率は低迷中で、第一党である立民の支持率はついに3〜5%にまで下がっている。

かといって、不信任を出さなかった場合、「チキン」呼ばわりされると同時に声だけは勇ましい反安倍・リベラル派からも「やる気が感じられない」とそっぽを向かれてしまう恐れがある。
つまり、「出すも地獄、出さぬも地獄」である。
まぁ仮にケン先生が「プレイヤー」だったら、どのみち解散は避けて通れないのだから、覚悟を決めて不信任を出すだろう。ここはフィン人の心意気を倣って「掛かって来い!」の一点である。どうせ一人負けするのは国民なのだから、仮に議席が現状維持に終わり、自民が圧勝したとしても、立民としては大きな損はないだろう。むしろ、原発と戦争が大好きな旧同盟系を概ね一掃できるチャンスである。

推察するに、立民の指導部は「現状を変えたくない」という現状維持バイアスが強すぎて、適切な判断が下せなくなっているものと見られる。
そもそも民主党政権で運営に失敗した連中が、何の反省(検証)もないまま、同じメンツでプレイしているのだから、上手くいく要素がないわけだが(爆)

個人的には帰国中に選挙とかマジで勘弁して欲しいし、真夏の選挙なんてまっぴら御免こうむりたい。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 政局ほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月26日

宝塚deゲバラ?!

フェイクニュースかと思ったらマジだった。
今年一番の衝撃かもしれない・・・・・・

D7GXRpsVsAQDF1K.jpg
ミュージカル『チェ・ゲバラ』
作・演出/原田 諒
「20世紀で最も完璧な人間」とサルトルに言わしめた男、エルネスト・ゲバラ(通称チェ・ゲバラ)。生涯一闘士としての生き方を選び、鋼のように強い意志と炎のような情熱を持った彼は、数々の伝説を残した革命家でありながら、人間愛を貫いた男でもあった。没後50余年を経ても、その不屈の精神と高い理想は今なお色褪せることはない。フィデル・カストロとの友情、妻アレイダとの愛、革命家仲間たちとの心のふれあいと軋轢──多彩な登場人物たちを織り交ぜながら、その誇り高くも激しく、清廉で理想に燃えた生き様をドラマティックに、そして鮮烈なまでに力強く描き出すミュージカル。
エルネスト・ゲバラはアルゼンチンの裕福な家庭に生まれながらも、ラテンアメリカの貧困を憂い、その原因となっている列強国による支配を打破すべく立ち上がる。キューバのフィデル・カストロと志を同じくしたエルネストは共に戦い、キューバ革命を成功へと導く。やがてキューバ政府の要職に就いたエルネストだが、自らの存在意義と国家のあり方に苦悩することになる。「祖国か、死か!」──民族や国家を超えて、世界革命を追い求めた孤高の革命家の眼は、自らに課した次なる責務を見据えて
posted by ケン at 09:31| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

最近の読書傾向から(2019-03, 04)

『日本統治下の朝鮮 - 統計と実証研究は何を語るか』 木村光彦 中公新書(2018)
1910年から45年までの日本による朝鮮統治を経済面に絞って研究したもの。統治期間中、農業生産性は毎年2%近く成長し続け、鉱工業に至っては年10%に及んだ。食生活や公衆衛生も大幅に改善されたという。言うなれば、明治維新以降、本土内で行われた殖産興業をさらに急速に行ったということだろう。工業化に一定の目途がついてきたところで戦争が起きて、(日本人的に)全て失われたことになった。ただ、朝鮮統治のための日本政府の財政負担は非常に低く見ているが(1935−39年で一般会計歳出総額の0.4%)、実際には各種補助金の大半は日本政府の持ち出し、外債の殆どは本土内で買われ、総督府の赤字も確か朝鮮銀行、さらに日本銀行からの補填になっていたはずで、少し単純化し過ぎているように見える。いずれにしても、「元を取る」にはまだまだ程遠い道のりにあったわけで、日本に植民地の資源を自力開発すること自体、相当に無理筋であったことが分かるわけだが、普通の人が読んだら「日本すげぇ〜」に終わってしまいそうな話だった。

『シフト 』 マシュー・バロウズ ダイヤモンド社(2015)
著者は米国大統領のために中・長期的予測を行う諮問機関である国家情報会議(NIC)に勤務し、15年先を予測する「グローバル・トレンド」を執筆、編集していた。NICを退任し、報告書として「書けなかった」部分を含めて、より自説に重きを置いて書き直したものになっている。いわゆる「未来予測」ものなのだが、さすがにアメリカの最高機関がやっていることなので、かなり参考になる。ケン先生は「グローバル・トレンド」を読んで、アメリカのアジア撤退が遠からず実現することを確信したわけだが、本書にも「もし、中国と衝突しても、アメリカが自動的に日本の味方をしてくれると、日本の指導者たちは誤解しているようだが。現実にはアメリカは自国の利益と中国の利益の間に折り合いをつけ、紛争は回避しようとする可能性が高い。アジア情勢の急速な変化と新しい国際秩序のなかで、どのような舵取りをしていくかは、日本の取り組みが遅れている領域であり、今後の大きな課題となるだろう」と書かれている。ただ、アメリカ人らしく、デモクラシーと自由貿易に対する盲信が貫かれており、「そこは全く疑わないんだ」と少し笑ってしまった。

『戦略的交渉入門』 田村次朗/隅田浩司 日本経済新聞出版社(2014)
ハーバード・ロースクールで研究されてきた「交渉学」を分かりやすく実用的に解説している。交渉とは「自分の利益の最大化を目指すゲーム」ではあるが、そこに感情や心理的バイアスが加わるため、予想外のことが発生しやすく、コントロールが難しい。しかし、理論と技術と準備を抑えておけば、相当部分はクリアできる。とかく交渉では「合意を得ること」を最優先する余り、つい妥協に傾きがちだが、「無理な合意」は結局のところ自分の利益を損ね、利害関係者(組織内)への説明がつかなく、合意自体も長続きしないという。例えば、相手の手口を「これはアンカリングだから、その話にはのらないで、話題を変えよう」と思えるだけで、交渉はかなり有利に進められる。交渉ごとは、大小はあれど、人生に欠かせない要素であるだけに、基礎知識として抑えておきたい項目が多い。

『6つのケースで読み解く 日米間の産業軋轢と通商交渉の歴史: 商品・産業摩擦から構造協議、そして広域経済圏域内の共通ルール設定競争へ 』 鷲尾友春 関西学院大学出版会 (2014)
上司に当たる教授から「大学の紀要に日米通商交渉の経緯と仕組みについて教科書的に書いて欲しい」と言われ、「へっ?自分がですか?」と変な声で返事してしまった。確かに私の肩書きは「日本経済研究員」ではあるのだが。そんなわけで、今期中色々読んでいるうちの一冊。日米間の産業軋轢と両国間の通商交渉の歴史を、繊維・鉄鋼・自動車・半導体・構造問題協議からTPPまで6つのケースで読み解く。アメリカがいかに国内の有権者の民意を受けて保護貿易を主張し、イデオロギー上の建前を糊塗するために、日本に「輸出自粛」を強要してきたかがよく分かる。また、アメリカがパワープレイで他国に輸出制限を強いてきたことで、米国内の産業構造の転換を遅らせることにもつながり、長期低迷の原因にもなっていることが推測される。いや、やはり専門分野外の書を読むと、大変だが、新たな「気づき」が多くて面白い。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 学問、文学、教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする