2019年06月17日

ソ連学徒から見たXG問題

私の立場ではセンシティブな問題になかなか触れられないのだが、表現を抽象的にしつつ、見解を述べてみたい。
アップできれば「OK」ということである。
日本では在野は「がんばれ」と盛り上がっているようだが、政府や政党は静観の構えを見せている。この時点で、非常に微妙な問題であることがわかる。本質的には内政問題だからだ。
ケン先生としては、ソ連学徒らしく、ソヴィエト学を踏まえて論評したい。以下参照。

「プラハの春」−ソ連の対応と誤算
「プラハの春」とカーダールの苦悩

「プラハの春」は、チェコスロヴァキア内部で発生した経済改革の流れが制御不能に陥り、内部分裂を引き起こした結果、ワルシャワ条約機構の介入を招いたものだった。これが自由主義史観では、「民主化を求める市民をソ連が暴力を以て弾圧した」という理解になり、今日に至っている。しかし、自由主義史観から得られるものは殆ど無い。

今回の件も同様で、「権威主義を否定する市民が抵抗」というのは問題の一側面でしかない。
また、抵抗運動が統制不能に陥り、あるいは自治政府を倒壊させるなどした場合、武力介入を招く恐れがあるということだ。ソ連学を学ばなかった者、あるいは自由主義史観に染まっている者の見方は非常に一面的で危険である。

そもそも今回の騒乱の原因は、本土で犯罪や汚職を犯して逃亡する者が後を絶たず、それが悪い例となってさらに増え続けているため、問題となった条例案の提出に至っていることにある。
言うなれば、植民地時代の租界と同じ構図だ。

本土人からすれば、「高度な自治」を認めていること自体、植民地時代の汚辱なのである。
そもそも欧米列強が武力と恫喝によって強奪した領土を返還するのに、「高度な自治」の条件が付けられ、それを飲まざるを得なかったほど「弱かった自分」に対するコンプレックスもある。

さらに言えば、返還当初は本土に無い機能を有していたが、いまや港湾システムにしても金融システムにしても本土内で代替可能であり、経済的価値は非常に低下している。逆に犯罪者の逃亡先や不法取引の温床としての「租界」としての機能が相対的に強まっており、治安関係者やイデオロギー担当者からすれば、「諸悪の根源」に見えつつあるという現実がある。
つまり、「経済的価値が高いから」という実利から「目こぼし」されていたものが、今や実利が失われてタダの「腐臭の元」になってしまっているのである。

「プラハの春」や「ポーランド危機」の時もそうだったが、自由主義陣営の介入は無いという判断もある。
米中は貿易戦争の真っ只中にあり、改善の気配も無く、ロシアと中東問題で手一杯のアメリカに配慮する必要はどこにもない。
日本経済は中国市場なくしては成立しえない状況にあり、内政問題に介入して対立を起こす勇気は無い。
つまり、武力行使に対する意思決定のハードルは、むしろ「プラハの春」時よりも低いと考えられる。

当局は静観の構えを見せているが、それも「プラハの春」と同じで、自治政府が自分で対処できるなら「その方が望ましい」というだけで、日本国内で言われているような「民衆の勝利」ではない。この点は、まだ確認取っていないが、自治が制御不能な事態に陥ったり、あるいは「分離独立」などという主張が強まったとき、武力行使を躊躇することは無いであろう。ただ、当局も「最後の最後の手段」と見なしているためで、「プラハの春」時にもブレジネフに対して早期介入への圧力がかかったことを考えれば、今も当局内で激しい議論が交わされているやもしれない。

いわゆる中国クラスタの人たちが現象の分析に終始して、全体主義の構造や歴史を学ぼうとしないことは、愚かだとしか思えない。

【追記】
この問題についてはまだ殆ど他の人と話せていないのだが、わずかに聞いてみた感じでは、「このまま盛り上がりすぎるとヤバいのでは」という具合に概ね私と同意見だった。ソ連時代は、センシティブな話をするときは必ず「森に散歩」に行ったものだが、それに比べれば今の中国はユルユルである。
1956年のブダ=ペストも1968年のプラハもそうだったが、「まさか〜するはずがない」「西側が助けてくれるはず」という楽観主義と「弾圧者が攻めてくるから戦おう!」「自由か死か!」などといった市民煽動が統治不能状態を招くことは、歴史上ままあることで、それは結果的に悲劇しか生まない。そのスタンスは、フランス革命やロシア革命を無批判に称賛するのと同じくらい愚かなことである。
posted by ケン at 12:00| Comment(5) | ロシア、中国、国際関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月16日

『八佰/The Eight Hundred』


『八佰/The Eight Hundred』 菅虎監督 台湾(2018)

第二次上海事変、四行倉庫戦が映画化。
まぁ色々盛っていそうではあるけど、日本の仮想戦映画よりは見応えはありそう。

7月5日から大陸でも上映されるらしいので、帰国前に必見!
posted by ケン at 13:57| Comment(0) | サブカル、音楽、アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月15日

たぶん二回目?Bitter Woods

"Bitter Woods"はもともとAH社から出ていた作品だが、その後Compass Gamesが再販している。
中国のゲーマーが「Compassのゲームは高いから・・・・・・」というくらい、価格に難がある。
確かに最近は普通に80ドル以上するゲームがあり、自分で直接購入しても1万円を優に超すことが少なくない。
まぁ日本が未だデフレ下にあると言うべきなのかもしれないが。

さて、"Bitter Woods"は昔プレイしたことがあると思うのだが、今ひとつ思い出せない。
確かさほど難しくなかったと思うので、その場で英文ルールを読んでプレイ。
やはりGMT "Ardenne 44"と比べると超簡単だった。
とはいえ、スタートは2時過ぎになってしまい(カフェの始動は午後1時過ぎと非常に遅い)、9時近くまでプレイして8ターンしか進まなかった。
独軍を持ったお相手は初めてで、時間が掛かってしまったのはやむを得ない。
ユニットは連隊規模で、ユニットも決して多くはないのだが、大きいヘクスでフルマップ二枚なので、非常に広い。1ターンは半日。
とはいえ、実際には東半分しか使わなかったのだが。

インパルスは移動と戦闘に加えて、予備化した部隊が戦闘後に移動できる予備移動フェイズがある。
また、戦闘結果表はあまりブラッディではないのだが、「D4」で防御側4ヘクス退却とかあり、この場合、機械化ユニットは道路上だと最大6ヘクス前進できるという凶悪ルールがある。
そのため、一カ所で「間違い」があると、大変なことになってしまう恐れがある。

今回はドイツ軍が平押ししてくれたため、こちらも何カ所かで包囲されたりはしたものの、基本的には整然と退却しながら、順番に橋梁を破壊していったため、サン=ヴィットこそ史実より早く失陥してしまったが、まず米軍優勢のまま19日が終わって終了となった。
21日以降は連合軍の増援が増え、22日には天候が回復するので、ドイツ軍に勝利の目はないだろう。
とはいえ、バストーニュが包囲されるくらいまでは行ったかもしれない。
本ゲームでは都市や要塞を守っていても退却結果を無視できないので、意外と一撃で落ちてしまいそうではあるのだが。

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19日終了時のトロワポン(三ツ橋)周辺

やはりドイツ軍は比較的橋の少ない中央部に、文字通り突出部をつくる感じで突貫すべきだと思うのだが、側面を守るだけの歩兵がないことも確か。
しかし、連合軍も連隊規模であるために、とにかくユニットが足らず、「戦線引ければOK、でも川のこちらには置く余裕が無い」くらいのターンがしばらく続く。
それだけに、どこか一カ所で「事件」が起こると、連合軍はかなり苦しくなって、連鎖的に失敗を冒すこともあり得ると思う。ドイツ軍が苦しいことは確かだが、勝利の可能性はあるくらいの設定だ。

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19日終了時のバストーニュ

シンプルながら、橋梁破壊などのルールもあり、ツボは抑えられていると思うのだが、振れ幅が大きいところが難なのかもしれない。
posted by ケン at 13:00| Comment(0) | ゲーム、囲碁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月14日

金融庁の年金報告書が「なかったこと」に

【老後2000万円「報告書はもうなくなった」自民 森山国対委員長】
 自民党の森山国会対策委員長は記者団に、「国民の老後の生活に大きな不安が広がった。政府は金融庁だけの問題にせずしっかりと丁寧に国民に説明し不安を取り除く努力をする必要がある。現在の年金制度が将来にわたって持続可能であることも理解してもらいたい。与党としても、国民が安心して老後の生活を送ることができるよう、全世代型の社会保障の強化に向けて努力していきたい」と述べました。
 一方で、野党側が求めている予算委員会の集中審議については「この報告書はもうなくなっているので、予算委員会にはなじまない」と述べ、応じない考えを示しました。
 立憲民主党の辻元国会対策委員長は、野党5党派の国会対策委員長会談で「麻生副総理兼金融担当大臣は、『迷走ドタバタ劇』から『ジタバタ劇』に変わってきている。かつて『消えた年金』があったが、今度は『消された報告書』ということで、報告書が抹殺されるような事態は民主主義の危機だ」と述べました。
(6月12日、NHKより抜粋)

いつものパターンだが、都合が悪くなると官僚のせいにして「無かったこと」にする体質が現れている。
取り下げるなら取り下げるで、どこが不都合で、なぜ「間違った」報告書を出してしまったのか検証する必要があるが、「無かったこと」にすることで検証すら避けられることになる。何重にも罪深い。
ここは「一部を切り取って煽情的に悪用する方が悪い」と突っぱねるべきところだった。実際、立民の主張は無責任にも程がある。必要なときに官僚をかばわないで何のための政権党か、これでは政治家と官僚の信頼関係など構築できるわけが無い。

どうせリベラル派の連中には何を言っても無駄なのだろうが、もう一度確認しておこう。
件の報告書の問題箇所である。
前述のとおり、夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20〜30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円〜2,000 万円になる。。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。それを考え始めた時期が現役期であれば、後で述べる長期・積立・分散投資による資産形成の検討を、リタイヤ期前後であれば、自身の就労状況の見込みや保有している金融資産や退職金などを踏まえて後の資産管理をどう行っていくかなど、生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要である。

要は現行の年金給付額に夫婦二人で毎月5万円を上乗せして生活、95歳まで生きることを想定した場合の話なのだ。
問題はこの想定が非現実的かどうか、という話になる。敢えて言えば、年5万円の上乗せ額は年間60万円、30年だと1800万円になる。
なお、65歳時点での日本人の平均余命は男性で19年、女性で24年で、さらに伸びる見込みだ。

現実には年金給付額の平均は2019年の速報値で厚生年金14万8千円、国民年金5万5千円で、夫婦二人世帯の平均額は21万円である。このうち大体2万円強は税金や保険料(介護保険と後期高齢医療支援)などに取られ、74歳以下だとさらに国民健康保険で約2万円が失われる。この時点で手取額は、75歳以上で19万円、74歳以下だと17万円になってしまう。
大都市部に住んでいることを想定、家賃に10万円、光熱費に3万円かかった場合、残るのは75歳以上で6万円、74歳以下だと4万円になってしまう。これでは日常生活にも事欠くのは当然だろう。
ケン先生が公共住宅の整備を訴えたのは、まさにここである。10万円の家賃が5万円で済めば、最低限の生活は保障されるからだ。

実際に金融庁の報告書は、70代の夫婦二人世帯の平均支出額を24万円、60代を29万円としており、どう見ても現実離れした想定をしているようには思えない。60代の支出が多いのは、国保料、各種ローン支払い、孫の教育費支援などがあるからだろう。

同時に金融庁は今後退職金が減少することを想定して、退職金を資産運用して目減りさせないことを推奨しているわけだが、これも「余計なお世話」という反論を除外すれば、「その通り」としか言い様がない。
現実に、60代の資産を見た場合、「金融資産がある世帯」の貯蓄額中央値は1500万円だが、「金融資産ゼロを含む」のそれは600万円であり、この点でも金融庁の危惧は現実的だ。実際には高齢者の貯蓄ゼロ世帯は2割以上に上り、今後はさらに増加する見込みだ。
さらに、ゼロ金利も老後生活を直撃している。多少の貯蓄があっても金利がゼロの現状では、消費した分だけ減る一方にあり、資産運用をするとなるとリスクは避けて通れない。この点も必要とされる貯蓄額を増やす結果にしているのと同時に、基金運用による運用益の目減りと年金財政の悪化を示唆している。金融市場は飽和状態にあり、今後利率が上がる蓋然性は極めて低いと考えられるだけに、悲観的な観測を出さざるを得ないのは当然だろう。むしろ金融庁の試算は控えめなくらいである。

自由主義者は社会主義制度である年金制度を理解していない(したくもないのだろう)。
日本の年金制度は賦課方式を採用しており、勤労世帯が納めた保険料に年金基金の運用益や税金を補填して、高齢者の給付に充てる仕組みである。これは根源的に機械的な作業であり、保険料収入が減れば給付を減らすしかないし、給付を増やすためには保険料を上げるしか無い。
現実には、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は28%に達し、2040年には38%になるという中で、年金財政はすでに逼迫している。
国保では45%が国庫、要するに税金を投入して収支を維持しており、厚生年金でも20%が税金で賄われている。この合計額は2016年度で12兆円に及んでおり、国家歳出の10%以上を占めている。
高齢化率が高まるほど、年金給付額が増える一方、保険料を負担する現役世帯が減少するのだから、個々の負担は増え、貯金は難しくなるだろう。同時に退職金制度も崩壊過程にあり、若年層は退職金に期待できなくなっている。

年金制度は仮に政権交代したからと言って、突然ユートピアが訪れるようなものではない。
例えば、旧民主党は「基礎年金7万円」を掲げたことがあったが、これは国保に限ってみても2兆円からの財源が必要となる。これは恒常的な経費であるため、F-35の購入を止めたところでどうかなるものではない。これを実現するためには、国保の保険料を現行の1万6千円から2万2千円以上に上げるか、ないしは消費税を1%増額させることになる。あるいは資産課税だろう。このどれか、ないしは別の案を掲げなければ、「画に描いた餅」でしかない。

医療の問題も同じだが、保険制度は「皆で皆を支える」制度であって、誰かが一方的に利益を享受できるようなおいしい話はあり得ない。医療費の自己負担を下げるためには、保険料や税金を上げるか、医療の質やアクセスを下げるしか無いのと同じで、NK党が主張するような「窓口負担下げろ、医療労働者の待遇を改善しろ、消費税も保険料も上げるな」は全く非現実的なのだ。

「給付額下げるな、保険料下げろ、税金上げるな」という主張は、無限にお金が出てくる魔法の壺でも無い限り実現不可能である。だが、どうもそれはリベラル派に通じないらしい。
彼らには、パン価格を50年間据え置いて、給料を上げまくった結果、財政破綻してしまったソ連経済を学ぶところから始めて欲しい。

大事なことだからもう一度言うが、年金と健康保険は社会主義制度である。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 財政、社会保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月13日

日本より中国を選んだロシア

【平和条約「日米の軍事協力が難しくしている」露大統領、交渉長期化示唆】
 プーチン露大統領は6日、日露の平和条約交渉が進展していないことについて「かなりの部分において、日米の軍事協力が難しくしている」との認識を改めて示した。日露両国が平和条約を締結するためには、包括的な関係拡大が欠かせないと指摘。「『この問題を明日にも解決できる』と話せるものではない」と述べ、長期化が避けられないとの見方を強調した。
 プーチン氏は今月28日から大阪市で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議に出席し、29日に安倍晋三首相と会談する予定。日米安全保障条約が日露の交渉進展に対し障害になっていると指摘。「この条約下で日本が何らかの主権を行使できるのか見極める必要がある」とも語った。
 プーチン氏はロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれた経済会議に出席し、主要通信社との会見で発言した。「我々は日本が自国の安全を保障する権利を批判しないが、日本も我々の懸念に配慮すべきだ」と言明。日本が配備を予定する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を念頭に置いた批判を繰り返した。そのうえで専門家レベルの協議の必要性などにも言及した。
(6月7日、毎日新聞)

日本の報道だけ見ていると、あたかも安倍首相が譲歩に譲歩を重ねたあげく、プーチン大統領から足蹴にされたかのような印象になってしまうが、それほど単純な話では無い。

6月5日にモスクワで中露首脳会談が行われ、「中露の戦略的関係の強化」で合意された。
中国としては、米中関係が悪化している以上、ロシアとの連携強化は不可欠であり、ロシアも米欧との関係が改善されない以上、中国との連携強化は避けられない情勢にあった。
ただ、ロシアからすれば、中露のパワーバランス上、「中露協商」が一方的に中国側に有利に働く恐れがあった。また、中露協商が上手くいかなかった時の担保として、同時並行的に「日露協商」を進めていた。

恐らくは「中露協商の強化」が現実的なものとなった時点で、ロシア側は対日交渉のハードルを上げたのだろう。
推測でしか無いが、ロシア側が必ずしも現実的な脅威とはなり得ない在日米軍基地の話に拘り始めたのは、「日本が中露協商側に来るなら良いが、対米従属したまま中露協商に乗っかることは許されない」ということを意味しているものと考えられる。

外交関係で複数の国を天秤に掛けることは歴史的にはままあることだ。
日露戦争時には、日本は日露協商と日英同盟を天秤に掛け、日英同盟が成立したため、日露協商路線を破棄して対露開戦を選んだ。
また、1939年の独ソ不可侵条約は、37年に締結された日独伊防共協定の軍事同盟への強化と天秤に掛けられていた。ドイツは日本に対して軍事同盟への昇華と参戦条項と新たな仮想敵としてアメリカの追加を求めたが、日本側は例によって意思決定できず(主に陸海軍の対立によるが、昭和帝も反対)、ドイツはいつまで経っても決断できない日本を見捨て、独ソ不可侵条約を選んだ。この時、日本側では陸軍が賛成していたが、同時並行で進んでいたノモンハン事件で大敗していたこともあって、一時的に権威が落ちていた。
この後、日本はドイツの対仏戦勝利を見て三国軍事同盟を締結(1940.9)した後、41年4月に日ソ中立条約を締結して南進に方針を決めるも、ドイツが対ソ開戦すると、41年7月には14個師団を戦時動員して関東軍特種演習を行い、北進か南進かで大議論している。結局北進は採用されず、南進・対米開戦するも、45年8月には「関特演によって中立条約は破棄された」などの理由をもって、ソ連の侵攻を許している。
日本政府がアメリカを仮想敵とする三国軍事同盟を決断できなかったのは対米開戦の二年半前であり、日ソ中立条約締結から三ヶ月後には対ソ全面動員を行っている。この「行き当たりばったり」観は決してデジャブーではない。

話を戻せば、ロシアからすれば中露協商の強化は、保険的価値しかない日露協商よりもはるかに大きな価値がある。しかし、「美味しい」が故にデメリットも大きく、中国が「次の覇権国家」になってしまうことを恐れている。とはいえ、現状では「背に腹は代えられない」ということなのだろう。
プーチン大統領からすれば、「中露協商強化が実現した以上、日露協商にこだわって、中国の心証を悪くする必要は無い」という判断だったに違いない。というよりも、ロシア側が交渉のハードルを下げる理由が何一つ無くなった、という方が現実的かもしれない。

こうなってしまうと、「次のチャンス」は情勢が一回転するのを待つほかないだろう。
しかし、安倍首相のように強いリーダーシップを発揮できるものが今後現れる保証は無く、日露交渉は一段と厳しさを増すだろう。また、交渉の機会が発生したとしても、その条件はますます日本側に不利になるものと思われる。
対米従属はやめられず、日露協商には失敗し、朝鮮半島情勢にも絡めず、中国からは交渉優先度を下げられつつある日本の外交環境は非常に厳しいものがある。
posted by ケン at 12:00| Comment(0) | 外交、安全保障 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月12日

国連対日勧告の何故

【表現の自由「日本は勧告をほぼ履行せず」国連特別報告者】
 言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が、日本のメディアは政府当局者の圧力にさらされ、独立性に懸念が残るとの報告書をまとめた。「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」とした。
 ケイ氏は2016年に日本を訪問し、翌年に報告書をまとめて勧告を行った。今回は続報として勧告の履行状況などを報告。政府に対する勧告11項目のうち、放送番組の「政治的公平」などを定めた放送法4条の撤廃、平和的な集会や抗議活動の保護など9項目が履行されていないとした。
 今回、ケイ氏からの問い合わせに日本政府は答えなかったとしている。報告書は国連人権理事会に提出され、審議されるが、勧告に法的拘束力はない。
(6月6日、朝日新聞)

右派を中心にまた「国連ガー」と騒ぎになっている。
こちらもまたぞろ説明するが、外務省が「国際連合」などと真実を隠蔽するための訳語をつくったことに起因している。
国連は英語では「United Nations」で、要は連合国である。中国語の「联合国」を見れば一目瞭然だろう。
せめて日本の国連センターくらいは「連合国」と掲げて、マスコミに対して「連合国」の訳語使用を求めれば、国民の認識も変わるだろうに。

さて連合国(国連)憲章には「旧敵国条項」というのがあり、第53条などで二次大戦期の枢軸国が再び侵略戦争に向けた準備や領土奪還などを求めることを禁止、必要に応じて武力行使を含む制裁を例外的に無条件で(安保理の裁定無しで)許可するというもの。
ネトウヨのミナサンはご存じないようだが、日本は枢軸国側で参戦し、米英中ソと戦争して敗北している。

つまり、日本が(北方領土含む)領土要求を行ったり、全体主義的あるいは(軍拡含む)好戦的な政策を採った場合、連合国旧戦勝国は安保理の裁定を待つこと無く、「侵略防止に向けた措置」を取ることが許されている。
そして、日本やドイツなどにおいて、ファッショ、ミリタリズム、集産主義などの兆候が見られるか監視するのも、連合国=国連の役割の一つになっている。
国連機関が日本に対して厳しい姿勢を貫いているのは、このためであり、日本は連合国側の疑念を払拭する義務があるはずだが、北方領土要求を含めて、果たしているとは言えない状況にある。

ロシアのラブロフ外相がたびたび厳しい要求を日本政府に突きつけてくるのも、根源はここにある。
だからこそケン先生は、ソ連=ロシアが旧敵国条項を持ち出さないようにするためにも、日露平和条約を結ぶ必要があると主張しているのだ。

旧敵国条項に照らし合わせてみて、日本はかなり危険な状況にある。
世界第七位の軍事大国である上に、政権党内では「軍事費倍増計画」が議論されており、国内では外国人差別や韓国、朝鮮、中国に対する排外的・侵略的言説が流布されている上に放置されている。
政権党内では、憲法の全体主義的、軍国主義的、権威主義的改正案が策定されている。
首相と内閣の権限は、明治期に内閣制度が発足して以降、最大となっており、かなり独裁的権限を持つに至っている。
表現の自由、女性や性的多様性に対する差別、権威主義的教育、警察権や裁判制度の非人道性など、どれを見ても、旧敵国条項に背反している。

要は日本人が「オレは大丈夫」と思っているだけで、現実あるいは周囲はそうは考えていない、ということなのだ。
posted by ケン at 12:00| Comment(4) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月11日

色々辛すぎるニッポン

まぁ金融庁の件は一応擁護したけど(ケン先生は比較的大蔵系に優しい)、全体的に見ると、日本で生きるのは辛すぎる感じ。以下眺めてみよう。

「長生きするなら1千万以上用意しろ」
「住む家は自分で買え」
「消費税は15%をめざすぞ」
「子どもは3人以上つくれ」
「学校では十分教えられないから塾へ行け」
「男も女も最低70歳まで働け」
「年収200万以下で文句言うな」
「副業、兼業はどんどんやれ」
「生活保護はどんどん削るぞ」
「残業規制は月100時間にしてやったから感謝しろ」
「ストやデモはもってのほか」
「女はハイヒール履け」
「表現の自由は時代錯誤」
「上級国民には人権適用」
「チューゴクが攻めてくるから軍拡だ」
「日米同盟が大切だから中東戦争に軍事介入するぞ」
「図書館や公民館は赤字だから廃止する」
「医者や教師が待遇について文句言うな」
「資産流出を防ぐために金持ちは優遇するぞ」
「ニッポンに生まれて幸せすぎる」

これはもう「合成の誤謬」では済まされないよな〜〜
ま、政治家のミナサンガンバッテクダサイな。
posted by ケン at 12:00| Comment(3) | 政治、社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする